プロローグ
空から女の子が落ちてくるという事を夢見たことがあるか?
落ちてきた女の子といちゃついて、ラブコメ的な展開。男なら、一度くらいは夢見たかも知らない。
こういうのはラノベやアニメとかではよくある展開なんだが、現実では有りえないことだ。客観的に考えて、まず女の子が空から落ちてくるという事自体が有りえない現象であり、仮に本当に空から落ちてきたとしてもその女の子は道端に血をまき散らして、本来どのような物であるか推測もできないただの肉の塊になってしまうだろう。
そして、仮にあなたがその空から落ちてくる女の子の真下にいたとしよう。アニメとかではあなたはその女の子を受け止めて、ラブコメ的なシチュエーションになるであろうが、現実的にその下に敷かれた人は当然死ぬ。運よく女の子の方は生きてるかも知らないけど、下に敷かれたものは死からは逃れはしない。
さて、そういう当たり前なことをなんで話しているかというと、今、俺に、その有りえないことが半分くらい起きて、そして、半分くらいは現実的な展開になったからだ。
要するに、
「空から俺の頭の上に女の子が落ちてきて、つぶれて死んだなんて、ただの怪事件じゃん…」
真っ暗な部屋の中で誰ともなく突っ込みをかける俺、鈴木 藤。先まで本屋でラノベ買いに行っていた途中なのだが、先言った通り空から落ちてきた女の子につぶれて死んでしまった哀れな高校生である。
何故死んだと断言出来るかって?そりゃ今も、喉の骨が壊れて喉をちゃんと立てることもできない状態なのにも関わらず痛くも痒くもないからだ。ゾンビみたいに。現実的に有りえないだろう?そんなの。だから俺は死んだ。
「しかし、ここは何処だ?篆刻か地獄か?それともこれから輪廻の輪に入る前段階なのか?」
いや、もしかしてこのまま消滅されるかも知らない。俺は無宗教だから。どちらにしろ俺の意見が入る余地はないだろう。そんな事思ってる途中に目の前に光の粒が集まり人の形を帯び始めた。しかし、発光し続けているためかその顔も服装も何も見えない。その光の人はとてもチャラい声でこっちに話しかけてくる。
「いやいや、悪ぃ、悪ぃ。ちょっと天使を堕天させて、地に落としたんだけど人が通っているとは思わなかった。」
「おいおい、堕天させるのなら地上じゃなくて地獄にでも落とせよ。そして顔を見せろ顔を」
なんとなく突っ込みをかけたが、言いぐさを聞く限りこいつが俺が死んだ原因を作ったやつみたいだ。相変わらず、顔も見えなくただ光の輪郭だけが浮かぶ奴が口を開く(ような気がした)。今回は声がギャル風になってた。
「じーごーく?そんなの昔消してしまったんだからねーだって気にいらない奴ばかり集まってる世界だからなーああ、顔は君が思う神の姿になってるよーもし無宗教ならなんも見えないはずや」
ああ、これもしかしたら厭世論のあれがあてはまる神なのか?…ちょっと試してみよう。
「ちょっと聞きたいけど、お前は神であってるんだろう?世界を作った全知全能の神で?」
「おう、俺様=神だぜ?全知全能で七日で退屈しのぎで君が今まで住んでいた世界を作って、同じく退屈しのぎで津波起こして一度リセットもした神だぜ?」
「ちなみに、俺が昨日の19時38分16秒にしたことは?」
「その日の晩御飯を3スプーン目を口に入れて6回噛んでいたな。」
今回は声が自信満々なスポーツ選手のような声になっていた。…どうやら、悪い予感があったみたいだ。こいつは悪だ。
「悪って酷いなーなんでそう思ったのかな?」
「勝手に心読むなよ…お前、お前が認めた通り全知全能であるといったんだろう?が、俺を助けてくれなかった。それはお前がわざと仕向けたことになる。全知全能ならそのようなことになると知ってるはずだから。そして、もしお前が全知全能なら人間をすべて幸せにしない時点でお前は悪だ。戦争、飢饉、貧困でどれだけの人が苦しんでるのかくらいは分かるだろう?そしてたやすく解決できる力を持ってるにも関わらずそれをしないからお前は悪だ。」
今度は幼児の声になってる神に答える。そう。これはロシアの哲学者が主張したもので、神が全人類を幸せにできないなら、神は全知全能じゃなく、できるならそれをやっていない神は悪である、という考え方だ。この考え方によると今俺の目の前にいるこの神は、悪だ」
「おお、大体あってる。そう。俺は君が死ぬようにわざと仕向けたよ。でも、ちっと違うよ?俺が君たちの世界に手を出していないのは君たちとした契約のためだぜ?」
「契約?」
今回は爺の声になってる。俺を殺したの事実なのか。こいつは悪なのはほぼ確実か。
「まあ、説明すると長くなるから省くけど、要するに、社会契約説?と似たような奴をしたという訳。で、直接て出すのはできないから適当に天使を落として君を殺したよ。」
今回はおしゃべりなおばさんの声に変って話す神。いい加減うざくなってきた。って、俺結局わざと殺されたじゃん。
「俺を殺す理由があったのか?」
「別に?ただの暇つぶし。ああ、残念、残念。じゃあ、契約に基づいて、君に全生の記憶を持ったまま望む世界に望む能力を一つ上げて転生させてやるよ。」
「契約は先言ったあれ?具体的にどんな内容なのか?」
「不正が発覚された場合、俺の権能を君に分け与えるのが契約の内容。これ、ずっとやるといつか俺の力も底を付くからね。あ、ちなみに元の世界で生まれることはできないよー」
ある意味、なじみの展開だ。転生、か。元の世界はあんまり未練はない。そもそも両親も妹も昨年交通事故で無くなってしまったのだ。その後は給付された保険金と、貯蓄と国の援助を活用しながら生きてきた。そもそも生にそれほど執着してなかった俺にはむしろやり直しの機会が与えられたことに感謝するべきかも知らない。
「そーだね、適当に剣と魔法の世界に送ってあげようか?ファンタジー好きじゃん?」
「ああ。世界はそれでいい。能力はそうだな…無限の魔力でお願い。」
「明らかにチート望むなお前。でも、無限の魔力は与えられないよ?そんなの与えちゃったら一瞬で世界が破壊されてしまうよ?でも、徐々に量を増やすのはいいから持ち得る魔力の上限が無限なのはどうだい?」
そんなに都合のいいわけにはいかないか。
「それでいい」
「じゃあ、いい人生を。」
光の塊であるからそうであるわけないのに、口元の部分が笑みを浮かぶように少し歪んで見えた瞬間視界が暗転し、意識が遠のき始めた。
…今回は少しましな人生を送りたいな。
死を乗り越える連載始めました。
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