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34話 大侵攻(戦場)

今日は連投しました。

もう1話分前にあります。


「さて、お前さん達はどうする?」


 魔物は横に広がる様に襲って来た。

 どうやら、私達は3つに分かれて対抗しなければならない様だ。


「ガッツ殿、私は右翼を担当します」


 そう言う放ち、異名の疾風の如くハルトさんはその場から消えてた。


「私は左翼にしますね」

「おう、分かった。それじゃあ、俺は正面を突っ切ればいい訳だな。死ぬんじゃねぇぞ」


 舐めないで貰いたい。

 私も戦姫と言う異名を授かった身、国の為、そしてお嬢様の為にも倒れる訳にはいかない。


「貴方こそ死なないで下さいね。ギルドマスターが倒れれば冒険者の士気は下がります。そうなれば迷惑です」

「はっ! 分かってるよ。それじゃあ、後で落ち合うぞ」


 ガッツさんは手に持つ大剣を振りかざして魔物の大群に突っ込んでいった。

 私の方もそろそろ行くとしますか。

 目の前には大量のゴブリンとオール、そしてちらほらとオーガも見える。


「邪魔です」


 わたしは手に持つ剣で敵を斬りつける。

 魔物特有の青い血が吹き出て、辺り一面を青く染める。

 ゴブリンとオークは女性を襲い孕ませるということで有名だ。

 私も騎士団の演習などでゴブリン討伐をする時にその様な場面に何度か出くわした。

 本当に酷いものだ。

 襲われた女性は例外なく心のどこかに大きな障害を持つ。

 男性恐怖症になる事も度々ある。

 そう思うと私の内側からフツフツと怒りがこみ上げてくるのが分かる。

 こいつらは一匹残らずに殲滅しよう。


「【全能強化オールマイティ】」


 私が戦姫と言わんとされる力。

 全てのステータスを爆発的に上昇させる強化魔法だ。

 数日後に酷い筋肉痛が私自身に襲いかかるが、それまでにはこの大侵攻は終わっているだろう、それに涼太様も居られるのだ。

 出し惜しみはしない。

 私は少しでも敵の数を減らすという使命があるのだから。

 私は周りを囲んで襲ってくる魔物を一掃する。

 冒険者や騎士達からは歓声の声が上がる。


「ミセル、流石だな」


 私に声をかけて来たのは、ハイゼット家の騎士団長のアザンさんだ。


「まだ戦いは始まったばかりですよ。弱い魔物とはいえ気を抜かないで下さいね」

「当然だ。それと、これだけの数だ。何処かに指揮官がいる筈だから、お前さんにはそちらを頼んでいいか? こいつら雑魚はうちの騎士達でも十分に対処出来る」


 確かにその通りだ。

 いくら雑魚を倒しても強敵を倒せない様では意味が無い。



「ゴブリンキングだー!」


 一人の兵士が声を上げて叫ぶ。


「ほらみろ、やっぱりキングが居やがった」

「行きますよ」


 私達は声のあった方へ向う。


「へぇ、ゴブリンキングにオークキングか。夢のコラボじゃねぇか」


 ゴブリンキングとオークキング、どちらもAランクの強敵だ。


「オークキングの方は任せたぞ」

「二匹とも私がやりましょうか?」

「はっ、抜かせ。こちとら、お前さんが生まれる前からハイゼット家の騎士団長を務めてるんだ、十数年しか生きていない小娘に後れを取るかよ」


 グギャャャ

 ブルモォォォ


 どうやら彼方も私達を敵として認知した様だ。


「とっとと片付けますよ!」

「おう!」


 私はオークキングの間合いに入り、剣を振り上げ両断しようとするが、相手も手に持つ斧で私の攻撃を受け止める。

 剣と斧のぶつかり合いで火花が散る。

 巨体のくせに動きが速いな。

