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146話 魔法聖祭の終わり



「我らがクラスの全種目一位独占を祝って乾杯!」

「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」


 グラス同士がぶつかり合い魔法聖祭の慰労会が始まった。

 ガブリエルたちが作った料理が次々と運ばれ、色鮮やか、多種多様に豊富な品が並べられる。

 今回のお祝いとして、いつもの図書館の裏の俺が創った部屋で沢山の料理を用意した。

 山盛りに積まれた唐揚げ、サラダやステーキ、ケーキもある。

 生徒たちは歓喜して、乾杯の合図とともに自分の食べたい料理を取りに行く。


 俺はというと席に座り、大きな氷を入れたコップに注いだ梅酒をツマミと一緒に食べている。

 うめぇな。

 グリムさんたちとも、今晩くらいに飲みに行きたいくらいだ。


 そんな事を考えながら一人酒をしていると、皿に山盛りの料理を乗せたクリスたちが来た。



「涼太さん、お疲れ様です」

「おう、お疲れさん」

「それで足りるんですか?」

「あー、いいのよ。こんな風にゆっくりと飲む機会も無かったから俺は好きにさせてもらう」

「私も飲みたいです!」

「子供は飲んじゃダメ」

「あともうちょっとなのに!」

「それまで待ちなさい」


 子供が大人にお酒をせがむやり取りが出来るなんてな。

 この世界の成人年齢は16歳からだから、俺はなんの問題もない。

 だけどクリスたちはあと1、2年は待つ必要はある。

 飲ませたら親御さんに怒られるのは俺なんだから。


「涼太さん、1つ質問よろしくて?」

「なんだい、ロゼッタ」

「あの試合は私が勝ったのですの? 引き分けのように感じたんですが」


 ロゼッタが疑問を投げかける。

 確かにあの試合は壮絶だったし、2人とも意識を失ったから結果は分からないよな。


「ロゼッタの言う通り引き分けだ。両者とも同時に意識を失った。あの壮絶な死闘だ。観客や審査員の心を掴んだのだろう。今回は特別に両者一位にしたらしい」


 審査員たちの心を震え上がらせたのは間違いない。

 しかし、やはり大きな要因としてはレオンが王子だからだろう。

 王子であるレオンが負けるのは国としてマズい。

 ガス欠とは言え、優勢だったのは明らかにロゼッタの方だった。ロゼッタを敗北とすれば贔屓だと、試合を見ていた観客全ての反感を買う可能性が出てくる。

 ならば両者一位とすれば問題は生まれない、そう結論付けた。


「まぁ、アレだ。本当にお前が頑張ったと思うよ」

「涼太さん……ふ、ふん! 別に褒められても嬉しくないんですよの」


 金髪の縦ロールをなびかせてソッポを向く。

 しかし、その頬は朱色に染まり己の心情は隠そうにも隠しきれていない。


「いや、本当に凄かった。素直に喜ぶべきだと思うぞ」

「あ、ありがとうですわ。そ、それなら頑張った私にご褒美が欲しいですわ!」

「ご褒美?」


 何だろうか、俺から上げられる物って言えば特には無いんだが。

 あるとすれば、新しい魔法を教える事くらい。


「わ……私とシャルをクリスたちと同じく連れて行って欲しいんですわ!」

「ーーッ!」


 これは本当に予想外の回答だ。

 クリスとミセルは分かっていたかの様な表情を向ける。

 という事は、2人にはあらかじめ言っておいたという事だろう。


「ジグルさんは何て言ったんだ?」

「お父様には昨日に話をつけてきましたわ。己が道を歩いていけと、そうおっしゃいましたわ」


 凛とした赴きで一切の迷いのない瞳。


 驚いた……あのジグルさんがそんなお願いを許容するなんて。

 普通ならば全力で何があろうとも阻止しにくる、下手をしなくても俺に話を通すはずだ。


「クリスたちにも以前に言っておいたが、付いて行くって事は戦場を経験する意味を成すぞ。普通のお嬢様に戻れなくなる可能性もある。いいのか?」

「その時は涼太さんが養ってくださいまし」


 クスリッといたずらじみた笑みを俺に向けてくる。

 幼さはまだ抜けないものの、ハッキリとした女らしさも兼ね備えたロゼッタの魅力に心臓の鼓動が少し高かなってしまう。


「ボ、ボクも行くから!」

「当然ですわ、私の護衛として頑張って下さいまし」

「あーーッ! 分かったよ、もう好きにしろ」

「感謝しますわッ!」

「ただし、危険な真似は極力するな。クリス、ミセル、お前たちはまだ卵の殻が割れた生まれたて雛に過ぎない。自分の強さに酔う事の無いように」

「「「「はい!」」」」


 四人は一列に並んだクリスたちは俺の言葉に迷いのない返事をする。


「とまぁ、言ったのは良いんだが、俺はしばらくお前らとは別で用事がある。悪いが連れてはいけない」


 俺の言葉にけげんな表情を見せる四人。

 

「涼太様、それは私たちでは危険と言う意味でしょうか」

「ああ、その通りだ」


 実際には半分正解と言ったところだ。

 俺の様とはもちろん神界に関してのことで、普通の人間には行けない場所であり、魔物の強さが文字通り違うから。

 しばらく放置し過ぎて頻繁に脳内コールがうるさくて仕方ない。

 それに加えて、いま神界では面倒ごとが起きているようだから俺への応援が欲しいらしい。


「そうですよね、涼太さんは冒険者ですもんね」

「悪いな、少しだけ空けさせてもらう」

「どれくらいになるんですの?」

「分からんが早めには帰ってくる予定だ」

「それなら心配いりませんわね」


 帰ってくるという言葉に反応して胸を撫でおろす。





 



「そこでだ。お前ら……と言うよりは、エリスとフィルフィーを合わせた6人に課題だ。すでに2人には告げてる。ダンジョンに行ってこい。まずは最下層までの到達だ。冒険者登録は一応しておけよ。特別入行許可書もケネス陛下に発行して貰う。そこからは死の樹海の攻略、1人でも魔物を余裕で倒せるレベルに到達。そして黒の迷宮への挑戦だ。監督はフィルフィーに任せている。学園長にも2人の休学申請は出しているから思う存分修行してこい」

「「はい!」」

「じゃあな、これは餞別だ。説明書もあるから使えよ」


 1つのアイテムボックスをミセルに預ける。

 一通りの事は伝えた。

 本当に危機が迫っている時は……まあ、俺の用意した魔道具が役立つだろう。


「涼太さん!」

「ん?」

「絶対に……絶対に帰って来てくださいね!」

「当然だ、後のこと任せた」



 2人の間に入り頭に手を乗せる。

 そうして、俺は久しぶりの神様たちアホどもが住まう神界に転移した。


5章の終了です。

次の章はそれぞれ涼太は神界で、クリスたちはダンジョン、そして樹海でのレベリング。


そして……ついに……ついにぃィィィィィィッッ!!

お待たせしました!

柚ちゃん降臨。

涼太と死別した彼女は元気にやってるのでしょうか。

そして涼太と再会出来るのか!?

気合を入れて書いていこうかと思います。


どうぞ末長くご愛読して貰えると幸いです。

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