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176話 高橋蓮寺パート2

大変不快な表現を含みます。

高橋蓮寺がどれだけクズなのか興味のある方のみお読み下さい。




 高橋蓮寺は幼い頃からいじめっ子であった。

 それも度が過ぎるほどに。

 そのくせ自分に非がある事は一切感じていなかった。


 つまりは価値観の違いなのだろう。

 弱者は強者に食われるだけ、

 自分より弱い奴には何をしても良い。


 それは異常とも言っていいほどに、


 中学生の時に彼は一度、動物虐待の罪で裁判を受けた事がある。

 親猫が事故で死んでしまい、弱り切った一匹の子猫がいた。

 もう助かる余地が無いほどに脆弱していたため、胸にヤイバを突き刺す思いで子猫を殺した、と。


 これは高橋蓮寺の親の金で雇った弁護士による口実であった。

 少年という身と人間では無い点を含め、その際の裁判では無罪が判決された。


 しかし実際は、子連れの猫を餌でおびき出して捕まえて私利私欲の文字通り・・・・の玩具として遊び殺した。

 一匹の母猫をシャベルで掘った穴に首だけ出した状態で埋め、三匹いた子猫のうち一匹を取り出し、手に持つ金槌で粉々に粉砕する。

 可愛らしさとは程遠い悲痛の叫びが深夜の林の中に広がる。

 動かなくなったことに興味を無くした高橋蓮寺は子猫の頭部へ金槌を振りかざして幼い命を絶命させる。


 母猫は我が子が目の前の悪魔に殺されるさまを、何も出来ず見守るしか無かった。


 二匹目の子猫にはペットボトルの中に入った液体を身体中にかけた。

 鼻につく刺激臭が一帯に広がる。

 そのままマッチに火を付け、踊り狂う様を楽しんだ。


 その後、親猫は手足を縛られ、トラックが通る直前に投げ捨てられ絶命したのだ。



 この他にも暴力団とも絡みがあり、犯罪めいた事に手を出す狂者だった。



 ♢♦︎♢


 高橋蓮寺 LV.24


 種族:人族

 性別:男

 年齢:18


 攻撃:350

 魔力:240

 俊敏:210

 知力:180

 防御:260

 運:100


 特殊スキル

【成長速度3倍】

【勇者の威圧】

【状態異常無効】


技能スキル

【剣術LV.15】

【威圧LV.8】


魔法スキル

【聖魔法LV.10】

【風LV.11】

【火魔法LV.15】

【土魔法LV.6】


称号

【〇〇の勇者】

【異世界より召喚晒し者】

【〇〇者】

【〇〇の加護】


♢♦︎♢




「はぁはぁはぁっ」



 国が管理する森、魔物は一匹たりとも見当たらず、平和的な鳥の鳴き声が聞こえる。


 その中で1人の少女が顔を青くして縦横無尽に駆け回っていた。


(嫌だ嫌だッ!こんなところで死ぬわけにはいかない。あの子たちのためにも死ぬなんて許されない!)


 少女は瑞穂らしい布切れに身を包み、黒ずんでいる白髪、そして何より特徴的な長いうさ耳を付けていた。

 柚子と同じ牢屋に入れられたウサギの獣人ユヌである。


 片耳はすでに欠損しており、左手で肩を押えつける。

 その右肩からは赤くて熱い血液が滴り流れている。

 通った後の草木には血痕が残り、押さえつけている左手は真っ赤な血で染められていた。


「よぉ〜、どこだ〜、化け物。俺が遊んでやるから出て来いよぉ」


 幸運にもユヌの耳は正常に働いており、男の声が聞こえる方角を正確に捉えていた。

 それを察知したユヌはすぐさまバケモノと距離を取る。

 本能的に分かったからだ。

 あいつは私を奴隷とすら思っていない。

 自身の欲求を満たすための玩具だと。


(何が勇者だっ!あんな異常者がなんで野放しにされているんだ!)