 それに体に付いた脂肪は厄介だ。剣を振り切らなくては途中で止まり、格好の餌食になる。

 だが舐めるな! お前程度に苦戦している暇は無いんだよ。


「【卍鬼一掃ばんきいっそう】」


 私は剣を両手で持ち、剣を振り切りオークキングを切り裂く。

 辺りにいた魔物もその巻き添いを喰らい次々に倒れていく。


「おうおう、すげーな」


 アザンさんの方も既に終わっている。

 流石はうちの騎士団長だ。


「こいつらの素材はどうする? キングだから高く売れるんじゃねぇのか?」

「戦場で、そんな余裕があるのですか? 敵はまだまだいるのです、倒しますよ」

「ああ、そうだな。それに分かっていると思うが、ゴブリンキングにオークキングときた。それに此処にはオーガも居やがる」

「つまり、オーガキングも必ず出てくると……いうことですか?」


 それは面倒だ。

 オーガキングは準Sランクの魔物、AランクとSランクの間には埋められない程の差がある。

 そいつが現れればこちらの被害は確実に出てくる。

 私達がすぐに倒さなくてはならないな。


 グガァァァァ


 突如として右の方から空気が張り裂ける様な音が聞こえた。


「ガッツさんのいる方からですね。急ぎましょう」



 ♢♦♢



「ギルマス! ちょっとは休憩しろよ。あんた、さっきから動いてばかりじゃねぇか。体が持たねぇぞ!」

「はっ! 準備運動がようやく終わったところだぞ? 邪魔すんじゃねぇよ、日頃の書類やらの机仕事ばかりでストレス溜まってんだ。悪いが暴れさせて貰うぞ」


 ああ、いつ以来だろうな、こんな高揚感は。

 強え敵と戦えるなんて早々ある事じゃない。

 それにあの涼太やろうは恐らく王城からこちらの様子を伺っている筈だ。ここでギルドマスターの威厳と強さってやたを見せつけてやる。

 しかし、弱い魔物ばかりで味気ないな、しばらく戦っていたら強い魔物も来る筈だが、何が来るかな?


「オーガキングだー!」


 おもしれぇ。

 まともな敵のお出ましか。


「ギルマス、逃げろ! オーガキングの亜種だ!」

「亜種か、尚更ここから逃げる訳にはいかねぇな。俺がやる! お前達は周りの雑魚どもを掃除していろ!」

「分かった。気をつけろよ」


 さて……。

 俺は目の前にいる敵を見据える。

 オーガキングは普通だと赤みのかかった肌に一本の角を持っている。

 だが目の前にいるオーガキングの肌は黒く角もニ本ある。

 確かにこいつは亜種だな。

 いっちょやるか。相手の大きさは2メートル強、武器は俺と同じ大剣か。

 まぁ、パワータイプのオーガだから当然と言えば当然だな。


「まずは打ち合いといこうぜ!」


 ガギャン!


 重力武器同士がぶつかり合った鈍く大きな音が辺りに響く。

 力は互角か、いや相手の方が一枚上手といったところか。

 ちっ! やはり体が鈍ってやがる、昔ならキング二体でも、余裕で相手に出来たんだがなぁ。

 だがここで負ける訳にはいかないんだよ。

 倒させて貰うぞ。


「はぁぁぁぁ!」


 俺はギアを上げてオーガキングに近づき大剣を振るう。


 ガキィン!


「何!? 弾かれただと」


 切り裂かれる筈のオーガキングの肌は無傷である。代わりに俺の大剣が少し欠けた。


「くそっ、亜種だから皮膚も硬いですよってか? 面倒くせぇな」


 グガァァァァ!


 オーガキングが、右手に持つ剣とは逆の手で殴りかかる。


「がはっ! ッてえな、クソ」


 口から血が流れる。

 肋骨の一、二本は今のでいったな。


「ギルマス! 下がれ、俺達が盾になる!」


 馬鹿どもが! お前達では相手になる筈も無いだろう!

