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149話 (召喚)



 辺りを見渡すと、そこは何やらレッドカーペットが敷かれている。

 上部には大きなシャンデリアが、目の前にはこれでもかと言うほどの階段。


「ふむ……本当にもう1人現れるとはな……のぉ?」


 ゆったりとした落ち着きのある声音。

 決して大きくはないが、この空間に響き渡せるほどの力強さを感じさせる。


「ここ……は」


 あの神様の話だと、高橋クズの後に私も転移させられたと考えるべきだろう。

 しかし何だろうか、この気持ちが悪く、吐き気すら覚える視線は。

 よく分からないけど、転移っていう事をしたから?

 車酔いみたいな感覚に襲われたからかな。


 そう考えていると、1人の男が柱の影から現れる。


「貴様ぁ! 皇帝陛下の御前であるぞ! こうべを垂れぬか!」

「ひっ……」


 あまりの怒号に思わず悲鳴を上げてしまう。

 皇帝? 何を言っているんだ?


「よい、先の者も初めは不敬であったろう。いちいち時間の無駄であるぞ。それもと貴様は私の有限を奪おうと申すか?」

「いえ、誠に申し訳ございません」

「2度はない」

「はっ!」


 顔を上げる。

 するとそこには年老いた1人の男が玉座に座っていた。

 髪は金髪よりは白髪が多く目立つ。

 肩肘を突き、手に顎を乗せてこちらを見下ろしている。


「ここは、どこですか」

「余の王城だ」

「ふぇふぇふぇッ、王よ。ここは私に任せてはいかがですかな?」


 王らしき人の背後から老いぼれた老人が姿を現わす。

 杖をついているが、しっかりとした足取りでこちらへ向かってくる。


「なん……ですか」

「お嬢ちゃん、ステータスプレートを見せてくれぬか?」


 思い出した。

 最後に神様が言っていた話だ。

 最初のスキル、【防御障壁】以外は隠しとけって言ってた。


「はい」


 ここで拒否を見せれば何をされるか分かったものではない。

 大人しく従うのが吉だろう。

 私はステータスプレートと念じる。

 すると、空中に透明な文字で書かれた板らしき物が現れる。


「ふむ…………勇者の称号なし……ステータスも貧弱……防御? ……兵器でありながら戦えない……先の男は素晴らしかったが…………………… ハズレか

「大臣、つまりこの娘は愚物ということか?」

「はい防御障壁という自身を守ることしか能のないスキルを持っているだけです。残りは平凡、むしろ一般兵のほうが役に立ちましょう」

 

 ひどい言われようだ。

 どうやら私は何の役にも立たないらしい。

 となればどうする。

 逃げることが最優先だ。

 あの神様が最後に言ったあの言葉を確かめるためにも。


 私は手を挙げて発言権を得ようとする。


「なんだ、娘」

「私はどうやら役に立たないようです。ならばどうか旅をさせてくれないでしょうか」

「何を言っている? 無能は殺すに決まっておるだろう。余をここまで待たせておきながら、出てきたのが無能。これほど腹立たしいことはない」

「……え?」


 何を言っているのか理解ができなかった。

 殺す?

 冗談ではなく本気でそう言っているの?


「おい!」


 その合図に建物の影から黒い鎧を着た人たちか私を囲む様に群がってきた。

 手には鋭利な剣がある。

 ヘルムの隙間から見てた害虫を排除するためだけの怠惰で無感情な目。

 それを向けられた途端に恐怖心が襲った。


 なんで!

 何でいきなり私はこんな目にあっているのよ。

 何にも悪いことをしていないのに!

 嫌だよ、怖いよ!


 近づく足音。

 それが死へのカウントダウンだとすら錯覚させられる。

 涙目になりながら理解が追いつかない思考を精一杯追いかけても分からない。



「やれ」


 そう冷酷な発言とともに振り下ろされた。



「イヤァァァァァァッッ!」



 ギィィン!



 硬い鉱物同士がぶつかり合う音。


 思わず目を瞑ってしまった。

 しかし、痛みが全くない。

 ゆっくりと目を開けると鎧の男たちは倒れて、王らしき人物は目を見開いている。


「なに……これ?」

 

 私の周りに球状の青い膜の様な物が張られている。

 大きさは人2人が頑張れば収まりそうなほど。


「あ……れ…………?」


 視界が歪ん視点が合わない。


 それに凄まじい脱力感が襲い、考える間もなく私の意識は暗い谷底へと落ちていった。





 

「大臣……こやつは何をした?」

「防御障壁……いや、それにしては強力な気がしますな。王よ、これは思わぬ掘り出し物かもしれませんぞ」

「ほう」

「貧弱とは言え、我が国の騎士の剣を同時に吹き飛ばす……と、表現すればよろしいのでしょうか。育てれば肉壁として一級の品になるでしょう」


 大臣は新しいオモチャでも手に入ったかの様に薄気味悪い笑みを浮かべる。

 その言葉に頬杖をついていた王が足を組み直して腕を組む。



「ならば、どうする?」

「地下牢に入れておきましょう。奴隷の首輪を付ければ逆らう事は出来ません」

「うむ、お主に任せよう」

「承知いたしました」


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