第二百七十七話 帰還 クレイズルの地下迷宮(ダンジョン)
ふむふむ....
日付も変わり木曜日。45階層の階層主、特大サイズの石毒蜥蜴も難なく倒し、休憩中。
お風呂も入ったしごはんも食べた。造ったベットでみんな寝てる。もちろん布団で。
ボクはまったくもって疲れてないし眠くもないから特製のスフィアで通信中。
メール機能の生徒達が形成したグループ会話に参加してみたり。
やり取りが履歴に残るのだ。挨拶とか情報交換とかに使ってる。
やっぱりお姉さんのアリエルが学級委員的な役割を担い、元冒険者で土竜が奴隷市場で買ってきたエルフのディニエルと同じくエルフのケレブリンが補佐してくれてる。
アリエルの方が年齢は下なんだけどね。後から入学してきたからそういう立ち位置なんだろう。
というか、物凄く仲が良い。全員。
普通うら若き乙女が集まれば派閥が出来たりとかそういう対立があるかと思ってたんだけど無駄な心配だったかな?
まぁたった29人の閉鎖された空間だからねぇ。虐めとかは無いか。仕返しが怖いし、ボクがそんなの許さないし。
なにより教師陣が優秀だからね。オレリーお義母様とかアーニャとか。
それに...彼女達が味わった苦痛は大きいからね。
ディニエルは両親を魔物に殺され売られた子だし、ケレブリンは冒険者の仲間が死んで自分を売った子だ。
みんなそれぞれ重い過去を持っている。もちろんボクの家族も。
だから、一致団結しやすいのかもしれない。そんな子を増やしたくはないけど。
何が出来て、何が出来ないか。これからのボクは取捨選択を迫られる機会もあるだろう。
それでも自分にとって最善な道を選べたら良いな。
みんなが笑って過ごせる王国。
『世界中の全員が』なんて言っても無理な事はわかってる。でも言い続けるよ。言うのは自由だから。
「それで、お兄様は何を造っているのかしら?」
「ん? 飛空艇の動力図。ほぼ完成してるよ。動力炉に魔宝石を使って、常駐型浮遊魔法や制御型停止魔法。揚力維持魔法とかの動力にする。
その為に魔石を魔宝石に精製する魔法具も作って冒険者ギルドに設置したんだからね。魔宝石が世に広まれば、それだけ文明も進む。
ゼウスの筋書きはほとんど書き換えられる事になるだろうね? ボクとノワールの手で」
「そうね。それが私達の歯車」
「ノワールはその引用が好きだよね? 運命の歯車。ボクは筋書きって呼んでるけど」
「だって、本当に回っていたでしょう? カオルの周りの女性達。エリーシャとかは特にそうね?」
「いやいや、囲わないし娶る気も無いから。ファノメネルもそうだから。押し付けようとしないでくれるかな?」
「ふふふ...回ってしまった歯車に抗えるのかしら? 私」
「抗うよ。さすがに母娘三代を娶るとかありえないから」
なんでこんなにグイグイ押してくるんだろうね?
そのくせ自分はボクの事を手玉に取るくせに...お母様ソックリだよ。
「それに――"あの場所に住む女性は全員"カオルを好きよ? 読んで知っているのでしょう?」
「イイエ。シリマセン」
「ふふふ...誤魔化してもダメよ? 私はカオルでカオルは私。全部わかっているのだもの」
「...ちょっと待て。"あの場所に住む女性は全員"だと!?」
あ...ローゼが起きた。いや、ノワールが話し始めた辺りから起きてたの知ってるけど。
エリーもカルアもエルミアもね。
「そうよ? 家臣も生徒達も侍女も女神さえも。全員がカオルに好意を寄せているわ。例外は2人だけね。メルとメリッサ。あとは全員カオルを好きよ?」
「ルイーゼ達もなのですか!?」
「アレは一種の崇拝ね。カオルは神だもの。禁忌を犯す事で人は快楽を得るわ。禁断の愛。ふふふ....邪ね?」
「エッ!? オレリーさんってカオルのお義母様になるんでしょ!?」
「ええ。決定的だったのは、若返りかしら? 娘のフランチェスカが居るのにね」
「いけません! カオル様! いったい何人の女性と婚姻するつもりですか!?」
「いや、だから娶らないって。どれだけ節操無しに思われてるの!? ボク!!」
「ふふふ...仕方が無いのよ? お兄様。ゼウスの子アポロンなんだもの。多くの女性が恋をしても当然なのよ?」
「それは先代の話しだよ!」
「そうかしら? お父様はとても女性からの誘惑が多い人だったわよ?」
「そうだけど...でもお母様が全部排除してたでしょ?」
「ええ...恐ろしい人ね? お母様は。でも、カオルに逃げ場はもう無いのよ? 現に何人の女性と婚約しているのかしら?」
うっ...それを言われると何も言い返せない....
そしてローゼ達も言い返せるはずもなく...
