43話 《修行開始》
すいません、短くなりました。
「死にたい」
「りょう君、可愛かったですよ」
「うるさいわい」
あの後に俺は文字通り、女体化してしまった。
女神達のテンションは最高潮に達し、生きる屍状態の俺はおもちゃとして楽しく扱われた。
数時間後にようやく解放され、今にいたる。
「はぁー、疲れたぜ。仕事終わりに一杯やるか」
扉が開かれ、ヘファイストスとアポロンが帰宅した。
服は汚れ、汗もかいている。
「おっ! 涼太じゃねえか、帰ってきたのか。つまみか何かを作ってくれよ」
「その前にお風呂に入ってきて下さい。臭いです」
「へいへい、分かったよ」
ヘファイストスは面倒さそうにタラタラと風呂場に行った。
「ヘファイストス。戦ったと言うが、どんな魔物と戦ったんだ?」
風呂から上がったので、気になることを聞いた。
「そうだな、お前さんが倒した黒の王って奴がいただろ。覚えているか?」
「そりゃまあ」
今まで戦った中で最も強かった敵だ。
忘れるはずもない。
「あれは神界で言うと、下の上辺りの強さだな」
あれで下位クラスかよ。
神界と言われているが、化け物の巣窟か何かか?
強過ぎるだろ。
「ん? と言うことはヨルムンガルドは弱い部類に入るのか? 神が一人、死にかけたってアテナから聞いたんだが」
「ああ、トールのアホか。ヨルムンガルドはレベル自体は低いが猛毒が危険な奴なんだ。近づくだけでヤバイのに、それを分からずに突っ込んで死にかけたんだよ」
「アホだな」
「だろ?」
俺とヘファイストスは意気投合して頷きあう。
毒キノコだと知らずにパクパク食べる様なものだ。
自業自得だな。
コンコン
「主様、最高幹部の四名を連れて参りました」
「入ってくれ」
「失礼いたします」
俺の合図に最高幹部とガブリエルが入ってくる。
よく考えれば、五人の熾天使を一度に集まるのは初めてだな。
「おう、お前ら。風呂には入ってきたか、入ってないと女神どもがうるさいぞ」
「はい、勿論です。涼太様にお見苦しい姿を見せる訳にはいきません」
「お前ら、涼太に関しては俺らより敬ってるよな。俺って神様だぞ?」
「当然です。涼太様は我らを創造した神であらせられます。残念ながらヘファイストス様と同列には扱う事は出来ません」
そこまで敬わなくても良いんだけどなぁ。
ヘファイストスが珍しくションボリしてるよ。
「その事で聞きたいんだ。ヘファイストス、うちの天使達を戦いに連れ出しているそうだが無理はさせてないよな?」
天使は俺が創造した生命。
俺の子供と取っても変わりない。
無理強いは極力させたくないのだ。
「マスター、その事に関しては私達からお願いしたのです。私達はこの空間の管理を普段しているのです。しかし、それでは強くはなれないのです」
「涼太様、私達は主である貴方に支える存在。涼太様が地上で戦っている中で我々だけほのぼのと過ごす日常があってよいのでしょうか?」
いや、俺は別にいいんだよ?
異世界ライフを満喫してるし問題ない。
「我がマスターよ、我らは御身の剣であり盾であります。脆い剣など役に立ちません、貫かれる盾など邪魔なだけの存在です。ならば答えは鍛えるの一つ。そう言う訳で我らはヘファイストス様方に修行を兼ねて討伐に参加しているのです」
「それって、ガブリエルも?」
「当然です。熾天使の中で一人だけ参加しないなど論外です」
舐めていました。
天使達の忠誠心を完全に甘く見ていました。
「分かった。だが無理はするなよ、死んでしまっては元も子もない。お前達が傷つく姿は俺から見ても悲しいからな」
ちょっと、何で目に涙を浮かべてるんだよ。
俺、別に凄い事は言っていないぞ。
「それはそうと、涼太。お前に気の使い方を教えると言っていただろ、今から修行だ」
「え、今からか?」
「善は急げだ。行くぞ」
俺は襟首を掴まれたまま、修行部屋に連れていかれた。
ガブリエル達には女神達の相手をして貰う事にした。
薄暗い部屋。
俺の周りには松明が数本あるだけだ。
「いいか、気とは己の内や外にあるエネルギーを具現化したものだ。具現化する事によって五感をフル活用する事が出来る。気配察知とは第六感を極めると言う事だ」
「魔力とは違うのか?」
「魔力消費に限度があるが気には無い。極めれば便利だ」
「いまいちピンと来ないが早速始めようよ」
「そうだな、座禅を組んで心を落ち着かせろ。動くんじゃねぇぞ、動いたら殴る」
「分かった」
俺は心を落ち着かせて集中する。
ドゴッ!
「ッッ! おい、動いてないだろ」
「気が散漫してるって話だ、気を動かずに止めろ」
その気がどんなのか分からないから困っているんですが…
アニメや漫画でもこんなシーンがあったな。
己の内を探っていくんだっけ?
お、何かゆらゆらと動く。
これが気ってやつかな。
「む、気づくのが思いの外早いな。それが気だ、それじゃあ自由に動かしてみろ」
「分かった」
俺は気を身体中に纏うイメージで使う。
うん、思いの外上手く出来たかな?
「何だ、出来てんじゃねぇか。ある意味期待はずれだな」
「褒めても何も出ないぞ」
「それだけの威勢があれば十分だろ。目を瞑れ、俺が攻撃をするから避けろよ」
「ちょっ、いきなりかよ!」
俺は目を瞑り、気配だけでヘファイストスの攻撃を紙一重でかわす。
「ほう、面白れぇ。どんどんいくぞ!」
ヘファイストスの攻撃は更にヒートアップする。
蹴りを出せば、ビュンッという音がする。
当たれば無事では済まない気がするんだが……。
「はぁはぁはぁ、もう十分だろ」
あれから数時間、ひたすら俺はヘファイストスの攻撃を躱しては防ぎの繰り返しを行なっていた。
「そうだな、そろそろ十分か。それじゃあ、第二段階に移るか」
「第二段階?」
何段階もあるのか?
疲れているんだけど。
「涼太、手を出して俺の拳を受け止めてみろ」
パシッ
軽いパンチを俺は受け止めてる。
「もう一発いくぞ」
ヘファイストスの右手には気のオーラが集まっている。
なんか嫌な予感がするんですけど。
先程と同じ様に受け止めた。
「ッッ!」
何だこれは?
衝撃波の様なものが俺の体を襲いかかった。
「これが気の攻撃だ、これがあれば黒の王の様な『魔法無効』や『透過』なんていうスキルがあろうが関係なく倒せるぞ」
「これは凄いな。ある意味、魔法より強力だ」
「考えるよりは慣れろだ。組み手で慣らしていくぞ」
「おう!」