幕間3
正直、どうしようか迷いましたが決断させて頂きました。
物語は後半へ
その場にいた神々はハデスの放つ覇気に身を震わせて同じ思考に至ってしまう。
格が違うと。
かつて2柱の神がこの世界リファースに誕生した。
イザナミとイザナギである。
そして二人は地上の生命誕生と同時に繁栄を成すため自身の子として5柱の神を創造した。
1柱に天空神ゼウス。
天空を司り、大地に息吹くそよ風、世界を照らす太陽を人々に与える。
2柱に地海神ポセイドン 。
大地と海を司り、緑を生み出し、豊かな水は人々の繁栄を与える。
3柱に魔法神オーディン。
魔法を司り、便利性を有した魔法は生命にとって不可欠であり繁栄を与える。
4柱に遊戯神ロキ。
悪神に堕ちる以前、人々に娯楽と怠惰ない文明を与える。
5柱に冥府神ハデス。
死を司り、生命はいつか死にゆく。中でも悪き存在に罰を、そして救いを与える。
以上が原初に生まれた5柱の神。
その後に万物に対してそれぞれの役割を持った神々が生まれた。
しかし中でもゼウスとポセイドン は大きな責務と同時に、それに耐えきれずに狂い果ててしまう。
天と地、両者ともに相入れない対極の存在はいつしか世界を破滅に追いやる戦いを下界で繰り広げた。
イザナミとイザナギはそれを許さない。
創造を司るイザナギとイザナミは2柱を涙ながら滅ぼした。
そうして残された3柱の神によって再び平穏な今の世界が訪れた。
「ハデスよ、血を分けた兄弟よ。正直に言うとワシはお主らとは戦いとうない。これではあやつらと同じ運命が繰り広げられる。イザナミとイザナギ様も悲しまれるぞい」
「…………。オーディン、もう遅いのだ。私は世界の理を知ってしまったのです。不条理極まりない世界を。私たちではこの歯車は止められない。故に一度全てを理から終わらせるしかないのです」
首を横に振り全てを諦めたかのような姿はどこか儚げであった。
だが、オーディンはハデスの言葉と同時に唇を噛み締めて鋭い眼光を向ける。
「それは許さん。ワシにも家族がいる。友がいる。護るべき世界がある。お主らの野望は阻止せねばならん」
「ならば対立あるのみです」
決別であろう。
これ以上の対話は無意味、やり直す未来などもう何処にもない。
「のぅ、ヘファイストスよ」
「なんだよ、ジジイ」
「お主は馬鹿であるが信念を持っておる。ワシの後釜としてお主が次の神界の纏め役じゃ」
「……おい、どう言う意味だよ。ふざけてんのか、くそジジイ!」
その意味が理解出来ないほどヘファイストスも愚かではない。
大槌を地面に叩きつけて怒号を上げて抗議する。
「転移」
短い詠唱と同時にヘファイストスを除いた神たちは待ったも言わせずにその場から姿を消した。
「ハデスよ、この者はワシの後継人。どうかワシらの最後を見届けさせてたくれんかの?」
「……。ふふっ、どうやら私たちは長生きし過ぎたようですね。次世代を担う者ですか。良いでしょう、どのみち私たちが出会えば答えは一つです」
両者はヘファイストスへ結界を施す。
二人の超越した魔力で覆われた結界であればどちらとも全力を出そうとも壊れることはまずない。
「ふざっっけんなぁ!!おい、ジジイ!何勝手に自己満足してやがんだ!許さねぇぞ、俺は認めねぇ!あんたは俺らにとって必要な人物なんだよ!こんなの、こんなの他の奴らや涼太にどんな顔を見せればいいんだ!」
必死に結界を破壊しようとするがヒビの一つも付けられない。
「すまんのぉ、ヘファイストス。これはワシのエゴじゃ。ワシも永遠に近い時を過ごした。なに、安ずるでない、歳を取れば死ぬ。地上では当たり前の事じゃ。ワシがいなくなっても憎しみに呑まれるではないぞ」
どこか不器用な笑みを浮かべて手を振ってヘファイストスを背面に向ける。
「やめろ、やめてくれよぉ……」
今まで多大な迷惑をかけられた。
ズル賢く自分をコキに使ったことも何度もあった。
女神にセクハラをして何度も袋叩きにされたこともあった。
涼太と出会ってからは毎晩晩酌を交わした。
自分たちを導いてくれた。
憎たらしいがそれでも笑い合える父であり友であった。
一体いつぶりだろうか。
頬へと伝わる冷たい水滴。
「終わりにしましょう」
「さらばじゃ、兄弟」
〜前章・完〜




