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203話 魔族との邂逅




「ちぃ!ミセル、追加の魔物がそっちに行ったわよ!」

「分かっていますッ……よ!」



一体どれほどの魔物を屠ったのだろうか。

魔物たちは上流から濁流が流れる勢いでラバン王国の方向へ向かう。

倒した魔物たちの屍を乗り越えてゴブリンやオーガ、スケルトン、中には上級魔物も混ざって進行している。


紫電を纏った剣を凡そ人では目で追うことすら出来ない速度でミセルは魔物を斬りふせる。



「洒落臭い!全部まとめて串刺しにしてあげるわよ!」



クリスはパンっと掌を合わせて大きく手を広げる。


魔法が発動する。


数百の氷の槍が上空50メートル付近に展開されて一気に魔物たち目掛けて落ちる。

ミセルは身体に雷を纏い超速で氷の槍を回避しながら魔物たちを次々と倒す。


「お嬢様、後ろ!」



次々に生成される氷の槍を制御することに集中していたクリスの後ろから一つ目の巨人、サイクロプスが身体に氷の槍が刺さりながらも棍棒をクリスに振り下ろす。


刹那、サイクロプスの頭が爆散した。




「よそ見してんじゃないわよ、後衛が魔物の大群の中に突っ込む真似をしないでよ」

「ありがとう、エリス」


桃髪に皮の鎧をつけた軽装備、両手には短剣ほどの大きさの魔銃を二丁携えている。

大木の枝を足場に下へ銃口を向けたエリスは魔物たちの急所を狙って撃ち続ける。



「数が多すぎるわ、一旦避難しなさい」

「了解です」

「分かりました、では最後に一撃を。【超電磁機関銃(レールガトリングガン)】」


硬度な皮膚をした魔物を含めてミセルから放たれた雷光を貫からて息の根を止める。

クリスとミセルは足に魔力を集中させて10メートル上空の枝に待機しているエリスの元へ跳ぶ。



二人は息を整えて魔力回復ポーションをアイテムボックスから取り出して一気に飲む。



「黒の迷宮の第5階層まではクリアしたから一度ラバン王国に戻ろうとしたけど、まさかこんな事になっているとはね」

「私たちも強くなっているとは思ってたけど、この数を全て捌くのは無理ですよ」



クリスたちは涼太の指示通り、死の樹海の魔物たちと戦いある程度のレベルを上げた。

その後に黒の迷宮に挑み、レベリングを行なっていたが長期に渡る戦いの箸休めとして一旦ラバン王国に戻ろうとした。

その矢先にラバン王国方面へ魔物たちの大群が向かっていることを感知して魔物たちの流れに乗りながら向かったのだ。



「見積もっても数万は軽く超えているわね」

「一度、シャルたちと合流しましょう。あちら側にはフィルフィーがいるから大丈夫だと思うけど、このまま戦えばジリ貧だわ。作戦を立てる必要がある」

「了解です」




クリスの提案に二人は頷き大樹の幹を足場に魔物たちの上を通ってフィルフィーたちの方へ向かう。

魔力を完全に回復させた三人は惜しみ出す事もなく身体強化を行い時速80キロメートルはある速度で木々を躱す。


道中、戦闘音が聞こえて上空を見上げると竜巻にのみ込まれた魔物たちの姿が見える。

魔物たちの死骸が増えるにつれて戦闘音も大きくなり中心では風を纏ったフィルフィーが無双をしており、シャルロットとロゼッタは息を切らして大樹の枝で小休憩を取っていた。



