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173話 ダンジョン(休憩)

すいません、体調不良です。



「あー、こんなところにいたんだ!」

「やっと見つけましたわ」

「クリス、ミセル、あなたたちの倒した魔物の魔石集めがこんなにも大変だとは思わなかったわ」


私たちを見つけると小走りで歩み寄ってくるシャルとロゼッタ。

頬を膨らませて文句を言いながら歩み寄るエリスの姿がそこにあった。


恐らくは私たちがここまで来る道中に倒した大量の魔物が落とした魔石回収に尽力していたのだろう。

数からして四桁はあるだろう。

それを売ると考えると、ちょっとしたお小遣い稼ぎにはもってこいだ。

流石にお金になるとはいえ、拾うのが苦痛になる量を拾わせて来たのは申し訳がない。



「ありがとうね」


一応はお礼を言っておく。


「はぁー、別にいいわよ。涼太がいれば手加減なしの八つ当たりでもしてやったんだけど、お腹も減ったし、何より疲れたわ」


涼太さんの扱いが、ぞんざいになっている件について。

まぁ、エリスがいくら本気でちょっかいを掛けようとしても、当の本人は子猫に戯れつかれた程度にしか感じないだろうが。


「シャル、フィルフィーはどうしましたか?」


ミセルが唯一この場にいない人物を指す。


「フィルフィーは冒険者と一緒に外に戻って言ったよ〜。なんか、「お前たちがいる階層は34階層だ。残り16階層だから今日は休んで明日、攻略して帰ってこい」って言ってたよ?」

「なるほど、確かに騒動も収まりましたし今日はこの辺で探索を終わるといたしましょう」


ミセルの提案に全員が賛同する。

確かに朝から動き回って、もう倦怠感しかない。

もう一度ギガンテスと戦えと言われたら絶対に嫌だと断言できる。


「それじゃあ、すぐ側の壁にセーフティードアを貼って中でゆっくりとするとしましょう」

「確かに凄いものですが、本当に大丈夫ですの?他の冒険者が面白半分で入られては嫌ですわよ?」

「それについては問題ありません。事前に説明書を読んで試しに使いました」


セーフティードアとは涼太さんがくれた万能アイテムの1つで厚手のドアを模った布のことだ。

この布を壁などの平らな側面に貼り付けて、魔力を流すと側面に付着して亜空間が生まれる。

文字通り扉は壁と一体化するので、設置した当人が魔力を流さなければ開くことはない。

仕組みは難しいが、ケイオス学園にあった特別訓練場とほぼ一緒のものだと思えば使いやすい。


扉を開けるとそこは玄関であった。

我が家(涼太さんの家)と構造はよく似ているが、中に入ると大きなリビングと個室が分かられている廊下とお風呂とトイレしかない。

あれ?十分なはずなんだけど、今までの生活と比較すると凄く侘しい気がする。


「ふぅん、とりあえずお風呂に入るわ。みんなはどうする?」

「ボクは最後でいいよ」

「では私もシャルと一緒に入りますわ」


多分洗い合いっこでもするのだろう。

大浴場を使うときに2人はいつも洗いあってるし。


「クリスとミセルは?」

「私はエリスの後でいいかな」

「では私はお嬢様の後に頂きます」

「そう、ならゆっくり入らせてもらうわね」


エリスは駆け足で浴場がある扉の中へ入っていく。

戦い慣れていないせいで、余計な体力を私たち以上に消費したのだろう。

汗をかく量も人一倍で気持ちが悪かったと思う。

私とミセルはコソッと【クリーン】を使って定期的に朝のベタつきを拭き取っていたから衛生的に風呂に入る必要はなかったが気持ち的には入りたい。


「ふはっ〜、つかれた〜」


部屋の中央に置かれたL字型の大きなソファーに腰掛ける。

それは私の体を包み込むように沈んでいく。

なんとも心地よい感覚だ。


「りょ……」


いつもの調子でこの場にいない人物の名前を呼ぼうとして自分の過ちに気付く。


今まで涼太さんに頼りっぱなしとは自覚していたが、何気ない時にも一緒にいた存在。


離れてから一週間ほどしか経っていないのに胸が締め付けられるようだ。


「…………さま、お嬢様!」

「ひゃっ!どうしたのよ、ミセル」


ボーっとし過ぎていたのか、背後からのミセルの声に全く気づかなかった。


「ご飯はどうなさいますか?宜しければ私がお作りいたしますが」

「何だろう、ガッツリしたものがたべたいわね」

「それなら私に良い案がありますわ!」



という事で、私たちはキッチンで夕食の準備をすることにした。

用意する材料はジャガイモ、にんじん、玉ねぎ、牛肉を用意する。


「こんな時はカレーが一番ですわ!」


確かにカレーは全員が美味しいと共有しあえる料理で、タンパク質も炭水化物もビタミンも豊富取れる万能な食べ物だ。

作り方も簡単でグツグツと煮込んだ野菜の中にカレールー(涼太さんの手作り)を何個か入れるだけで完成だ。


シャルとロゼッタはジャガイモの皮剥きをする。

貴族であるために慣れていないせいか、ロゼッタの腕は震えながら側面の皮のみを剥き取っている。

反対にシャルはスムーズに皮むきをしていた。

普段から私生活でも自炊をしているおかげだろう。


となると、あとは玉ねぎと人参と牛肉だが……。



「秘技・阿吽の小太刀」


鋭い切っ先を持つ包丁を前に構えたミセルは一本の洗われた人参を空中に放り投げ、目にも留まらぬ速さで切っていく。

下に置かれたザルに人参が落ちる時には、すでに皮は剥かれて輪状の一口サイズにカットされていた。


「遅いですね。もう少し速度が必要ですか」


なにやら納得していないのか、内なる自分と会話していた。

いや、普通に料理をしようさ……


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