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148話 (プロローグ2)

プロローグから約一年かけて登場。


144話と146話を改変しました。



 眩い光におもわず両手で目を覆ってしまう。

 

「何が起こったのよ」

「何だこりゃあ」


 目を開けると目の前には高橋の戸惑いの姿。

 私に目をくれる事も無く、あたりを見渡して現状を把握しようとする。

 

「どけっ!」

「ぐえっ」


 喉元に入れた蹴りは容易に大男を吹き飛ばし、数メートル後方へ慄けた。

 私は驚かずにはいられなかった。

 

 私の非力な力が、この男を吹き飛ばした。

 筋力差からも鑑みても普通ならばあり得ない。

 しかし事実、私はあの男は私の前方はるか先に。

 

「てめぇ!」


 激情した高橋が立ち上がり、右手の拳を握りこちらに走ってくる。

 殴られる。

 そう思った私は、両手を交差させて自分の身を守ろうとする、が。


「まぁ、落ち着き給え」

 

 突如として何かが私たちを遮るように現れた。

 服はゴスロリ、セミロングの黒髪の少女。

 薄気味悪い笑いは、私の心をいとも容易く握りつぶせると直感的に判断できる。

 

「何だ、てめぇは」

「うんうん、意気が良いのは好感を持てる、が。血の気が多すぎるわねぇ」

「がぁっ!」


 黒い少女が人差し指を立てて、前へ曲げる。

 すると、それに従うように高橋の体が地べたへと抑え込まれる。

 

「あなたは誰ですか」

「おっと、そうだったね。自己紹介がまだだね。私は神様だよぉ、キラッ!」

 

 V字に指を作り、目の前にかざす。

 まるでアイドルのような仕草。

 この薄暗い空間でなければ、それなりに絵にはなったかもしれない。

 

「あぁ? 神だと。頭イッてんじゃねぇか」

「はぁ、君は少し黙った方が良いね」

「むぐっ」

「しばらくそうしていたまえ」

 

 一体何をしたのだろうか、罵詈雑言しか吐かない口が閉じられたのか辺り一帯が鎮まる。


「何をしたんですか」

「本当に何でこんなのが勇者なのか。いや、あの国の性質ににあった存在だからか」

「何の話ですか」

「ああ、気にしないでいいよ。そこの男は口と体の自由を奪っただけだから」

「本当に神様なんですか?」

「おお、呑み込みが早くて助かるねぇ」


 私の言葉に満足したのか、上機嫌に首を振る少女。

 しかし私は、とある疑念を抱かずにはいられなかった。

 涼君が見ていたネット小説を私も読んでみたのだが、その物語の全てが白い空間と表記されている。

 もし現状が夢でないのならば、この空間とは正反対だと思える。


「ここはあの世との狭間ですか?」

「正確には神界だね。神が住まう場所。本当に苦労したよ、あちら側・・・・に気づかれずにこちら側へ招待するのに気を張り詰め過ぎた。バレたのならば、奴らは間違いなく()に告げるだろうし、が君を放置しておくなんてあり得ない」

「はぁ......」

「だが、これで物語はより一層面白くなるだろう」

「先ほどから、何を言っているのですか」


 話が嚙み合わない上に、一人で納得している自称神様。


「ひどいなぁ、自称じゃないよ。本当の神様ね」

「自称ではないと受け入れることは出来ません」

「そうかい? まぁ、大事なのはそこじゃないからどうでも良いか。何より今は時間が惜しい」

「はい?」

「君たちは勇者召喚される事になった」


 勇者召喚?

 なぜ、私がそんな事に選ばれたんだのか理解が出来ない。


「ああ、柚君。誤解しているが、勇者はそこの男」

「勇者とは何ですか」

「あははっ、それを言われたら返す言葉もないね。勇者とは君の思ってるものではないよ。言ってしまえば、異世界より召喚された波長の合う生物兵器、とでも言うべきか」

「では私は?」

「君は巻き込まれたんだろうね。もしかして、こちらへ来る時にその男の近くにでもいたんじゃないのかい?」


 少女の言葉にゴクリと喉を鳴らす。

 思い当たる節しかないからだ。

 光りに包まれる直前に覆いかぶさられていたら、もろに巻き込まれても仕方ない。


「私はどうなるんですか」

「さぁ?」

「さぁ......って、無責任すぎますよ」

「本来ならば君たちは直接召喚される身。それを無理矢理こちらへ引きとめたんだから感謝して欲しいね。いや、私がそうしなければ間違いなく、あちら側・・・・が君を引きとめてを出してくるだろう。そう考えると、私が説明する必要があるのか?」

「あちら側とか彼とか何を言ってるんですか」

「こっちの話だよ。君は気にしなくていい」

「はぁ」


 どうやらこのゴスロリの神様は私がいくら訪ねようとも、その事を話す気はサラサラないらしい。

 彼が誰かは分からないが、私を知っている人物なのだろうか。

 

