第二百九十話 親の想いは続く
"刺激的なデート"もそろそろ終わり。
帝城でアーシェラ達も降ろし、色々雑談もした。
グローリエルとクロエの2人は悩み無言に。大丈夫だと思う。エルノールもアランも良き父親だから。お母さんも居るんだし。
帝都住まいで希少な天職持ちの有能――性格も性根も真面目――な人材を帳簿に認め渡しておいた。
どうするかはアーシェラとアラン次第。引き抜くなり徴用するなりご自由に。
そうそう、レギン親方とシルさんはボクがエリーの地下迷宮攻略を手伝ってる間に帝都へ引っ越していたみたい。
近いからねぇ...駿馬で半日だし。荷馬車で1日かからないくらいか。
鍛冶ギルド近くの"曰く付き物件"を取り壊して工房を新設するんだって。幽霊か? と思ったら悪霊だって。魔物じゃん!
元は大商人の住居だったけど当主が無理矢理侍女を手篭めにしようとして刺されて亡くなったとか...それで悪霊に....
なんという自業自得。他にも帝都内に曰く付き物件は数多くあるそうです。建物ごと焼き払わないと成仏しないとかなんとか。
今の【聖騎士教会】に悪霊を祓える人は居ないからね。聖魔法の《浄化》は古の魔法だ。
ローゼが地下迷宮から持ち帰った魔法書に書かれていた重要文化財だけど....放り投げて死蔵してたから....
今やボクしか使えない....教える気も無い....魔法書に起こすのが地味に辛い....丸々一冊分だし....ローゼの家ごとアスワンが魔法書焼いちゃったから...
いいんじゃない? 建物ごと火魔法で焼き払えばいいだけだ。新たに建築して経済も回るし? 石材屋のキーリさんが喜ぶだろう。
着地と同時に試作の飛空艇へ商業ギルド本部長のケイシーが駆け寄って来た。
『随分早く作れたんですな!』とかなんとか詰め寄られたので、『試作なんですよ。皇帝陛下に試験飛行の感想を聞いていたんです。ではまた』と言い逃げしておいた。
そもそもこの飛空艇は航路巡回させないからね。武術大会観戦用にオダンとエリーシャをピックアップはするけど、今後は私的に利用する予定だ。
竜王国の政商、オルブライト商会が重用するだろう。使用料は割安にしてあげるよ。燃費がかなり悪い。ちょっと3時間程遊覧飛行しただけで拳大の魔宝石五分の一も魔力が消費されて....【カムーン王国】王都~【エルヴィント帝国】帝都間で最低20万シルドは掛かる計算だね。
やっぱり運賃は高くなるだろうなぁ....大型飛空艇でどれだけ燃料を抑えられるように出来るか設計し直さないと...いや術式を簡略化して飾りのマストを利用するか? でも風力は一定じゃないから船体が揺れて....う~む....
「大変ね? お兄様は」
「まぁねぇ....飛空艇が鍵になるからねぇ....」
「《異界の口》を使わないのかしら?」
「ソレは王国の発展に使う。常設で王都から"直接"地下迷宮に繋げてね?」
「そう...ふふふ....楽しくなりそうね?」
「だね♪ またみんなで行こう? 今度は薊達も連れて」
「はい!」
「ご一緒ですね!」
「やった♪」
「主君のお命は我等朱花が必ずお護りします!」
「任せて下さい!」
頼もしいねぇ....そしてアイナよ...まだ連れていけないから....甲板で木剣の素振りを始めなくていいよ? エルザも教えるな!
「あの、ご主人様?」
「ん? フランも行きたいの?」
「いえ! 私はご主人様の帰りを待つ妻ですから!」
「可愛いのぅ」
「ひゃっ!?」
うむ。猫耳も中々素敵じゃのぅ。フラン相手だと遠慮なくドS全開で...
「お兄様?」
「ハイ! スミマセン!」
ノワールさんに怒られました! どうやら結婚してからじゃないといけないみたいです!
しかもマリアを越える恐ろしさです! カルアとエルミアを遥かに凌ぎました! 眼光で殺されそうです!
暗部の薊達がたじろいだくらいです! 彼女達は過酷な任務を数多くこなした強者なのです! 朱花は風牙衆くノ一部隊の精鋭中の精鋭らしいです!
それがノワールさんに怯みました! 魔神は最強です! ノワールさんだけでゼウスに勝てる気がして来ました!
「ふふふ....可愛いわ。私」
「アリガトウゴザイマス」
ひぇぇ...この思考も読まれてるってわかってるけど...怖いよ!?
