179話 鬼さん久しぶり
お久しぶりです。
中途半端に書いて投稿していました。
申し訳ありません。
179話はこれで完成です。
俺は地上へと転移した。
場所は黄の迷宮の第一層。
理由は誰にも見られない場所かつ強力な魔物が住んでいる場所を条件としたからだ。
なら死の樹海とか黒の迷宮とかでも良いじゃんと思うが、もしかするとクリスたちのに出会うかもしれない。
それでは修行所ではなくなるので困る。
さて、と。
あたり一帯を見渡す。
姿が見てたのは一角を持った馬だ。
『一角魔馬LV.260』
体長は5メートルほどで何より象徴すべき角はゆうに3メートルを超えているように見える。
随分と濁りのある名前だが、本来の元でもあるユニコーンは純白の毛並みを待ちとても穏やかな性格を持つとされている。
生娘のみが近づくことを許され、他の者が近づけば視野に入る前に姿を絡ませる幻獣とされている。
対してユニゴーンは灰色の毛並みをしており、気性も荒く目の前に現れた俺を威嚇しているところか、ユニコーンとは姿は類似していても中身は全く違うと見受けられる。
「そんな威嚇しなくても良いだろうに……」
少し呆れまするが、それが生物として正しい反応か。
ユニゴーンは長い角を俺へ焦点を合わせて突進してくる。
普通の人間からすると超速なのだが、神やらを相手にしている俺からするとゆっくりと甘えに来ている小動物に見える。
流石に障壁も何も展開していない状態で突進してくる鋭利な角に当たればちょっと痛い気もするので紙一重で躱しユニゴーンの角の根元を持つ。
「あ……」
ヒビ割れる音が角から手の掌に伝わりユニゴーンの角が折れた。
あれーー?そんなに力を入れたつもりはなかったんだけど、それとも角自体が脆かったのかな。
神界の魔物の要領で力を出してしまったら戦いにすらならないのか。
レベル260って地上ではかなり強かった気がするんだが……。
「まあ、いいっか!」
俺は手刀を作りユニゴーンの首をスパッと斬る。
そして素早く土魔法で吊棒を造って縄で縛り上げた馬刺し用の食料の血抜きをする。
鮮度が落ちたら美味しくないからね。
特に馬刺しにするための生肉を取ろうとするんだ。
いい加減この作業も慣れてきたものだ。
「はぁー、3週間ぶりの地上か。色々と溜まってそうだな……」
何かと言われれば、陛下やグリムさんたちの愚痴とか商業ギルドの売上の月次報告書の作成とか冒険者ギルドの依頼とか。
雇うか?そういう事務関係ができる人材を雇う手もある。
陛下たちを脅せば有能な人材を派遣してくれるはずだしそうしようかな。
まぁ、それは後にしよう。
今回、地上に戻ってきた理由でもあるアイツらがどの程度の実力を身につけているかの確認をしよう。
俺は壁にドアを設置してとある亜空間を繋ぐ。
さて、蛇が出るか鬼が出るか……なんつってね。
「のじゃーー!」
扉は勢い良く開かれ中から可愛いフリルのついた浴衣を身につけた幼女が俺の胸に飛び込んできた。
俺が以前に保護した鬼族のお姫様でもある椿だ。
髪は2つのゴムで結ばれてツインテールにしている。
「久しぶりだな、元気にしていたか?」
「当然なのじゃ!妾は鬼族の姫であるぞ!あんな魔物たちごときに屈しないのじゃ!だから頭を撫でて欲しいのじゃ〜」
「はいはい、よく頑張ったな」
希望通り軽く頭を撫でると、俺の服に引っ付いて顔は見えないが「ムフフ〜」とご満悦な声が漏れていることがわかる。
俺は椿たちの住んでいる亜空間に魔物が生まれるダンジョンを創った。
あいつら自身部屋の中でひたすら暇を持て余すのは苦痛になるだろうから、暇つぶしがてらレベルアップも出来るように設置したんだが思っていた以上に頑張って攻略していたと見受けられる。
まぁ、あの豪鬼がいるんだから戦闘が荒々しくなるのは否めないとは思う。
「そう言えば、豪鬼と遠蛇はどうしたんだ」
「遠蛇はお風呂に入ってるのじゃ。豪鬼は脳筋だから3日間ダンジョンで修行してくると言っていたのじゃ」
あの脳筋鬼ジイさんは本当に戦いが好きなのだと改めて自覚できたよ。
あいつ椿の護衛じゃなかったのか?
