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てのひらに星雲を  作者: Q7/喜友名トト
シーズン1~ 転入編~
14/70

二つ間違ってる

 響の買い物は順調だった。

 買うべきものは決まっていたし、同行してくれたアマレットの案内のおかげでシティエリアのショッピングモールを効率よく回ることができたからだ。


「これってどっちがおすすめ?」

「えーっと、そうね。こっちのほうが……」

「じゃ、これで」

「これは必要?」

「どうかしら。あなたのスキルがあがればそのうちには」

「よし買ったぁ! ダンナ、つつんでくんな!」



 大体こんな感じだ。


「そ、そんなにすぐに決めていいの!?」


 アマレットはそう言ってくれたが響は買い物に時間をかけるのが好きではない。女の子のアクセサリーや服を一緒に選ぶときは別だが、自分の必需品に時間をかけるのは無駄だと思っている。


「いいのいいの。どうせ素人なんだし、道具の良し悪しだの相性だのなんてわからないし」


 それに俺、超金持ちだしー。という理由もあり、即決即断である。


「アマちゃんの選ぶものに間違いはないでしょ。信頼してるんだぜ」

「!……そうよ! あ、あなたに言われても、すこしも嬉しくないけど」


アマレットは元気よくそう答えたあと、きまりが悪そうにぷいっと横を向いた。だが、その言葉とは裏腹に耳が赤い。ツーンとした表情をしつつも、声が少し弾んでいる。


 そんなやりとりをしつつ、サクサクと買い物は進む。


 超剣術サイキックソードアーツで使うプロテクター、サイキックAで必須のESPカード、操能力マシンコントロール用のコントロールレバー、全部まとめて購入。


一応アカデミーでも貸し出ししているそれらだが、自分用のものを用意したほうが使いやすくなるらしいし、高性能なものが手に入る。だから金に糸目はつけない。

その他、響だから必要な特殊なものも二点だけ購入すると、響はすぐにシティエリアを後にした。


ホバーバイクで移動していたためアマレットは後部席に乗せたが、彼女は意外と怖がりだったらしい。


響のジャケットをきゅっとつまむようにしたり、小さく悲鳴をあげたりしていた。それでも意地をはってのことなのか、カップルのようにしっかりと背中に掴まってこないのが彼女らしいところだ。


「怖い?」

「そ、そんなことないけど?」

「へー」


柔らかい感触を背中で味わえなかったのは残念な響だったが、アマレットのそんな仕草はそれはそれで可愛らしいと思っていた。


でもあまり怖がらすのも可哀想なので、超低速運転に切り替えるのも忘れない。


「……はふぅ」


 走行速度の変化に気がついたアマレットが無意識に洩らした安堵の声は非常に良いものだった。


※※


「やー。買い物手伝ってくれてありがとう。楽しかった。それで……じゃあ色々話すけど」

 

ビーチエリアに移動し、桟橋の近くのカフェテラスでアイスクリームのようなものを二つ購入した響は、一つをアマレットに手渡しながら本題に入ることにした。


「え?……あ」


 どうやらアマレットは本題を忘れていたらしい。が、すぐに真面目な顔つきになった。そこらへんはさすが彼女というべき聡明さである。


 響は宇宙に上がってきた当初、彼女にこれを話すつもりはなかったが少し事情が変わった。

 アマレットは、下手をすれば昨日死んでいたかもしれないのだ。あんな暴走バカがこれ以上いるとは思えないが、知っているにこしたことはない情報だ。


「俺の親父、宮城みやしろ余市よいちについて知ってることある?」



「……お父様は星雲連合が接触したとき地球側の外交官をされていたのよね? それから、PPの存在を知り、その撲滅に貢献した立派な方だった。ご病気で亡くなったそうね……」


 アマレットは慎重に言葉を選びながら答えた。おそらく今では全宇宙の共通認識であろうことだったが、彼女なりに何かを感じているのだろう。


「それ。二つ間違ってる」


短いんですけど、次が説明的な回なので一回切ります。すいません

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