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27話 住居確保

次回、イベント発生です



 騎士の訓練が終わり、いつもの様に俺は昼食の席に座る。

 豪華な食事が置かれていく。

 流石は公爵家だ。

 しかし、俺は現状に不満を抱かずにいられなかった。


「俺はそろそろ、ここを出ようかと思います」


 ガチャン!


 金属がぶつかり落ちる音がする。


「そんな! 涼太さんは此処にずっといる筈ではないのですか」

「クリス、俺は最初に準備が整えば出て行くと言った筈だけど」


 うん、言ったよ。皆んなの目の前で宣言したもん。


「涼太よ、お主が冗談を言うなど珍しいな」

「そうよ、貴方はもう我が家の一員です」


 グリムさんとラミアさんも同調している。

 あなた方もですか。


「お気持ちは嬉しく思います。しかし、俺は自立がしたいのです。ここにずっと居る訳にはいきません」


 やだよ。

 これは俺が望んでいた生活じゃないもん。

 朝は決まった時間に起きて、騎士団の訓練に参加というか指導して、夕方には料理人達と料理教室をする。

 違うんだよ!

 俺は自堕落な生活がしたいんだよ!

 朝は好きな時間に起きて、自由に生きる。そう心に誓った。

 金もあるし、稼ぐ手段も既にもっている。

 後は住む場所を登録すればいいだけだ。


「むう、残念だ。確かにそんな事を言っておったな。もういっその事、騎士団に入ってはどうだ?」

「いえ、もう冒険者登録してますよ。無理です」

「涼太さん、私は悲しいです」


 知りません。

 そんなウルウルされても俺には利きませんよ。

 女神達で耐性は既に付いてるんですから。


「まあ、無理には止めんよ。お前の人生だ、好きに生きろ」


 グリムさん、そのセリフは父親が息子にかける言葉です。


「しかし、ここを出て行って行く当てはあるのか?」

「初めは宿にしようかと思っていたのですが、金が想像以上に溜まっているので家を買おうかと思います」

「ほう! それはよい事を聞いた。うむ、やはり一軒家を買うべきだな。ならば商業ギルドに行くがよい。私からの手紙だと渡しておいてくれ」


 そう言い、グリムさんはスラスラと何やら書き、俺に渡した。

 

「ありがとうございます」


 昼食を食べ終わったので早速、商業ギルドに行こうかと思った。


「涼太様!」

「どうしたんだ皆揃って?」


 メイドさん達が集結した。


「ここを出て行かれるのですか! お止め下さい。それは愚行です」

「そうです! 涼太様が居なくなれば誰がクッキーを作ってくれるのですか!」

「私は涼太様に出会えて本当に良かったと思っております。どうか……どうか……ご慈悲を」


 うわぁ、止めてくれよ。


「まあ、たまには戻ってくるから、これっきりという訳というか事でもないだろう」


 俺はそう言い、メイド達を押し切りダッシュで街の方まで走って行く。

 やって来たのは商業ギルドだ。



「ようこそ、お越し下さいました」

「家が買いたいんだけど」

「どなたかの紹介状はお持ちですか?」


 俺はさっきグリムさんから貰った紹介状を渡す。


「…………少々お待ち下さい」


 冒険者ギルドと同じく別の部屋に行ってしまった。

 しばらく待つか。

 家か、どうしようかな。

 治安が良いのは前提条件だ。

 まぁ、どれだけ小さくても中を改造すれば、何も問題は無いんだけど。

 でも家の周りに庭とか欲しいなぁ。

 となると、やっぱりそこそこ値段も高い場所になるか。

 まぁ、金は沢山あるから大丈夫だな。足りなくても直ぐに増やせるからいいか。


 そんな事を考えているとさっきの受付嬢さんと、もう1人、綺麗な人がやって来た。


「初めまして。私は商業ギルドのギルドマスターのエルザと言います。今日はお越し下さいましてありがとうございます」

「月宮涼太です」

「申し訳ありません。只今、涼太様にご紹介できる物件は一つしかない状態なのです」

「一件ですか。ちなみに治安はいい方ですか?」

「それに関しては何も問題は御座いません。これ程良い物件を私は紹介した事が無いくらいです」


 グリムさんのお陰かな?


「取り敢えず見せて貰ってもいいですか?」

「はい、ではご案内致します」


 俺はギルドを出てエルザさんについて行き、ここまで来た道を戻る。


 あれれ?

