19話 セリア王国/通貨
「ふぅ、やっとたどり着いたな。ここがセリア王国で合っているのか?」
「はい! ここがセリア王国です」
目の前には高さ15メートルはあるかと思わせる壁が国を囲むように建っていた。
これを作るのに相当な時間が掛かったのだろうと思わせる風格を持っている。
「では入口に行きましょう」
俺はクリスに付いて行く。
「身分証を見せろ」
小肥りした男が傲慢な態度で迫って来た。
「身分証は持っておりません」
「何? ならここは通せねぇな。ん? よく見ればお前、良い体しているじゃねぇか。それにそこの女も中々の代物だ。ぐへへ、俺の相手をしてくれるんなら2人は通してやんよ。男の方は外で魔物の餌にでもなってろ!」
うわぁ、ゴミだ。
出たよ、最悪門番パターンじゃないか。
「お断りします」
「何? このザルフ男爵家のゴリア様に刃向かうというのか。良い度胸じゃねぇか。不敬罪で捕まえてやる。おい、こいつらを拘束しろ!」
門番が命令を出す。
クリスは口元を微かにニヤつかせた。
あ! クリスの奴、ワザと自分の家名を最初に名乗らなかったのか。
性格悪いな。
だが良いぞ! 俺はこういう権力を振りかざす奴がさらなる権力者に潰される展開は大好物だ。
頑張れクリス!
「控えろ! この方はセリア王国ハイゼット公爵令嬢クリス・フィル・ハイゼット様であらせられるぞ!貴様らの無礼、タダで済まされると思うなよ」
ミセルが前に出て一喝し叫ぶ。
すると拘束しようとした男達とゴリアの顔はみるみる内に蒼白になっていく。
やべぇ、ニヤニヤが止まんねぇ。ざまぁ!
「な、そんな……嘘だろ?」
「本当だろうが嘘だろうが今はどうでも良いのです。今すぐに貴方達の責任者を呼んできなさい!」
「「はっ!」」
周りにいた門番達は我にも構わずという様な勢いで走り去っていった。
しばらくして責任者らしき男が大慌てでやって来た。
ズシャーー。
責任者らしき男は着くなりに綺麗なスライディング土下座を決めた。
「私は門の管理を務めさせて頂いておりますディール伯爵四男のファイズと申します! クリス様。此度の無礼、誠に申し訳御座いませんでした!」
「ええ、大変迷惑されました。この件は公爵家現当主である父上に報告させて頂きます。国を守る為の門番にこの様な事があってはなりません。沙汰は追って伝えます。宜しいですね?」
「はっ! 勿論に御座います。私も一度、全門番に不正を働いてるか確認してみます!」
「ええ、宜しくお願いしますね」
クリスはニコッと天使の様な微笑みをする。でもザルフにとっては悪魔の微笑みに違いない。
まぁ、これで一件落着の様だ。
「この2人は私の護衛です。もう通してもらっても構いませんね?」
「はっ! 勿論に御座います。どうぞお通り下さい」
こうして俺はセリア王国に足を踏み込んだ。
「先ほどは失礼致しました。いきなり国の汚点を晒すことになり申し訳御座いません」
「どんな国にも汚点は必ずあるものだ。無いなんて事は逆にあり得ないんだよ。それにさっきはかっこよかったよ、クリス。可愛いだけじゃ無くてこんな一面もあるなんて感動したよ」
俺は素直な感想を言う。
「なっ! 私が可愛いなんて……お世辞でも嬉しいです」
「いや、お世辞な訳ないだろう。クリスが可愛いくなかったら世の女性から嫉妬を買うことになるぞ?」
うん、実際クリスは凄く可愛い。
幼さはまだ残っているが間違いなく可愛い。
後数年したら間違いなく世の男を魅了する女性になるに違いない。
クリスの方は顔を真っ赤にしていた。
「お嬢様、この様な時は素直にありがとうございますと言うのですよ」
ミセルがクリスにアドバイスをする。
「いや、ミセルも普通に可愛いからな?」
「ッッ! あ……ありがとうございます。そんな事言われたのは初めてです」
ミセルの方も顔が赤くなっていく。
君もかい……。
「お嬢様、先程は申し訳ありません。お嬢様の気持ちが少し分かりました」
「うぅ……分かってくれたのね、ミセル。そ……その……涼太さん。ありがとうございます」
照れながらもお礼を言ってくる姿は本当に可愛い。お兄さんハートを掴まれそうだよ。
「それにしても活気に溢れているなこの国は」
本当に凄い。
スーパーみたいに流作業で何の活気も無い元いた世界とは大違いだ。
体を張って客を集めているとはこう言うことなんだろうなぁ。
大学の文化祭に近い活気があるかな?
