111話 鬼との対話
一か月半の間、書き貯めていた分を投稿しており、忙しすぎて一切執筆をしてませんでした。
真面目に書いていきます。
とある昼頃、
まったりとした空間でお茶を飲みながら、パソコンをカタカタと打っていると廊下から物音が鳴り響く。
一体何事かと思えば、ガイア陛下が俺の部屋に入ってきた。
「涼太よ、ケネスからの手紙の内容は本当か?」
「何と書いてあったのですか」
「エリス王女が目覚めたとか、悪魔が軍勢でやってきたとか、魔族を保護したとか訳が分からん」
「それで実際に見に来たと」
「うむ」
確かに実際に聞くほうが手っ取り早いだろう。
セリア王国側の家とラバン王国側の家は開通させたから、来ようと思えばいつでも来られる。
本当に俺って便利だよな。
来客も来たことだしパソコンをシャットダウンする。
「誰か来たの?」
妙に騒がしいのに気が付いたのか、エリスが部屋から出てくる。
すっかり回復して、日常生活には何の支障もない程度に動けるようになった。
「もしかしてエリスか」
「お久しぶりですね、叔父様」
「おぉ、目覚めたのか。本当に良かった」
「涼太のおかげですわ」
「そうだな。涼太よ、遅まきながらありがとう」
「俺は出来ることをしただけです」
正直、ここまで生きて永らえたのは、エリスの強固たる生命力のおかげだと思う。
悪魔に乗っ取られないように何年も戦いつ続けてきたのだ。
その精神がなければ、俺が対処しても以前に悪魔に完全に取りつかれていた貴族のように廃人になっていた可能性が非常に高い。
「謙遜はするな」
「いいのよ、涼太はそういう人ですから」
エリスは俺の背中から腕を回して抱き着く。
体重も少し増えたよな。
「ほぉ、仲の良いことだな」
「そんなことないです...嘘です」
全くそんなことはないと思っているのだが、エリスの手が俺の首に添えられる。
見事に頸動脈を握られているので、どれだけ力差があろうと関係ない。
血管を硬化る能力があれば関係ないだろうが、あいにく俺はそこまで人外ではない。
本当に女って怖いよね。
笑顔なのに腹の中では、相手をどう倒そうか考えているのだから。
「それでどうされるのですか」
「ケネスをここに呼んでくれるか?」
「分かりました」
面倒くさいのでケネス陛下の自室の前まで転移する。
目の前にメイドさんが鉢合わせる形になる。
しかし俺のことを分かっているのか、何事もなくケネス陛下に合わせてくれた。
「どうしたんだ?」
「ガイア陛下が色々と話したいらしいです。うちに来てくれませんか」
「移動はどうする」
「転移します」
「そうか、お主であったものな」
ケネス陛下は先ほどのメイドに一言声をかけて俺と一緒に移動する。
「おお、ガイア。久しぶりだな」
「お前のほうこそエリス王女が元気になって何よりだ」
「叔父様、私はもう王女ではありませんわ。その言い方には語弊があります」
「そうだったな、すまない」
自分のミスに苦笑する。
「立ち話も何だ、座りながら話そう」
「でしたら例の件もあるので会議室を使いますか?」
「うむ、そうしよう」
刺客は絶対に入ることなどあり得ない上に、更に厳重なセキュリティで守られている会議室。
円卓の机に一人かけの椅子が数個。
他には基本的に何もない。
蒸れた紅茶をカップに注いでいく。
「さて、明後日には誕生祭だな。少し早いがおめでとう」
「おめでとうございます」
「おめでとう、お父様」
「ありがとう、何事もなくとはいかなかったが最高の誕生祭になるだろうな」
「ケネスよ、すまぬが王城で何があったのか話してはくれぬか?書面だけでは理解が追い付かない」
ガイア陛下は疑問に満ちた顔つきで尋ねる。
まあ、あの惨状は当事者でないと理解できない節目もあるからな。
「俺から説明させて貰いますと、悪魔がエリスの体を内から蝕んでいたんです」
「ふむ、それで?」
「かなりの大物だったので、仲間を呼ばせて一掃しました」
