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172話 ダンジョン(思わぬ出会い)



「私から行くわね。【大氷塊の剣アイスバーンエッジ】」


 私は両手を合わせて魔力を練り合わせる。

 そして膝をつき技のイメージをする。

 これは涼太さんから教わった魔法ではない。

 魔法とは魔力と強固なイメージから生まれる産物。

 元素外魔法はイメージがつかないが、私が最も得意とする氷魔法ならば新たな魔法を創り上げることは可能だ。


 想像するのは叩いても割れない強固な硬さを持つ氷床。

 そして、そこから敵は目掛けて現れる強靭で巨大な氷の剣だ。


「喰らえ!」


 声の合図とともに氷床から射出される剣。

 それはギガンテスの腹部へと直撃し、人では動かすなど不可能な体躯を後方へ吹き飛ばす。


「す、すげぇ」

「あの巨体を吹き飛ばしやがった」


 冒険者隊からは称賛の声が上がる。

 しかし私は反射的に舌打ちをしたくなる気分になった。


 氷の刃は並の剣以上に研ぎ澄まされている上に巨大かつ強固なものだ。

 それで持ってしてもギガンテスの皮膚に傷らしい傷を与えることが出来ない。


「ならこれならどうだ!」


 私は一本の巨大な槍を生成し圧縮する。

 槍は見る見るうちに高密度の物体へと変化していく。

 

 私はそれを相手の肩へめがけて放つ。

 私が限界まで圧縮して魔力を纏った槍は並大抵の鉱物よりも硬度は高い。

 そこに回転を加えて貫通力を上げた。




 ガァァァァァァァ!



 思った通り槍はギガンテスの体に突き刺ささり、杭を打ったかのように壁と固定されてしまう。


「ミセル、任せたわよ!」

「承知しました」


 再び青い稲妻を纏ったミセルは超速でギガンテスに接近して足からレイピアで攻撃をしていく。

 超電圧のレイピアは鉄の強度を誇る皮膚を易々と焼き斬る。

 ひょっとすると、ミセルの剣ってアダマンタイトでも切れるんじゃないのかな。


 1秒5撃という斬撃速度で徐々に足から胴へと進み、首元へとたどり着く。

 危機を察したギガンテスは空間が痺れるほどの咆哮を放って開いている手でミセルを自身から引き剥がそう鵜とする。

 恐らくは一撃で鎮めようという魂胆であろう。

 ミセルは己のレイピアに魔力を集中させている最中であった。

 あれの邪魔をさせるわけにはいかない。


 再びギガンテスの堅い皮膚を貫通させた槍を生成して放つ。

 場所は両太もも、腕、肩の三か所だ。

 見事に全ての槍は貫通してギガンテスを壁に貼り付ける。

 それと同時にミセルの貯められた魔力が爆発した。

 魔力は全てレイピアへと一点集中して刀身十数メートルはあるであろう蒼く輝く長剣へと変わった。

 間違いなくギガンテスの首など一刀両断に出来るほどの長さ。


 それをミセルは横なぎに振り払った。

 ギガンテスの首は豆腐に刃を入れるかのようにスムーズに入り首を落とす。

 最後の雄たけびを上げる間もなく倒れたギガンテスは身体から巨大な魔石を残して消滅する。

 魔石の大きさはおおよそ3メートルほどで、人一人分を軽く超えている。


「ミセル、お疲れさま」

「お嬢様もお疲れ様です。おかげさまで力を貯めて放つ時間を稼げました」


 私とミセルは近寄りハイタッチをする。


「おいおい、マジで勝ちやがったよ」

「カインさんでしたっけ、お疲れ様です」

「いや、俺たちは何も貢献なんてしてねぇよ。これは嬢ちゃんと戦姫の力のおかげだ」

「私なんてまだまだですよ。涼太さんなら一睨みで倒すことができますよ」

「そういやぁ、嬢ちゃんは涼太の知り合いだったな。あいつは今どうしているんだ?」


 カインさんは剣を鞘にしまい、戦いの前に思っていた疑念を投げかける。


 涼太さんが今どこにいるのか、それは私こそ知りたい情報だ。

 冒険者だから仕事に行くとは言っていたが、本当に冒険者の仕事をしているのか分からない。

 以前に大きな怪我をして療養するのに時間がかかったと言っていたが、冒険者程度の依頼で涼太さんが傷つくとは思えない。

 ひょっとすると私が想像を絶するほどの危険な場所に行ってるのではないだろうか。


「しばらく出ていくと言っていたので数週間は帰ってこないかと思います。カインさんこそ涼太さんと会っていないんですか?」

「あいつと最後に会ったのは一か月前くらいに冒険者ギルドに来てた時くらいだ。会ったら偶には顔を出せと伝えてくれるか」

「うーん、分かりました」


 何か揉めでも起きていたのか、カインさんは気まずそうに私へそう伝える。

 私も冒険者なんだからセリア王国の冒険者ギルドに行って、涼太さんの情報がどんな事をしていた人なのか探ってみようかな。


「一つ聞きたいんだが、涼太の野郎は二人にとって何なんだ?」

「涼太さんです!」

「師であり私の恩人であります」

「お、おう。| (あの野郎……師ってなんだ?)」

「それでカインさんたちはどうしますか」

「どうするとは何のことだ」

「この巨大な魔石の事ですよ」


 私は目の前にある巨大な魔石を指さす。

 この大きさだと持ち運ぶのは至難だろう。

 私たちならアイテムボックスを広げてそのまま入れることは可能だが、先に戦っていたカインさんたちの方に所有権はある。


「あぁ、こいつは嬢ちゃんたちにくれてやるよ。俺たちだけでは運ぶのも無理だし、あのままギガンテスと戦っていたら間違いなく負けていたのは俺たちだ」

「カインの言うとおりだ。今回は生きているだけマシってことだ」

「そう言う事だから後処理は任せた。俺たちは一度地上に戻るとするよ。ダンジョンでも稼がせてもらったしセリア王国にでも帰るか」


 体力も魔力も今の一戦で相当削られたのだろう。

 気だるげにそんなことを呟く。


「はい、お疲れ様です」

「おうよ、嬢ちゃんと戦姫も気を付けてな」


 武器を終い、カインさんたちのパーティはそのまま地上への階段を上がっていった。


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