翻訳できず
同じネタが無いことを祈って……
万能翻訳機を発明したエルレ星人に、この装置を活用できる機会が訪れた。
同じくして地球にとってこれからの運命を決める一大事でもあった。
エルレ星人は地球の様子を空から眺めた。
そしてすぐさまこの星を統べる生物が人であることに気付く。それはエルレ星人とよく似た背格好だが肌の色や腕の数や触角がないことなど節々では違っていた。
そして地表に降りたつエルレ星人の二人。
この二人は既にいくつもの星を巡り、様々な交流の取りまとめを行っていた。なので人に臆することもなく、いつものように手慣れた手腕を発揮する。
「こんにちは。地球人のかた。驚かないでください。私たちはエルレ星というところからやって来ました宇宙人です。少々話したいことがあるのですが――」
この声は直ちに現地の言葉に変換された。
そしてその反応を待つ。
「うー」
『う。読み取れません。叫び声のようです』
だが、この地球人。阿呆な顔をしたまま変な声をあげているだけ。
翻訳も失敗している。
「どうしたんだ? こんなこと今までに一度もなかったぞ」
「特別こいつが、おかしなやつだったのかもしれない。次をあたろう」
気分を取り直して、近くにいた別の人に話しかける。
「こんにちは。地球人のかた。私は宇宙人でして、この地球と友好な関係を築きたくやってきたのです――」
「わー」
『わ。読み取れません。叫び声のようです』
場所を一気に変えてもう一度。
「……」
『無言です。何もしゃべっていません』
賢そうな格好をしたやつを狙ってもう一度。
「え……」
『え。読み取れません。意味がないです』
その後も何度か会話を試みたが似たような反応で終わった。
エルレ星人は困惑する。
「これは翻訳機の故障か?」
「わからないが、これではどうしようもないな」
「仕方ない。この星は諦めだ。次の星へと向かおう。次の星でちゃんと使えれば、こんな知能の低い星は気にする必要もない」
「周りの建築物を見る限りそうとは思えないんだが」
「だとすると惑星レベルで馬鹿になっている最中か、翻訳機が壊れたかだ。さっさと行くぞ」
「そうだな」
とうとうエルレ星人は別の星へと旅立った。
そして地球では一日と経たず、あるニュースが流れた。
『宇宙人か? 謎の飛行物体の目撃証言 謎の生物が一瞬で現れ、一瞬で消える珍事が少なくとも五件発生!』




