第二百八十二話 無邪気な子供
6月の第二週目今日は土曜日!
そう! 再来週の頭にボクは建国宣言を行なう!
故に今日はお休みなのだ!
だってさ?
商談とか地下迷宮とか各国を飛び回ってた訳なのですよ。
"猛特訓"もしたし? エリーなんて今はメイド姿で料理を失敗してフランに怒られてるけど、上級と呼ばれる準1級冒険者に成ったし?
邪龍ニーズヘッグも倒したし? カイとメルの結婚式も2回やったし?
毎日忙しかった! だからお休みを要求する!
しかーし!
やらねばならぬなにごとも。
根回しは迅速に。やるべき事は箇条書きに。心配事もあるにはあるから....
朝だけ働こう! 一瞬で!
バシュっと【カムーン王国】の王都へ飛んでセシリアの家こと、オルブライトさんの下を訪ね書簡を一通直接手渡し。
困惑顔のオルブライトさんと微笑ましそうに笑みを浮かべるマリリンさん。使用人のヒルダさんも笑顔で応対!
ハンナの弟アストンと、妹のジョアンナも居たので挨拶!
「おはよう!」
「おはよー! 姉ちゃん!」
「お、おはようございます。コホコホ」
うんうん! アストンは元気があっていいね! そしてジョアンナは本当に風邪か!
どれどれ秘蔵のハイポーションを飲みなされ? うんうん善い子だ!
ついでじゃ。お菓子を恵んでやろう。な~に毒など入って――
「これうめぇ!?」
「お、美味しいです!!」
「まぁまぁ♪」
「あらあら♪」
....説明途中だったんじゃが...そしてボクは『姉ちゃん』ではないぞ! アストン10歳よ! ジョアンナは8歳なのね?
ほほぅ...ハンナのお母さんはシャローナさんって言うんだ?
王国兵士だったご主人が亡くなり、女手ひとつで子供3人を育てていると。
ふむふむ...商業ギルドで筆写師のお仕事を?
ああ、物書きだから仕事を多く請けないといけなくて帰りが遅いんだ。
どうでもいいけど、なぜヒルダさんは小声なの?
え? その方がいいから? 旦那様が白目を剥いてる? だから奥様がそうしろと?
まぁ大筋は理解した! 故にサラバなのである!
「ああ、そうでした。クッキー多めに焼いたのでみなさんどうぞ♪」
「まぁまぁ♪ ありがとうございます。香月伯爵様」
「ええ♪ ええ♪ ありがとうございます。香月伯爵様」
「姉ちゃんありがとー!」
「お、美味しかったです。可愛いお姉ちゃん...」
『可愛いお姉ちゃん』か.....許そう! ジョアンナは8歳だもの! アストンも10歳だもの!
オルブライトさんは書簡の中身をじっくり深慮黙考しておくれ! ではではー!
ただいまー! の前に第3防壁内を区画整理。
メリッサはカンカン叩いて今日も精が出ますのぅ。
そりゃ自分の手で精霊金属なんて物が作れるように成れば喜ぶか。
白銀には劣るけどね。普通に重いし硬いし折れるし。
良いとこ木目模様鋼と同じ....いや『フォムフォム』言ってたイフリートだからなぁ...優劣着けてそうだし、木目模様鋼未満かな。
木目模様鋼の武器はもうこの世に無いから優劣は着かないだろう。それでいいよ。
そんな些事は捨て置いて、区画整理します!
メリッサの工房兼住居兼大商店と、冒険者ギルドソレルナ――なんかみんながそう呼んでた。【水の王都ソーレトルーナ】は長いのかな?――支部はそのままに、大通りの中央から噴水を!
もちろん《建築創造》で! ウンディーネが清らかなる水を湧かせて! 飲んでみたらただの水だった...
そうして環状交差点な中央通りは完成し、各ギルド支部を建設!
同じ色に同じ外観。3階建て。看板は後でエルミアにお願いしよう! なにせ字が上手いのだ♪
しかし....ヴィーリさんの建具を填めた途端にメルヘンチックな街並みに....