「それで、フラン?」
「は、はい! その....生徒達も、いつか地下迷宮へ連れて行くのはどうかと思ったんです....」
「う~ん...」
あの子達は両親を魔物や魔獣に殺されたり、友人を殺されたりと悲惨な目にあったからなぁ。
でも他ならぬフランからの申告だ。深い意味がある。というか単純。
「過去と向き合い未来へ進む為。ボクの下に居る限り、あの子達は安心して暮らしていける。だけど"籠の鳥"。リアや光希と同じ様に世間知らずに育つだろうね」
「はい。このままご主人様の国で一生を終えるならそれでもいいんですけど...」
「視野を広く持って欲しい。フランは将来の選択肢を多くして選んで欲しい訳だね?」
「身勝手なのはわかっています。でも――」
「『自分と同じ用意された道を歩かせたくない』って?」
迎賓館で侍女長を勤めていたオレリーお義母様の娘フランチェスカ。
父親が誰かオレリーお義母様は教えていない。理由はなんとなく想像できる。
立場ある者で、既に他界してる人。
ボクにとってはどうでもいい。オレリーお義母様が敢えて語らないのだから詮索する必要もない。
ただ、手篭めにされて無理矢理産んだ訳じゃないって事は伝わってるから。そんな事、2人を見ればわかるよ。
そして大事な我が子を自分と同じ道へ進ませた理由は、フランを護る為。
父親が誰か詮索され、万が一ばれてしまうと親族が煩い....最悪フランを亡き者にされかねない。
アーシェラは知っているだろうね。
だから迎賓館勤めを許したはずだし。同じ"夫を亡くした妻"として同情したのも事実。
男系が弱いなぁ...この世界。あらゆる意味で。
「そう、です」
「わかった。みんなと相談して決めよう。元々、最低限自分の身を護る為の修練はさせているしね。
対人、対魔。護身術の基本は『如何にして逃げるか』なんだけど....魔物相手だと難しいから」
「....人も恐ろしいモノですよ?」
「うん。むしろここ最近は人の方が恐ろしいし面倒臭いよ。明日は【ヤマヌイ国】へ行くし」
「ご主人様。私はずっと無事に帰られるのをお待ちしてましゅ!!」
「あはは♪ 緊張するとフランは噛むよね♪ 可愛いよ♪」
「はぅぅぅ....」
本当に可愛いなぁ。ありがとう。いつも出迎えてくれて。
フランとアイナが帰りを待っているから、ボクはちゃんと帰れるよ。
留守を守り、明かりを灯し、『おかえりなさい』って言ってくれる。
お父様とお母様の様にね。
だから、『ありがとう』。
半日の"刺激的なデート"も終わり、メイド服姿のローゼやエリーを鑑賞した。
普段は男装の麗人なローゼも、一度女性服を纏えば女神の美貌を発揮する。
もちろん対抗してエルミアとカルアが何故かメイド服を着ていたり、そのおかげでエリーが安心した顔をしていたりと、平穏無事な毎日――でもないね?
暗躍してるからね。まだまだ続けるからね。今週は大変だね。まだ火曜日なんだけど?
水曜~木曜で【ヤマヌイ国】を叩きのめ――和平交渉ね? オシオキはするけど。ノワールさんが『ふふふ』嗤いで怖かっただけだ!
金曜にオダンを迎えに行きつつエリーシャ達をピックアップと言う名の飛空艇に乗せる。
誓約通りに『【イシュタル王国】と【カムーン王国】の講和条約の締結』もその時に。
まぁ....怪しい動きをする輩は【聖騎士教会】の教義に賛同した【竜王国】の王様が飛んで行くから大丈夫か。
エッ!? もちろんノワールも一緒だよ? いや、脳波で『(照れてるのね? 可愛いんだから...私)』とか送って来なくていいから!
で、土曜日に【エルフの里】へリングウェウお義父様とアグラリアンお義母様を迎えに....毎日忙しいね!?
というか、帝都の迎賓館大丈夫?
防犯面と収容人数的なモノを含めて。各国の代表が一堂に会するよ? 【ババル共和国】は知らぬ。新将軍のユーグが元首になるなら手を貸してやろう。
ボクが侍女長のオレリーお義母様を引き抜いちゃったし、イルゼ、ヒルデ、ナターリエ、サビナの4人も着いて来ちゃったけど...
とりあえず....通信用魔導具の出番だねぇ....
