123話 魔法聖祭りの店準備
すいません。短めです。
さてさて、昨日のビンゴ大会は参加者全員に満足して貰える内容であった。
化粧シャンプーセットは見事、ケネス陛下が獲得して両夫人ともご満悦。
問題は何もおこらずに吉と言えるだろう。
それはさておき、只今俺はラバン王国の商業ギルドに来店している。
時間は5時30分。
無理を言って、早めに開けてもらうことにした。
「朝早くからの申し出を受けて頂きありがとうございます」
「いえいえ、月宮様のご活躍はセリア王国を通じて随時入ってきております。稀代の天才だとか」
「大げさですよ」
セリア王国の商業ギルドから情報は入って来ていたのか。
流石は商業ギルド、情報の根回しに関しては一級とみる。
「して、月宮様は最近お店を開店されるとか」
「はい、ちょうどこの後にセリア王国に行く予定ですね」
「ここからですか?」
しまった。
ここからセリア王国まで、普通に考えれば早くとも二日はかかる。
さてどうしたものか、嘘をつくにしては馬鹿げている距離だ。
「実は翡翠の騎士が俺の知り合いなんです。彼は時空魔法を使えるので送迎してもらうつもりです」
「時空魔法!? となると、誕生祭前日に突如として現れたのは本当なんですか」
予想もしていなかった発言に我を忘れて、身を俺の方へ出す。
「ええ、なので問題は何もありません」
「なるほど、確かにそれなら道理ですね」
「さて、前置きはこれくらいにして、本題に入りましょう」
こう世間話をするのも悪くはないが、今日は俺の店の開店日。
武器屋にしろ、ファストフードとカフェにしろ、当日にオーナーである俺がいないのはクルーも心配をするはずだ。
「では今回、月宮様は魔法聖祭にちなんで屋台を出店するという事でよろしいですか」
「はい」
「それで何を出品されるご予定でしょうか」
「今回、私はこれを出品させて貰いたいです」
そう言い、俺はアイテムボックスから完全に密閉された箱を出す。
四方50センチほどの大きさで、上部分に金具が取り付けられている。
「これは何ですか?」
「アイスです」
「アイス……すなわち氷という事ですか。確かに、この夏場に氷を提供するというのは願ってもありませんが、希少な上に値を張るとなると、とても売れるとは……」
なるほど、確かにこのクソ暑い時期に氷を出す事自体が困難極まりないだろう。
冬に得た氷を貯蔵するだけでも苦労は目に見えている。
「これは全て自家製ですよ。魔法を併用して作りました」
「魔法、つまり月宮様は魔導師なのですか?」
「確かに私も使えますが、優秀なスタッフのおかげですかね」
俺は営業スマイルでそう告げる。
ちなみに、そのスタッフとはクリスの事であり、魔法の練習とお小遣い稼ぎのために作ると言い出した。
正直、冷凍庫で凍らせれば完成なのだが、こちらとしても困る事はないのでオーケーを出したのだ。
「羨ましいですね。それでは中身の方を拝見さていただいても?」
「こちらになります」
箱の金具を外すと箱の中から液体窒素でも溢れ出ているのか白い冷気が現れる。
白い冷気が通過した際に、心なしか火照っていた肌が冷やされる。
「これがアイスですか」
「お一つどうぞ」
「ではいただきます」
アイスの種類はオレンジ、グレープ、リンゴの三種類であり、すべて木の棒に刺さったアイスキャンディー仕様である。
「これは……病みつきになりますね」
「価格も一本100ペルで子供にも人気は出るはずです」
「分かりました。では店を出す場所はどうされますか?」
「家の前でお願いします」
「そうでした。月宮様のお宅は学園の前でしたね。かしこまりました、ではよおしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
さし伸ばされた手を握り、交渉成立だ。
そして、
午前9時40分、
ファストフード店とカフェの従業員が集まっている。
みんな緊張した様子はない。
すっかり従業員としての板がついたかの様な顔ぶりである。
「これから大変になるだろう。悪いが、俺が助けてやれることも少なくなる。その時は遠慮なく、多少なり貴族とのもめごとも起きるだろう。その時は、遠慮なく四大公爵に頼め」
「「「「はい!」」」」
「よろしい、俺は他に用事がある。あとの事は任せたぞ」
「「「「はい!」」」」
この様子なら俺が居なくともやっていける。
なら邪魔者な俺は早くに退散することにしよう。
それに俺はこれからやらなくてはならないことがある。
これからのため、そして俺自身のために優先してやりたいことだ。
「じゃあ、がんばれよ」
俺はその場から転移する。




