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130話 魔法聖祭開幕

書いている最中ですが、ようやく柚ちゃん登場までの道のりが見えました。

本当になぜここまで登場まで伸びているのでしょうかね。

自分でも不思議です。



『長らくお待たせしました。ただ今から魔法聖祭を開催します!』


 司会の合図に会場全体が大きな歓声に包まれる。

 パンっパンっ、と空砲の銃声が鳴り響き、合唱団の行進が開始される。

 

 闘技場の観客席はすでに数万の人々で埋め尽くされており、一般の席からワンランク上の席、貴族たちのための日影がある席が区切られているのが見受けられる。

 まだ始まってすらいないが、会場全体はこれでもかと言うくらいの熱気だ。

 

 会場の前には約20人の係員がプレートをもって並んでいる。

 

『では選手入場!』


 そう告げると音楽団が行進のメドレーを弾き始める。

 それと同時に先頭に先生を率いて、小さな子供たが四人一列に並んで歩いてきた。

 大きな歓声に委縮する者もいれば、観客に手を振る子供もいる。


「キャー、ユミル様ー!」

「ユミルさまー、頑張って!」

「王女様の出番ですな」

「ユミルちゃーん、がんばってー!」


 早くもラバン王国の王女であるユミルちゃんの登場に会場からは大きな声援が送られる。

 やはり人見知りなのだろうか、小さな手を握り締めて体を強張らせる。

 すると頭に乗ったマシュマロウサギのマシュマロがユミルちゃんの頭の上をヨシヨシと擦るように撫でた。

 それが効いたのか、握りしめた手が離れていく。


 

「えらい歓声だな。想像以上だ」

「当然ですよ、年に一度の魔法聖祭なんですから。それに加えて、今回は王女のユミルちゃんにセリア王国の王族。これだけでも前回の比ではないくらいに凄まじいです。盛り上がらない方がおかしいです」

「なるほどな。クリス、ところでなんで俺はクラスの前に立っているんだ?」


 闘技場の中で登場の出番を待っている俺。

 おかしい、上の部屋で見物をしようとしていたのに何でここにいるんだよ。

 整列したクラスの連中は何を馬鹿なことをと言わんばかりの目を向けてくる。


「先生は俺らの先生だろ? ならここに並ぶのは当然だぜ。何をいまさら言ってやがんだよ」

「はい、ジャッファル君! 君に異議を申し立てたい。確かに俺は先生だ。だが、あくまでそれは臨時(・・)の講師であって、担任の講師ではない。お前らの担任はどうしたよ」

「涼太様、あれですよ」

「あれってなんだよ、ミセル」


 疑問に思い、そう告げるとミセルは笑顔で脱力していた右手を首の横へ持ってくる。

 そうして、その手をスライドさせるようにクイッと横へ振り切った。

 これはあれだな。

 クビってやつか。


「ちなみにその時はミセルがボコボコにして泣きながら学園を去っていきましたね」


 うちのクラスの連中はとんでもない暴君の集まりだったようです。

 先生でも二つ名持ちの騎士には歯が立たない様だな。


「勘違いしているようですが、あのクズはコネで入った教員です。日々、問題行動や女学生を脅してセクハラ行為をしていたんです。シャルが標的になったのでぶちぎれました」

「ふむ、よくやったぞ、ミセル。俺なら存在ごとこの世から消滅させていただろう」

「どうもありがとうございます」


 いたいけな少女に手を出すクズならば仕方あるまい。

 

「しかし大丈夫だったのか? それだけの奴ならそれなりの権力者だったんだろ」

「誰にものを言っているんですか」


 はい申し訳ありませんでした。

 クリスはハイゼット家の公爵家令嬢、グリムさんはガイア陛下の学生時代からの親友と言ってもいい存在。

 さらにそのガイア陛下の友人であるケネス陛下に物を進言すれば、大抵の事は解決しますね。

 それが深刻な問題ならばなおさらだ。

 

「なので涼太さんは私たちの先生です」

「なるほど、それならば仕方ない」


 ……あれ?

 気のせいか、クリスの話に納得してしまっている自分がいるんだが。


「ちなみにビュルフがそのクビになった奴の兄だぜ。だから先生を含めて俺らのクラスには恨みしかねぇはずだ」

「ビュルフ? 誰それ」

「ほら、グロテウス帝国のクソ侯爵のボンボンだよ。先生が訓練場で喧嘩を売った奴」

「いや、すまん。本当に誰なのか分からん」

「高等部と中等部の俺らと同じ学年を兼任してるやつ……って本当に忘れてるっぽいな」

 

 すいません、聞く限りではゴミ虫だという事は分かるんですが、その記憶が全くありません。

 おかしいなぁ、基本的に出会った人物の名前は憶えているんだけど。


「ほら、あれですわよ。あの汚らしい男ですわ」


 ロゼッタが周りに気づかれないようにひそひそ声で指をさす。

 というか、ロゼッタにここまで言わすのはなかなかのつわものだな。

 俺は指を刺した方向を向く。

 するといかにも傲慢そうな態度の奴がいた。

 あ、目が合った。

 なんだよその憎しみに満ちた目は。

 そんなことされたらあれだよ?

 ……ときめいちゃうじゃん。



(【死の幻覚臭デスパヒューム】)



「ひぎゃぁぁッ」


 突然、男は足から砕け落ちる。

 まあ、犯人は俺なんだけどね。

 死の絶望感を漂わせた。

 あいつ以外には対象にしていないから周りの生徒は何が起こったかは理解できていない。


「涼太さん、なにかしましたか?」

「さあな」

「グッジョブです」

「おう」


 そう無駄話をしていると、気が付けば闘技場の入り口が目の前にある。


「それじゃあ、行くか。お前ら、俺たちが狙うのは総合一位じゃない」


 クラスからはどよめきが起きる。

 周りのクラスからは負けを宣言した組だと思われたのだろう。

 クスクスと隠しきれていない笑い声が聞こえる。

 

「いいか! 俺たちが狙うのは全種目の完全制覇だ。他者を一歩たりとも前へ踏み出させない完封勝利、全ての種目で一位を取るぞ! クソ生徒会長のレオンを含めて完膚なきまでに叩き潰す。安心しろ、お前たちならば、宮廷魔導師の一個中隊すら殲滅できる。盛大にぶちかましてやれ」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」

「どうも各クラスのみなさん、うちのクラスはあなた方をぶちのめしますのでよろしく」


 俺はこれでもかと言うくらいに盛大に挑発をする。

 実に気持ちがいい。

 当然、周りからは敵視した殺意のオンパレードが突き刺さるが。


「あはははははッ!」


 その中で腹を抱えて笑い堪えるのが我慢できなかった人物がいた。

 レオンだ。


「よう、レオン。俺の宣誓はお気に召したか?」

「ああ、実に素晴らしい。涼太らしいよ。うん、確かに君たちは強い。だけど僕も負けるわけにはいかないんでね。全力をもって対峙しよう」

 

 

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