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208話 切り札




ピギィと結界が壊れる音が鳴る。



「はぁはぁはぁ、危なかった……」



片膝をついて結界を発動し、エリスと自分を護ったクリスは息を荒げる。

瞬時にエリスの元へ移動して全範囲を護る結界を展開したのだ。


空気が爆散し、熱風が大地を枯らすが何とか魔王の魔王を防ぐことができた。



「シャル!そっちは大丈夫?」

「うん、なんとか……ね」



シャルロットも土の壁を生み出して防いだ。




「今のって……自爆かしら?」

「そんな馬鹿な事をする訳ないと思うんだけど」

「でもアレを魔王も直撃したんだよね?普通にダメージは負ってそうだけど」



ドクンッ、と心臓を握り締められた感覚。

四人は爆散地点へ反射的に目をやる。


「……そう上手くはいきませんわね」



砂塵が舞った後に姿を現したのは五体満足な魔王。

漆黒のローブをなびかせ、首の関節を鳴らしながらゆったりとその場から立ち上がる。



「初手は完全に潰されましたわね」

「ここからはジリ貧で戦うしかないわ」


お互いに気を張りつめ、いつでも魔王が攻撃を仕掛けてきてもおかしくない様に戦闘態勢に入る。


対して魔王は自然体のまま、身体を脱力させて四人はを品定めのように吟味する。



「……ふむ」

「ーーーー!?アグッ!」



瞬きの間、クリスたちの視界から魔王の姿が消える。


急な浮遊感と喉元を掴まれて呼吸が止まって足をジタバタとさせているエリス。

徐々に魔王の右手がエリスの首を締め付け、エリスは顔を蒼白にさせて必死の抵抗をする。




「ーーーァァァァァアアアアアッ!!!」




クリスが魔王へ拳を向ける。



「所詮は人間よ、少し油断はしたが我には通じん」



体を捻り勢いをつけて魔王は空いた左拳をクリスの腹へ振り抜く。


何の防御もしていないクリスは5メートルほど先へ吹き飛ばされる。

鼻から血が流れ、嗚咽感に耐え切れずに口から血が混じった吐瀉物を流す。



「「エリスを離せぇぇぇ(離すんですわぁぉぁ)」」



アルマモードの状態かつ、仲間の危機で極限にまで魔力を練り上げたシャルロットもロゼッタは拳と銀扇を力の限り魔王へ振りかざす。


「ぬぅ、その魔力は賞賛ものだーーーがっ!」


横薙ぎに二人をまとめて魔王は蹴り飛ばす。

シャルロットとロゼッタは重なり合うように転がり倒れる。

強烈な一撃に二人のアルマモードは解除されて、そのまま意識を失う。




遠目から魔物や魔族たちと戦い続けている冒険者や騎士たちの数名が少女たちの悲惨な姿に耐え切れずに魔王へ向かってくる。



「そのもの達を離せ!」

「我らが相手だ」

「…………だめぇ…………きちゃぁ」



蒼白な顔をさせてながらもエリスはこちらへ向かってくる男たちを止める。


勇敢ではあるがそれは愚行である。


男たちは魔王が放った炎に飲まれて悲鳴を上げながらその場に倒れ伏す。



「脆弱だな。しかし、お前たちは誇るべきだろう。少しとは言え、この魔王相手に時間稼ぎを出来たのだから。誇りを持って死んで良いぞ?」

「………ま……………れ」

「何か言ったか、小娘」

「………ま……れよ」




汚れた衣服を気にもせずにクリスはゆらりと立ち上がる。




「肋骨は折れているだろう、無理をして立つものではない。大人しくこの女が死ぬ様を見ていろ」

「黙れって言ってんのよ!!!この腐れ外道がァァァァァーーーーッッッ!!!」



咆哮、



クリスを中心に氷の世界が生み出される。

大地は氷土と化し、霜が降りて一帯は霧に包まれ雲行きが怪しくなる。

空が雲に覆われたと思えば、周囲の気温が急激に下がり吹雪が起こった。



クリスの身体は氷の繭に覆われ、ビギリィと音を立てて氷の繭は砕け散る。



「ほう……ほうほう。小娘、まだ上があるか!この魔力は素晴らしいぞ、私の側近以上の魔力を感じる!愉快だ、実に愉快である!」



魔王は歓喜のあまりに右手に持っていたエリスを氷の床に放り投げ、両手を大きく広げて高笑いをする。



氷の龍巫女、そう表現して差し支えない。



巫女装束に似ているが、七分袖に太ももの半分程の青白な装飾の上からは透き通る布地のローブを纏っている。

脚と腕には氷のガンレットが装着されており、身体の所々に青の刺青が浮かび上がる。


ギロリと魔王を睨みつけて雄叫びを上げる。

クリスの背中からは二翼の氷の翼が生まれた。



強力すぎる魔法は味方すらも脅威に脅かす。

魔法を教わる際に何度も涼太に告げられた言葉だ。



アルマモード・氷龍召喚



どうしようもなく極力無比であり、強大な力に飲まれて自分で制御をする事すら難しいそれはクリスにとっての最期の切り札である。



(涼太さん、今がその時です。私に友人を護らせてくれる力を下さい)




キリがいいので短めですがここで切ろうかと思います。

次回の投稿は一週間後です。

期待値は低いですが、執筆が間に合えば投稿が早まるかもしれません。

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