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104話 VSソロモン72柱 第4席軍




「ァゥァァァァァガァァッ!」


 俺の手を埋め込まれた王女は呻き声を上げながら、悶え苦しむ。


「涼太! 何をしておるか!」

「いいから黙ってろ!」


 陛下が俺の腕を掴み、必死に離そうとする。

 しかし、今はそんな事に構っている暇などない。

 刻一刻を争う事態だ。

 中と言っても、肉体ではない。

 精神体に直接接触して手探りに探す。


 中はまるで空洞で、果てしない空間が広がっている。

 どこに奴がいるのか分からない。

 精神体になって入るのが、手っ取り早いかもしれないが、暴れ出したら王女の精神が持たない。

 正直な話だが、精神なかはもうすでにボロボロだ。

 いつ崩壊するかも分からない。



「ッ! 見つけた!」

「アァァァァァァッ!」


 今にも舌を噛み切りそうなほどの苦痛。

 王女の苦しみが更に増大し、押えるには人手が足りない。

 空いている手を王女の口に突っ込み、舌を噛み切らない様に押さえ込む。

 力は長年動かずに衰えている物ではない。

 普通の人間ならば骨ごと噛みちぎられそうなほど。

 もがいている足が非常に邪魔だな。


「レオン、陛下! 足を押えろ!」

「わ、分かった。うぉ……」

「了解だ、ぐっ」

「女の力だと思うな。全力で押さえ込め」


 人間は身体の力を10パーセントしか使えない。

 それは脳が壊れない様にリミットをしているからだ。

 それが解かれた状態に近いのだろうか。

 陛下とレオンが全体重を乗せて、押さえ込めようやく身動きが出来ない。

 腕は俺の背中を引っ掻き、服が破ける。

 王妃とユミナちゃんは何が起きたのか、分からずにお互いを抱きしめる。


「フゥゥゥゥ」


 ゆっくりと傷つけない様に出す。

 そして奴は姿を現した。

 王女の中から不釣り合いなほどに大きな巨体、その皮膚は黒く悍ましい。

 王妃は見せてはいけないものだと、ユミナちゃんの視線を自分の胸に追いやる。


「な、なんだ。何なんだこいつは!」

「バケモノか!?」

「いや、悪魔だよ」


 王女の体から全て抜き出した悪魔は実体化する。

 それを見逃さずに蹴りを入れて、外に吹き飛ばす。

 塔の小さな部屋が爆散し、悪魔と共に崩れ落ちる。

 俺は離れた場所に陛下たちと転移し、崩落から身を守る。



《ぐっ、クソぉ。ナニが起こったのだ。アト少しでコノ娘をシハイできたというノに》


 悪魔は積み重なった瓦礫の中から姿を現わす。

 まぁ、この程度で傷つくはずはないよな。


「よぉ、悪魔。俺の忠告は知らされていないのか?」

《ナニっ? 何のハナシだ。ワレは長年コノ娘を蝕ミシハイするがため》


 つまり、こいつは知らないって事か。

 二度目はないと言った事は知らされていない。

 まぁ、関係ないわ。


「おい、お前は72柱とやらか?」


 確か以前に倒し損ねたのが、ラウムって悪魔だ。

 神界で見た本の内容だと72柱の中で40番の雑魚だった。


《イかにも、よく知ってオルな。ワレハ72柱が4席、ガミジンなり》


 へぇ、中々の大物が出てきたってところか。


「陛下! 何事……何だこのバケモノは!」

「なぜこの様なバケモノが……」

「貴様ら! こやつは悪魔だ! 絶対に手を出すな、無駄死にをするだけだ!」


 今にも武器を抜こうとする兵士を止める。

 確かに普通なら無駄死にをするかもしれない。

 なら手を出さないのが通り。

 こんな時にでも冷静な判断は出来るのは流石だ。


《虫ケラが、踏み潰しテ……》

「誰が虫ケラだ、羽虫が!」


 上からのボレーシュートが綺麗に決まり、悪魔は再び地面にひれ伏す。

 その上から足で押さえつける。


 さて、どう調理してやろうか。

 いや、待てよ……。

 確か本の内容だと72柱の悪魔には各々の軍団がいたか。

 将を倒して報復ってのも後々怖いな。


「どうした? 1人じゃ何も出来ない悪魔さん。お仲間でも呼んでみるか?」

《ナメるなぁァ!》


 悪魔は俺の足を振り払い、距離を取り様子を伺う。


《イイだろう。ココまで馬鹿二されたノは初めてダ! 我ガ支配カの全てデコノ国ごとほろぼしてヤル!》


 悪魔が手を空にかざす。

