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105話 2対10万



「死に晒せぇぇぇぇぇぇッ!」


 俺は【時空魔法】を刀に上乗せして、空に群がっている悪魔たちに向けて斬撃を放つ。

 刀を振るった軌道に従って、空間に一筋の線が入る。

 その線は空間をずらし、その直線上にいた悪魔たちは身動き1つの出来ずに真っ二つになる。

 一度の攻撃で数千単位の悪魔が地に落下していく。


 これぞまさに超効率的な戦法。

 群がる蟻は一匹ずつ潰さずに熱湯で殺す。

 それと同じだ。

 それにしても爽快な事この上ない。

 今まで仕事続きで今朝とかストレスでぶっ倒れそうだった。

 しかし、これ程までに楽しいボーナスステージに出会えるなんて本当にラッキーだな。

 日々の苦労が報われるって感じかな?

 基本的に意思疎通ができる者ならば、殺生はしたくない。

 だけど悪魔共こいつらは根っこからの悪だ。

 なんの躊躇もせずに倒せる。

 そう、これは戦いでなく害虫駆除だ。

 一匹残らず滅ぼしてやる!


「【大山】」


 元素魔法により中心に大きな山が生まれる。

 その標高は数十メートル。

 悪魔たちよりも高くそびえ立つ。

 その悪魔たちは何が起こったのか分からずに、攪乱し慌てふためく。

 よし、準備は完了だ。



《バカな! やつダ! もう一匹ヲヤレ!》


 ガミジンの命令により、群がる悪魔たちが一斉に豪鬼へ襲いかかる。

 ほぼ、全軍が向かってくるので悪魔たちが集まり黒い物体が物質量で豪鬼を潰そうとしている様に見える。


 流石の豪鬼でも無理だろうか。


「手を貸そうか」

「手は出すな。これを出すのは幾年ぶりだろうか……」


 あー、本当にマズイな。

 豪鬼は嬉々とした表情で返答する。

 これを断れば、怒りで暴れ出すかもしれないほどにだ。


 オーラが膨れ上がり、地面にはいくつも重なったクレーターが豪華を中心に現れる。


 何より驚いたのが、そのオーラが具現化し形を成して見えているという事だ。

 豪鬼を覆ったオーラは時が経つにつれて、顔から胴体、手へと巨大な身体へ変貌していく。

 数十メートルはあるだろう深紅の鎧を纏った姿。

 俺を含めて悪魔たちも硬直せずにはいられなかった。


 その姿はさながら……。



「【鬼神降臨】」



 おいおい、マジかよ。

 かっこよすぎるだろ、この爺さん。

 確かにこれなら最強の鬼だと納得できる。

 というか、何で魔王に負けたのかが理解できない。

 神の気配はないが、人外の領域に達している。


 豪鬼は刀を悪魔が群がる中心へ放つ。

 突きだ。

 その突きは悪魔色に染められた黒に穴を開ける。


「ふはは、何とも心地良いな!!」

「おい、豪鬼! それ俺にも教えてくれよ」

「これは鬼族の秘義じゃ。鬼にしか使えんよ」


 ちっ、残念だ。

 それご出来るなら、豪鬼と怪獣対決みたいな事が出来ると思ったのに。


「それにしても数が減らんのぉ」

「10万だからな」

「そうだ! 部屋にあった酒がなくなったから追加が欲しい」

「はぁ!? もうなくなったのか!」


 一升瓶が50本近くと、他にも数は揃えていたはずだぞ?


