122話 国王誕生祭(二次会)
夜会が終わり、日をまたいで夕方に差し掛かろうという時間帯。
「クハハハッ、私は本当に今回の誕生日を迎えられて幸せだ。誕生祭での貴族たちには悪いが、これぞ誕生会! さあ、楽しもうではないか!」
「父上、お酒はほどほどにして下さい」
「何を言うか、レオンよ。夜会のあの堅苦しい空気から解放されたのだ。それにここは私たちの憩いの場だ」
すでにお酒を飲んでハイテンションのケネス陛下はソファーに座り、目の前にいるガイア陛下たちとヒャッハー状態に陥っている。
無論、ここは俺の家の最上階。
俺たちの関係者のみを呼んで、日々の疲れを吹き飛ばしてもらおうと思った。
セリア王国、ラバン王国の王族にハイゼット家、アルマス家、そして誕生祭が終わり晴れて解放されたフィルフィーなどを含めた大人数がこの場にいる。
ソフィーアちゃんとユミナちゃんは別の部屋に創った子供用巨大アスレチックに挑戦中である。
両夫人はアスレチックのそばに置いてあるテラスでのんびりとアフアヌーンティーを楽しんでいる。
「ねぇ、涼太。あの子は誰?」
「あの子って?」
「厨房で料理している子よ」
エリスの視線の先にいる人物、すなわちメイドのガブリエルの事を言っているのだろう。
「あいつがどうしたんだよ」
「どういう関係よ」
「普通にメイドだが?」
「…………」
数秒間、エリスは俺の目をじっと見つめる。
「ふぅん……どうやら嘘は言っていないようね」
「何がだよ」
「そうね、これからの催し企画について知りたいわ」
「バレてたのかよ」
どうせなので、今回はビンゴ大会でもしようかと思っている。
ケネス陛下には俺からのプレゼントをするのを忘れていたので、みんなで楽しく盛り上げたい。
景品もそれなりに凄いものを用意したので期待してほしい。
「えらく楽しそうね」
「分かるか?」
「あなたのことだから、とんでもないものを用意しているのでしょうね」
♢♦♢
時刻はちょうど8時を過ぎたあたり。
男衆はペースダウンしているが、まだ楽しくお喋りしながらお酒を飲んでいる。
やはり国の内政の話や経費の話をしている辺り、国のお偉いさんの集まりなのだと常々実感する。
「はい! やってまいりました。今回最大のイベント、ビンゴ大会でーす!」
「「「「「いえーい!」」」」
「「「「うぉぉぉぉぉ!」」」」
会場には野太い声と甲高い声が響き渡る。
「ではルールを説明します。皆様はお手元のカードに記載されておりますランダムの数字が前方のスクリーンに表示されましたら、その個所をくり抜いてください。縦横斜めのどれか一列が揃ったらビンゴです。ビンゴした方から私が用意した商品を一つ差し上げます。ただしその商品にも番号指名が付いており、何が出るかは分かりませんが、皆様に満足頂ける商品だと確信しております。なお、当たった商品の交換等は両者の許可の元お願いします。以上!」
因みに景品を一部見せておく。
~~~商品リスト~~~
・ジュエルシリーズ(詰め合わせ10キログラム)
・宝石詰め合わせセット(5キログラム、アクセサリーに可)
・変わり身の指輪(10回)&状態異常回復の指輪
・疑似聖剣エクスンカリバー改(涼太作)
・疑似魔剣グラムン真(涼太作)
・アイテムボックス(15立方メートル)
・化粧品&シャンプーリンス、トリートメント詰め合わせセット一年分(劣化なし)
・お酒飲み放題チケット
……………………
…………
……
…
・シークレット
~~~~~~~~~~~~~~
「あなた! 化粧品シャンプーセットを狙いなさい! 外したら、あなたの恥ずかしい話を国中に
言いふらすわよ」
「ふぁッ!?}
プリシラさんの唐突な発言にガウス陛下の声が裏返ったかと思えば、顔が真っ青になってしまう。
狂気に満ちた顔は獲物を射殺すかのような目つきである。