 仕方ない、使うか。


「お前ら! 巻き添いを喰らいたくなければ俺から離れろ!」


 すると、周りの冒険者や騎士達は逃げる様に散っていく。


「よし、こうなれば手加減どころか周りの被害も出てくるからな、すぐに死ぬかもしれんが恨むんじゃねぇぞ!」


 俺は剣を地に突き刺し目を瞑る。



「【鬼人化きじんか】」


 俺の目は赤くなり、体からも赤いオーラが沸き立つ。周りの草木も激しく揺れ動く。


「さて、第二ラウンドといこうじゃねぇか」



 ♢♦♢



 見えた! あそこか。

 私達は急いでガッツさんの元へ駆け寄る。

 目の前には黒い巨体のオーガ。

 これがオーガキングか、倒したのか。


「ギルマス、しっかりしてくれ!」


 それと横にはガッツさんが倒れこんでいる。


「ガッツさんは無事なのですか」

「あんたは戦姫か、助けてくれ! 無茶をして、そいつを倒したのは良いものの、急に動かなくなって倒れたんだ」


 私はガッツさんに近づき状態を確認する。

 息はある、だけど衰弱している? 私のスキルの様な何かを使ったのか?

 現状、危険な状態には変わり無い。

 私は前に涼太様から貰ったアイテムボックスの中から、何かあったら使う様にと言われたエリクサーをガッツさんに無理やり飲ませる。


「うぅ……」

「無事ですか、ガッツさん?」


 ガッツさんはゆっくりと目を開けて状況を確認する。


「戦姫か、すまねぇな。助かった」

「気づいたのなら動けますね。まだ戦いは終わってませんよ」

「人使いの荒い嬢ちゃんだ。ああ、問題ねぇよ。続きといこうか……とは言いたいが、ヤベェ奴が来やがったな」

「だから貴方を叩き起こしたのでしょう」


 そう、第一陣はなんとか倒し切る事が出来た。そして今、正に第二陣が来たところなのだ。



「キングの次はエンペラーってか? 笑えねぇぞ」



 SSSランク オーガエンペラー。



 先程のキングとは打って変わって、私達では対処は恐らく不可能であろう敵。


「あらあら、こちらも片付いたので来てみればとんでもないのが居ますね」


 疾風も片付いてこちらに来た様だ。


「ここにいる四人で倒せると思いますか?」

「こっちはSランク相当の奴が四人、相手はSが三つ。四と三でこっちの方が強えんじゃねぇのか?」

「ガッツ殿、笑えませんよ」


 本当に笑えない。


「ですが、共闘してみる価値はあるのではないですか?」


 もしかすると、勝てる可能性もゼロでは無いはずだ。諦めればそこで負けだ。抗うだけ抗ってみよう。

 だが、その絶望はとどまることを知らなかった。


「第一陣と第二陣ではここまで違うのですか?」

「俺が知るわけ無いだろう、逃げていいか?」

「何処へ逃げると言うのです、無駄ですよ」


 目の前に広がるのは魔物の大群。

 それもただの魔物では無い。

 どれも私が先程に相手をしたオークキングとは比べ物にならないオーラを身に纏っている。


「くっそ、悪夢以外の何でもねぇじゃねぇか!」


 そうして、その悪夢はゆっくりと此方へ近づいて来て、私達を虫けらの如く踏み潰さんとする。

 出来ない。

 私達にはどうする事も出来ない。

 実質上のゲームオーバーだ。






 だが、その攻撃は私達には届かなかった。

 何故ならその悪夢は文字道理、真っ二つに割れたからだ。

 真っ黒に染まった絶望に一筋の光が射す。


「よぉ、待たせたな」


 白銀と翡翠に光照らされる希望がついに戦場へ降り立つ。


「さんざん待たされて色々溜まってんだ。ただで済むと思うなよ」


 男は私達の前に立ち、倒すべき敵を見据えて言い放つ。


「さぁ、始めようか。ここからは俺の蹂躙ターンだ」





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