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53話 《神界の敵》

 それから数日の間はメイドたちの教育のために神界に入ることになった。


「おい、涼太。今から仕事だからついて来い」


 ヘファイストスが唐突に俺にそう話して来た。


「神界の魔物か、面白そうだな。一緒に行くよ」

「おし、なら直ぐにいこうぜ! アポロン、準備は出来てるか?」

「私はいつでも構いませんよ」

「それじゃあ狩りの始まりだ」


 俺はアポロンとヘファイストスに捕まって転移をした。


「そう言えば、俺ってあそこから出た事無かったんだよな」

「なんだ、引きこもりなのか?」


 カカッと笑い俺の頭をパシパシ叩いてくる。


「俺は地上側で過ごしたいんだと言っただろ。最初は神界での生活をするなんて想定外だったんたよ」

「そりゃ良かった。お前に巡り会わなきゃ、あんな新しい刺激になんか出会えなかったんだからな」

「そうですね、涼太のおかげでパンドラとも仲良くなれました」

「いや、パンドラはお前の事を明らかに嫌っているからな」

「なっ! そんなバカな……」


 アポロンは『OTL』の姿勢になる。

 分かるだろう。いや、分かれよ。

 それにしても、本当に何も無い場所だな。

 白い空間と地面は液体窒素の様な霧に覆われている。

 これだけ無風景だと暇だ。


「なぁ、どこに魔物は居るんだ?」

「あ? 転移した最初から魔物のテリトリーに入ってるぞ」

「何も無い空間だぞ」


 ビキッリ、ビキッ


 突如として空間に亀裂が入った。


「ほら、敵さんのお出ましだぞ」


 現れたのはゴブリンが十数体。

 色が黒い。

 気になるので鑑定して見る。



 *


 黒帝ゴブリン LV.984


 攻撃:12000

 魔力:6400

 俊敏:4000

 知力:1500

 防御:9800

 運:50


 スキル

【打撃LV.84】

【怪力LV.42】

【強化魔法LV.68】



 ふぁ!?