「なんじゃ? カオルかの?」
「うん。あのね? オダンとかエリーシャとかリングウェウお義父様とか、どこに泊まるの?」
「当然カオルの領土じゃな」
「いや、まだ建国してないから。伯爵領にそんな重要人物集められても困るから」
「じゃがのぅ....迎賓館にアヤツが泊まるのじゃぞ?」
「あー...胡散臭い元首ね?」
「うむ。多額の賠償金を払ったからのぅ...彼の国は国庫も空じゃろう。兵役に出た者へ報酬も払ったじゃろうしの。呼んでおいて野宿させる訳にいかぬからの」
「その辺面倒だよね。"共和国は"」
「そうじゃな」
民主主義だからねぇ....せめて元首の発言権がもっと強ければいいんだけどねぇ...任期制で代替わりしちゃうからねぇ。
元老院とか無意味に権力があるしねぇ。強硬派は病死したから穏健派とユーグに期待しよう。元首のデュドネ・シ・フェルはポイするといいよ?
「う~ん。エルミアも居るし、リングウェウお義父様とアグラリアンお義母様は家で預かるのはいいけど....」
「ふむ。オダンは妾が預かるとするかの」
「まぁオダンなら強いし暗殺毒殺の問題は無いけど....エリーシャどうするの?」
「体裁を考えるとじゃのぅ...迎賓館なんじゃが....」
「同盟国なんだし、領事館無いの?」
「【カムーン王国】は内乱続きで予算が無いからのぅ...」
「その辺帝国は流石だねぇ...」
「見栄じゃがな」
「そうだね。無駄に大きな屋敷だったし」
「言いたい放題じゃの?」
「泊まれなかったからね?」
「それは仕方の無い事じゃ。それで、エリーシャじゃが...」
「いいよ。どうせエメと婚約してるし」
「なんじゃと!? 聞いておらぬぞ!? 妾とリアを娶らぬくせに何を考えて――」
何故にアーシェラが含まれているのだろうか? え? アレ本気なの? 『母娘共々』とか言ってたの。
「ローゼ~?」
「ああ、まかせろ」
頼れるローゼに通信用魔導具を渡し、後は頼んだ。
亡国の姫だからね! エルミアも参戦したから恐れる者は無い!
というか、忙しいのじゃよ。
ご病気を発症してしまうお義父様用に迎賓館を増築――一部隔離施設化――したりとか。光希と千影と天音用に純和風建築のお家を建てたりとか。薊達朱花の詰め所兼住居でいいの? あ、そう。ソレを警護団詰め所近くに造ったりとか。
明日は【ヤマヌイ国】へ行くから光希の礼装和服を用意したりとか...1週間で振袖一式新調できる訳無いだろうに....帯すら織れてないじゃないか....
ボクの家臣の薊達へ装備一式用意したら、『私達も欲しいです!』なんて言い出して....ローゼ達も普段は止めるくせに『学校を手伝ってるんだ。服くらいやったらどうだ?』とか...
アレは衣食住の為に働いてるだけだ! そもそも、ほんのりピンク色の珊瑚のかんざしを薊達だけじゃなく光希達にも贈ったんだから調子に乗るなー! 国宝級らしいぞー!
なので、家臣じゃ無いから武器と防具はやれぬが服は作ろう。家族達が『そうしてあげなさい』と言うのだよ...カルアとかが特に....
それにしても....光希の家の家紋は"鳳凰の丸"なの?
そこに不死鳥を使い魔にしてるローゼが居るんだけど?
ん? 鳳凰であって、不死鳥は違うと。
...."東の国"と"西の国"で呼び名が変わっただけじゃないかな? って、四霊獣の朱雀の方が鳳凰に似てる? 朱雀って事は、青龍、白虎、玄武が居るんだ? 麒麟は? 知らないんだ。ソカー....
「陰陽師ねぇ」
「はい。【ヤマヌイ国】では魔術師と呼ばず陰陽師と呼んでいます」
「こういった呪符を使うんですよ?」
「ほほぅ...和紙かぁ...味があるねぇ...」
「これはお守りみたいなものなんです。千影姉様と天音は素養が無いので....」
「あら? 私も簡単な物しか使えないのですよ?」
「我等もです。火を熾す程度くらいならなんとか....」
「変わり身の術で《空蝉》が――」
「「「「柚!?」」」」
「あっ...なんでもございません...」
「ふ~ん...」
《空蝉》ね? 【カムーン王国】の王城地下で見かけた呪術はやっぱりコレか。
大方【ヤマヌイ国】から亡命した者達が書き記した物なんだろう。
で、占星術とかじゃないんだ? 呪符魔術? 東方魔法ってところか。
どれどれ....マリアが集めた情報を見てみよう....
