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180話  告知


遠蛇の手伝いもあり早く仕上がった料理を並べると次々に胃の中へ消化していく椿に俺は唖然しながら軽く大人5人分の料理を仕上げた。


「ふぃー、満足なのじゃー! 涼太の料理は最高なのじゃぁ……」

「そんなに食い過ぎると太るぞ」

「んなぁ!? 失礼なのじゃ! 妾は成長期なのじゃからこれくらい普通なのじゃ!」


確かに育ち盛りな時期なのだろうが、女の子が食べるにしては少し多すぎないか?

クリスたちですら…………そう言えば、あいつらも食べたら動くとか言ってご飯4杯おかわりを普通にしていたな。


「へいへい、失礼しました、お姫様」

「むかぁー! お主、妾をバカにしとるなぁ! 罰としてデザートを所望するのじゃぁッ!」


小さな手で俺の服を力いっぱい引っ張り首を左右に振る。

そこには愛らしさ、萌えのようなものを感じさせる。


しかし椿よ、あれだけ食って更にデザートも食べるのか。



「ほら、たべ……ウッ」


いつも通り保管していたジュエルシリーズをアイテムボックスの中から出そうとした際に部屋一帯に異臭が広がる。

獣臭、血、何日も風呂に入らなかった臭い、腐敗臭が混ざったかのような強烈な異臭だ。

遠蛇は顔をヒクつかせ鼻をつまみ、目の前のデザートがあるにも関わらず椿は蒼い顔をして自室へと猛ダッシュで駆け込んで行く。


「なんだ、この臭い!?」

「涼太様、すいません。これはその……」


疑問に思った果てに答えは見つからなかった。

しかし、その答えは忽然と姿を現わす。



「くっはー、疲れたわい!食料も尽きて腹ペコじゃし、風呂の前に飯でも食うか」


腰には刀を携え鞘からは紅い血を滴らせる。

上半身は服が破れ筋骨隆々の姿をした化け物がそこにいた。


「ん? おお、涼太ではないか! 久し……ゴハッ!」


 俺はその化け物がこちらを視界にとらえた瞬間にドアごと外へと吹き飛ばす。

 

「うせろ、平和な食事を脅かす異臭魔が」

「ゴホッ、なんじゃい、この強烈な破壊力は。以前のお前が可愛く見えるほどの強烈な一撃ではないか」

「てめぇなんて知らねえな。ただ一つ分かることはお前がアンデット系の腐敗臭を放つ敵だという事だ」

「まてまて、ワシじゃ! 豪鬼じゃよ! 確かに風呂もしばらく入っておらんし、アンデットの群れで無双をしとったり、血みどろになりながら魔物を狩っておったのは事実じゃが!」

「ん……あぁ、豪鬼か。久しぶりだな。あまりの変わり様に誰か分からなかったぞ」


 豪鬼は鞘を杖代わりにして立ち上がり首を横に回して柔軟をする。

 

