↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/349

第五十六話 ストレス爆発

残虐的な表現があります。

苦手な方はそっと閉じてください。

翌朝、部屋の扉を叩く音で目が覚める。


隣のベットでは師匠がぐっすり寝ていた。


寝惚けた様子で目をこすりながら扉を開けると、宿屋の主人が血相を変えてこう言った。


「お、おたくから預かってる馬が死にそうなんだ!すぐ来てくれ!」


その言葉を聞いて、一気に目が覚めた。


ボクは壁に掛かった外套を羽織り、主人の後について行く。


厩舎(きゅうしゃ)へ行くと、左後ろ脚から血を流した痛々しい姿の馬がいた。


昨日、エリーが乗っていた馬だ。


なんてひどいことを・・・


ボクはすぐさま馬に駆け寄り、傷口を確認する。


キレイに切り裂かれたそのキズは、どこかに引っ掛けて切れたものじゃない。


鋭利な刃物で傷つけられた痕だ。


だれがこんなことを・・・・


そのとき、昨日冒険者ギルドでボクとエルミアに近づいてきた2人の男が脳裏に浮かぶ。


あいつか。


自分の中にどす黒いモノが巻き上がるのを感じる。


だが、とにかく今は馬をなんとかしてあげないと。


傷口に両手を当て魔法をイメージ。


動物は初めてだけど、人とほとんど同じ・・・・・


傷があるのは腓骨(ひこつ)の部分・・・・


脚だから脂肪が少ない・・・・


筋と皮と・・・


肉を繋ぐ・・・


イメージ・・・・


馬とボクを緑色の淡い光が包む。


みるみるうちに傷は消え、怯えて涎を振りまいていた馬が落ち着きを取り戻す。


馬の周囲に『浄化』の魔法をかけ清潔にすると、近くにあった(みの)を馬へ掛けてやる。


顔へ近づき頬を撫でてやると、ボクに頭を擦りつけてきた。


「ごめんね。早くよくなってね。」


そう言い、宿屋の主人にお世話をお願いする。


だがまだ終わりではない。


ボクの行動を見ていた主人は驚いていたが、ボクが目を見据えると怯えたように「わ、わかった」と言ってくれた。


「水分をマメにあげてください」と言い残し、ボクは冒険者ギルドへ向かう。


だれがこんな酷い事をしたのか、確かめなければいけない。


はっきりとしている事は、ボクはキレていた。


初めてだ。


こんなにイライラしたのは。


ギルドの扉を蹴破ると、留め具が外れて扉が飛んでいった。


そんなことはどうでもいい。


中にいた冒険者達が、驚いてこちらへ目を向ける。


その中に昨日の2人組みを見つけた。


ツカツカと歩み寄り、犬耳族の男を殴り飛ばす。


壁にぶち当たり動かなくなった。


ヒュームの男が「あ・・・ああ・・・」と、呆然としているところへ胸倉を掴んで締め上げる。


相手の目を見据え「お前が馬を斬ったのか」と聞くと「あ・・あああああ」と言葉にならない声を出した。


イライラが限界にきていたボクは「お前がやったのかと聞いている!」と言い、顔面を殴りつける。


鼻が折れたのか、血が止まらない男は「お、おへがやりまふぃた」と白状した。


「馬を斬った武器はどこだ」


冷めた目で見詰め低い声を発すると、懐にある短剣を指差した。


短剣を取り上げ男を壁へ放り投げる。


2人の男が並んだところへ、魔法をイメージ。


雷の矢を出し、馬が斬られた場所と同じ左太股へ突き刺した。


2人は悲鳴をあげて、のた打ち回る。


動かなかった犬耳族の男は、気絶していただけのようだ。


(さんざん)(わめ)()らしたあと、2人を踏みつける。


「もう2度と、人に迷惑はかけないと誓え」


そう言うと「「は、はい!誓います!」」と、怯えた目でそう誓った。


2人の首を締め気絶させる。


そこへ「か、カオル・・・」と、師匠が声をかけた。


声がした方を振り向くと師匠がいた。


・・・・・・・あれ?


師匠がいる?


ボク何してたんだっけ?


あれ?あれれ?


自分の手を見ると、両手は返り血で真っ赤に染まっていた。


えっと・・・・


あ~、これはやりすぎたね・・・


正気に戻ったボクは、慌てて2人に回復魔法をかける。


ピクリとも動かないが、気絶しているだけで死んではいない。


血がついている壁や床に『浄化』の魔法をかけていく。


最後に自分に『浄化』をかけると、師匠に駆け寄り抱き付く。


「エヘッ」っと可愛く笑ってみたが、師匠は完全に引いていた。


まぁそうだよね・・・


イライラが爆発しちゃっただけなんだけどね・・・


とりあえず、この場をなんとかしないと・・・・周りにいる冒険者さんも引いてるし。


「コホン」と咳きをひとつして話し始める。


「驚かせてすみません。この2人は、厩舎にいるボクの大切な馬を斬りつけ殺そうとしました。ボクはそれに気付き、馬を治療してこの2人を問い詰めに来たのです。」


周囲の人に語りかける。


「あとはごらんの通り、この2人が犯人だと自供しました。犯行に使われた短剣も、この通りございます。」


そう言って短剣をテーブルの上に置く。


「かなり過激な尋問をしてしまいましたが、あの2人は気絶しているだけです。あとの事はこの村の自治にお任せしてもよろしいですか?」


近くにいたドワーフのおじさんにそう話しかける。


指名されて慌てたのか「お、おう・・・」と、驚愕の表情をしていたが了承してくれた。


外れていた扉を直して、師匠に近づき顔を見上げる。


満面の笑みを浮かべて「帰りましょう」と言い、腕を絡めて歩き出す。


師匠は啞然とした顔をして、ボクに身体を預けてくれた。


まぁ、びっくりしているんだろうね。


ボク自身が一番ビックリしてるんだけどね・・・


う~ん・・・・これからはあまりストレス溜め込まないようにしないとな・・・


そんな事を考えながら宿屋へと戻った。


ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。