プロローグ
いつも読む側なのですが書いてみることにしました。
作者はど素人なので下手な表現などがあるかもしれませんが温かく見守ってくれると嬉しいです。
「弱肉強食」
それはこの世の真理だ。
強き者が生き残り、弱き者が虐げられる。そんな世界の成り立ちだ。
例えばいじめ、よくテレビでいじめをなくそうなんてことを言っているがそれは不可能に等しい。人は常に自分より弱い者に対して優越という快楽を得ている。快楽とは人の本能である。
嗚呼、何て残酷で理不尽なのだろうか。
♢♦♢
キーンコンカーン
「ねぇねぇ、りょう君今日久しぶりに一緒に帰らない?」
そう呼びかけて来たのは姫野 柚。俺が幼稚園のころから付き合いのあるいわば幼馴染だ。
紫のメッシュがかかったセミロングの髪と整った容姿。
「ごめん。ちょっと今日は用事があるからまた今度誘ってくれる?」
「そう、わかった。また今度ね。約束だよ!」
早々と教室から出て行く。
急いでる風をよそいで、いつも通り悟られることなく。
時刻は午後5時10分授業が終わり、一般生徒は皆部活動に励んでいるころだ。
グラウンドからは一致団結した元気な掛け声が教室内にまで入る。
「さて、帰るか」
月宮涼太は物音たてることなく帰る準備をする。
何故こんな中途半端な時間に帰るのかというとそれは。
「よう、月宮ちょいツラ貸せや」
教室の入り口から声が聞こえ、反射的に口元をひくつかせる。
胸の内に溜まるどす黒い感情を抑え込み、唇を強くかみしめて気持ちを落ち着かせる。
下駄箱前に現れたのはこの学校の不良の高橋蓮寺とその取り巻き2名。
中学生のころから同じ学校とクラス。腐れ縁と称せば響は良いが、言い返すことがない性格をしている涼太を苛めの格好の獲物としている男だ。
こいつらに出会いたくなかった。
次はいったい何をさせられるのだろうか。
毎度ことながら校舎裏に連れてこられた。
「てめーは俺らのサンドバッグなんだから何勝手にどっか行こうとしてんだ?オラッ」
「うぐっ」
高橋の蹴りは見事に俺の鳩尾に命中し俺は倒れこみ、それを追撃するかのように3人掛かりで俺に襲いかかる。
「まったくよぉ、お前ごときが柚と喋るなんて烏滸がましいんだよ。なんど俺は振られたかわかってんのか、あぁん?」
「し、知るか」
「そろそろ俺様も限界でよぉ。どうだ、お前の目の前で犯そうかと思うんだけど、ギャハハハ!」
「流石っす! 高橋さん、男前!」
どこまでも性根が腐っている。
親が財閥であり、甘やかされて育てられてきた彼に自尊心は存在しない。
気に食わないものは何であれ当たり散らす。
「ごほっ、柚には手を出すな!」
涼太にとって柚は親を除けば、ただ一人の親友でかけがえのない存在。
彼女の幸せを望む者として、その発言は容認できるものではなかった。
腕を振りほどいて力いっぱい高橋の顔面を殴る。
「ぶはぁ!」
まさか反撃をしてくるとは思わなかったのだろう。
高橋は大きく後ずさり身体をふらつかせる。
「……ってぇな、この野郎! 完全にブチ切れたぜ。調子に乗りやがって、死ねやゴラァ!」
「……ッ」
バキッ、
明らかに人から発してはいけない音が胸の辺りから聞こえた。
ふと顔を上げると高橋の手には金属バットがある。
「オラオラ、どうしたよ。反撃してこいや!」
いくども振り下ろされは金属バットは赤く血を染め上げる。
両手、両足、腹部、あまりの痛みに声を上げることすら出来ない。
ヒュー、ヒュー
気がつけば上手く息を吸うことがままならない。仰向けになっているせいか口の中からどんどん液体が外に溢れ出ようとしているのがわかる。
体の感覚は完全に麻痺しており痛みが感じられない代わりに全身が燃えるように熱い。
「ちょっ、やばいですよ高橋さん。これやり過ぎでしょ」
「どうすんっすか。ヤバイっすよ。死んだらマジ笑えないっすよ」
あまりの惨事に取り巻き二人はようやく血相を変えて、返り血を浴び狂乱している高橋を止めにかかる。
「あんた達何してんのよ。え、りょう君?ちょっ、あんたらりょう君に何してんのよ!」
そこに現れたのは柚。
どうやらまだ帰っていなかったようだ。
「お、俺は悪くねぇぞ。そうだ! 貧弱なこいつが悪いんだ。弱いやつが悪いんだよ! だから俺は悪くねぇ! おい、お前ら逃げんぞ!」
「「おっす」」
3人はそこから慌てふめきながら消えていった。
取り残された二人。
静けさだけが残る校舎裏。
遠くからは救急車のサイレンが鳴り響く。
「ねぇ、涼君、やだよ。死なないよね。死んじゃやだよ。もっと一緒に遊びたいよ! 昔、私のことお嫁さんにしてくれるって言ったじゃん! ごめん、私がもっと一緒に居たらこんなことにはならなかったのに。お願い、私を1人にしないでりょう君!」
ゴボッ、ゴホッ、ゴホッ
喉に血が溜まっているせいか上手く話すことが出来ない。
涼太は最後の力を振り絞り、地を這いつくばり膝から崩れ落ちた柚に身を寄せる。
「おれ……も……いやだ」
「ヤダヤダヤダッ! うわぁぁぁぁん!」
子供のように泣きじゃくる彼女。
手先はもう冷たく意識も朦朧とし鼓動が遅くなっているのが分かる。
「ゆ……ず……ごめ…………ん……すきだよ」
いつも伝えられずにいた言葉。
最後の最後に伝えられた。
全身の力が抜け落ち地面にずり落ちる。
涙を流しながら必死に何かを訴えかけてくる彼女の言葉はもう何も聞こえない。
後悔しかない最後、涼太の意識は目覚めることはなかった。