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第五十七話 新生カオル?

冒険者ギルドでキレて大暴れをし、啞然(あぜん)とする師匠を連れて宿屋へ戻る。


部屋へ入ると、いつもセクハラをしてくる師匠がボクと目すら合わせてくれない。


う~ん・・・・


ドン引きさせちゃったからなぁ・・・・


とりあえず、関係の修復を図らないと・・・・


外套(がいとう)を脱いで、ベットに座る師匠の隣に腰掛ける。


瞳を潤ませ上目遣いで見上げ、師匠に寄りそう。


昔読んだ、恋愛教本に書いてあった『想い人を落とす10の方法』の1つだ。


いつか役に立つと思い、頭の片隅で覚えていた。


さっそく実践してみると、師匠は頬を赤く染めボクを見詰めた。


よしよし、ここまでは作戦通り。


あとは・・・


「師匠・・・・」と(ささや)き、左手を相手の胸へ右手を頬に添える。


首筋に舌を()わせ、耳まで持って行きアマガミをする。


そのまま耳を舐め回し、ゆっくり離れてイタズラっぽくハニカめば作戦終了だ。


どうかな・・・?


ドキドキしながら師匠を見詰めると、師匠はうつむき小刻みに震えていた。


あれ?


失敗した・・・?


う~ん・・・他の方法を試してみようかな・・・・・


そんな事を考えていた時、突然力強く抱き締められる。


驚いて慌てていると「か、カオルきゅん!もう離さないゾ!」と師匠が叫び、抱き締めならが鼻息を荒くしていた。


さすが恋愛教本だ・・・・効き目バッチリですね・・・・・効き過ぎだけど。


せっかくなので、そのまま師匠に身を任せてみた。


「クンカクンカ♪」と言いながら、ひたすらボクの匂いを嗅いでいたり、ボクの背中に廻した手でお尻を揉みしだいたりした。


この触り方には覚えがありますよ?


いつぞやの迎賓館の廊下で、ボクのお尻を触っていたのは師匠ですね?


さて、この変態はどうしてくれましょうか・・・


両手を師匠の首に廻し、濡れた唇へ口付け蹂躙する。


「クチュ・・・ジュルルル・・・・」と、いやらしくワザと音を立てると、師匠は痙攣(けいれん)にも似た様子でビクンと跳ねる。


そんな様子を可愛いと思いながら口内を犯すと、ひときわ大きく身体をしならせて気絶した。


唇を離すと、ボクも興奮していたようで肩を上下に揺すり息をする。


「はぁはぁはぁ・・・」


ミッション・・・完了。


これは、効き目がすごいけど諸刃(もろは)の剣だね・・・


使いどころに気をつけないと・・・・やばい。


師匠をベットに寝かせ、シーツをかけてあげる。


頭を撫でていると、高ぶっていた気持ちが落ち着いていく。


ふぅ・・・色々やりすぎちゃったな・・・・


本当にストレス貯めないようにしないと。


そんなことを思いながら撫で続けた。








しばらくすると扉がノックされ、エリーとエルミアが入ってくる。


2人の顔へ目を向け「おはよう」と言うと「おはよ」「おはようございます。カオル様」と、返してくれた。


もう起きる時間なのか。


師匠の頭を撫でている手を止めて起こす。


「師匠、起きてください師匠」


優しく肩を揺すりながらそう話しかけると「うぅん・・・カオルきゅん」と(つぶや)き目を覚ます。


師匠の顔をこちらに向けニッコリ笑う。


ボクの顔を見た師匠が、耳まで赤くしてモジモジと身悶(みもだ)えていた。


おお、師匠が恋する乙女に・・・・


良い兆候(ちょうこう)ですね。


このままいけば変態が治るかも?


もう名医を探すより、ボクが名医になってしまえばいいんではないだろうか。


うん、そうしよう。


ボクがんばるよ!師匠!


身悶える師匠を起こし、4人で食堂に向かうとグローリエルが待っていた。


「おはよう、グローリエル」


ボクが声をかけると「おはよ、カオル」と爽やかに返してくれた。


おや?今日は強引じゃない・・?


いつもの『空気を読めない』グローリエルじゃない・・・だ・・と・・・


そうか、この人も師匠のように成長しているということですね・・・


グローリエルと挨拶を交わし、従業員に料理をお願いする。


師匠の隣に腰を下ろして待っていると、宿屋の主人がやってきて「う、馬は私が責任を持ってお預かりします!」と、ボクに怯えた表情で話した。


う~ん・・・・今朝のキレてる顔を見られちゃったからなぁ・・・・


まぁいいか。


これで女の子扱いしなくなるでしょ・・・


むしろ暴れ回れば『黒巫女』とか呼ばれなくなるんじゃないか?


そのうち『バーサーカー』とか呼ばれたりして・・・


それはそれでカッコイイかも・・・


そうだよ!