大通りの側溝は両脇共小川が流れ、等間隔に蓋的な橋が架かり.....汚泥は地下で浄化装置こと、魔法具が沢山張り付いてるから環境破壊なんてありえないし....
と言いますか、この花壇はどちらからお持ちになられたのでしょうか? ま、エルミアだろうけどね。
小川は途中で地下へ流れ、海へと続く。
そこから第4防壁までの間は屋台と商店が両脇に軒を連ねる。前に造ったヤツやね。
大衆食堂も6つほど増築した。彼ならやれる! 食料はいっぱいあるから! それぞれの店で色を出しておくれ! 肉料理専門とか魚料理専門とか!
厩舎と近衛騎士が寝泊りした建物もそのままだ。どうせアーシェラが来たら使うだろう。流用は可能だし。
はてさて、メリッサのお店からちょこっと離れたこれまた一等地に、彼ことオルブライトさんのお家を用意。
とは言っても外壁と門扉。一応帝都にあったボクの屋敷に似た物を《建築創造》っておこう。
マリリンさんが書簡を覗き見してニッコリ笑ってたし、政商は決まったも同然なのだ!
むしろハンナ一家も移住か? セシリアもハンナも寮住まいだから何も問題ない。飛空艇ならいつでもひとっ飛びで会える。
それに言いなりな商業ギルドはボクの権力でどうとでも出来るから、シャローナさんをギルド職員に斡旋して....
そうすれば母子水入らずの時間も自然と増える。子供が風邪をひいているのに働かないといけないとか、シングルマザーとして辛いだろう。
う~ん....男の子かぁ...10歳かぁ....まぁいいか。ハンナの弟だし。撃滅だし。
そのうちボクの子も産まれるから女性だけの国なんて不可能だ。
カイも住んでるしね~♪ 子作りしてるのかなぁ? 家には近寄らぬがな! そこは国民に徹底したし! 可哀想じゃん? 悶々としちゃうじゃん? 誰かが!
明日は行商が来る日だからそれまでは自由にしてるといいさぁ♪ 一応明日までお休みだけどね~♪
【聖騎士教会】の礼拝堂と治療所。聖騎士達の詰め所と訓練場――【オナイユの街】の教会と詰め所を参考にした――も完成させて住居も完備。
公衆入浴場も造った! デカイよ! 学生寮にある100人同時に入れちゃうヤツを凌ぐよ! 倍やね?
サウナもあるし....これは喜ばれるじゃろうて。熱帯地域の観葉植物を移植しよう。いや植養か。宮殿にある露天風呂の植物を増やすんだから。
これもエルミアにお願いだね♪ 精霊魔法バンザーイ!
「お兄様が浮かれていて、私も嬉しいわ」
「いやいや。突然出て来てヒッツクナー!」
「嫌じゃないのでしょう? ふふふ....」
「ヤメロー! タスケテー!」
「五月蝿いさね! 静かにするさね! 手元が狂っち――なんさね!?」
「あ、メリッサたすけてー!」
「ふふふ....可愛いわ。私」
突如として変貌を遂げた街並みに茫然とするメリッサ。
ノワールは好機とばかりに胸を押し付けボクで遊ぶ。
助けを呼んでも誰も来ない。
守護勇士も護衛団員もゴーレムさえも。
おかしいな....これじゃ万が一何かがあったときに――
「マスター」
「フラウ!! 助けに来てくれたんだね!?」
「いいえ、マリアからの伝言です」
「エッ!?」
「『録画しますか?』」
.....そうかぁ....魔神相手じゃ天使は辛いかぁ....当然ゴーレムにも無理だよねぇ....ボク以外にノワールをどうにかできる相手なんて居ないからねぇ。
「録画しません!」
「了解しました。マイマスター」
「ふふふ....」
さ~て、新生【水の王都ソーレトルーナ】の地図もスフィアに書いたし、農地の区画整理もばっちりだ!
