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21話 騎士団の訓練

「して、涼太よ。この後はどうする予定なのだ?」

「はい、まずは倒した魔物を換金し金にしてから宿を取ろうかと思います」


 そう言えば、買取ってどこでやるんだろ。

 やっぱり冒険者ギルドかな?


「ふむ、ならばお主の気がすむまでこの屋敷に泊まっていてはどうだ? 換金をするにしても、今からでは買取を終える頃には日が沈み宿もほとんど取れぬ状況だ」


 成る程、確かに今の時刻は午後4時を回ったところだ。

 買取の待ち時間などを合わせると夜になるのは必然か。


「分かりました。でしたら取り敢えずは生活が落ち着くまではここに居させてもらっても宜しいでしょうか?」

「うむ、ではメイドに客室を案内させよう」

「あ! お父様、私がご案内いたします」

「む、そうか。では頼むぞ」

「はい!」


 そう言い案内されたのは1つの大きな部屋だった。


「この部屋ってグリムさんの部屋よりも間違いなく大きい気がするんだけど客室ってこんなのなのか?」


 俺は疑問に思いクリスに問いかける。


「はい、この部屋は客室の中でも1番大きな部屋となっております」

「いや、別にそこまで気にかけてくれなくてもいいんだけど、俺は取り敢えず寝るスペースさえあれば問題ないぞ?」


 必要なら自分で部屋も作れるし、たとえ馬小屋だろうと亜空間を設置すればなんの問題もない。


「いえ、これは私たちの些細なる感謝の証です。ここにいる間だけでも快適に過ごしてほしいのです」


 そうか、それじゃあお言葉に甘えようかな。


「分かった、ありがとう。是非そうさせてもらうよ」

「それから身の回りのお世話をするメイドを1人付けさせる形でも宜しいでしょうか?」

「いや、それは必要ないよ。基本的には家事全般はいつも自分でやっているから気にしないでくれ」


 俺の称号を忘れたのか?

 神々の舎監ですよ。

 今まで俺がお世話をする立場だったのにいきなり逆転するのは違和感がある。


「それで……その。よければ夕食まで時間がありますので公爵家ここの案内をさせて頂けませんか?」

「うん、そうだな、そうさせてもらうよ」


 確かに迷いそうだもんな。


「はい! ではご案内いたします!」




「そう言えばこの屋敷には本を置いている場所はないのか?」

「本ですか、でしたらお父様の部屋の隣が書庫となっております。お父様も仕事で調べるのによく使われています。涼太さんは本がお好きなのですか?」

「まあ、好きな方ではあるかな。暇潰しによく読んでいたし、出来ればこの国の常識とか歴史の本があればいいなと思っているんだが」

「でしたらご安心を。うちはこの国の中でも数に関してい言えば図書館と王城を除き豊富な量が揃っていると自負しております」


 おお! それは期待が高まるな。


「それじゃあ、暇な時にでも寄らせてもらうよ」




 しばらく歩いていると金属の打ち合う音が聞こえてきた。


「どうやら騎士たちが訓練をしている様ですね見に行かれますか?」

「そうだな、どんな訓練をしているのか気にもなるし折角だから見せてもらうよ」


 そうして俺達は庭の方にやってきた。

 柵が敷いてあるという事はここが訓練場所という事か。

 すると1人の男がクリスに気がついたのかこちらへ駆け出してきた。


「これはクリス様、こんなむさ苦しい所にいかがなされましたのですか? それに、隣にいる方は見た事のない方ですが」

「はい、こちらは涼太さんです。しばらくこちらに住まわれるお客様です。案内をしている最中に騎士達の訓練が気になられた様なので少しの間、見学をさせてもらえないでしょうか?」

「ええ、勿論構いません。私は公爵家の騎士団長を務めさせて頂いております、アザンと申します。それでしたら見ているだけだとつまらないでしょう。よければ涼太殿も訓練に参加されてはいかがでしょうか?」


 うーん、そうだな。

 この世界の人はどれ程の強さなのか気になるし、盗賊では強いかどうか分からなかったしいい機会だ、やってみようか。


「いい機会ですし、是非お願いします」

「ふふ、アザン。涼太さんは恐らくこの世界でもトップクラスの実力者だと言っても過言ではありませんよ? 逆に訓練を付けられる事になるかもしれません」

「ほう! それは良きことを聞きました。でしたらどの程度の実力なのか対人戦をさせてもらえないでしょうか?」


 この人、もしかしてバトルジャンキーなのか?