 ビックリした。

 見た目は大して変わらないのに凄く強い。


「何だ、雑魚か。任せた」

「え、俺がやるの?」

「お前でも普通に倒せるだろう。俺はイマイチやる気が出ない」


 ヘファイストスのレベルは15万オーバーだ。

 レベルマックスの勇者がレベル1のスライムを倒しても面白くない。

 でも仕事なら手伝えよ。


 ヘファイストスはその場に腰を下ろした。

 アポロンも同じく観戦するつもりの様だな。

 やるしか無いか。


 クギギャ

 クギョ

 ギキャ


 三匹のゴブリンが俺に向かってくる。

 一匹は真っ直ぐに突っ込み、もう二匹は交差して俺に向かう。

 ゴブリンは知能が無いことで有名だ。

 連携なんてまずあり得ない。

 面倒さいな。


「はぁっ!」


 俺は正面のゴブリンを剣で斬りつける。

 ゴブリンは最も容易く切り裂かれる。

 よし、次だ。


 しかし、俺はここで違和感を覚えた。


 重い。

 剣が鉛の様に重い。


 振り向くと先ほど斬られたゴブリンが俺の剣にしがみついていた。

 その隙にもう二匹が俺に襲いかかる。


「おい、涼太。こんな雑魚どもに油断してんじゃねぇよ」


 ヘファイストスが二匹を纏めて圧殺する。


「こいつらは雑魚だが、それは俺たちから見ればの話だ。地上の魔物を基準にしてるんじゃ思考が甘いぞ」


 確かにその通りだ。

 こいつらは神界の魔物。

 文字通り地上の魔物とは次元が違う。

 認識が甘かったな。


 どうやら俺は奢っていた様だ。

 絶対の強さは傲慢に繋がる。

 傲慢とは弱者に対する優越感。

 俺が嫌っていた感情だ。

 知らないうちに俺はその感情に浸っていたのか。

 甘いな、情けない。


「悪い、もう大丈夫だ。頭が冷えたよ」

「おう、その様だな」


 ヘファイストスは再び元の位置に座り込む。

 さて、やるか。


「【気昇きしょう】」


 以前の修行で教えてもらった技だ。

 気の力で身体能力を上昇させる。

 他にも上位版を見せてもらったが今の俺に使えるのは最初の肉体強化だけ。

 だが今はこれでも十分だろ。


 そこからは一瞬の出来事であった。

 コンマ一秒を切る戦い。

 俺は敵の懐に入り両断する。


「及第点ってところか?」

「やるではないですか」

「そりゃ、どうも」

「それじゃあ、行くぞ」

「行くってどこへだ?」


 ヘファイストスはニヤリと笑い俺の問いに答える。


「強えやつがいる場所だ」


 しばらく歩くと辺りが薄暗くなってきた。

 霧も色黒くなってきた。


「暗くなってきたが大丈夫なのか?」

「涼太。確か前に神界に悪神や邪神が居るとアテナから聞きましたよね」

「ん、確かにそう言われたっていう事は……」

「はい、ここはそいつらのテリトリーの付近ですよ」

「それって危険じゃないか?」

「とは言っても邪神やらとは戦いませんよ。あいつらは魔物を創り出す代わりに、テリトリーからは一切でてくるのを見た事はありません」


 良かった。

 今のやつらの親玉との対戦はゴメンだ。

 胃がキュルキュルするよ。


「そんじゃあ飯にするか!」

「はぁ? なんでそうなるよ」


 こんな薄気味悪いところで飯かよ。


「そうですね、丁度いい頃合いですね」

「おら、さっさと出しやがれ!」

「ちょっ、分かったって。蹴るなよ」


 でもあまり思い浮かばないなぁ。


「何が食べたい?」

「肉だな」

「私はラーメンが食べたいです」


 何故にラーメンだよ。

 めんどくさいな。


「カップ麺でいいか? 肉は唐揚げだ」

「問題ありません。お手軽ですからね」

「俺もそれでいいぞ」

「何味がいい?」

「しょうゆで」

「俺はとんこつ」


 カップ麺か久しぶりだな。

 俺は創造してお湯を沸かす。

 よし、出来た。

 ああ、やっぱ美味いな。


「そう言えば、天使たちもこんな場所に来ているのか?」

「いや、お前はある程度強いからここまで連れて来たんだよ。あいつらはまだ弱い。修行が必要だ」

「修行ってどんなのだ?」

「俺と戦ったり自分たちで模擬戦をしたりだな。最近は近場なら一緒に狩りに連れて行ってやってるよ」


 へぇ、しっかりと面倒は見てくれてるのか。


「そう言えば、お前さっき新しいやつらを連れて来てなかったか?」

「ああ、うちのメイドか。ガブリエルがメイドとは何かを教えるってよ」

「そうか、ついでにそいつらにも修行してやるかな」

「おい、それは止めろ。あの子たちは普通の子供だ。天使たちと一緒に考えるな」

「そいつは残念」


 ズルズルとカップ麺をすすりながら、そんな話をしていると突然俺の体に重圧がかかる。


「来たか」

「私も戦いましょうか」

「いらねぇよ。おい、涼太。しっかり見てろ、これが俺たちの普段戦っている敵だ」


