127話 ジジイと一緒
*
白喰王・フェンリスボォルフ LV.ーーー
攻撃:C+
魔力:EEE+
俊敏:Cー
知力:DD+
防御:Dー
運:100
スキル
【噛みつきLV.MAX】
【威圧LV.MAX】
【剛爪LV.94】
【天災LV.74】
【災厄LV.91】
【神殺しLV.74】
称号
【狼王】
*
黒食番犬・サーベラス LV.ーーー
攻撃:DD
魔力:Cー
俊敏:DD+
知力:D+
防御:EEE+
運:100
スキル
【闇魔法LV.MAX】
【暗黒魔法LV.MAX】
【炎魔法LV.MAX】
【獄炎魔法LV.84】
【合成魔法LV.54】
【威圧LV.79】
【危機察知LV.88】
【神殺しLV.65】
【悪食LV.95】
称号
【冥王の番犬】
【主喰らい】
【反逆者】
*
「おいおい、ジジイ。マジで本気でやらねぇとマズイぞ」
「フォフォフォッ、えらい土産を残してきたもんじゃ」
「ヤバイっすよ。これはヤバイっす」
一つ上の領域に踏み入れたステータスを持つ敵。
現状、察するにアテナたちと俺は戦力にならないと考えていい。
となると、ヘファイストスたち男衆に頼るしかないが今の発言から勝てる見込みは少ないと言ってもいい。
「オー爺、私たちは下がった方が良いわよねぇ?」
「うむ、奴らは【神殺し】のスキルを持っておる。女子は下がっておれ」
「えっ、俺はどうなんの?」
爺さんは今、女子は下がっておれ。と言った気がした。
それすなわち、俺に戦えと言っているのか?
いやいや、ミンチになって来いって言ってる様なもんだろ。
「ちょっと!りょう君には荷が重すぎるわよ」
「お主のスキルほど後衛に役立つものはなかろう」
「俺が後衛?」
今まで戦ってきた中で、前衛以外の役職をした事がないから、いまいちピンと来ない。
「涼太よ、神々の中でもお主の【創造魔法】はワシにすらない力じゃ」
「爺さんは持ってないのか」
「魔法とは己の中にある魂、知恵、想像、才能、魔力の全てが重なり合って生まれる現象じゃ」
「じゃあ、元素魔法や結界魔法も誰でも使えるわけじゃないのか」
失敗した。
クリスたちに教えてきた事が嘘になってしまう。
「いや、元素魔法に位置する魔法は世界に充満する属性ごと魔素がある。それを使って発動するのじゃよ」
地球でいう元素か。
水なら水素を使う。
炎なら酸素を利用する。
そういう感覚なら納得だ。
「じゃあ、【創造魔法】や結界魔法は才能なのか」
「じゃから、お主はイレギュラーなのじゃよ。世界を構築しえる魔法を一つの体に押し込めるなど、アテナから聞いた時には肝が冷えたわい。出来たとしても、普通はパンクして廃人になるはずだがのぉ」
そんな危険な魔法をサラリと渡しやがったのか。
アテナの方をジロリと見る。
焦ったかの様に目をそらす辺り、ヤバイことをした自覚はある様だ。
「おい、ジジイ。無駄話してんじゃねぇよ!」
「フォフォフォ、すまんのぉ。ヘファイストス、トール、アポロン。お主らは前衛じゃ。ワシが真ん中で涼太を後衛とする。安心せぃ、アテナ。涼太はワシが守ってやろう」
「破ったら出禁にします」
「フォ!?その約束、まだ有効じゃったのか」
グロォォォォォォォォォォォォォッ!