 ヘファイストス程ではないが似た様な雰囲気を醸し出している。


「はい、俺もそれで構いません」

「でしたら早速。おい、ルーク。この方と一度対人戦をしてみろ。団長命令だ」

「はっ! 自分は副団長を務めさせて頂いておりますルークと申します。以後お見知り置きを」

「では武器は刃の潰れたものをお使い下さい」


 ルークという人は俺と同じか少しの年下の様な感じだ。

 その歳で副団長って凄いな。

 アザンさんは訓練所の端にある武器を指し示した。


「いや、それには及ばないよ。自分の物があるからそれを使ってもいいか? 非殺傷物だから安心してくれ」


 俺は木刀を創る。この木刀だが『不壊』というスキルを付与している。どんな事があろうとも折れない様になっているのだ。


「それは……涼太殿、見たところ木の棒の様ですが本当にそれで宜しいのですか?」

「ああ、何も問題などない」

「分かりました。では始めさせて頂きます。始め!!」


 アザンさんの合図により俺と副団長の戦いが始まった。


「では参ります」


 そう言いルークは俺に向かって直進してきた。


「でやぁ!」


 ガキンッ


 俺とルークの剣がぶつかり合う。

 うーん、太刀筋は綺麗だが綺麗過ぎるな。

 速さも申し分ないが次がどう来るのか丸分かりだ。

 何か隠しているのだろうか?


「スキルも使用して構わないぞ」


 俺はルークにそう問いかける。


「しかし、それでは危険です。万が一にも怪我があってはなりません」

「お前は馬鹿か? 戦場での生きるか死ぬかという状況に置いて手加減などする筈も無いだろう。全力で応じなければ足物をすくわれるぞ。怪我の1つや2つを気にしていたら強くなんてなれない。全力で来い!」


 うん、実際に俺は黒の迷宮で「あ、こいつ可愛い」と近づいたら実は凄く強くてボコボコにされた事もあった。

 敵である限りは手加減など不要だ。

 するとルークは一筋の涙を流していた。


「申し訳ありません。自分の不甲斐なさが情けなくて……涼太殿のおっしゃる通りです。自分が間違っていました。では参ります。【龍閃りゅうせん】」


 次の瞬間、ルークから先程とは比べのもにならない速さの斬撃が飛んでくる。

 おお! 凄いな、これがルークの実力か。

 やっぱり副団長と言うだけはあるということか?

 それに龍閃りゅうせんか、凄くカッコいい技名だなぁ。

 俺も今度、考えてみるか。


 キィン!


 しかし俺はその斬撃をいとも容易く跳ね除ける。


「なっ!」

「その調子だ。全力で来い、じゃないと俺から一本も取ることなど出来ないぞ?」


 あれ? 段々と対人戦じゃなくてルークに指導をする形になってないか? まあ、相手も気にしてない様だからいいか。


 その後も俺は剣を受けては指摘の繰り返しをしていた。


「これくらいにしとこうか」


 10分以上戦い続けていたのでルークもヘトヘトだ。


「はい! ありがとうございました!」


 うわぁ、完全に指導をする側に回っちゃってるよ。

 ルークの目がキラキラしている。

 やめて! 俺にそんな眼差しを向けないで!


「ははははっ、これは驚いた。お嬢様が言ってた正にその通りの結果になっちまったじゃねぇか。実に愉快な気分だ」

「ふふ、流石は涼太さんです。惚れ惚れしますね」

「おい、涼太殿。いや、涼太と呼ばせてもらおう。お前さん、まだやれるか?」

「俺は構わないが」

「なら良かった。おい! お前ら。全員で涼太を相手にしな。一本でも取れたら明日の訓練は休みにしてもいいぞ? だが負けたらいつもの倍に増やす」


 騎士達から歓声が上がる。


「ちょっ、俺の意思は無視なのか?」

「ははは、お前さんならこいつら程度、軽く捻り潰せる実力を持っているだろう?」

「頑張って下さい、涼太さん。応援してます」


 どうやら、みんなやる気の様だ。

 はぁ、やるしかないのか。


「分かった。ただし時間は15分だ。アザンさん、それで構わないか?」

「ああ、問題ねぇよ。準備は出来ているな、では始め!!」





 結果を言おう。結果は騎士達の惨敗であった。それにルークと同様に指導という形に終わってしまった。


「ありがとう、楽しかったよ」

「「「「「「はい! ご指導、ありがとうございました!」」」」」」


 うわぁ、やっちゃったよ。これ絶対にまた訓練に参加する事になるんじゃないのか?


「ははは、まさか汗の1つもかかずに手も足も出ないとは参ったな」

「当然です。涼太さんに勝てる人などいません」






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