「三人とも無事なようね」

「クリスちゃん!そっちも怪我はしてない?」

「ええ、大丈夫よ」



心配性そうにしているシャルロットのいつも通りの顔を見てクリスも安堵の表情を浮かべる。


「シャル、ロゼッタ!後ろから来るわよ」



気を取られていた二人の背後から人間より二回りほど大きいゴリラに似た魔物が木のツタを伝ってシャルロットたちへ襲い掛かる。



「任せて!【大樹の抱擁】」



シャルロット付近に生えた樹木が不自然な動きを見せる。

木に生えたツルが魔物たちを縛り上げて巨木の幹に縛り付けた。

締め付けられた魔物たちは苦しみの声を上げて、身体に食い込むツタを解くことができぬまま圧死する。



「シャルったら、えげつないわねぇ」

「才能を開花させた彼女に対しては私は素晴らしいと思いますよ」

「少し嫉妬するわね」



シャルロットの使った魔法の属性は木。

彼女は以前は火の魔法を使っていたが、日々特訓をしていくにつれて自分の適正の恩寵が水と土にあると気がついた。


水は大地を豊かにさせて木々を生やす。


水魔法と土魔法は複合することによって木魔法へと昇華する。

彼女はクリスたちにも成し遂げていない大業成したのだ。


「フィルフィー、遊んでないで一旦戻ってきなさい」


ピクッとフィルフィーの長耳が反応する。

最後の一撃としてエアカッターを放ったフィルフィーはエリスの言葉通り五人が集まる場所へ移動した。



「なんだ、クリスたちの方は片付いたのか?」

「それって無限に出てくる湧き水を全てすくい上げろと言ってるようなものですよ!こんな数、処理しきれるわけないじゃないですか」

「む、むぅー。確かにそうだな」



進行速度は人が小走りをしている程度であるが、再度確認してみても量が馬鹿げている。

いくらフィルフィーと言えども周りに被害を出さずに殲滅するのは骨が折れる。



「クリスちゃん、何か策はあるの?」

「ある……と言えばあるんだねど。下手をすれば天災で樹海が半壊するかもしれないのよね。自然破壊は極力避けたいんだけど、でもそんな悠長な考えをしている場合でもないのよね」

「なぜですの?」



ロゼッタは現状維持でも自分たちは徐々に魔物を倒せてレベリングも成せていることに満足している。

クリスが眉をひそめて疑念を抱いていることに疑問を抱いている。



「魔物が向かっている先、分かる?」

「ーーーッ!なるほど、確かにマズイですわ。ですけどっ、国には学園長やお父様もおられるのですよ?強者は揃っていると思いますの。それに涼太さんの保険もあるのでは?」

「分かってるわ。でも最悪の可能性は考慮しないといけない」

「つまりお嬢様はラバン王国に戻らなくてはならない……とお考えでしょう」

「そうよ、でも少しでもここで強い魔物は倒したい」




歯を噛み締めて納得のいかない趣のクリスは帰還と滞在の二択の選択肢に迷う。



「ならば簡単な話だ」

「どう言うこと、フィルフィー?」

「私がこの場に残ろう。もともと殲滅は私の領分だ」

「それでしたら私も残ります。パーティは2人は最低必要でしょう」



フィルフィーの案に珍しくミセルが乗りかかった。

いつも自己主張をしないミセルが挙手した事にクリスも少なからず驚いて鼓動が高まる。




「……分かったわ。フィルフィー、ミセルをお願いね」

「無論だ、私とミセルがいれば如何なる敵にも討ち勝とう」




6人はうなずき合い散開する。

クリスは名残惜しそうにもミセルの顔を見るが彼女の決心のついた顔を見てその場を後にする。



ミセルは雷を纏い剣を抜く。



「優しいな」

「何がですか」

「お前も気がついた上で4人を逃したのだろう?私は当然のことだが、お前の索敵にも引っかかっていることは分かる」

「…………私はお嬢様の騎士ですからね。主人を危険に晒す真似は極力したくないんですよ」

「ならば気を引き締めろ」



地鳴りが響き、魔物たちが散り散りになりながら足を進める。

木々を薙ぎ倒し進む影、弱い魔物たちはその巨体に押し潰されていく。



「ワイバーンなどの紛い物ではなく本物の竜種を相手にするのは久方ぶりだな」


全長50メートルはある。

鋼の如く硬い鱗に覆われた黒い姿。

それは紛れもなくドラゴンであった。


魔物のランクで言えばSSSランクだが、同じランクのオーガエンペラーを遥かに凌駕する存在であることは以前に戦ったミセルも一目で分かる。


そして問題がもう一つ。



「ヒャッハー!蹂躙しろ、ブラックドラゴン!オレの駒ならば圧倒的存在価値を見せつけろ!」



恐らくは魔族だろう。

銀色の鎖がドラゴンの首に掛かっており、その先に手綱を握る男の魔族と槍を握りしめて腰を下ろしている女の魔族。

その後にも鎧を身に付けた魔族たちがズラリと並び行進している。


「確定だな、あの男は私が以前に魔王軍にいた時にも目にした事がある」

「つまりこの騒動は魔王軍によるものだと言うことですか」

「そう言うことになるな、ミセルは魔族を初めて見るだろう。怖いか?」

「笑止、ここで食い止めるのが私の役目です」

「ならばゆくぞ、不意打ち上等だ」

「はい、いきますよミセル!」



二人は魔力を練り上げる。

お互いに向き合い、片手を上空に突き出して魔法を発動させる。

目配せをしてお互い詠唱を合わせ、


「「荒れ狂え、雷と風よ、天を支配せし神々の怒りを体現せよ。複合魔法!【サンダーボルトテンペスト】」」



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