「んんー!」


 何やらもぞもぞとする音が聞こえる。

 私とゴスロリ神様が右を向くと、高橋が芋虫が行進するように這いずりながらこちらへ向かってきている最中であった。

 充血し、血走った眼は今にも人一人を容易に殺しかねないほどの殺気をはらんでいる。

 

「はぁ、本当に面倒くさい。私ってこういう俺様系って嫌いなんだよねぇ。柚ちゃんはどう思う?」

 

 私は下に転がっている害悪を見つめる。

 私がこの男に放っている感情は嫌いなんていう甘ったるいものではない。

 涼君を殺した存在。

 憎悪と憎しみと拒絶の感情だ。

 

「いいねぇ、その眼。実に面白い」

「遊んでいるんですか?」

「うーん、半分正解かな。とりあえず、彼は先に送ろう。流石に()に対して不敬が過ぎる」


 雰囲気が一瞬にして変わった。

 体の全ての産毛が、細胞が震え上がる。

 この男からも嫌悪感から通り肌は立ったが、それと比較する事すら烏滸がましいと思えるほど。

 本能的に平伏させられるような存在。

 改めて実感し......いや......せざる得なかった。

 あまりにも冷たく微笑むその存在は人ではない。

 神、もしくは怪物なのだと。

 現に、血走った目で睨んでいた高橋もガタガタと体を震わせ、本能に従うように顔を蒼白にさせる。


「それじゃあ、高橋君。君は先に行きたまえ」

 

 その言葉と共に高橋の体を光が覆う。

 瞬きをする。

 するとそこには高橋の姿がどこにもなかった。


「いったい何が」

「彼は先に勇者召喚したよ。ああ、よく考えれば私って優しすぎないか? もう少し残虐でも良い気がするんだけどねぇ。彼にも君くらいの気さくさがあったらいいのに。本当に失敗したなぁ、初対面の大切さを痛感するよ」

「......」

「おや、すまないねぇ。これ以上は彼の話をする必要はないか。私も随分と固執したものだ」

「もういいです。私を元の世界に戻してください」

「あひゃひゃひゃっ、戻すだって!?」

「何がおかしいんですか。当然の権利です」

「傑作だね。むりむり、それは私が許さないし不可能だ」

 

 腹を抱えて笑うゴスロリ神様。

 この姿から全く神様らしき品格も雰囲気も感じられない。


「どうしろって言うんですか」

「君に高橋君と同じ場所に行ってもらう。関係ない君は性奴隷か肉壁にでもされるんじゃないのかい?」

「なっ!」


 体がガタガタと震える。

 そんな世界大戦時代の奴隷制度みたいな国に送られると思うと気が気でない。

 分かった上で行くなんて絶対に嫌だ。


「分かるよ、嫌だよねぇ」

「わ、私は……」

「安心したまえ。そこに関しては私が助けると保障しよう」

「本当ですか」

「うん、本当。ってまあ、本音は……」


 掠れた声のせいか、耳を澄ませても聞こえなかった。


「とまあ、君にはこのスキルをあげよう」


『柚は【防御障壁】【毒魔法】【回復魔法】【超再生】【猛毒】【隠蔽】を覚えた』


 頭の中にアナウンスが流れる。


「何ですか、これは」

「スキルだよ。手をかざしてイメージしてごらん」


 私はよく分からなかったが、目を閉じ何かを出すイメージをする。

 すると、手から何かが溢れ出てくる感触がある。

 自身の手を見ると、ドロリとしたスライムのような紫色の液体が私の手から零れ落ちている。

 驚いたのが、滴った液体が落ちた場所から煙が舞い上がっている事。

 

「くくくっ、おめでとう。これで君は毒人間だよ」

「全く嬉しくありません」

「そうかい? これで君を犯そうとする奴は直接肌に触れた途端に毒で死ぬよ」

 

 間違いなく不吉すぎるスキルだ。

 だが、確かにこれなら迂闊に近づこうとする人はいない。

 このゴスロリの神様の言う事が本当ならば有難いスキルだ。


「なぜここまで私に?」

「君に壊れたり死んでもらっては私としても困るんだよ。それと最初のスキル以外は隠しときたまえ。面倒な事になりかねんからね」

「分かりました」

「じゃあね、検討を祈るよ。くれぐれも折れない事だ。そうすれば、君の願いも叶うだろう」

「それって!」


 最後の言葉を告げる間もなく、私の体は先ほど見たのと同じように光に包まれていった。

 

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] さすがに漢字の変換ミスが多すぎます、どこかで全部見直したほうがよいです。 あまりに多いので誤字報告はかなり前からあきらめました。 ネット小説を書くにあたりタッチタイピング(ブラインド…
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