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178話 《んじゃ、行ってくるわ》



「はぁ!」

「おらぁ!」


 拳と拳同士がぶつかり合い生まれた衝撃によって草が一面に広がる大地の肌が剥き出しになる。

 俺は腰を低くし空いている手で掌底打ちの構えを取り、回転を加えて顎へと放つ。

 当然それは相手に読まれており、紙一重で後方へと交わした勢いで脚を俺の顎へと打ち込む。

 当たれば間違いなく砕けるほどの勢いと闘気がその脚撃に乗せられており、俺は一点集中型の結界魔法を顎に展開して攻撃を弱らせる。

 無論、全ての勢いが殺せるはずもなく短いうめき声とともに空中へと身をやる。


「く・ら・えッ!」


 俺は上へ向けて手を上げる。

 イメージの構築、物質は鋼、重さは数千トン!

 単純な造りだがその分圧倒的なまでの物質を構築。

 現れたのは巨大な剣、それもサッカーコートの縦幅ほどある物だ。


「はッ!舐めてんじゃねぇよ!【修羅・紅の型】」


 そう言うと、ヘファイストスの身体から赤いオーラが溢れ出る。

 そのオーラは周りの気温を急激に上昇させ、足元の大地をマグマへと変える。

 触れた鋼の巨剣はヘファイストスへ近づくとともに誘拐して辺りのマグマと一体化する。

 金属が溶ける、それも一瞬で溶けるほどの温度を見に纏ったヘファイストスは獰猛な笑みを浮かべて俺へ接近する。


「マジで殺す気かよ。【修羅・蒼の型】」


 対して俺は水に特化した身体強化を使う。

 これは【修羅】のスキルに属性を付与した俺が編み出した上位版のスキルであり文字通り辺りに影響を及ぼすほど影響が出るほどの技。

 ヘファイストスの場合は炎に特化し過ぎているために普通以上の影響が出ている。


 俺の拳とヘファイストスの拳がぶつかり合い辺りで水蒸気爆発が起こったであろう炸裂音が響き渡る。


「ハッハッハッ!まだ足りねぇ、もっと俺を楽しませろ!」


 高笑いする戦闘狂ことヘファイストスはより一層の熱気を放ち俺へと接近する。

 随分と楽しそうだが、俺としては全く面白くない。


 離れた場所ではアテナたちが心配そうにこちらを見ていた。

 オーディンやトールたちは……飲んでいた飲み物が沸騰して口から水しぶきを上げていた。

 あいつら俺がこんな状態なのに自由すぎるだろ。




「なら死ぬんじゃねぇぞ!」


 俺は上空1キロほどの距離へと転移する。



「【無の破壊光線エル・リアン・バースト】」


 以前にスケルトンたちに使った滅びの風を更に進化させた滅びの光線を放つ。

 いかなる敵をも残粒子すら残さずに消しとばす。

 これならどうだ?


 傷は付けられなくともこれで怯んでは欲しい。


「ハハハッ!【地獄炎光線ヘルフレイムバースト】」


 黒煙を纏った光線が地上から天へ目掛けて突き上げる。

 その規模は俺の放った滅びの光線を優に超える。

 まるで水鉄砲と消防車のホースから噴出される水の塊ほどに。


 属性では俺に軍配が上がるはずだが質が量を上回った。


「くそっ!」


 俺は押されつつある光線を消して地上へと転移する。



「そこまで!ヘファイストスの勝利とするのじゃ」



 オーディンは俺とヘファイストスの間に割って入り勝利宣言をする。

 悔しいが俺がヘファイストスに勝てるかと言うと不可能に近い力量差があるのは自覚がある。

 そう考えるとこの結果は仕方がないのだろう。

 別に悔しいとかは思ってない。

 本当だからな!


「このバカモンどもが!いくら模擬戦とは言え本気を出し過ぎじゃわ!」

「あん?あのくらいどうって事ねぇだろ。涼太の場合、死んでも死なねぇやつだし……イデッ」


 ヘファイストスは鬱陶しそうにオーディンへ突っかかるが、オーディンは手に持つ杖でヘファイストスの頭を叩く。


「そう言う問題ではないわ。アテナたちに怒られても知らんぞぃ」

「男と男の闘いに片付けようなんざ……イデッ、いてぇから何度も叩くんじゃねぇよ。分かった、俺が悪かったよ!」


 流石に懲りたのか大人しくなった。



「りょう君、大丈夫ですか?あのむさ苦しい男と戦って怪我でもしたら私が報復してやりますからね」


 アテナは俺の元へ駆け寄り、額についた汗を拭う。

 拭い終わったハンカチを大事そうに懐にしまったのは敢えて無視しとく。


「それでりょう君は本当に逝ってしまうのですか?」

「漢字が違うぞ。誰が死にに行くんだよ」

「だって、またりょう君は地上に行っちゃうんでしょ?寂しいですよ」

「その分、ここに結構居ただろう」


 実際、俺は久し振りに2週間ほど神界ライフを満喫していた。

 レベルもスキルも思っていた以上に上昇し、世話もガブリエルたちがしてくれるので平和そのものであったことは確かだ。

 しかし、クリスたちの約束もあるし何より俺のするべき戦略の確認もしなくてはならない。

 いつまでも神界に居座るわけにはいかない。


「うぅー、手紙は書いてくださいね」

「どうやって届けるんだよ」

「それはりょう君が届かに来るんですよ」

「それ意味なくね?」


 手紙を渡すために本人が来るとかバカがすることだろ。



「取り敢えず、神界での騒動はなさそうだし、俺の手が必要ならいつでも駆けつけるつもりだ」

「フォッフォッフォッ、そんな心配せんでもよい。お主はやるべき事を成してこい」

「あぁ、そのつもりだ」


 なんだかんだで爺さんは頼りになるしな。


「そんじゃ、行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

「おう」



 俺は神界での十分な力をつけて再び地上へと戻るために転移する。




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