第四十六話 魔術学院
エルミアと2人で馬車に乗り、魔術学院へ向かう。
エルヴィント帝国のお城から程近い距離にあるが、なぜか馬車に乗せられた。
何か意味があるのだろうか?
防犯上の理由?
まぁ考えても理由はわからないよね。
遠くない距離なので、あっという間に到着した。
もう少し距離があればエルミアと楽しくおしゃべりでもできたのに。
魔術学院の門をくぐり建物の扉の前へ。
馬車から降り、エルミアに手を添えて馬車から降ろす。
喜んでくれたようで、笑顔を向けてくれた。
うん、美人さんにはやさしくしますよ!
紳士ですから!
扉の前では宮廷魔術師筆頭のアゥストリが迎えてくれた。
「カオル殿!本日はありがとうございます。お待ちしておりました」
と握手を求めてきたので、手を差し出すといつぞやと同じようにブンブン振り回される。
なんですか?そういう礼儀なのですか?
ボク身長無いので、大きく振りまわれると痛いんですけど・・・
ボクの気持ちも知らずに、振りましたアゥストリは満足そうに手を離す。
このハゲ、いつか倒す。
言葉に出来ない声を飲み込み、笑顔を向けた。
アゥストリの案内で魔術学院へ入る。
青白い外観と同じように、玄関の巨大なホールは石造りの白い壁に高級そうなサイドチェストが置いてあった。
壁には大きな絵が飾られ、見た事がない人物が沢山飾られていた。
ふむ・・・・
著名人?有名人?
まぁわからないし、どうでもいいか。
ホールを抜けて一室に案内されると、そこには少年少女10人ほどが机を並べて座っていた。
そのまま、教壇のような1段高い所へ案内される。
ボクが中へ入ると
「わぁ・・・」
「綺麗・・・」
「可愛い・・・・」
などと声があがった。
いや、君達も可愛いよ?
高そうな服着てるし。
アゥストリから紹介される。
「この子達は、貴族の子弟や魔法に目覚めた平民の子達です。」
そう説明され子供達に目を向ける。
賢そうな子が多い・・・・というか、そこの男の子もしかしてボクより身長高くないですか?
く・・・これで年下とかだったら泣いてしまうかもしれない・・・・・
アゥストリは、尚も話し続ける。
「みなさん、今日は私のお願いを聞き入れ、皇帝陛下の友人のカオル殿が来てくださいました。」
いや、いつアーシェラの友人に!?
皇帝陛下の友人とか恐れ多いよ!?
「カオル殿はとてもお若いですが、魔法の腕は他に類を見ないほど高位の魔術師です。今日は一日、みなさんに付いて教えてくださいますので感謝するように」
あれ?
おかしくない?
顔を出してって言われただけで、いつのまにか教師にされてませんか?
このハゲは・・・・策士か!?
だ・ま・さ・れ・た
エルミア助けて!
エルミアに目を向けると、ニコニコと笑っていた。
うん、なんとなく想像していることがわかるよ。
その目はあれですね『嫁が仕事している場に見学に来た夫の顔』ですよね?
わかりますとも・・・でも、ボク嫁じゃないからね?
そんな事を考えていたら、いつのまにか質問タイムになっていた。
「カオル様はどんな魔法が使えるのですか?」
賢そうなヒュームの男の子が聞いてくる。
うんうん、普通の質問で安心したよ。
「そうですね、風と雷の魔法が得意です。」
ボクがそう言うと「おー」と感心していた。
うんうん、ボクと同じ子供の対応だ。
なんとなく嬉しいね。
同級生達みたいに、変な目で見られないのが一番良い。
質問は続く。
「好きな人はいますか?」
ええっと・・・あれですね、この年頃特有の新任教師に対する質問ですね。
一瞬悩んで「ええ、沢山いますよ」と、ニッコリ微笑んで答えた。
すると「キャー!」と大きな悲鳴をあげて騒ぎ出す。
「いっぱいですって!」
「恋多き女なのですね!」
「く・・・あんな美少女に言われるなら本望!」
「いいなぁ・・・・」
「お、俺だって恋の一つや二つ・・・・」
「えー、でもアンタ童貞じゃん」
「なっ!?」
「やっぱりそうなんだ。」
「キャー」
子供達がそれぞれ騒ぐ。
うん・・・大丈夫、ボクもまだだから。
そんな事を考えていた。
収拾つかなくなり、アゥストリは子供達を戒める。
騒ぎたい気持ちを抑えて、みんなそれに従った。
おお、アゥストリは教師みたいだ。
いや、実際そうなんだろうけど。
ボクはアゥストリにお願いして、いつものように授業を始めてもらう。
今まで師匠が教えてくれていたけど、理論的に教えてくれてたわけじゃないからね。
とにかくイメージだ!としか教えてくれなかったし・・・
最初は本当に大変だった。
アゥストリは生徒達に席に着くよう促し、ボクは狐耳族の少女の隣に椅子を並べる。
その少女はボクがこの教室に入ってからずっと無口なのだが、ボクの顔をジッと見詰めていた。
まぁ他の子もボクの事見てたしね。
ニコッと笑い掛けると、頬を染めモジモジとした動きを見せる。
他の子とかわらない仕草だ。
アゥストリが教壇に立ち、講義を始める。
まぁ、一方的に本を読んで聞かせるだけなんだけどね。
魔法理論と魔工技術のお話だ。
ふ~ん・・・・大気中にはマナと呼ばれる物があり、それを集めて自らの魔力を注ぎ込むと魔法が発動する。
なんで目に見えない物がわかるのだろう?
