師匠回想その七
昨夜は凄かった。
カルアと晩酌をしていたのだが、お風呂からあがったカオルが怖い顔で怒り出したのだ。
いや、そりゃね?私も悪いとは思うぞ?
でも、ついつい飲んでしまうんだよ・・・・
だっておいしいじゃないか。
気をきかせてノンアルコールにしたのに、あんなに怒るとは思わなかったよ。
でもさ、カルアもひどいと思わないか?
私を置いて、エリーとお風呂に逃げたんだぞ。
エルミアはとっくに寝ていたし。
でも、おかげで凄い事がわかった。
怒ったカオルが、私が飲んでいたノンアルコールのワインを一気飲みしたんだが、そこでカオルがあの妖艶で淫靡な目に豹変したんだ。
どうやら、以前もそうだけどカオルはお酒を口にするとエロエロになってしまうようだ。
突然キスをされ、またもや私の唇は蹂躙されてしまった。
なんという、甘美で淫猥な瞬間なのだろうか・・・・
まぁ、また気を失ってしまったんだが。
そして問題は今だ!
騎士団の詰め所で食事会をしていたのだが、私が飲み比べを始めたらそれを見たカオルが怒って止めに来たんだ。
そりゃ、一気飲みなんてしたら怒られるのはわかっていたさ。
でもね?こう・・・・場が盛り上がってしまってね?
あるでしょ?そういうことって・・・・
しかも、飲んでるのがノンアルコールとはいえ、エールだよ?
飲み終わったらタルにこう「ドンッ!」ってやりたくなるじゃないか?
まぁ、カオルに止められたんだけどね・・・
そこでなにを思ったのか、カオルが私のジョッキを奪い取ってノンアルコールのエールを飲み干したんだ。
いやぁ・・・あの瞬間は焦った。
だって、エロエロになったらどうするんだい?
また私は壊されてしまうよ?
もう、期待と希望で胸がワクワクだったね!
え?違う?
いやいや、そうだって!
でも、そこでエロエロのカオルは登場しなかった。
ここからの話しは内緒だぞ?
もし、外部に漏らしたりしたら・・・・わかるな?
それでは聞いていただこう。
「ドンッ!」
カオルは、ノンアルコールのエールを一気に飲み干すと、叩きつけるようにジョッキをタルへ落とす。
妖しく目が光「へぇ・・・いい女だ」とつぶやく。
カオルは舌なめずりをし、ヴァルカンを見詰める。
呆然としていたヴァルカンだが、カオルの妖しい目を見ると歓喜の表情を浮かべた。
傍にいる騎士に向かい「どうした?もう飲まないのか?」と挑発的な態度で告げる。
驚いた騎士は「お・・・・おう!まけねぇぞ!」とその誘いに乗ってしまった。
ヴァルカンの腰に手を回し、抱き寄せるカオル。
顔を赤くし満足そうな顔をしたヴァルカンは嬉しいのか、頬に手を当て照れていた。
新しいジョッキが持ち寄られ、カオルと騎士はジョッキをぶつけて飲み比べを始めた。
そこから、カオルの怒涛の飲み比べが始まった。
12杯目で初めの騎士を倒し、後続の騎士を次々と打ち倒して行く。
啞然としていたレンバルトも「ここで負けたら騎士団の恥だ!俺もやるぞ!!」と参加し、カオルはそれをやすやすと打ち倒す。
いつのまにか、カオル対騎士団全員という勝負にまで発展してしまった。
あの小さな身体のどこにそれほどまでのエールが入っているのか・・・・・
「生命の神秘を見た」と、これは司教のニコルの談である。
結局、その場にいた騎士47名はカオル1人の手によって打ち倒されたのである。
全員を倒し、満足そうな顔をしてカオルはヴァルカンの胸で眠った。
これが後に語られる『黒髪の酒池』である。
以上があの凄惨な戦いの全てだ。
満足そうに眠るカオルを抱きあげ、宿屋まで運んだ。
カルアも、エリーも、エルミアでさえ驚愕の顔を浮かべていたが、眠るカオルの顔を見るとにこやかに微笑んでいた。
今日こそ一緒に寝よう。
シングルベットで少し狭いが、それは問題じゃない。
お互い、少しお酒臭いなと思いつつベットへ入るのであった。




