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14話 《再び》



 パチパチッ、パチッ


 小気味良いの良い音が聞こえる。



「ふぁー、いい匂いですね。唐揚げですか、私大好きなんですよー」

「そっすねー、りょうっちの料理はどれも美味しいっすからね」



 隣からは女神達のキャイキャイとした声が聞こえてくる。

 俺はそれを無視してひたすら揚げる。



 何故だ。もう一度言おう、何故だ!




 ♢♦♢



(今日はお肉がいいです!)

「いやいや、可笑しいぞ。何で飯の話になっているんだよ。今から、俺の待ちに待った異世界生活が始まるんだぞ?」


 アテナはごくごく当たり前かのような口ぶりで話しかけてくる。


(そんなの何時でも出来るじゃないですか。大丈夫です、神界こっちから地上そっちに戻ってくる時は同じ地点からリスタートする事が出来るので安心して下さい)


 ゲームか! ちょっと疲れたからセーブしましょうってか!? コレはあれか?  一時停止的な何かですか。


「嫌だ。やっと俺の異世界生活が始まったんだ。後戻りなんてするかよ」

(そんな、みんな待ってるんですよ! 帰ってきて下さい! みんな貴方の帰りを待っているんです)


 勇者が邪悪な敵と相打ちになり思い人に別れを告げる事なく死んでしまう場面で出てくるセリフをここで聞けるとは……。


「すまない。どうやらお前の期待には答えられないようだ」


 俺はお決まりのセリフを言ってみる。



(へー、そっちがその気ならこっちにだって考えがあるんですよ)



 考え? 一体なんだ?



『女神アテナが神衣憑依のリンクを切ろうとしています。よろしいですか? YES or NO」



 よろしくねーよ! 何あいつ勝手に切ろうとしてんの!?

 汚ねぇ。女神のくせにやり方が汚ねぇ。


(さぁ、選びなさい。勇者よ。おのれを選ぶかわたしたちを選ぶか)



 くそっ……確かに現状では神衣憑依が無くては俺は敵を倒すことは出来ない。


「……俺の負けです」









「りょう君! 会いたかったですー!」


 アテナが俺に抱きつかんばかりにこちらへ走ってくる。

 俺はそれを優しく受け止めるかの様に手を前に出し……。

 アイアンクローを決めた。



「キャー、痛いです! りょう君、離してください。割れます。ミシミシいってます、流石はレベルアップしただけありますね」

「黙れ。さっきはよくもやってくれたな」

 

 自分が優位に立っている状況で調子に乗ってる女神様にはお仕置きが必要かな?


「ふぉふぉふぉ、まぁ落ち着かんか」


 するとじいさんが止めようと俺とアテナの仲介に入ってくる。


「ああ、そうだな。落ち着かないと、俺とした事がすまない」

「うむ。それにしても早い再開じゃったのぉ。やはり伏線は張っておくもんじゃな」


 伏線?


 そこで俺はじいさんが転移する前にすぐに会えると言っていたのを思い出した。


 クソジジイ、お前が原因か。



「涼太さん。それよりもご飯にしましょう。お腹が減ったわ」

「そうだな、ちょっと待っててくれパラス。準備してくるよ」


 俺はそう言い厨房に向かった。





 さて、何にしようか。

 そうだ! さっき取れた蝙蝠の料理を作ってみようかな。

 確か蝙蝠は淡白で鶏肉の様な食感であるとネットで見た事がある。

 俺は蝙蝠を解体して1つ1つ揚げていく。一匹の大きさも兎程の大きさなので予想以上の量になった。

 全て揚がったところでみんなを呼び食事とした。





 カリッ、ジュワァ


「うわ! これ凄く美味しいっすね」

「そうねぇ、凄くジューシーだわぁ」

「酒に合いそうじゃねぇか!ガハハハ」


 みんなには絶賛の様である。俺も一口。


 パクッ


 うめぇ。何これ凄い美味しい。

 鶏肉の様に淡白なのに1つ1つの繊維がきめ細やかで噛み応えがある。噛めば噛むほど旨味が出てるなんてそうそうない事だ。

 そう言えば俺の狩った二頭虎も凄く気持ち良い触り心地だった。


「これって、つまりレベルが高いほど美味しかったり高級感のある物が出てくるという事か?」



 俺はここで重大なミスを犯した事に気がついた。

 新しい物や美味い物に目がない神々《こいつら》がいる事を忘れてしまっていたからだ。


「ナイスです! 良い事を聞きましたね。これはもう明日のご飯も現地調達に決定ですね!」



 はぁ〜、やらかしたわ。マジでなんなん?俺の異世界生活ってなんなん?


 思わず関西弁になってしまった。



「まぁ、良いじゃないのぉ。私は嬉しいわよぉ。こんなに早く貴方に会えたのだからぁ」

「そっすよ。細かい事を気にしちゃダメっすよ」

「…………」こくこく


 アディが艶かしい声で俺の方に寄りかかりテミスは後ろから抱きつきパンドラは俺の腕にしがみつく。


「ガハハハ、おいハーレム野郎。ここは男として筋を通す必要があるんじゃねぇのか?」

「なッ! パンドラ、今すぐその男から離れなさい。さあ、私の元へ」

「……やっ!」

「ぐはぁ! そんな、嘘だぁぁぁぁぁ」




 アポロンは平常運転の様だ。そのまま何処かへ走り去っていった。

 本当にブレないなあいつ。



「分かった。ただし俺の目的はまずあの洞窟の攻略とレベルアップが最優先だ。食材確保はあくまでもついでだからな、そこは分かっておいてくれ」


 ただ食材確保の為に降りるって、今晩のおかずの為にスーパーに行く主婦じゃないんだからそれは困る。


「わぁー! 愛してます、りょう君。ありがとうございます!」


 ニコニコとアテナが感謝の言葉を述べる。




 まぁ、こういうのも悪くないか。




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