142 天使!?
まぁ、あの人らなら変なところには行かないだろう。
放っておいてもメイドなりを使ってるはず。
そして再びこの場は俺とエリスとフィルフィーの3人になった。
「さて、どうしようか」
「待ちなさい、あなた私たちに言い忘れてる事があるでしょ?」
適当に散策しようと思った途端にエリスが俺の腕を掴み、フィルフィーも大きく上下に首を振る。
はて、何か忘れているっけ?
2人の目を見ると何かを欲している気がする。
…………あぁ、なるほど。
「2人とも綺麗だ。その水着似合ってる」
そう言うと2人の口角が上がる。
「ふーん、まぁ及第点としておくわ」
「私は嬉しかったぞ?」
「そりゃ良かったよ」
どうやらお許しは貰えたようだ。
ほっと胸をなでおろす。
なるほどな、よく女性の服装は褒めろとか言う話を聞くが、その必要性を今感じた。
「少しお腹がすいたわ」
「そうだな、昼飯にするか」
呼び出した時間がちょうど11時あたりと考えて、そこから1時間は過ぎている。
確かに俺も空腹を感じているから適当な時間だ。
「…………なんでお前いんの?」
そう嘆かずにはいられない。
いや、本当に何でお前がいるんだよ。
「へいっ、らっしゃい、我がマスター。焼きそばですか? それともたこ焼きですか?」
そこにいたのは執事服姿にエプロンを着用しているミカエルの姿であった。
両手には生地を裏返すための大きな返し。
こうゆう場合ってガブリエルとかがするはずなのに神界にいるはずのお前が何でここにいるんだ。
それも律儀に定期的に必要な調理場の掃除も滞りないし。
お前はもっと実験とかのマッドサイエンティスト的な事の方がお似合いだろうに。
「涼太、知り合い?」
「マスターとも言っていたな」
そう言えば、フィルフィーは神界に行ったときにガブリエルの天使姿は見たがそれ以外の熾天使は見ていなかったな。
エリスは当然だが。
「あー、部下みたいなのんかな」
「私はマスターの手であり足、この身はいかようにも……」
「お前、ちょっと黙ろうか!」
薄っすらとほほを朱色に染めるその姿は多少異常の吐き気を感じさせる。
マジでやめろ。
ほら、後ろの二人の顔が蒼白になって後ずさりをしてるでしょうが!
「りょ、涼太……お主……」
「やっぱり、女を分からすべきよ。今から寝室に行くわよ」
「まてまてまて、俺はノーマルだ! 変な事を考えてんじゃないぞ」
数秒間にわたって俺の目とエリスとフィルフィーが見つめ合う。
ここで笑ったり目を逸らしたら、この理不尽な誤解の全面肯定を意する。
それだけは絶対に阻止する!
「いいわ、信じてあげる」
「あ、ありがとう」
「何かお困りですか、我がマスターよ」
お前のせいだよ!!
そうこの場で全力で叫びたい。
「それで、何でお前がここにいるんだ」
「はい、暇でしたので我らでガブリエルに共したいと申請した結果、承認されたのでこちらへ参った次第にございます」
「待て、いま我らって言ったか」
「はい、申しました」
ぐるりと辺りを見渡し、サーチでこの空間一体の魔力の気配を探る。
いる……一人は全ウォータースライダーが始まるスタート地点の屋上に、もう一人は体調不良者が出た際に運ぶ医務室に、ガブリエルはこれから来る来客のために入り口で待っているゆえに、あと二人がここに。
「ビール二つと唐揚げ三人前、枝豆二人前なのです!」
まだ幼さが残ったアニメボイスだ。
聞こえた場所へ振り向くと……いた。
ウリエルがトレーに乗せたビールやつまみを運んでいる。
そして、その終着点には探そうと思っていた二人、グリムさんとジグルさんだ。
「おう、ありがとうね、お嬢ちゃん」
「ここにいるという事は涼太の知人かい? 感心だ、ありがとう」
「マスターのために働くのです!」
一礼してその場から立ち去る。
そうして厨房の方へ行く。
真面目に働いてやがる……。
「おーい、涼太、エリス様にフィルフィー殿まで。食事ですか」
「ええ、お腹がすいたのよ。どうせだし相席してもよろしくて?」
「よろしいのですか、こんなむさい男3人と食事なんて」
おいコラ、3人ってなんだ。
俺は別にむさ苦しくないぞい。
「グリムさん、あなたがクリスのお父様ということは将来は私の義父親になるのかしら。話す機会も少ないし話しておきたいわ」
「かははっ、言われてみればそうだ。涼太、ハーレムは修羅の道だ。それも並大抵の女ではない。極上の女だ。不幸にするなよ」
「あんた、絶対に酔ってるだろ!」
グリムさんは大笑いして俺の方をバシバシと叩く。
いつもの布地の服ではなく、薄手の羽織シャツ一枚なのでダイレクトに衝撃が伝わり痛い。
「ふむ、ロゼッタにも涼太なら悪くない気がしてきたな」
「何言ってんですか、ジグルさん」
「冗談だ、お前なんぞに私の愛娘はやらん。ましてや重婚など許さん」
この人は相変わらずだなぁ。
それだけ娘の事を思ってくれているから良い父親なんだけど。
結婚する相手は大変そうだ。
「それで、クリスはどうした」
「いつものグループで行動しているとは思うんですが」
「まあ、あいつらの事だ。休みの一日を楽しんでいるのだろう」
「あと、俺のクラスの子供たちが来るので騒がしくなると思います」
「べつに構わんだろ」
流石はグリムさんだ、心が広い……というよりは、どうでも良いという感じだが。
「それにしても驚いたぞ」
「何がですか」
「お前たちのクラスだ」
「確かに、ロゼッタとシャルロットがあそこまで成長しているとは予想外だった。本当にシャルロットを我が家の騎士にして良かったと心底思う」
「そりゃどうも」




