37話 祭り
章ごとに区切りをつけることにしました。
神界での出来事のサブタイトルには《》を付けました。
おはよう、突然だが引きこもろうと思う。
理由?
昨日の俺って凄く頑張ったと思うからだ。
ほら、あるじゃないか。
学生時代にテストが終わったから今日は勉強をしませんってやつ。
あれです。
一人が好きなんですよ。
もうどうせだから引きこもろうかな、自分で創れるし。
そうだ! 突然だが、人を駄目にするソファを創ろう。
超巨大なやつ。
よし、創造完了。
俺はソファに向かってジャンプする。
キャッホーイ。
ああ、気持ちいいなぁ。
体が沈んでいくよ。
俺は今、包まれてます。
更に上から同じやつを創造。
するとあら不思議、亀さんになったではないですか。
俺はもう此処から出ないぞ、此処が俺の安全地帯だ。
コンコン
ドアのノックする音が聞こえた。
「涼太さん、遊びに来ましたよ!」
クリスの様だ。
すまない、俺にはなすべき事があるんだ。
必殺! 殻にこもる。
俺は出していた首を引っ込める。
ふはは、これぞ最強。
「返事がありませんね、また寝てるのかな。それじゃあ、入りますよ。あれ? 居ませんね」
その通り、涼太さんは居ないので……あれ? なんか苦しい、息が出来ない。よく考えたら、これって密封状態じゃないのか? ヤバイよ、死ぬぅ。
俺はもがいて外に出ようとする。
しかし、砂漠の砂に手を通す様にうまく出られない。
致し方無い。
俺はソファを亜空間に収納する。
ドスン!
「いてっ」
そのまま落下し床に激突してしまった。
「あ、おはようございます」
「おはよう、どうしたんだ? こんな朝早くから」
「はい! 今日は昨日の勝利を祝うお祭りがあるので良かったら一緒に行きませんか?」
祭りか、面白そうだな。
屋台とか出るだろうし、行ってみるか。
「分かったよ、いつ始まるんだ?」
「もう始まってますよ!」
え、早くない? 昨日の夕方に戦いは終わった筈なんだけど。
「それじゃあ、行くとするか」
「はい!」
俺は手早く服に着替えて街の中にクリスと出て行く。
街中は本当にお祭り騒ぎだった。
あちらこちらに屋台があり、大道芸をしている人もいる。
「凄いな」
「お祭りですからね!」
「そう言えば、クリス」
「はい、何ですか?」
「グリムさんから許可は貰ってるのか? 貴族の……それも公爵の娘が一人で出て行くなんて普通は止めると思うんだけど」
大事だよ、居なかったら大騒ぎになる。
後で俺も怒られそうだ。
「てへっ」
クリスは舌を出してあざといポーズをする。
クリスのやつ、最近はっちゃけ過ぎてないか?
「まぁいいよ、折角の祭りだから楽しもうか」
「はい!」
朝食代わりに何か食べたいな。
いい匂いはそこら中から漂ってくる。
あれはケバブかな? 肉が挟んである。
「クリスもあれ食べるか?」
「いいんですか? でも私達今日はお金持ってないです」
「いいよ、俺が払うから。子供は甘えていいんだから」
すると、クリスの顔はパッと明るくなる。
「はい! でしたら一個を買って半分こにしませんか? その方が色々な物を食べられます」
「そうだな、そうしようか。すいません、このパンに肉が挟んであるやつを一つ下さい」
「はいよ! 300ペルだよ」
300ペルか、量と換算すれば安いな。祭りの屋台って、高いイメージしかない。
俺は金を払って、ケバブ的な物を受け取る。
凄いボリュームだ。
日本みたいに薄皮一枚を挟んでどうぞではない。
パン生地から肉が溢れている。
「それじゃあ、他にも色々買って食べようか」
「はい!」
俺達は美味しそうなものを見て回り、木の木陰で腰を下ろし食べる。
ちょっと、買い過ぎたかな?
でも、こういう時だから楽しまないとな。
「おお、やっぱり美味いな。食べてみろよ」
「はい、では一口貰います」
クリスは俺の渡したサンドイッチを上品に口へ運ぶ。
パクッ
「はわわ、か、かんせつ……美味しいです」
顔を真っ赤にしながら食べる。
何で赤くなるんだ?