「フルウィンドウオープン」
光希用のかんざしに合わせた桃色の礼服も作り終え、興味本位に陰陽師を検索。
マリアが盗み見した情報はとてつもなく膨大で、鎖国中の【ヤマヌイ国】の国家機密すら網羅している。まだ一部だけだけど...
もちろんボクにしか見えない様にウィンドウは非表示。
ボクの住んでいた世界だと奈良や平安時代の元官位職で九字や占星術、吉凶の占いとか退魔の仕事をしていたのが陰陽師なんだよね。
ふむ。呪符を呪具。つまり触媒として用いて魔法を発動させるのね? 式神? これが魔力で具現化した力の権化さんか。
霊符がさっき言ってた四霊獣を呼び出すのに使うんだ。千影と天音が持ってるのは護符やね。白銀みたいに退魔の力があると...迷信の域だ。
【ヤマヌイ国】では砕いた魔宝石と墨を混ぜて五芒星を描き、使用したい力をイメージからの呪文『急急如律令』を唱えて発動させる、と。
混ざってるなぁ...色々と。
干支の凡字とか。四霊獣も四神だよ? 南の朱雀、東の青龍、西の白虎、北の玄武。そして九字はどこへ行った? 『臨兵闘者皆陣列在前』は何処へ?
六壬式盤は? 渾天儀――天文観測道具――は? まぁいいけど。
「《青龍招来》」
呪文の詠唱を破棄して呼び出した青龍君。
緑色の和製龍で、木っぽい角が頭に2本。あとは手も付いてる。鬣が金色だ。
邪龍ニーズヘッグを可愛くした感じ? 厳つさは感じないかなぁ。
ドラゴンを見すぎているからかもしれないけど。
「ふむ。霊符が無くても、ボクの魔力とスフィアのウィンドウ経由でいけるね。それにしても、鎌鼬を起こして消えちゃうのか。また微妙な――」
「ひ、ひひ、姫様!?」
「.....」
「ハワワワ」
「「「「「....」」」」」
何をそんなに驚く事があるのだろうか? 口腔から撃ち出した鎌鼬も《風の障壁》で防いだから宮殿の談話室は無傷だよ? ファルフの方が強いよ?
そもそも風属性の式神...霊獣か。やっぱり不死鳥も一角獣も同じだよ!? いや、常時実体化してるだけ後者の方が格上か?
四神とはいったい...むしろボクが神なんだが....片手間ゼウスを早急に引っ叩かないと.....
「《白虎招来》」
おー! ホワイトタイガーや! アブリルに取られた敷物よりカッコイイ!
「....地を裂く強烈な一撃、ね」
走り出して床を喰らうも《土の障壁》で防げた。おかしいな....東方魔法は微妙だぞ....
魔宝石も使うし、呪文も唱えるし、呪符に霊符と管理が大変だし.....護符は許そう。縋りたい気持ちはわかる。ただのお守りだ。
アレェ? これはもしかしたら間違った方向へ進化したんじゃないかね? 普通に西方魔法――そんな名前は無い! なんとなくだ!――の方が強いよ?
「どう思う? 光希」
「.....」
「おーい?」
「.....」
「ふむ」
「お兄様は本当にバカね?」
「なんだとぅ!?」
「気絶しているのよ?」
「そうなの!?」
「ふふふ...可愛いわ。私」
「ヒッツクナー!」
「も、もも、もしかしてカオル様は他の式神も?」
「ん? 朱雀と玄武は火と水属性だから今のボクには無理だね。青龍は風、白虎は土属性だから呼び出せただけだよ? それに式神じゃなくて霊獣だよ?」
「そ、そうなのですか....」
「ち、千影姉様...」
「何も言わないで....カオル様に私達の常識は通用しないのよ」
「は、はい....」
おや? 千影は演じていた"武人らしさ"も消えたみたいだね。うんうん。天音みたいに女性らしくて良いと思うよ?