「とりあえず、本当に臭いから【クリーン】」


 豪鬼を重点的に部屋の空気事態を除荷する。

 異臭は無くなり豪鬼の体にへばりついた汚れも空気中に霧散していき風呂上りのような綺麗な髪と肌艶を取り戻した。

 ついでに爽やかな柑橘系の香りで部屋全体を包み込むようにする。


「おぉ、これは楽じゃな。一瞬にして汚れが落ちたわい」

「アンデットを倒してきたってことは60階層まで到達したってことか?」


 豪鬼たちのために用意した暇つぶしダンジョンは全100階層になっており適正レベルで言うと、


 ・10階層……レベル100

 ・20階層……レベル200

 ・30階層……レベル400

 ・40階層……レベル750

 ・50階層……レベル1000

 ・60階層……レベル1500

 ・70階層……レベル2000

 ・80階層……レベル3000

 ・90階層……レベル4000

 ・100階層……レベル5000


 と一般人ならば10階層が適正な強者御用達ダンジョンとしている。

 大陸にあるダンジョンに引けを取らないほどの性能と難易度を誇る。

 例えば各階層ごとに転移装置を設置しており、登録者の情報を読み取ることで到達した階層を自由に移動できる。

 毒沼や毒霧などのトラップを設置しているが、それを治療するための回復の泉的な物も完備している。


 先ほど言ったアンデットの群れが設置している場所は67階層だ。

 そこにはグールやリッチ、ドラゴンゾンビなどの強大な魔物、最終ボスとしてはノーライフ・キングを設置している。

 今確認したが豪鬼ステータスは2000弱、別にこの階層に苦戦するとは思えないが思っていたほど進んでいない。


「お前なら70階層に行ってもいいと思うんだが」

「ガハハッ、安心せい! すでに76階層まで進んでおるわい。今日は帰る日だから軽めにしておったのじゃよ」


 二カッと目元に顔のしわを寄せ、胸ポケットからプラカードを俺に見せる。

 そこには確かに76と数字が刻まれていた。

 76階層とは想像以上に進んでいるな。


「なかなか凄いな。あぁ、なるほど。スキルによる能力値の上昇をすれば確かに問題ないか」

「妾も凄いんじゃよ!」


 服のそで下をぴっぱり視線を自分に向けた椿がポケットの中からプラカードを見せる。

 そこには29階層と刻まれた文字があった。


 おいおい、年端もいかない子供のくせしてレベル200弱の階層に挑んでるとは異常もいいところだろ。

 豪鬼のやつ無理をさせていたら天罰を下す。


「順調そうで何よりだ。話は変わるが三人にはとある要件の相談をしたい」

「なんじゃ、魔界に行くのであればワシらとしては是非もないぞ」

「その件に関しては長引かせて申し訳ない。それについてだが、そのとあることの始末を付けなければ俺自身も動くことができなさそうなんだ」

「とある事とはなんじゃ。勿体ぶらずに申してみろ」

「以前に豪鬼たちはセリア王国並びにラバン王国の陛下たちに会っただろう。その二人からの情報なんだがしばらくしないうちに戦争が起こるらしい」

「戦争……とは、また物騒な案件がでおったな」


 豪鬼は腕を組み眉間にしわを寄せる。

 古今東西、戦争とは統率する人物が現れれば必然的に起こりうる可能性だ。

 特に人間は強欲であり平和を望みながらも支配と争いに飢えている節もある。


 俺としても極力は関わりたくない案件だが、今回に関してはセリア王国とラバン王国が宣戦布告された側だ。

 両国とも俺にとっては大切な仲間や友人がいる。

 メリットなんかはどこにもない。

 しかし、救える事態を放置するほどの愚者になるつもりもない。


「それでワシらに何をして欲しいのじゃ」

「以前の話し合いでの情報だが相手国はどうやら魔族とも協力関係にあるらしい。俺の偏見になるが魔族は人よりも戦闘に特化しているだろう」

「うむ、確かに魔族は内に人の数倍の魔力をため込んでおる。それに魔界は人間界(こちら)に比べれば平和にほど遠いほど荒れておるからのぉ。ワシらは日常茶飯事じゃったが、人の生き死にが常にあるなどお主たちからして見れば考えられんじゃろう」

「あぁ、俺も魔物との殺し合いで精神と肉体を鍛えられたが、以前に起きた大侵攻で軍の実戦に関する練度の低さが目についた」

「なるほど、ワシらには魔族の相手をさせようというわけか」

「同族と闘わせるようになるが申し訳ない」


 人族の戦いに勝手に巻き込む形になる豪鬼たちには大きな負担になる。


 俺はその場で深く三人に頭を下げる。

 豪鬼は一歩前へ出て俺の肩を力強く掴む。


「一つ聞くがその魔族は魔王軍と名乗ったか?」

「あぁ、確かに魔王軍だが……」

「……お主が心配しているのは捕虜となり戦うことを余儀なくされた魔族であろう」


 仮説にすぎないが、

 戦争になれば軍を動かすことになる。

 その場合には徴兵、つまりは戦争への意思が無い者たちの参加も考えられる。

 そうなった場合に魔王軍とそうでない者との判別を戦いの中でつけるのは難しいだろう。

 それを踏まえた上で戦う可能性を俺は迫っているのだから。


「安心せい、ワシは鬼神とも呼ばれた異名をもつ人物じゃぞ。戦の中で戦意のある者とない者との判別くらい問題ない」

「心配なさらないで下さい。私たちはすでに魔王軍と一戦交えていますので」

「妾は敵をぶっ殺すだけなのじゃー!」

「……ありがとう」


 椿の発言には若干の問題を感じるが本当に助かった。


「じゃから顔を上げい」

「あぁ、これからもよろしく頼むぞ」

「ふん、そんなこそばゆい話なんぞ似合わん。シャキッとせい!」

「イッテッ! 殴るなよこの筋肉ダルマが」

「クハハッ、その調子じゃい」

「おかげで元気が出たよ。それじゃあ、俺は少し自宅に戻るわ」

「おう、ワシももう一狩り行くとしよう」



「…………妾を除け者にするでないのじゃーーー!!」


 椿の叫び声が響いた。











 と、帰ってきたのはいいが玄関付近で何か早速揉め事だ。

 メイドたちと王国の騎士らしき人物が言い争っている。

 先頭にいるのはランのようだ。


「おい、人様の家で何をしているんだ」

「ご主人様! お戻りになったのですね! 実は騎士の方々が手紙を持ってきたのですがご主人様に直接渡すから出せと……」

「貴様が涼太か。私は第13師団副だん……「はいはい、そういうのいいから貸せ」」


 俺は狡猾そうな騎士から封筒に入った手紙を貰い封を手でちぎる。


「貴様! 陛下からいただいた手紙をそんな乱暴に扱い追って!」


 俺は無視してその内容に目を通す。




「……っち」




 思わずその内容に舌打ちをしてしまう。

 起きるであろう事がついに起きた。

 書面で俺以外に見せていないということは本当に今届いた事態だということだろう。

 家が王城と直結しているんも関わらず騎士を寄越してきたということは、恐らく王城ではすでに緊急の会議でも行われているのだろう。


「ご主人様、手紙にはなんと」

「悪いが用事ができた。俺はすぐに王城へ向かう」


 右手に持つ手紙を握りしめ俺はその場から転移した。




 手紙にはこう書かれていた。



 ーーーグロテウス帝国が進軍を開始。

    至急王城に来られたし。


    追伸

    すまない、お主の力が必要だ。

    




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