17話 出会い
1〜3話を結合しました。修正も少しずつしていきす。ご迷惑をお掛けします。
しかし、やっぱり緑はいいな。
俺の元いたところは都市の真っ只中に位置していたので、今まで数える程しか緑を経験したことがない。
小さい頃の遠足でも山に登ったことがあったが自販機や街頭などがあったので一面緑という訳ではなかった。
俺は景色を楽しみながら何かないかと散策してみた。
「キャーー!」
人が近くにいる?
此処に来て初めての住人だ。
悲鳴が聞こえてきたという事は何かに襲われているのか!?
何が何でも助けるしかない!
俺は猛スピードで声の聞こえてきた方に走っていく。
目の前には俺よりも少し小さいくらいの女の子と騎士と盗賊。盗賊が襲っているのか。
ん……?
いや、よく見れば盗賊と騎士数名が女の子を襲っている。
他の騎士は地に倒れているという事はこいつらにやられたという事か。
敵の数は60……多いな。
これ想像以上にブラックな場面に出くわしたんじゃないのか?
まあ、一応声はかけてみるもんだよな。
「おい、お前ら何してんだ?」
「あん? てめぇは誰だ? いや、そんな事は関係ないか。ここを見られたからには生かして帰してはおけねぇな。死ねや!」
1人の男が持っていた剣を俺に目掛けて振りかざしてきた。
うわぁ、遅いなぁ。まるでスローモーションの様だ。何?わざとやってんの?
俺はゆっくりと動く剣を親指と人差し指で掴む様にして止める。
「なっ!」
「おいおい、いきなりは酷いだろ。殺しにかかったんだ、自分も死ぬ覚悟は出来てんだろうな?」
俺は男の首を持っている剣で切り落とす。
うわぁ、やっちゃったよ。初の人殺しだよ。でも何かそこまで気持ち悪いとか感じないな。
あの迷宮で戦い慣れしたせいかな?
「ちっ、全員でかかれ!」
リーダーらしき男が周りの騎士と盗賊に指示を下す。
はぁ、やる気満々なのね。
「【分子固定】」
するとリーダー以外の男達は凍った様に動かなくなった。
「な、氷魔法だと! という事はてめぇは魔術師か!」
ちょっと違うんだよなぁ。
この世にある物質は固体にしろ必ず分子間に熱運動が起こっている。
それを止めるという事はつまり熱を奪い凍結させるという事である。
するとあら不思議、リアルな氷像の完成ではないですか。
「くそ、計画は順調だったのに何でこんな事になってんだよ!」
「じゃあな」
おれは止めを刺すために剣を振りかざす。
「お待ちください!」
突然女の子が俺の前に割って入った。
「何故止めるんだ?」
「助けてくれたことには感謝いたします。ですがこの男には聞きたい事がございますのでどうか剣を収めてはいただけないでしょうか?」
うーん。
確かに一理あるな。何か計画がどうだとか言っていたから確かに気になる。
「分かったよ」
俺はそう言い、亜空間の部屋を創りリーダーの男を放り投げ空間を閉じる。
「あの……今のは?」
どうやら突然の事で動揺している様だ。
「うん? まあ、死んじゃいないぞ」
だって運ぶの面倒くさいじゃん。あの空間は1つの部屋になっており出口はなく俺にしか開けられない。
これ捕虜とかに凄い便利だな。
「え、あの。先程は助けて頂きありがとうございます。私はセリア王国ハイゼット公爵令嬢のクリス・フィル・ハイゼットと申します。クリスとお呼び下さい」
公爵かぁ〜。貴族の中だとトップじゃん。面倒ごとの臭いがプンプンするなぁ。
「俺は月宮涼太だ、涼太と呼んでくれ。それで何故クリスはさっき襲われていたんだ?」
「はい、私も分からないのです。長期休暇の為に帰っている最中にいきなり盗賊が襲いかかって来たと思えば騎士達が次々に死んでしまって……うぅ、ミセル」
「ミセルってのは誰だ?」
「はい、私の幼少の頃から一緒に育った私の騎士です。私を守る為に殺されてしまいました」
そう言い、1人の女騎士を抱きしめ泣きじゃくった。
うわぁ、そりゃ昔からの幼馴染を殺されたら辛いわなぁ。
【リザレクション】を使うか? いや、これは後遺症が残る可能性がある。脳障害とかあっては意味がないな。
となると……。
「なぁ、そいつを生き返らせたいなら出来ると思うぞ?」
「本当ですか!しかし死者蘇生など文献にしか残ってないはずですが……」