 何か嫌な予感しかしないぞぉ?


「着きました。ここですね」


 Oh……。


 ハイゼット家のお隣さんですか。

 俺は走り屋敷の中に戻る。


「グリムさん! これはどういう事ですか!」

「ふむ、何かあったのか?」

「何で、俺の家がハイゼット家の隣なのですか!」


 やりやがった。

 権力を振りかざしやがったよ。


「涼太さん、また会えて嬉しいです」


 クリスはトテトテとこっちにやって来て俺に抱きつく。

 うん、俺もこんなに早く会えるとは思わなかったよ。

 30分で帰ってきたよ。


「隣に住んでいた方はどうしたんですか。確か、ご老人夫婦が住んでおられた筈です」


 朝には挨拶をしたし一度はお邪魔していた家だ。


「何も大した事じゃないわよ。平和的な解決よ」

「もしもの時の為に私が確保しておいたのだよ、そのもしもが当たって良かったよ」


 だから、そんなに乗り気だったんですか。


「はぁ、分かりました。ここに住まわせてもらいます。エルザさん、おいくらですか」

「金額の方は既にハイゼット家から頂いておりますので問題ありません。あ、これは保証書です。管理しておいて下さい。では私の方はこれで」


 羊皮紙に書かれた保証書を俺の手に無理やり渡す。

 えぇ?

 もう終わりなの?


「グリムさん、お幾らですか?」

「金はいらん。その代わりと言っては何だが、これからもクリスの事を頼むぞ」


 おお、タダという事か。

 それに越したことはない。

 そりゃ、これからも会うだろうし問題ないだろ。


「それじゃあ、俺は家の方に行きます。部屋の内装の作り変えと整備をしたいので」

「待て、それなら騎士達とメイド達を連れて行け。役に立つだろう」


 あんた、自分の部下を他人のパシリに使っていいのかよ。


「いえ、俺の場合は特殊なので必要ありませんよ」

「ほう、特殊か。お前さんがそんな事を言うなどよっぽどの事だな。よし、私達も見に行ってもよいか?」


 まぁ、空間を創り終えれば後は内装を整えるだけだからいいか。


「ええ、構いません。ですが少しの間だけは外にいて下さい」


 という訳で、俺達は全員で俺の新しい家にやって来た。隣だけど。

 というか、何故メイドと騎士達も来てるんだよ!

 通行人の方々に迷惑だろう。

 ほら! みんな頭を下げてますよ!


 さて、どうしようかな。


 面倒だし神界と同じ構造でいいか。

 掃除は【クリーン】を覚えたから問題ない。

 一瞬できれいになる。

 よし、完成だ。


「出来ましたのでどうぞ」

「出来たとは何が出来たのだ?」


 グリムさんを先頭に俺の家にぞろぞろと入って行く。

 良かった。大きめに玄関は創っておいて良かった。

 全員とは言わないまでも、かなりの人数が入れた。


「靴は脱いでそっちの履き物に履き替えて下さい」

「ほう、変わった風潮だな」

「俺のいたところでは当たり前だったので」




 それから俺は皆さんを一つ一つ案内した。


「ふははは、涼太よ。規格外もいいところだぞ。これは人の手には余る所業だ」

「お父様、これが涼太さんです。涼太さんだからこそこの様な事が出来るのですよ」

「涼太さん、ごめんなさいね。私達の屋敷程度では満足出来なかったのね」


 満足された様で何よりですよ。

 みんな、見た事のない場所に興味を示さずにはいられないようだ。


「涼太さん、私ここに住みたいです」


 どこかで聞いた事のある発言だな。


「クリス、お前の家は隣だろ。世話をするメイド達はどうするんだ」

「涼太様、私達は何も問題ありません。こちらへ来れば万事解決です」

「メイド長、本音は?」

「ここは素晴らしい場所ですね」


 はい、分かりました。もういいです。


「涼太よ、あの一番上の場所にある飲み物は全て酒やワインなのか?」

「ええ、それ以外にも沢山ありますが」

「よければ、使わせて貰えないか。仕事終わりの気休めになりそうだ」


 グリムさんは今までに無いくらいに生き生きとした表情を見せる。

 騎士団は俺のトレーニング部屋の草原が広がる場所を使わせて欲しいと言ってきた。


 短い付き合いだけど、どんな人達なのかは十分に分かっている。

 何かしら変な事には使わないだろう。

 俺は快く了承しておいた。




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