男らしくなって良い事なんじゃないだろうか?


にゅふふ・・・


これからはこの路線で行ってみよう!


新生カオルに乞うご期待ですね!


ほくそ笑むボクを、4人は不思議な顔をして見詰めていた。


朝食のあと、馬を宿屋の主人に預けてついに魔境へ向かう。


大丈夫だろうか・・・・かなり心配だ。


グローリエルに先導してもらい森を歩く。


森の中は、枝葉の隙間から朝日が眩しく降り注いでいる。


魔境へ入ると、この朝日すら届かない鬱蒼(うっそう)としジメジメした場所だそうだ。


う~ん・・・


以前、遠征で行った場所みたいな感じなのかな?


でも、昼間であの暗さだと夜は本当に真っ暗なんじゃ・・・


カンテラとかの、携行用品は用意してあるから心配ないけどね。


それでも真っ暗かぁ・・・夜空でも見えればきっと星がきれいなんだろうけどなぁ・・・


また見たいな・・・・師匠の家で見たあの満天の星空・・・


手を伸ばせば届くんじゃないかと思ったくらい、眼前に広がっていたなぁ。


そのうち機会があったら見上げてみよう。


ボーっと歩くボクを余所に、エリーとエルミアは周囲を警戒し、ボクが気付くより早く現れた獣はグローリエルが倒していた。


なんでも、グローリエルは元冒険者でその活躍を認められて剣騎に任命されたそうだ。


「よくそんなに早く索敵できるね?」と聞いたら「あたいが何年冒険者してたと思ってんだい?」と自慢気に言われた。


むぅ・・・・なんか自慢されたぞ・・・・・


なんとなくくやしかったので「師匠もできますよね?」と聞くと「できるが疲れるからやらん!」とバッサリ斬られた。


『残念美人』め・・・・


それでも、繋いでいる手をにぎにぎしていたら「お!カオル、あそこにいるぞ」と教えてくれた。


まったく・・・素直じゃないんだから・・・・


「素直じゃない師匠も大好きですよ」と言っておいた。


それを聞いて顔を赤くしていたけど。


本当に可愛い人だなぁ。


ほどなくして、周囲の環境が変わってきた。


木々の幹は大きくなり、足元には木の根が幾重にも折り重なっている。


ごつごつとしていて非常に歩きにくい。


師匠は身長の低いボクを気遣って、大きな段差があると両手で導いてくれる。


そんな優しさに顔を(ほころ)ばせて喜ぶ。


こんな素敵な家族が出来て、本当に嬉しい。


繋がれた手に優しく口付けをすると、ボクを見詰めて喜んでくれた。


魔境を歩いていると、獣の気配がまったくない事に気付く。


周囲を警戒しているグローリエルに聞いてみると「獣は魔物を警戒して魔境に入ってこないんだよ」と教えてくれた。


なるほど・・・食べられちゃうもんね。


関心していると「それでも、長年魔素を取り込み続けた獣は魔獣に成長するから魔境にはそいつらが出るよ」と、付け加えて説明してくれた。


ほほーー!


魔獣って元々は獣なのですか。


これは1つ勉強になりました。


それにしても、昨日とはうって変わって今日のグローリエルは頼もしいなぁ・・・


いつもの、残念美人で猪突猛進(ちょとつもうしん)な姿とは全然違うや。


あれかな?


魔物と戦闘になるから、気が張っているのかな?


いつもこうだと尊敬できるのに・・・・


もったいないなぁ・・・


先頭を歩く、グローリエルを見ながらそんなことを思っていた。


そのまま魔境を歩いていると、数度魔物に出くわした。


と言っても、ボクが行動する前にエリーとエルミア・グローリエルが倒してしまうんだけどね。


魔物を見つけると、エルミアがいち早く弓を放って魔物を牽制(けんせい)し、エリーが走り出して大剣で止めを刺す。


別方向から来た魔物は、グローリエルが火球などで一掃(いっそう)してくれるからボクの出番は無い。


楽だからいいんだけどね。


師匠なんて、気付いていても動かないし。


本当にめんどくさい事キライなんだから・・・


人のこと言えないけど。


ボクは形のある魔物を回収するだけ。


お気楽ポジションですね♪


そんな感じで魔境を歩き、ダンジョンへと進む。


うぅ・・・どうか・・・・どうか・・・バッタが出ませんように・・・・


そればかりを祈っていた。


やがて、森の中に大きく土が盛り上がった場所を見つける。


大地に穴が開いたように構えているその場所が、ダンジョンの入り口だ。


う~ん・・・・見たまんま、鍾乳洞(しょうにゅうどう)とかの洞窟(どうくつ)ですね。


ダンジョンの前で一度休憩して、装備を改めなおす。


いよいよ薄暗いダンジョンへ突入だ。


ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。

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