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216話 アガレス



我は悪魔大公爵であるアガレスでアル。

悪魔界に君臨する派閥たちの中でも最古にして最凶との呼び名もある大悪魔ダ。


人間共と魔族が我に物乞いをしに来たと思えば世界の半分をくれてやるだと。

退屈していた我にとっては実に面白い話であった。


そう、最初はダ。


玉座に座り時を待っていた最中に感じ取ったあの感覚。

明らかに地上から発せられた波動であるはずなのに、この異界である悪魔界にまで届く圧倒的ナニカの波動。


魔の者とは対極にある存在が放つ力とは、まるで対極にあると感じさせるナニカだ。


仮にこの力が敵対する者から放たれた者ならば、絶対的強者であり、我に戦意すら抱かせない恐ろしいものだ。

最悪の可能性を見込み、我は城にいる悪魔たち全てに地下のダンジョンもどきへ退避するように命令する。

あそこは並の悪魔たちでは対処しきれないほどに強力な魔物たちがひしめき合う地獄だ。


あの絶対的なナニカと対峙するよりは何倍もマシだと我は判断した。


なのにだ、目の前にある光景はナンダ?




「こんにちは、我が神の逆鱗に触れた羽虫共。一匹残らず地獄に送ってあげましょう」



天使。


御伽噺に存在した我ら悪魔とは絶対的に交わらない天敵がそこにはあった。



束の間にガブリエルから放たれた光線は縦横無尽に暴れ狂い、大地を削りながら悪魔たちを滅ぼしていく。

アガレスは全身から冷や汗を流しながら、4翼の翼を背から出して空中を舞いながら全力で光線を回避する。



一瞬にして千はいた悪魔たちが二桁まで数を減らす。

アガレスにとっては最悪とも言っていい光景であった。



「貴様、我は魔界の大公爵であるゾ!唐突にこのような無礼を許したカ!」

「許すもなにも、私は主様の敵を排除しに来ただけです」

「我が貴様らになにをしたと言うのダ?我らは魔界で平和的に過ごしていた善良なる者たちであるゾ。それなのに貴様は無抵抗な我らになぜ刃を向ける」



アガレスは既に悟っていた。

目の前にいる天使から底知れぬ力の波動を感じ取ってしまっている。

今までに経験したことが無い故に始めて理解できた絶対的強者が目の前にいることを。



ならば自分たちが助かる可能性が最も高い道筋を考えることこそが、現状にとって賢い判断である。



それに対する答えは失笑であった。



「これではまるで私が悪者ではありませんか」

「当然だ!貴様は侵略者であろう。弱者を甚振る趣味をもつきさ……「ぬかせ!」」



ガブリエルは汚物でも見るかのように冷え切った目をアガレスに向ける。


「どうやらあなたは道化の方が似合うようですね。よく回る口は素晴らしいです。あなた方が地上で人間を滅ぼそうと考えて行動に移した時点で終わりなんですよ。愛するべき民に手をかけて許すとでもお思いですか?」

「グゥ……」

「というのは建前です」



緩やかに大地へ降下したガブリエルは軽い溜息をついて面倒そうなな面構えで悪魔に顔を向ける。



「建前だと?」

「ええ、建前です。私個人としては地上なんてどうでも良いんですよ。人間たち同士で戦争をしようが、あなた方悪魔が地上を支配しようが特に興味はありません」

「ならば、ナゼ我らの邪魔をする!」

「ただしそこに主人が絡んでいなければの話です。この騒動に関して主様は大変心を痛められました」

「主人だト?貴様が我らの企ての邪魔をする主犯であるのではないのか。どうやらその主人とやらは、たかが人間如きを痛めつけただけで怒る沸点の低い者のようだな」

「…………あぁ?」



アガレスの両腕が吹き飛ぶ。


予備動作も何も感じさせない。

ただ瞬きをしたら自分の腕が肩から跡形もなく消されていたのだ。


ガブリエルから先ほどまでとは比べるに値しないほど強力なオーラが吹き出して、全身から汗が溢れ出してくる。



「き、貴様の主人は天使か何かであろう!貴様と同じく人間に対して情がある訳ではなかろう!」



この時にアガレスは大きな勘違いをしていた。

天使であるガブリエルの主人と聞けば、天使以上の存在だと考えるのが普通だ。

人間如きが天使や悪魔の上位に立てるなどの思考は片隅にも置いていなかった。

ましてや神など自分たちに干渉してくるなど思うはずもない。



「最初に言ったはずですよ、我が神だと」

「あ、あり得ん!神だと!?」

「我ら天使を創造して下さった神がお怒りなのですよ。立場上は人間として過ごされていますが、神が滞在されている地上の国を襲撃してタダで済むはずないでしょう。それに先程の暴言、我が神に対して随分とふざけた事を仰いますね」



仮にここに涼太が居たのならば、全力で自分は人間だと抗議したに違いない。

しかしガブリエルたち天使にとっては創造神であり、アテナやオーディンたちより上位に君臨している立ち位置である。



漸くアガレスは自分が何と対峙しているのか理解できた。

勝てるはずがない。

どうあがいても自分たちでは対処出来ない怪物たちの逆鱗に触れてしまったことを後悔してしまう。



「理解できたところで最後です。何か言い残すことはありますか?」

「フッ……あるはずがなかろう。我らの完敗でアル」

「私も天使です。最後くらいは苦痛なく殺してあげましょう【断罪の光(ジャッジメント)】」




先程の光線とは比べ物にならない質量のエネルギーが上空から悪魔たちに降り注ぎ、悪魔たちを跡形もなく消滅させた。



明日も投稿します。

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