「うふふふっ、レオン、あなた。分かってるわよね?」
「え……私はアイテムボックスが……」
「僕も剣が魅力的で……」
「は?」
「「いいえ! 是非とも化粧品シャンプーセットを狙わせていただきます」」
どうやら男は女には勝てない運命らしい。
逆らう事すら許されない、そんな雰囲気を醸し出している。
というか、宝石類の方が間違いなく価値はあるし、それを狙うと思っていたんだけど見当が外れた。
化粧シャンプーセットはもう一組増やしておくか。
「涼太さん、シークレットって何ですか?」
「さぁ、何だろうな」
「むぅ、知りたいですよ!」
「教えたらシークレットじゃなくなるだろ」
そして時は進み、気が付けばリーチになっている人物もちらほら出てきた。
血眼で画面と己のカードを確認してはの繰り返しをしている陛下。
モフモフの小動物を膝の上に乗せて楽しく会話をしている少女二人。
以外にも、フィルフィーとエリスは興味がなさそうだ。
椅子に座りながらデザートを食べている片手間にビンゴをやっているように見える。
テーブルの上には本も並べられており、完全にリラックスムードである。
「なぜだ! あと19番だけなのになぜこないのだ」
「陛下、それはフラグですから言わない方が……」
「うるさい! ここで当てなくては私は……私は……」
もう耳すら傾けてもらえない様である。
ガウス陛下、そんなにも知られたくない事があったのね。
国王なのに、主にご満悦して貰えるように無我夢中で働く犬の様だ。
もう、放っておこう。
それが一番だと思う。
『えー、次に行きます。18番、18番がでました』
箱の中から引いた番号がスクリーンに映し出される。
「あら、ビンゴね」
「ビンゴー!」
ソファーに寝そべっていたエリスとソフィーアちゃんの声がクリアに響き渡る。
「クソォォォォッ! なぜ一つ上が来ないのだ!」
「陛下、うるさいです」
「あなた、みっともないわよ」
この人、絶対にギャンブル依存症まっしぐらなタイプだよな。
いちいち反応が過剰だ。
さておき、ビンゴした二人は壇上の上に来る。
「おめでとう、とは言っても何が当たるかはランダムだけどね」
「私は何でもいいわよ」
「わたしはね! おかあさまにあげるの!」
何とも素晴らしい心構えのソフィーアちゃん。
エリスもだが、自分に貪欲すぎる人物は当たらず、欲のない人から当たるらしい。
「それじゃあ、どっちから引く?」
「ソフィーアちゃんからでいいわよ」
「うん!」
マシュマロウサギを乗せたソフィーアちゃんが前に出る。
気のせいか、マシュマロウサギが光り輝いている。
これって、スキルを発動してるな。
ちょっと待て、こいつの能力に「幸運」というものがある上に、ステータスの幸運値も普通の5倍だ。
「えい!」
小さな箱からくじを引く。
すると中から、黄金に光り輝く金色のくじ。
いわゆる大当たり的くじが出てきた。
「おにいちゃん、すうじがかいてないよ?」
「…………」
マシュマロウサギの方を見ると、見事なドヤ顔をしてやがる。
「涼太、どうしたのよ」
「いやなぁ、いきなりシークレットを当てられるとは予想外だった」
まわりがざわめく。
「涼太さん、シークレットって何ですか?」
「あー、要するに当たり枠の全てが景品だ」
「それって好きなものを一つ貰えるってことですか?」
「いや、景品一種類ずつの全種が貰える。あー、景品自体は二組用意しているから安心していい」
ソフィーアちゃんはよく分かっていないが、周りの人たちは十分に理解している。
ガウス陛下は、神にでも祈るかのようにソフィーアちゃんを崇める。
興味なさげなエリスでさえ、目を見開く。
「涼太、あなた自分が何を言っているのか分かってる?」
「ん、まぁ別に俺が作ったり取ってきたものだし」
「そうよねぇ、でも自重は覚えた方が良いわよ」
「そうかな?」
周りの人物たちも大きく頷く。