「はい、今は午前なので余計に凄いです。午後になればもう少し落ち着いた感じになりますね」
ほうほう、朝市みたいなものなのかな。
「あの目の前にある大きな城は何だ?」
「あれは王城ですね。国王陛下並びに王族の方々が住んでおられます」
「クリスは王城にはよく行くのか?」
「いえ、そんな事は……お父様が業務でよく参られる程度です。私は小さな頃はよくお父様に連れて行かれました」
成る程なぁ。
機会があれば入ってみたい。
俺が神界で読んでいない本があるに違いない。
そうなると図書館はこの国にあるのだろうか?
魔物の一覧表とかあったら便利だなぁ。
よく考えたらこの世界に来てお決まりのゴブリンとスライムにすら会わずに千住黒死像と戦っているってどうなのこれ?
俺のファンタジー生活って何かズレてない?
やっぱ神界でほぼ一年間過ごしたのがおかしいよな。
そんな事を思いつつ、市場の中を歩いていると屋台からいい香りがしてきた。
串焼きか、旨そうだなぁ。
「涼太さん、あれが食べたいのですか?」
俺が凝視しているのに気がついたのかクリスが声をかけてくる。
「ああ、凄くいい匂いだから気がいってしまった様だ。でも今は金はないしまた今度にするよ」
早く持っている魔物の素材を売り払って食べたいなぁ。
いくらぐらいになるだろう。A級って言ってたから生活に苦労する様なことにはならないだろうけど。
「ふふ、それでしたら私が買います。一緒に食べましょう!」
「いや、流石に年下の女の子に奢って貰うと言うのか男としてプライドに引っかかるんだが……」
「良いではないですか。これはお礼です。気にしないで下さい。それに私も食べてみたいです。普段は馬車に乗っており貴族の娘という事もありまして、護衛を複数連れていないと駄目なので正直に言うと、場違いの様に感じてしまい近くに近づけなかったのです」
成る程、貴族も苦労してるんだなぁ。
クリスはそう言い屋台の串焼きを買いに行った。
「すいません! 串焼き3本下さい!」
「はいよ! 嬢ちゃん別嬪さんだから一本タダでいいよ! 300ペルだね」
「本当ですか! ありがとうございます」
そしてトテトテとこちらへ戻って来た。
「えへへ、オマケしてくれました」
うん、凄く可愛い。
「私の分もありがとうございます、お嬢様」
「何言ってるのですか、みんなで食べるから美味しいんじゃないですか。さぁ、冷めない内に食べましょう!」
俺はクリスから串焼きを貰い食べる。
パクッ
おお、旨いなぁ。
この肉自体も脂が乗っているが、これはタレが絶品だな。
やみつきになる様な旨さだ。
「美味しいですね、家では味わえない美味しさです。これからご飯は屋台でもいいかもしれないわね」
「お嬢様、それはお止め下さい。この様なものは偶に食べるから美味しいのです。それにこちらの方が美味しいなどと言われたら我が公爵家の料理人が泣きます」
「ふふ、冗談よ。それにしてはミセルも美味しそうに食べてたじゃない? 口元にタレが付いているわよ」
「なっ!」
ミセルは急いで口に付いたタレを拭き取った。
「美味しいと言えば、涼太さんの料理は絶品ですね。それに見た事もない料理ばかりです」
「確かにそうですね。私もあんなに美味しい料理は食べたことがありませんでした」
「そりゃどうもありがとう。まあ、旅の道中であっただけに手軽な物しか作らなかったけどな」
うん。よく考えれば適当過ぎたかもしれない。
デザートも作らず、主食一品というのが常だった。
「え、まだ食べてない物が沢山あるのですか?」
「うん。まだ山の様にあるよ。良かったら作ろうか?」
「本当ですか! 是非お願いします」
通貨
石貨1枚
銭貨1枚=石貨10枚
鉄貨1枚=銭貨10枚
銅貨1枚=鉄貨10枚
銀貨1枚=銅貨10枚
金貨1枚=銀貨100枚
白金貨1枚=金貨10枚
ミスリル金貨1枚=白金貨10枚
(石貨1枚=一ペル、銭貨1枚=十ペル、鉄貨1枚=百ペル、銅貨1枚=千ペル、銀貨1枚=一万ペル、金貨1枚=百万ペル、白金貨1枚=一千万ペル、ミスリル金貨1枚=一億ペル)
1ペル=1円