 すると暗雲がここ一帯にだけ集結する。

 大きな魔法陣が浮かび上がる。


 過剰な演出だな。


「な、何なのだ……」

「この国は滅びるのか……」


 空を埋め尽くすほどの黒が辺りに広がる。

 雲ではない、ゴキブリみたいで気持ちが悪い。

 これ一体一体が悪魔なんだよな。

 数で言うと、数万ってところか。

 いや、十万はいるかもしれない。


《及びでスカ》

《計画ハすすんでオリます》

《ウム、そこの人間ガ我のアタマをチにつけた。その報いトシテこの国を滅ぼス》

《なるほど、ヨイ案です》


 カクカク言葉が増えて聞き辛い。


《デハ名乗ろう。オレは72柱が17席、ボティス》

《私は72柱が……ブヘッ!》

「いちいち長いわ! 同じ紹介しか出来ないのか!」


 本当にしつこいくらいの長い紹介だな。

 これで全軍か。

 俺は創造して悪魔の全軍を別の空間へ移動する。

 悪魔たちは情景が変わった事に驚き、不快な喚き声を上げる。



「何だ……ここは」

「陛下、あなたは俺の力を見たいと言いましたね」

「うむ」

「この悪魔で証明しましょう」

「勝てるのか?」

「愚問ですよ。ただしここで起こった事は厳守して貰う」

「分かった」


 了承もしてくれた。

 良かった、これで全力が出せる。

 さてどう倒そうかな。

 敵将の強さは3桁後半だが、残りの悪魔はせめて魔物でAからSSランク程度。


 ならあいつの力を見るうってつけの機会だ。

 それにレベリングには適している。

 俺は1つの空間の扉を開く。



「涼太ー! 会いたかったのじゃーって何かキモいのがおるのじゃ」

「おや、悪魔ですか」

「おうおう、わんさかおるのぉ。何に喧嘩を売ったのだ」


 扉を開けた途端に椿が抱きついてきた。

 その後から遠蛇と豪鬼も現れる。


「この者らは……」

「何じゃ、人間かの?」

「椿、この人は人族の王様だよ」

「むぉ! 不快な発言じゃった! 妾は鬼の国の総代が娘、椿なのじゃ!」


 元気な挨拶をありがとう。

 陛下は当然困惑している。

 いきなり魔族が現れたら驚くよな、


「陛下、この人たちは事情があって保護した魔族の方々です。話だと別の魔族に国を滅ぼされたらしいです」

「そ、そうなのか。大変だったのだな」

「それじゃあ、遠蛇と椿は陛下と一緒に居てくれ」

「分かったのじゃ!」


 もしもの事があれば、遠蛇が助けてくれるだろう。

 遠蛇も強さは中々のものだ。

 雑魚なら数十匹なら倒せるだろうが数が数だ。

 結界を張って3人を守る。


 よし、これで思う存分戦える。


「で、涼太よ。この悪魔はどうするのだ?」

「無論一匹残らず倒す。挑発したら思った以上に釣れた」

「くくっ、久々に本気で戦おうか」


 豪鬼の表情が闘志に燃やされる。

 うん、やっぱり戦い好きだよね。


 俺はアイテムボックスから『黒刀・天羽々斬』と一本の大太刀を取り出す。


「ほら、使え」

「ほう、見事な品だ。手に馴染む。何という名前なのだ?」

「プレゼントするよ。そうだな『鬼丸』なんてどうだ」

「よし始めようか」

「ああ、楽しみじゃの」


 俺と豪鬼は前に進み、悪魔たちを見据える。

 刀を肩に置いて、首を鳴らす。

 豪鬼は戦いにおいて、俺と気質が似ている。

 なぜか安心感がある。


「トロトロしてると、全部俺が狩り尽くすぞ」

「はっ、舐めるなよ。お主には遅れを取らんわ!」


 思わず嘲笑がこみ上げてくる。

 しかし、それが気に食わなかったのか悪魔たちは不機嫌そうだ。


《ハハっ、舐められモノだ。この圧倒的ナ差を目二して余裕だと……》


 本当に舐められているな。

 普通に考えるのであれば、2対10万。

 呆れるほどにバカバカしい差だ。

 だがよ……。

 お前ら程度に本気を出すと思うか?

 縛りプレーで十分だわ。



 さぁ、始めようか。



 俺と豪鬼のオーラが爆発的に膨れ上がり、空気が、大地が震え上がる。

 クレーターが生まれ、土埃や割れた大地の破片が重力に逆らう様に舞い上がる。

 燃える闘志を身体に、目に、神経の一筋にまで充満させ目の前の悪魔風情を見上げる。


「「ここからは俺 (ワシ)の蹂躙ターンだぁぁぁぁッ!」」



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