魔力はなんとなくわかるけど。
使うと疲労感があるし。
このへんは師匠に聞いた事がある。
それにしてもマナねぇ・・・
なんかの本に宗教がどうのって書いてあったような・・・
あまり覚えてないや。
宗教興味ないし。
魔工技術の話しはとても面白かった。
この前、魔工技師に聞くまで聞いた事もなかったし。
魔宝石に魔法を封じ込めると、魔力の無い者でも魔法が使えるのか。
便利だね。
でもこれ、軍事利用したらえらい事になるよね?
ボクが思いつくくらいだから、きっともうやってるんだろうけど・・・
生活に便利な反面、とても恐ろしい事になりそうだ。
それにしても魔宝石かぁ・・・・古代の遺物や上級の魔物の体内で作られるらしいけど、上級の魔物って風竜みたいのでしょ?この前のドラゴンですら死にかけたのに、勝てる気がしないんですけど・・・・
う~ん・・・だから一攫千金を夢見て、冒険者が魔境とかダンジョンに挑戦するのか。
まぁ理屈はわかるけど、普通に生活する分にはそこまでしなくてもいいよね・・・
とかいいつつ、ボクも興味があるから行ってみたいけど。
ああ、そうか。
ボクみたいな人が挑戦するのか。
それなら納得だ。
近いうちにボクも行ってみようかな・・・
その前に師匠とエルミアに、短剣作ってあげないとうるさそうだけど。
でも、鉄製の武器とかいらなそうだよね。
師匠はあの刀『イグニス』を持っているし、エルミアも豪華なレイピアさげてるもんね。
う~ん・・・あとで製鉄所でも探してみよう。
見た事無い金属あるだろうし。
オナイユも楽しかったけど、帝都はもっと大きいから遊ぶところがいっぱいありそうだ。
『濁った目』の大人もいるだろうから気をつけなきゃだけど・・・
エルミアについててもらおう。
1人だと・・・怖いや・・・
授業はゆっくりと進み、昼食の後、庭へ出て実技の実習になった。
昼食もとても騒がしかったのだが・・・
質問攻めで大変だった。
本人の名誉のためあまり詳しく言えないが、童貞の子にはやさしくしてあげてください。
実習は2人1組のペアになり、木箱を浮かべたり桶に汲んだ水を移動や蒸発などさせていた。
みんな子供と言えど魔術師の卵なので、苦も無く課題をクリアしていく。
ボクがペアになったのは、隣に座っていた少女だ。
「よろしくね。ボクはカオル、お名前なんて言うのかな?」
同い年くらいの少女に優しく声をかけると「・・・・私はフロリア」ボソッと話す。
恥ずかしいのかな?
う~ん・・・よくわからない。
「それじゃぁフロリア、一緒にがんばろうね」
微笑みかけると、耳まで赤くしてうなづいた。
カワイイ・・・・
って、違う違う。
あぶない。
思わず、捨てられた子犬を思い浮かべてしまった。
エリーと同じくらいの威力があったね!
フロリアと一緒に課題をこなす。
魔法の素養はあるようで、問題なく課題をクリアしていった。
でも、恥ずかしがりやのようだ。
ボクが見詰めていると、モジモジしてたまにミスをする。
水をこぼしてしまったりとかね。
慌てた姿もとても可愛らしかった。
ボクの周りには大人の女性が多いから、余計そう思うのかもしれないけど。
一番年齢の近いエリーでさえ、ボクと4つも歳が違うし。
師匠なんてひと周り以上も・・・
あまり年齢差を感じないのはなぜだろう・・・ああ、いい加減な性格だからか。
納得。
その時事故が起こった。
積んであった教材に、生徒が使った魔法の火が燃え移ったのだ。
轟々と音を出し燃え盛る炎。
生徒達はアゥストリの指示で避難を始める。
そこへフロリアが両手を掲げて魔法で水を作り出し、炎にかけると爆発した。
水蒸気爆発だ。
ボクは慌ててフロリアの前に立ち、風の障壁を張る。
前に風竜が使った魔法だ。
出来ると思わなかったけど、なんとか成功した。
爆風は、ボク達に届くことなく左右へ割れる。
激しく燃え盛る炎を、風で大きく包み込む。
酸素だけ抜け・・・るわけがないので、そのまま一気に圧縮する。
教材ごと炎は鎮火し、煙も出さずに押しつぶされた。
ああ、教材壊しちゃった。
まぁいいか。
生徒達に目を向けると、アゥストリが避難させていて無事だった。
よかった。
後ろへ振り返りフロリアを見詰める。
驚いた為か恐かった為かわからないが泣いていた。
そっと抱き締めて頭を撫でる。
「よくがんばったね」
そう言ってやると、無言で強く抱き返された。
失敗しちゃったけど、みんなを守ろうとしたんだよね。
偉かったよ。
アゥストリがやってきて、鎮火しバラバラになった教材を確認する。
「カオル殿、ありがとうございます。大事にいたらなくて良かった」
どうやら安心したようだ。
「ところで・・・」
そう言ってボクに抱き付くフロリアと、ボクの姿を見詰める。
「カオル殿に抱き着いているのは、陛下のご息女ですがご存知だったのですか?」
爆弾を投下してきた。
えーっと・・・・
ちょっと待ってね、整理するから・・・
陛下ってアーシェラ様の事だよね。
確か娘さんがいて、話し相手になってあげてとかお願いされたような・・・
それがこのフロリアって事?
「ええええ!?」
ボクは慌ててフロリアの顔に目を向けると、泣いたままニコッと微笑まれた。
聞いて無いよ・・・・・
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