136話 準備段階(?)
短いです。
「ミセルの圧勝に乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
グラスを持ったクリスが台の上に立ち、手を腰にかけて乾杯の合図を出す。
時間帯はすでに日が暮れ、俺たちは家へ帰った。
結論から言うと、スピードシューティングはミセルの圧勝に終わった。
と言うよりも、はじめに圧倒的な魔法を見せつけられた選手たちは自主的に棄権をしたのだ。
そのおかげで、通常の予定時刻よりも早く終わることができた。
「本当に凄かったわ。流石はミセルね」
「うむ、その歳であの火力は恐れ入る」
「ありがとうございます、フィルフィー」
魔術、そして世界でも最強と名高いフィルフィーに褒められて思わず頭を下げる。
「本当に凄かったですわ。このあとに控えている私たちの荷が重過ぎますわ」
「本当だよ。ボクなんて勝てるかどうか分からないのに。やっぱりミセルちゃんが僕の代わりに出てよぉ。代行も可能なんでしょ?」
「シャル、むしろあなたにこそ出て欲しいのですわ。ミセルはハイゼット公爵家、そしてクリスの騎士ですわ。そして、あなたはアルマス家、そして私の騎士ですわ。その力を知らしめて下さいまし」
「そうだね!明後日はボクの全力を出すよ」
「そのいきですわ」
最後まで自信がないのは相変わらずだな。
だが楽しみでもある。
この2人のお披露目は俺にとっての大きな意義がある。
ジグルさんとの約束、ロゼッタを宮廷魔導師級の魔法使いにすると契約をしたからな。
シャルも当然同じだ。
それを証明する機会だからな。
「もう、この時点で私たちのクラスは圧倒的存在を見せていますからね」
「明日は高等部がメインだ。ゆっくりと休んでくれ」
♢♦︎♢
グロテウス帝国ーーーとある薄暗い部屋にて、
「今頃は魔法聖祭の真っ最中か。くくっ」
部屋の隅に置かれた灯と机の上で揺らめくロウソクがゆらゆらと揺らめく。
その場にはもう1人、老いた老人が側にいる。
そして2人とは別の存在が2つ。
「陛下、計画は滞りなく進んでおります。召喚に必要な贄ももうすぐ集まるでしょう」
「クフフッ、本当にとんでも無いことを行いますね」
甲高い笑い声が部屋に響き渡る。
「協力、感謝しますぞ。まさか魔王軍が手を貸してくださるとは」
「利害が一致したに過ぎませんよ、クフフッ」
「異世界からの奴隷兵器召喚。おっと、勇者様のご来光と言うべきでしょうかな」
「どちらでも良い、反抗するのであれば、服従させれば良いだけだ。この【支配の首輪】を使ってな」
机の上に首輪が置かれる。
大した装飾は施されていないが、黒塗りに機械的な何かが施されている。
大きさは首につけて違和感がないほど軽量だ。
「クフフッ、我が魔王軍もしっかりとデータを取らせてもらいます」
「あぁ、好きにしてもらって構わない」
「強襲は派手にやらねばな」
「クフフッ、それは魔王軍の仕事ですよ」
「まったく、我が息子には困ったものだ。和平を結ぶなど口に出すとは。何を学園で学んできたのやら」
不満を大きなため息とともに吐き出す。
もたれた椅子がギシギシと音を立てる。
「そういえば、ご子息はどうされているのですか?」
「地下牢だ。ヤツには仕置きが必要だ」
「クフフッ、自分の息子を地下牢とは。えげつないですな」
「ふんっ、知ったことか」
「それで、決行はいつ頃になさいますかな?」
「魔王軍の方はどうなのだ?」
「クフフッ、申し訳ありませんが少し時間がかかりそうですね。魔物の調教も済んでおりません」
「仕方ないかと。召喚した者の力をつける必要があるでしょう」
「ならば、決行は準備が出来次第だ。御身もそれで構いませんか?」
口を閉ざしていた男に言葉をかける。
その場の3人の視線を向けられ、目を閉じていたが見開き姿勢を正して席に座る。
『あぁ、わたしの方は問題ナイ。貴様らノ動きを見物して期が実れば打って出ヨウ』
「よろしくお願いしますそ。悪魔公爵、ソロモン72支柱が第2位、アガレス殿」




