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神様へのいたずら  作者: 川本 流華
8/8

episode of G

人間が神のしくじりにすぎないのか、神が人間のしくじりにすぎないのか

―ニーチェ


(なぜ、私は死ななくてはならなかったのだろう? あれ程の拷問を受け、さらし者にならなければならない程のことをしただろうか?)

男は冷たい土の中で思考を巡らせた。

(神はなぜ助けてくれなかったのだろう? 彼らと私は等しく愛すべきモノなのだろうか?)

自分が信じてきた神様という存在に疑問を抱きながらもそれを否定するように何度も首を横に振ろうとした。

(それでも彼らを許さなければならない。愛さなければならない)

そう思い目を開くと、男は空にいた。

「そう、それが愛だ」

神は一言答えると、持っている杖で下を差した。

 地上では相変わらず戦を繰り返し、神の名の下で虐殺が繰り返されていた。

「なぜ助けないのです?」

男は声を荒げた。

 神は男の額に手を当てた。すると、男の頭の中にいくつもの映像が流れ込んだ。

 貧困で餓死をする人々、私欲のために行われる戦争、殺人。

 気が狂いそうになるほど残酷なものを一瞬でいくつも見た。

「キリがない」

神はため息をつくと首を横に振った。

「それでもあなたが作ったものだ。あなたはこんなものが作りたかったのか?」

「私は一つの過ちを犯した。それは人に理性を与えたことだ」

「何?」

「本能的に愛するのではなく、愛の意味を知り、愛し、育んで欲しかったのだ。しかし、その愛は自己的なものにばかり注がれた。己が幸せになるために他者を傷つけ、己を愛するばかりに略奪する」

神は悔やむように地上を見下した。

「だから放っておくのですか?」

「今から私が全人類の前に現れたところで、利己欲を放棄すると思うかね?」

「……」

男は答えられなかった。出来る出来ないは別として自分のされたことが再び起こることは明白だった。

「人類は間もなくその大半を失うだろう。そして、いずれ滅ぶ」

「そんな……」

男は納得のいかない表情だった。

「私の罪だ。それを理解したうえで棚上げすることにした。この世界を作ったのは失敗だった」

神は開き直ったかのように笑って見せた。

「頑張ってみるといい。汝に私のすべてを捧げよう」

神の言葉で男は光に包まれた。そして、神は逃げるようにこの世から姿を消した。

 男は地上の争いごとに目を向けた。憎しみの声が流れ続け、正気を保つのがやっとだった。

「やめろ!!」

男が叫ぶと地上は大地震にみまわれた。戦争どころではなくなり、戦争をしていた者たちは散り散りと逃げ去った。

「可能ではないか、ならば私がすべてを救おう」

男は次の争いごとを探し、その場を後にした。

 それから百年、千年と男は戦争が起こるたびにそれを止め、貧困の進む地域では食物が育つように環境を整えた。

 しかし、争いが止むことはなかった。時には貧困を救った地域からさらに領土を広げるように別の貧困に苦しむ地域への侵略も見られた。

『キリがない』

昔、神が口にした言葉が脳裏をよぎった。

「なるほど、キリがない」

男は豪快に笑った。

 男の目にはこれから殺される少年の姿が映っていた。いつもならば有無を言わさずに助けていたが、その時に限って男は慎重だった。

 男はその少年の未来を覗き、助けたことのよって生じる他の不幸がないかを観察した。

 そして、観察が終わる前に少年は殺害された。

 男は考えることを止めた。救うことを止めた。ただ観察し、行く末を見守ることにした。

 男はとある街の高層ビルに降り立った。人としての心を無くしていた彼にとって、一人の少年とその傍らにいる少女の心の動きが目に留まった。

 それは男が失っていたものだった。

 取り戻したい。略奪的な感情が芽生え、しかしながら、男はそれに気が付かずに手を伸ばした。

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