正方形で区分けされて、馬車道用にど真ん中を舗装した。
土壌改良が必要無いから種を蒔けば発芽するじゃろう。なにせ水路を造ったあとにウンディーネが『....任せて』って言ってたし。
アヤツずっと住み付いてるんだよ? 幼竜アオの住処の近くに。
なんか仲良くなったらしいです。頭に乗ってました。悔しかったのでシロを呼んでボクも頭に乗せてもらいました。
『張り合ってるのね? ふふふ....可愛いわ。私』とかノワールに言われたけどね!
いいじゃないか子供だもの! メリッサに怒られたけど....『工房の周りに新築するなら先に言うさね! 驚いたさね!』と言われました。
まぁねぇ...《建築創造》は無音だからねぇ....びっくりするよねぇ....でも止めない!
隔壁の門に常設の人形とゴーレムを配置しておいた。
小さな詰め所に座る人形――何故か本を読んでた。しかもイライザとレーダ著書の...――は、そのうち家臣団の誰かに引継ぎかな?
騎士爵を叙任する警護団員が居るから陪臣も付くじゃろう。
ちなみに各門の上部に《魔除動像》が4体づつ鎮座してる。
普段は動かない。魔物や魔獣、不貞の輩に反応する。なので、普通に石像だね。
あとは泥人形を魔改造したくらいかな?
"禁断の魔導具"の魔導甲冑を真似てゴーレムに鎧を着せた。
白鉄の全身鎧。しかも身長5mと大きい。素早さは無いけど、核の魔宝石を壊さない限り倒せない。
そして最大の特徴、人じゃ壊せない。
ボクが知る中で元剣聖のローゼが一番強い。同じく【カムーン王国】剣聖のブレンダよりも。
ブレンダは手数で相手を翻弄して疲弊した所を突くのが彼女なりの戦い方だ。
ローゼは後の先。全ての攻撃をいなし続け、必殺の一撃が待っている。
体力勝負になった瞬間に勝負が着いてる訳だね。
それで、魔法剣士のローゼが神鉄金属コーティングされた白銀製の白炎刀を使い、さらに《火の魔法剣》と<抜打先之先>を合わせたとしても、この白鉄の全身鎧は斬れない。
だってこれ、神鉄金属に着色して白さを曇らせた偽装品だから。
神鉄金属コーティングした白銀程度で斬れるはずはない。
むしろ白炎刀が折れる可能性が高い。
なにせ白銀は不壊金属じゃない。ローゼの白刃刀も、ボクの曲剣も壊れた。
もちろん不純物が混じっていた事も要因している。なんて、実際に白銀をついさっき《雷の魔法剣》と《風の魔法剣》を使用した桜花とデュランダルで斬ったので間違いはない。
なので、神鉄金属を壊せるのはボクかノワールか、《天使化》した守護勇士の面々くらいだね。エルザは除く。魔鉄金属では神鉄金属に敵わないから。
という訳で、白鉄鎧泥人形改め、白鉄鎧怪物2体を第2防壁北門の両脇へ配置。
第2防壁はそこしか通路が無いからね♪ 南門もあるけど普段は閉まってる。《魔除動像》が居るから問題ないのだ。
「終わったー! 遊ぶぞー!」
「グルル♪」
「乗せろーい!」
「グワァ!!」
シロの頭に乗りバッサバッサと大空へ。アオ・クロ・アカも飛んできて、ボク等は海で大騒ぎ!
大海蛇とか殺魚が襲って来ても格好の的だ。
咆哮は一切禁止しているから、顎や腕で噛み付き引き裂き真っ赤っか!
元から赤いアカは艶っぽい! もちろん全部食料だ! 《魔法箱》へ仕舞いまた遊ぶ。
素潜りからの上昇飛行! 滑空からの入水! 《聖闘衣》を着てる上に《多重障壁》を張っているからボクは無事だし、神足るボクがこの程度でどうにかできる訳も無い。
なので遊んだ! 常識的に! 子供だもの!
「ワーイ!」
「「「「グワァァァ!!」」」」
尚、夕暮れまで幼竜と遊び、びしょ濡れで宮殿へ帰ったボクは家族からの集中砲火で撃沈した事をここに告白します。