 ユヌは柚子という人間は自分たちが今まで出会ってきた人間の中で信用に足る人物だと思った。

 自分に何のメリットもないのに獣人の子供たちを助けたからだ。

 その手には確かな優しさが込められていた。


 しかしだッ!今、自分を追いかけている男は今まで接してきた人間の中でも最悪と言っていい部類に入る人物だ。


「はぁはぁッ……アッッツゥ!!」


 右足に激痛が走った。

 見てみると土の杭が自分の足に刺さっている。

 ジンワリと血が滲み出て悲痛の叫びを上げてしまう。


「ふふっ、ようやく捕まえたわ。私の土魔法のお味はいかが?」


 現れたのはいくつもの宝石が装飾された服を着た女。

 ユヌはこの人物をよく知っていた。

 アドリネ、この国の王者であり自分の片耳を斬り取った張本人だ。

 過去の悪魔の再現が行われようとしている事に顔が蒼白になる。


「……なん……で」

「なんでって、あなたは私の玩具なんだから何しようと勝手でしょう。勇者様の糧になれるんだから感謝なさいよッ!」


 アドリネは手に持つ鞘を少女の顔に振りかざす。

 鈍い音がユヌの脳髄に響き渡る。


「ここにいやがったか。そう言えば獣人って、動物なのか?人間なのか?よくわからないな」

「動物ですわよ、勇者様。こんな獣を人間と一緒にしないで下さい」

「おっと、それは悪かったなッ!」


 高橋蓮寺はごく自然な形で剣を目の前の少女に振りかざす。


「えっ…………」


 ユヌは自分が何をされたのか理解できなかった。

 何をされたのか脳が理解しなかったのだ。


 ボトッと地面に何かが落ちる音。

 全く感覚の無い右腕。

 ドロリと自分の側面から血が溢れ出てくる。


「【ファイア】」

「ああ……ぁ……アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーッ!!」


 肉が焦げる臭いと激痛。

 そこでようやくユヌは自分がされた事に気がついた。

 骨まで焼かれたかのような苦しみが襲う。

 呼吸が苦しく、冷や汗が止まらない。



「くはははっ、いい声で鳴くじゃねぇか!」

「あははははははッ、素晴らしいですわ。一切気付かれずに相手を斬りつけるなんて!」


 目の前の悪魔と化け物は高笑いしながら地面でもがき苦しんでいる少女を笑う。


「そうですわ!私も面白い事を考えましたわ!」


 アドリネは何かを閃き、『命令』でユヌノ体を無理やり立たせる。

『命令』とは奴隷の首輪に付けられた『隷属の首輪』の効果によって強制的に言う事を聞かせるものだ。


「そーれっ!」


 アドリネはリズムを刻みながら、鞘から刀を取り出して私へ振るう。

 再び、ポトリと何かが落ちる感覚があった。

 腕の痛みで感覚が麻痺してしまいどこを斬られたか分からなかった。

 しかし、数秒後に視界が赤く染まる。


「ほら見てください、勇者様。討伐部位ですわよ」


 この言葉でユヌは自分の耳を斬り取られたことを理解した。

 言葉にならない感情が込み上げてくる。



(なんで、なんで、なんで!)



 なぜこんな悪魔が存在しているんだ、

 誰がこの悪を捌いてくれるのだと。




 目眩と吐き気が襲い、ユヌはその場で意識を手放した。




「あら、死んでしまいましたか?」

「いや、この程度で死ぬかよ。なぁ、アドリネ。奴隷は殺してもいいんだよな」

「ええ、私も遊んで使い物にならなくなったら殺してますわ」


 その言葉に高橋蓮寺はニヤリと下卑た笑みを浮かべる。


「なら殺しとくか」


 一切の躊躇もなく降り下ろされる剣。



ギイッン!


 と、金属同士が擦れ合わさった音が静かな森に響く。


「てめぇ、護衛の分際で手を出そうってのか?」


 そう、引き止めた人物は勇者の顧問役でもあるイザベルだ。


「アドリネ様、勇者様。陛下がお呼びです。至急お戻り下さい」

「お父様が?」

「お二人に関する何かを申されておりました」


 その言葉にアドリネは心を踊らした。

 以前に勇者と夫婦になるかもしれない報告があった。

 自分と勇者のみを呼び出すと言うことは、つまりそう言うことだろうからと推測したからだ。


「おぉ?ったく、しゃあねぇな。お仕事を果たしに行くとしますか」


 高橋もめんどくさそうな剣を鞘に収めて、手を引っ張るアドリネについて行った。





 残された場には、涙を流し、右腕と両耳を斬り取られ意識を消失させた兎族の少女とイザベルのみになる。


 イザベルは唇を噛み締める。

 そこからは一滴の血が唇から流れ落ちる。


(こんな事が……こんな事が許されるはず無いだろう!)


 無力な自分に苛立ちイザベルは側にあった木を殴りつける。

 バキバキッと効果音を上げて木は側に倒れ落ちた。


「すまない……本当にすまない。無力な私を許してくれ」



 イザベルは少女を優しく抱き上げてその場から立ち去った。


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