「あの時は圧巻だったな」
懐かしげな出来事に浸る。
あれほどまでに爽快な戦いもそうそう無いだろう。
以前の紫の迷宮第一層も似たようなものだが、レベルが違うので比べるのに値しない。
「その時に魔族と手を組んだと書いてあった。私はそれが一番理解できん」
「文面にも書いた通りだ。涼太の仲間らしい」
「そうなのか?」
「行き倒れを保護したんですよ。魔界では乱世状態らしいです」
人族が住んでいる領地と魔界を隔てる大きな山脈。
その周囲を覆う森林。
強すぎる魔物が縄張りにしているがゆえに人族は立ち入りを禁止にした。
だから人族と魔族は今まで交流はしようとは思わなかったし、やろうにも出来なかった。
因みにそれが『死の樹海』だ。
俺ってそれを知らずにレベリングしてたのね。
黒の迷宮が今まで発見されなかったのも納得だ。
果てしない樹海に強力な魔物がうじゃうじゃ居るんだ。
「そうか、大変なんだな」
「他人事じゃないですよ、魔族が軍をもってこちらへ攻め入ろうとしている話です」
「それは誠か!?」
「詳しい話は本人たちに聞いてください」
空間に線が入り、一つの扉が現れる。
大きな音と共に開かれる。
「妾、惨状!」
手を腰に当てて胸を強調させる。
しかし幼女なだけあって色気などは皆無である。
あほの子だ。
国を背負うトップの前で何て事を言うんだ。
ケネス陛下は以前に面識があるが故になんとなくは察したが、ガイア陛下に関しては固まっているよ。
「え、魔族?」
「いかにも、妾は鬼の国の総代が娘の椿なのじゃ!」
溜息しか出てこないよ。
いや、それがこの椿の持ち味なのだから仕方ないのかな。
となりのエリスも想像を絶する登場に笑いをこらえきれずに下を向く。
その後に続いて豪鬼と遠蛇も出てくる。
豪鬼の手には酒瓶が握られており、豪快に飲み干して部屋の傍におく。
相変わらずの酒豪だ。
「むっ、確か主は王であったか。失礼しましたのですじゃ」
「気にせんよ」
「おい涼太、ワシらの席がないぞ」
「ほれ」
新しく椅子を創造する。
豪鬼は豪快にその椅子に座る。
普通の椅子だが、ギシギシと音を立てる。
2メートルを超える巨体を支えるには物足りないか。
「それじゃあ、俺から説明させてもらうよ。こちらはセリア王国の国王陛下だ。横のはエリス」
「ちょっと、私の説明が雑じゃない?」
エリスが不満そうにつぶやく。
しかし、これ以上の説明が思いつかない。
ぶっちゃけ、エリスはこの場に必要ないと思うんだけどなぁ。
「むおっ、お主も王様であったか。失礼したのじゃ」
「気にしないから楽にしたまえ」
「そうするのじゃ!」
元気な返事と共に勢いよく椅子に座る。
不釣り合いの大きさの椅子の高さを遠蛇が調節する。
「涼太、ワシらを呼んだ理由はなんじゃ」
「出会ったときにも話しただろう。いっその事、国のトップと話を付けた方が手っ取り早い」
「なるほど、ワシは豪鬼じゃ」
「私は遠蛇と申します」
「さて、自己紹介も終えた事だし話をしましょう。魔族がこちらへ攻め入ろうとしている件です」
手っ取り早く終わらせたい。
こちらの精神も徐々に削られている。
「豪鬼と言ったか、それは事実か?」
「ああ、いつかは分らんがな」
「そうか、その事実を確認できただけでもありがたい」
ガイア陛下は確固たる事実を確認できた事に安堵して背にもたれる。
「それと、一段落すれば俺も魔界に行こうかと思います」
「なぜだ?」
「滅んだ鬼の国の住民を探しに行きます。それと、魔界で何が起こっているのかを見に行きたいのです」
「それって、私も入ってるわよね?」
「嫌だと言っても付いてくるだろ」
「当然よ」
自分の見たことのない世界を体験したいと言っていたしな。
それに置いこうものなら、確実に帰ってきた時に拗ねる。
「とりあえず、話は以上です」
「鬼の者よ、何かあれば私たちに言ってくれ。出来るだけの譲歩はしよう」
「うむ、助かる」
4章終