実際、自分の身を護るくらいに強いんだし。あとはルイーゼ達に混じって修練でもすればいいね。せっかく基礎体力はあるんだから。
「ふぅ...アーシェラめ....やっと納得したか。それで? カオル。今のは何だ?」
「ローゼありがとー! さっきのは【ヤマヌイ国】の魔法だよ~♪ 明日の調略――じゃなくて和平交渉も概ね良好に終わりそうな感じだね♪」
「そうか。それで? 明日の訪問は"誰と行く"んだ?」
「う~ん...エリーはフランからまだ合格を貰えてないからダメ」
「ぐぬぬ」
「エルミアは"例のアレ"を覚えて」
「...はい。必ず!」
「で、光希と千影と天音は確定。もちろん朱花の薊達もね?」
「「はい」」
「「「「「御意!」」」」」
「という訳で、残った聖女のカルアと頼れるローゼを連れて行きます」
「もう~♪ 聖女だなんてぇ~♪ おねぇちゃん嬉しい~♪」
「まぁ当然だな。私はカオルの師匠だからな」
「うんうん♪ 【聖騎士教会】の司祭試験も受かったカルアだからね~♪ ファノメネルが喜んでた♪」
「おねぇちゃん、がんばったのよぉ~♪」
「ローゼも"焼き料理だけ"は子供に教えられるくらいになったしね♪」
「ああ。これからも覚えるがな。なかなかどうして焼き料理も奥が深い」
元々焼くしか知らなかったローゼだからね...他の煮込み料理とかは諦めたんじゃよ...フランとオレリーお義母様が匙を投げた。『ローゼには無理です!!』だってさ....
「ちなみにエルミアが"例のアレ"を覚えると――」
「エリーと決定的に実力差が開きますね」
「ぐぬぬ....み、見てなさい! 絶対に追い抜いてやるんだからね! フラン! アイナ!」
「はい?」
「ん?」
「料理と座学を教えて下さい...」
「わかりました!」
「ん!」
ツンデレで負けず嫌いだなぁ...エリー....でも可愛いよ?
あ、ノワールはもちろん連れて行くから。ルルとグレーテルも。そんな悲しそうな顔をするなー!
ノワールはくっ付いて来るなー! ソフィアとエルザはなんでそんな打ちひしがれてるの!? 今度ね!? こんど!!
さ~て、雑多は事はシュパパっと迅速に片付けてお風呂に入って寝よう!
王宮に私室兼工房兼研究所があるから早く引っ越したいのだけれど、ボクはいつまで宮殿で寝泊りするのだろうか....まぁいいか。両方に住もう。その時の気分で。
ちなみに、王宮も宮殿もたいして違いは無い...王が住むのが王宮。かつて王が住んでいた、又は、王族が住んでいるのが宮殿とかなんとか....どっちでもいいね。
そういえばメルから嘆願書的な物が送られて来ていた様な....なになに....
『低温蝋燭の補充とその他器具を新調していただきたいです。媚薬の効果時間は5時間でした』
....仲良き事は美しきかな? 【ヤマヌイ国】から戻ってきたら対応するよ。っと返信返信。
帝都にあるボクの領事館に地下室を造ってあげないとね~♪ カイとメルの両親の為に♪ やっぱりハリアーシュも使うかな?
オダンを迎えに行った帰りに寄ってみるか。クローディアも気になる。魔剣ソウルイーターがあんな性格だったからね。もしかしたらクローディアに悪影響が....
「マスター? その心配は無用です」
「ほほぅ?」
「本日の昼、仲良く手を繋いで領内を歩き回る姿を捉えました」
「どれどれ....」
特製スフィアで画像を表示。
確かにマリアが言う通り仲良さそうに手を繋いで....ハリアーシュの首に黒いチョーカーが!? 鎖が付いてなくてよかった!!
しかし、まさかの公開プレイ!? やるな....クローディア....カイとメルに禁止令を出しておこう。生徒達の教育上よろしくない。真似はいかん!
「マスターもマリアに着けますか?」
「イイエ」
「そうですね。マリアにマスターは鎖を着けていますからね」
「ソウダネ」
「ふふふ...回っているわね? は・ぐ・る――」
「言わせないゾ!」
ニョキっと出て来て妖艶に迫るな! マリアもウィンドウの中で微笑むな! 後ろの映像はなんだ!? この前ボクが倒した腐敗竜のヤツじゃないか!
ドアップでボクを映すなー! 物凄く笑顔な自分が憎い! そして、そのウィンドウの外枠に書かれてる『マスター会心の笑み 其の弐の8』ってどういう事? 其の一があるの? 8って何? ストックされてる!?
エッ!? リアとエルミアと同じ人種? カトラリーとかボクの髪を集めるとか...そういう趣味的な感じ? いや、画像と映像ならまだ...子供の成長過程を見る的な....
「マリアの愛は重いのよ?」
「いや、物理的にノワールが乗って重いよ?」
「お兄様? レディに体重の話しは禁句なのよ?」
「兄妹なら許されるはずだ! だって家族だもの!」
「ふふふ....はぐらかそうとしているのね? 可愛いわ。私」
「ヒッツクナー! ヤメロー!」
「嬉しいくせに....ふふふ....ふふふふ.....」
「ダレカタスケテー!」