「白いのは俺がやる!テメェらは黒いのをやりやがれ」
「あまり調子に乗らないでほしいですね」
「だが、了解なのであーる」
「やるぞ!」
ヘファイストスの掛け声に2人が動き出す。
「【限定解除】【神羅】【一騎当千】」
白狼王はヘファイストスが纏い、爆発的に向上した闘気を察知して身を低くして毛を逆だたせる。
口から見える牙と歯茎は獲物を狩る強者を思い出させる。
二つの強者がぶつかり合い、空間そのものが張り裂ける衝撃が起きる。
ゆらゆらと揺れていた髪が乱れるほどだ。
「涼太よ、力を使え」
何をとは問わない。
言わずとも何が必要かは必然的にわかる。
己の中にある想像を構築する。
アポロンとトールは神話上、己の武器が存在する事は知っているから構築する事は可能だ。
しかし、ヘファイストスはいまいちピンと来ない。
あいつに今、本当に必要なもの。
祖は雷撃を持ちし神から授かった宝具にして神具。
それ一度降りかざせば、雷光になりて敵を打ち滅ぼす。
真名はインドラ。
目を開けると、三器の神気を纏い武具が俺を中心に円を描く様に回っている。
それは、斧にして棍棒、五本の槍を持し武具。
名をヴァジュラ。
それは「粉砕するもの」であり、いくら振り払おうとも敵を貫く。
名をニョルニル
それは、必殺必中の弓。魔を滅する光あれば矢となりて敵を射殺す。
名をアポロンの弓矢
ここに更に俺はステータス向上機能を付与した。
「お前ら、使え!」
それぞれの武器を転移させる。
握った瞬間に全身の産毛が逆立つ感覚に襲われる。
それぞれの武器が己のパズルのピースにハマる感覚。
的に向けていた警戒心が闘争心へと変化し、表情も目力だけで殺せるほどの物だ。
渡した俺自身もそれにつられて高揚感に浸る。
「涼太よ、黒い方を足止めするぞぃ。お主ら!とっとと白いのを倒せ!でなければワシが終わらせるぞぃ」
「了解だ!」
爺さんが3人に合図を出す。
それと同時に俺と爺さんは右手の焦点をサーベラスに合わせる。
「グルワァァァァァァッ!」
サーベラスの周りに漆黒の球体と小さな太陽が無数に生まれる。
【暗黒魔法】と【獄炎魔法】の同時発動だ。
サーベラスの中心の首が、天を仰ぐ様に首を上げ大きく口を開ける。
一体何をしているんだろうかと疑問に思ったが、その答えはすぐに分かる。
その周りにあった球体が一点に集中していく。
闇と太陽が合成し、新たな物質へと変わっていく。
「爺さん!」
「慌てるでない」
圧縮された塊は一考を挟んで放たれる。
黒いトグロを巻く龍の如き、黒炎の光線。
「祖であるワシに魔法で勝負を挑もうとは笑止千万じゃ。【魔法断絶結界】」
コツンッ
と、杖を地に一度突く。
すると、俺と爺さんを半球状の結界の様なものが覆う。
反射的に目を半開きにするが、攻撃の余波が一切来ない。
その円を外側は地面すら燃え尽きているほどの力。
それを完全に遮断する実力。
凄いとしか言いようがない。
さて、次は俺の番だ。
「【超重力】【地獄の鎖】」
神化により大気すら歪ませる圧と地から生えた無数の鎖がサーベラスを抑え込む。
「フォフォフォッ、もしかしてお主だけでも倒せるのではないか?」
「状況を見て言えや、ジジイ!」
片手は重力を操作するため、もう片方は鎖をとどめておくために、俺は前に手を突き出して必死に抑え込んでいる。
それでも強すぎるサーベラスの抵抗に、体が悲鳴を上げて気を抜けば逆に押し返される状態だ。
刻々と俺の精神力はすり減らされ、いつ途切れるかわからない。
「なればワシも少し本気を出そう。我が力受けてみよ」
再び、コツンッ
と、爺さんは木の杖を地面に突く。
瞬間、あり得ないとしか表現できない現象が起こる。
ロキに似ているが、悪ではない、しかし圧倒的強者が放つオーラ。
それを一つに具現化した武具。
一つの槍が現れる。
爺さんはその槍を片手に持つ。
「万象を無に帰せ、グングニル」
稲妻が走った。
ほんの一筋の気づくか気づかないか分からない程度の一線。
果たして放ったかすらも分からない無音の攻撃。
だが、確かにその道には何かが通ったであろう焼け跡が地平線まで続いていた。
俺の重力にも鎖にも意を返さずに、ことごとくを凌駕して放たれたそれはサーベラスの体ごと溶かして、灰にして、無に帰して。
「フォフォフォ、まぁこんなもんじゃろ」
「爺さん、あんた本当に最高神だったんだな」
「えらい評価じゃな!?」
「名ばかりのエロジジイかと思ってた」
「ワシ悲しい」
「悪かったよ、だが助かった」
「お主が気にすることでは無い」
「あぁ、そうだな」
ひとまず、こちらは一件落着だ。
「「「ぐぁぁぁぁぁッ!!!」」」
離れた場所で3人の悲鳴が響き渡る。