 ヘファイストスはカップ麺の汁を飲み干し、唐揚げを何個か口に含み武器を構える。

 シリアスな場面でモグモグすんなや。


 ピキリッ。


 空間に亀裂が入る。

 敵の姿は見えていない。

 しかし俺は既に鳥肌が立っている。

 ヤバい。

 俺じゃ対処できない。

 そうしてそいつは現れた。



 邪骨魔煌龍 LV.35600


 攻撃:625400

 魔力:521300

 俊敏:98000

 知力:62500

 防御:624900

 運:50


 スキル

【腐敗LV.85】

【狂僧LV.65】

【噛みつきLV.79】

【悪道LV.97】



 *


 俺は息を飲んだ。

 ケタが違う。


「なかなか強えやつが出て来たな。いっちょやるか!」

「おい、危険だぞ」

「こいつら程度にビビってんじゃねえよ。邪神やらはこいつらとはケタが違うんだぞ」


 あー、聞きたくない。

 もうよくは分かりません。

 俺の手に負えるレベルじゃない。

 早くお家に帰りたい。


「こいつにはこれで十分だな。【羅刹】」


 俺がさっき使った【気昇】の上位版だ。

 ヘファイストスの気が爆発的に増える。

 大気と気の摩擦でヘファイストスの周りにバチバチと火花やプラズマが生じる。


 ヘファイストスは槌を敵に向かい振り上げ下ろす。

 えらく楽しそうだな。

 忘れていたが、こいつは度を越した戦闘狂。

 それにしても圧巻だ。

 これが神の戦いか。


「あー、疲れた」


 戦闘が終わり、戻ってくる。


「お疲れさん」

「おぅ、サンキューな」


 俺の出した飲み物を豪快に飲み干す。

 そのまま地面に腰を下ろし倒れ込む。


「今日はこのくらいにしておきましょう」

「そうだな、帰って酒でも飲むか」


 少し休憩してから家に帰ろうとした。




「にゃはは、なんか面白い子がいるではないか」

「あれ? 君は……」


 突然女の子が俺の前に現れた。

 どこから出て来たんだ?


「ッッ! そいつから離れろ、涼太!」

「えっ……」


 ドスッ


 唐突過ぎて何が起こったか分からなかった。

 自分の体を見てみる。

 すると、一本の腕が俺の体に生えている。

 溢れ出る俺の血。


「クソが! アポロン!」

「分かってますよ!」



 ヘファイストスとアポロンは神速でその女の子に攻撃する。


「おっと、危ない危ない。何をするんだよぉ。ん? その子の体、傷が治ったのかい? あー、なるほど。再生か」


 ペロッと手に付いた血を舐める。


「くぅぅ、いいねぇ。その子の血って私好みかも! ねぇ、君。良かったら私と一緒に来ない? さっきはいきなり攻撃してゴメンね。お姉さんの仲良く過ごそうよ」

「なんでテメェが出て来やがった!」

「ひどいなぁ、ここは私のテリトリーだぞ。私がいつ居てもおかしくないだろ」


 テリトリー?

 ということはこの子って……。


「自己紹介がまだだったね。初めまして私は自由奔放、狡猾が売りのロキちゃんです! キラッ」

「ロキって……」

「こいつが例の悪神だよ。失せろ、てめぇの出る幕じゃねぇんだよ」

「ひどいなぁ、ヘファイストス。が出て来たんだ。ちょっとは歓迎しろよぉ」

「何しに来やがった」

「さっきも言ったでしょ。面白い子が居たから声をかけただけじゃないか」

「なら用は済んだな。帰れ」

「そんな邪険にしなくてもいいだろぉ。まぁ今日は引くとしましょう。私も目覚めたばかりでまだ眠い。それじゃあ、バイバイ」


 女の子はまるで空気に溶け込むかの様にその場から消えていった。

 何が起きたんだ?


「涼太、家まで転移するぞ。ジジイに報告する」

「分かった」


 俺たちはその場から家に転移する。


「あ、りょう君! お帰りなさい。初めての神界での戦いはどうでしたか?」

「アテナ、真面目な話だ。ジジイはどこに居る」

「オーじいなら風呂場のマッサージ機に座って喘いでましたよ」

「分かった。涼太、行くぞ」


 いつもより急ぎ足でじいさんの居る場所へ向かう。


「む、お主ら。帰って来たのか」

「ジジイ、ロキの野郎が出て来やがった」

「ロキか、確か以前の最高神たちがそいつらに何かをしたと言っておった気がするのぉ」

「何かってなんだ?」

「さあ、わしは最高神を引き継いだだけじゃ。詳しくは知らんよ」

「じいさん以外にも最高神が居たのか?」

「イザナミ様とイザナギ様じゃよ。どこへ雲隠れしたのか知らんが、急に居なくなったのじゃよ」



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[気になる点] 【狂僧LV.65】 ドラゴンは僧侶だったんですか? 僧侶ってスキルなんですか?
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