確かにダンジョンは豪鬼でも勝てない魔物を配置していたから、その攻略に没頭しているのだろうが一人でハッスルし過ぎだろ。
「取り敢えず中に入らせてもらうよ」
「うむ!ゆっくりしていくのじゃ。お茶を出すから少し待っておれ」
「へぇー、お姫様なのにお茶を出してくれるのか」
「遠蛇に習ったのじゃ!」
そう言い椿は台所のヤカンでお湯を沸かして煎茶を入れる。
お茶に関しては蒸らし方とかよく分からないし俺はいつもミセルに任せている。
女の子にとっては大事なことなのかな。
熱すぎず、温くもない飲みやすい温度の熱が唇から喉へと伝わる。
「どうじゃ?」
「うん、美味しいよ」
「やったのじゃー!」
椿は無邪気な子供のようにはしゃぐ。
実際年端もいかない子供だから可愛いけど、エリスあたりの年齢がやるとイタイな。
「あら、涼太様。お久しぶりに御座います」
スライド式のドアが開く音が聞こえた。
ふと視線を向けると若干の着崩れもしていない和服を身につけた遠蛇が腰付近まで伸びた髪をタオルドライしながら入ってきた。
風呂上がりの女性の妖艶さと甘い匂いが鼻腔を擽り隠れた男性の本能を刺激する。
耐性の付いていない男子が目にすれば思わず動揺を隠せないほどの美しさに思わず俺の心も動かされる。
ふぅ、最近むさ苦しいヘファイストスとの戦闘や魔物狩りをしていたせいか耐性が弱まってきたか?
「……ッ、こんなはしたない姿で申し訳ありません。身なりを整えて出直します」
「いやいや、思わず遠蛇の美しさに心を奪われていただけだよ」
「あら……あらあら、しばらく見ないうちに女性の扱いが上達されたようで。涼太様がよろしければ私は構いません」
唇を舌でなぞり、少し悪戯じみた声音で俺の瞳に焦点を合わせる。
あれ、気のせいか……本当に気のせいなのだろうが遠蛇がとてつもなくエロく感じるんだが。
遠蛇ってこんなキャラだったっけ?
「あー、いやそれは……うん、悪くな……イタタタッ!」
彼女に夢中になっていると俺の髪を思いっきり引っ張られる感覚が襲う。
「妾を無視するでないのじゃー!!なんじゃい、遠蛇が発情しとるからと言って誘惑されおって!妾だった女子じゃぞ!」
「ちょっ、姫さま!何をおっしゃっているのですか!」
「べ、別に動揺なんかしてねぇし!」
何言ってくれてんのよ、別に動揺なんかしてねぇし!してねぇから!
これはアレだ、男女の本能的なアレだから健全なんだから仕方ないんだよ。
「それにしても涼太様、私たちもある程度は成長していたと自負していたつもりですが涼太様はそれ以上の存在になられていたのですね」
「んぁ?遠蛇ってそんな事が分かるのか?」
優越感や傲慢さに浸っている訳ではないが、確かに俺自身のスキルやステータスなどの総合値は地上の生物や生命体から見れば文字通り逸脱してしまっている。
世界の理でもあるステータスのレベル表記を捨てる存在になってしまったのだから。
オーディンの爺さんからも「お主、そろそろ人間諦めたらどうじゃ?いや、マジで神様と同格な輩が地上にいるとかワシの心臓ドキドキじゃ」なんて言われた。
知るか、ボケ。
「確かに涼太様の存在は以前から化け物じみていましたが……なんと言いますか、豪鬼の言葉を借りるのでしたら底の見えない深海から果てしなく広がる空に変わったと言うべきでしょうか」
「ふーん、よく分からん!」
「涼太様、あなた思考を放棄しましたね」
知りません、俺は平和に暮らしたい一般人なんですよ。
あぁ、来世があるなら農業をしたい。
無農薬で美味しい野菜を街に売って平和な生活を謳歌したい。
「涼太、久しぶりなのだから妾はお主の料理を所望する!絶品の品を出すのじゃ!」
「あー、はいはい。話は置いといて豪鬼も帰ってくるか分からないけど飯の準備をするとしようか」
久しぶりの地上。
仲間と会って最初の行動が料理とは俺らしい。
そんな日常に思わず頬が緩む。
すいません、リアルの忙しさや倦怠期に入ってしまい筆が持てませんでした。
皆様のコメントを見て元気が出てきたので更新していきたいと思います。
出来るだけは頑張るので末永く見守って下さるとと幸いです。
一先ずは週一の更新を目指していきます。