まぁ、気にしない。
それにしても良いな。これこそが俺の望んでいた、ほのぼの日常なんだよ。
実に素晴らしい。
「おや、涼太さんにクリス様ではありませんか」
商業ギルドマスターのエルザさんだった。
家を買った後も、素材を売ったりしてすっかりお得意様になった仲だ。
「どうも」
「お二人は祭りを楽しんでいますか?」
「はい、楽しませて貰っています。エルザさんはどうですか?」
「これらの屋台は商業ギルドが管理していますので私はその見回りをしているのです」
仕事熱心だな。
ん? という事はエルザさんに頼めばあれが出来るんじゃないのか?
祭りと言えばあれが欠かせない。
見回ったが一つも無かったのだ。
「エルザさん、俺達も屋台を出す事は出来ますか?」
「今からですか…締め切りは既に終わっているのですが、涼太さんにはお世話になっていますから特別に良いですよ」
よし!
これであれが出来る。
「涼太さん、何をするんですか?」
「クリス、まぁ見てろ。エルザさん、人員を少しお借りしてもよろしいですか?」
「ええ、構いませんが何をされるのですか?」
「革命ですよ、祭りのね」
「はーい。スーパーボールすくいにヨーヨー釣りもありますよ!」
季節は夏。
夏祭りと言ったらこれだろ。
「スーパーボールって何だ?」
興味を持ったお客さんが俺に聞いてくる。
「スーパーボールってのはこの小さなボールの事です」
「その小せぇのが何だって言うんだ?」
「まあ、見てて下さいよ」
俺はスーパーボールを地面に落とす。
すると、元の高さ以上に跳ね上がった。
因みにこのスーパーボールだが、俺の創造で改造して弾力性を更に高めた。
「うぉ、跳ねやがった!」
周りにいたお客さんも見た事の無い物に足を止める。
「このスーパーボールを水の中に浮かばせて、このポイで掬うのです」
試しに俺が実演してみる。
「ほう、面白そうじゃねぇか。いくらだ?」
「一回100ペルです、取ったスーパーボールは持って帰って構いませんよ。小さいお子さんはポイが破れても好きなボールを一つあげます」
その言葉を聞いた客は次々にやると言い出して来た。
良心的な値段と子供も楽しめるのが興味を引いたのかな?
あらかじめ、大人と子供に分けておいて正解だった。
ヨーヨー釣りも同様の説明をする。
あっと言う間に行列が出来る。
「凄いですね、こんな物があるとは世は広いものです」
「やっぱり、娯楽は必要ですからね」
「このヨーヨーという物の材質は一体何なんですか? こんなに伸びるなんて見た事がありません」
「そこは企業秘密ですよ」
この世界にゴムの木があれば作る事ができる証明になるが、今は見つかっていないから言えない。
「この案ですが、是非うちで買い取らせて貰えないでしょうか? これは売れます」
凄いキラキラしてるな、流石は商業ギルド。
「ええ、構いませんよ。それと、これ以外にも儲け話があるので今度に纏めてどうですか?」
「それは、素晴らしい。是非お願いします」
俺とエルザさんは握手をする。
商談成立。
「そう言えば、涼太さんは今回の大侵攻に参加されたのですか?」
「は、はい。一応は参加しました」
「それでは、翡翠の騎士という人物もご存知ですか? b戦場を駆け回る国の英雄として話題になっているのですよ」
へ、へぇー。
広まってるんだ……。
「俺もこの目で見ましたが凄かったですね」
「やはりですか! 一度は会ってみたいのですよ。涼太さんはその人物に心当たりはありませんか?」
「さぁ、どうでしょう。ヨルムンガルドを倒したと思いきや、突然その場から消えましたので俺には分からないですね」
「そうですか、残念です」
本当に良かった。
姿を隠していて正解だったな。
「涼太さん! こんなに取れましたよ!」
クリスはパンパンにスーパーボールが入っている袋と手にぶら下がったヨーヨーを見せる。
え、200ペルしか渡していないよ?
屋台荒らしの才能があるんじゃないのかな。