「酒など鬼にとっては水だ」

「確かドワーフも酒好きって書いてあったな」

「うむ、奴らとは飲み仲間じゃ。あいにく国が無くなったから会えておらんがな」

「会えたら飛びっきりの酒を出すよ」

「ほう、楽しみじゃ」


 ドワーフか、小柄で力持ちで酒好き。

 地下に国を造っていると本で読んだ。

 見つけるのは大変そうだな。



 そんな世間話をしていると、当然辺りに振動が響き渡る。

 陛下や椿たちも驚いている。


「何じゃ? 何をしたんじゃよ」

「まぁ見てろ。一掃だ」


 俺は手を地につける。

 そして手に込めた魔力を生成した大山の地下に向けて放つ。

 これは導火線だ。

 さぁ、派手にいこうか。


 地震は更に大きくなり、山の頂上では黒い煙が湧きたっている。



「【大噴火】」



 生成されて熱され膨張したマグマが頂上から爆発する。

 山自体の規模はが小さいが、俺が手を加えた物なので威力は絶大だ。

 全てを溶かすマグマが飛び散り、悪魔たちに襲いかかる。

 スコリアや火山弾も付け加えてだ。

 また、水分が爆発的な速度で気体へ変わり水蒸気爆発を起こす。

 俺は豪鬼と下の陛下たちに何重にも防御系統の魔法をかける。


 数秒後、爆発の波が一帯に広がり数百度の熱が辺りを蝕む。

 噴火の近くにいた悪魔たちは例外なく、その天災に巻き込まれて身を滅ぼす。

 さながら地獄絵図かな。

 まぁ、地獄界からの来客だから丁度良いだろう。



「ふははっ、大地の怒りか!」

「なにそれ?」

「数百年に一度起こるものじゃよ」


 へぇ、こちらではそんな言い方なんだ。

 確かに大地が爆発したから、その表現は的を得ているな。


「だが数は減ったな」

「後は敵将かの」

「あぁ、終わらせるか」


 地に膝をつけて虫の息のガミジンの元へ降り立つ。


《ガァ、馬鹿ナ。なぜダ、我が兵力ハ最強》

「悪いが、お前たちに同情も慈悲もない」

《クソクソクソぉぉぉォぉォォ! シねぇぇ! 》

「あの世で悔い改めろ」


 手をかざし消滅させる。

 ガミジンは一瞬にして消え去る。


「終わったな」

「良き戦いであったぞ」



 ♢♦︎♢



 ラバン王国8代国王のケネスは夢を見ているかの様な現象に次々にあっている。

 親友の紹介の人物であり、我が息子のレオンの友だと称される人物が眠れる娘の胸に腕を刺したのだ。

 間違いなく急所だ。

 ケネスは血相を変えて止めに入ったが、涼太の緊迫した表情と喝に手を止める。


 そうして暴れる娘を二人掛かりで抑えたと思えば、娘の中から悍ましいほどに黒い物体が引きずり出された。


 名をガミジン。

 悪魔たちを束ねる72柱の4席だと答えられた時は、この世の終わりかと思った。

 しかし、涼太はその悪魔を蹴り飛ばしてどこか分からない空間へ移動する。


 それだけでも衝撃の事実だが、魔族を庇っていると聞かされた時には驚かずにはいられない。

 しかしケネスが聞いていた印象とは全く違う可愛らしい子供の姿がそのにはあった。


 角が外れれば人族と何の大差もない。


 涼太と豪鬼と名乗る鬼はケネスと椿たちを残して悪魔の軍勢と対峙する。


「百聞は一見にしかずと言うが、本当に変わらないものなのだな」

「お主は妾たちの事をどう思っておったのですじゃ?」

「もっと奇怪な存在だと思っておった」

「妾はそんな不細工じゃないのじゃー!」

「あぁ、悪かった。私もお前たちと話して見たいと感じたよ」

「お二人とも、始まります」


 遠蛇が外の2人が獲物を取り出したのを見て告げる。


「さて、見ものだな」



 それからの戦いは今まで自分が経験した事のない戦い。

 蹂躙という表現が正しいだろう。

 一太刀で数えるのも馬鹿らしくなるほどの悪魔を屠ったのだ。


「凄いのじゃ! 空間がズレたのじゃ」

「流石は涼太様ですね」

「お前たちは涼太の実力を知っているのか?」


 未だ話でしか涼太の実力を知らないガロウが尋ねる。


「知らんのじゃ、でもドラゴンを手なずけておったのじゃ!」

「となると…レッドドラゴンか」

「そんな雑魚じゃないのじゃ!」


 ケネスは旋律を覚えた。

 ドラゴンといえば、この世界で最強種の一角。

 倒すのにも腕利きの冒険者が大隊規模で戦わないと勝てない相手。

 そのドラゴンを雑魚呼ばわり。

 どれほどの実力を隠し持っているのか計り知れないと感じる。


「爺も凄いのじゃよ?」

「ええ、涼太様に張り合うにはアレを使うでしょうね」

「アレじゃの」


 アレとは一体何なのだろうか。

 疑問に思い問おうかと思うが、その答えはすぐに露わになる。

 巨大な鬼。


「なっ!」

「おぉ、爺も楽しそうじゃの」

「豪鬼様だから楽しめるのですよ。普通ならば不可能です」

「余裕だな、数はまだまだいるぞ?」

「何とかするのじゃ」


 椿は涼太と豪鬼を信用しているのか、任せっきりである。


 涼太が手を地につける。

 すると大きな地揺れが起こる。

 そして取り乱す暇もなくそれは起こった。


「まさか……」

「これは予想外ですね」

「大地を味方につけようとは……凄いのじゃ!」


 過去に何度かあったと書籍でしかガロウが見た事のない現象。

 生物としての本能が危機を察している。

 悪魔たちも灼熱の業火に身を滅ぼす。

 自分たちを覆っている結界を避けて通るマグマは、中で感じ取れないもの居座ることすら許されない空間だと察する。


「ハハハハハッ!」


 ケネスは笑わずにはいられなかった。


「どうしたのじゃ?」

「いや、この様な体験を生きているうちに出来るとは。これを笑わずにはいられない」

「そうなのかの」

「涼太は、この世界を護る守護者なのかもな」



 ケネスは目の前にいる少年の背中が果てしなく大きい事に感嘆せざるおえなかった。



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