ああ、そう言うレベルなのね、この世界。良かった。となると化け物共の巣窟という訳ではなさそうだ。
「まぁ見てろ。【時間回帰】」
俺はそのミセルという女騎士の周りだけに範囲を設定し魔法を使う。
「う、私は……」
良かった。出来ると思ってたけどやっぱり初めてってドキドキするなぁ。
「わァァァァッ! ミセル。よがっだぁぁぁぁぁ」
「わっ! ちょっお嬢様、どうされたのですか」
うんうん、感動の再会か。良かった良かった。お兄さんも涙が出そうだよ。
「で、ここはどこか分かるか? 山奥に暮らしていて旅をしようと出てきたんだが迷ってしまったんだ」
はい、嘘です。
設定は大事だもん。いきなり「異世界から来ました」とか「私は神の使いです」とか言ったら下手をしたら取り調べの為に捕まりますよ。
「おそらく、ここは『死の樹海』ではないでしょうか?」
ミセルが答える。
「なんか不穏な響きの森だなぁ」
「はい、文字道理一度入れば広大な森に迷わされ更にAランクやSランクの魔物の巣窟とされていめ特定危険区域に設定されています。気がつけばこんな所にいるとは失態です」
へぇ、やっぱり普通じゃないのかぁ。
「ちなみにどうすれば君たちのいる国に帰れるんだ? いや設定すればいいだけか」
「設定?」
俺は自動地図にナビを組み込みセリア王国と入力する。
すると此処から東を示している。
便利だなぁ。
「よし、行こうか!」
グギュルルル
突然クリスのお腹がなった。
「うぅ」
「あはは、まぁ先ずは飯にするか。腹が減っていては力も出ないしな」
「ちょっ、笑わないで下さいよ! でも、どうするんですか? こちらの食料も水はどうやら騎士たちが既に食べ尽くしている様ですが」
あの騎士達《アホ共》考えも無しにそんな事してたのか。
俺は部屋を作成。その後横にある大樹にドアを付けて固定する。お馴染みの3LDKである。
「まぁ、中に入ってくれ」
俺は中に入るが一向に2人は入ってこない。
「「…………」」
絶句かぁ。俺は馴染みすぎた所為でごくごく普通の事だが2人にとってはあり得ない事なのだろうなぁ。
「……これは夢ですか?」
「いや、現実だから。そこの椅子に座っておいてくれ」
俺は指示を出してパパッと飯を作る。メニューはサンドイッチ。オーソドックスに卵、野菜、カツで作っていく。
「わあ! 美味しそうです。早く食べましょう!」
「お嬢様、私が毒見を」
え? 毒見するの? 主の心配の為か。でも何かショックだなぁ。
「おやめなさい! 失礼ですよ。私達を救ってくれた方がわざわざ毒など入れる筈ないでしょうに、ミセルも一緒に食べましょう。立ってないで座りなさい」
「承知しました。涼太様、疑ってしまい申し訳ありません」
「気にしないでいいよ。主の為を思っての行動という事は分かる。それよりも食べるぞ俺も腹が減った」
いい子だな。状況判断も出来てしっかりしている。
♢♦♢
「んー! 何ですかこれ! フワフワのパンですよ。それに挟んである卵もどうすればこんな味付けになるのでしょう」
「確かに美味しいですね。このカツというもののソースも絶品です」
凄い絶賛している。そこまで力は入れてないのに、どちらかと言うと手を抜いた方だ。
アテナが初めて食べた時の事を思い出すなぁ。
「公爵家の料理人でもここまで美味しいものは作る事は出来ませんよ! 涼太さんは料理人なのですか?」
「いや、半分趣味でもう半分は世話をして料理を作ってただけだから料理人という訳ではないよ」
「ふぇー、凄いですね。お世話とは貴族の方ですか? 隠居された方はよく田舎に引っ越す様ですかが」
うーん。どうしよう。神様です何て言えないからなぁ。
「まぁ、似た様なものかな?」
納得した様でその後2人はパクパクと一心不乱に食べてあっという間に作ってたサンドイッチは無くなった。
「ふう、美味しかったです。まさかこんなに美味しい物が出るとは思いませんでした」
「お粗末様。今日はもう直ぐ日が暮れそうだから移動は明日でいいか?」
夜の森とか怖いし何かヤバイのが出そうお化け屋敷とか凄い苦手なんだよなぁ。そんな雰囲気が外から漂ってる。
「はい、分かりました。お任せします」
「私も同意です。夜の森は夜行性の魔物のテリトリーなのでこちらが不利になるだけですからね」
「分かった。じゃあ明日の朝に再出発だ」