「可愛いわ。私。本当に可愛い。それじゃまたよ? お兄様」
そうして嗤いながら影に消えるノワール。
後に残されたボク達は、ただただ無言で見送った。
さーて色々懇願されたけど、まぁなんとかなる....はずだ。
要するに、逃げればいい。婚姻を求められようと、寝込みを襲われようと、逃げれば全て解決だ。
"既成事実"だけ気を付けよう。
前にアーシェラも言っていたし。『2人だけで食事など行けば許婚扱いされるじゃろうの?』みたいな事を。
だから、誰か家族が護衛してればいいんだ。
ノワールはずっと影に居るし、守護勇士のみんなも居る。
もちろん、ローゼ達だっているから大丈夫だ。
たとえ、アリエル達とやり取りしてるデザイン画をボクが品評しているのがばれようと。
たとえ、ファノメネルとオレリーお義母様の連名で初夜の所作みたいな内容のメールが送られて来ようと。
ボクは全てから逃げよう。
「よーし! あと5階層だ! ガンバロー!」
「「「「.....」」」」
沈黙が重い。表現がおかしいけど重い。
大丈夫だから。決めたでしょ? 逃げるって。心配しなくていいよ?
そりゃつい最近エメとも婚約したけどさ。光希も...まぁ....するんだろうけどさ?
本当に、多正妻、多側室、多愛妾、多伽係が出来てしまいそうだよ...色んな意味で暴君か!?
「ま、まぁ行こう? ほら、いつまでもジッとしれいられないし」
「わかっているんだがな...」
「うん....」
「それでもおねぇちゃんは悲しいの...」
「はい....」
いじけるなー! ボクの方が悲しいゾー! 被害者だー! 裁判だー! 国際法を適用してください!
どうにかこうにか移動を始め、戦闘が始まればいつものみんなだ。
なにせ油断すれば死んでしまう。だからそんな余計な事を考えるヒマは無い。
むしろ自棄になってない? ローゼですら素材とか気にせず奥義を連発してるんだけど....
エリーは相変わらずだし、エルミアは――
「凄いわねぇ...エルミアちゃん」
「ソウダネー」
大暴れの《妖精樹木》。その数30体以上。
大熊とか格上の大恐熊が、枝葉で叩かれ吹き飛び絶命。
体躯4~6mはあるんだけどね....ただの樹木に殺されるとか可愛そうに....ナムナム...
《魔法箱》へ獲物を仕舞いながら《魔透帯》で罠の類は全て解除。
宝箱も見付けて色々ゲットー! 宝石とか聖遺物が入ってた。
しかも微妙な水瓶とか...聖水か? とおもい気や、ただの水が湧き出るという...小さければ素敵なんだけど...デカイよ。ボクの身長くらいあるよ。どうりで宝箱がでかかった訳だ!
砂漠地帯の【イシュタル王国】で重宝しそうだね? あげないけど!
素材やそれらアイテム類は全てボクが買い上げ均等分配。
エリーは更にボク達に報酬を払わなきゃいけない。一応雇っている身だから。
まぁ、不死鳥の素材が手に入れば関係無いだろう。
みんなもお小遣いで良いみたいだからボクからあげよう。
つまり、ローゼ達が頑張れば頑張るほどボクの利益になる訳だ!
素敵! でも自分で狩った方が速くて素材も痛まない! 言わないけど!
家族のコミュニケーションを取ってる訳だね。命懸けの。
この世界では日常だから仕方が無いのだ。
「はぁ...暑いな....」
「そうね...」
「おねぇちゃんも~...お水飲む~」
「カルア姉様。私も飲みます」
「次の47層から灼熱の砂漠地帯だからね~。その次は溶岩吹き出るマグマだよ~」
「これだから地下迷宮は...」
「無茶苦茶よね...ホント....」
「うん。だからオルトロスのコート持ってきてって言ったでしょ? アレは高い魔法耐性があるから着れば熱も遮断――」
「おお! 本当だな!」
「そうね! 涼しいくらいね!」
「でもぉ...見た目が暑苦しいわねぇ...」
「ですが、カオル様からの贈り物ですから」
説明途中で羽織り始めた、だと!?
バカナ...ソレはとても高価で一国の王すら買えない代物だと言うのに...
現にアーシェラですら欲しがったんだよ!?
あげたけどさ! お世話になってるし! リアにはマフラーだけど...
「それで、カオルは着なくて平気なのか?」
「...平気だよ。《聖闘衣》で着てるこの服は、ありとあらゆる現象を遮断できるから。コレ、戦闘着なんだよ?」
「エッ!? 鎧みたいな物なの!?」
「そうだよ? 魔力で具現化した防具だもん。自分以外に脱がせられないし」
「だからあの時脱がせられなかったのねぇ」
「なるほど...安心しました。カオル様がソレを着ている限り、貞操を奪われる心配も無い訳ですね」
「「「はっ!?」」」
おぉぅ...なるほど。それはたしかに。
絶対防壁やー! ボクの無実を証明してくれる素敵な魔法着やー!
あれ? でもコレ...神じゃなくても着れるの? 聖魔法なんだけど。
(ふふふ...大丈夫なのよ? お兄様。一度覚えた魔法は忘れないもの。それに...お兄様の適正魔法は聖魔法よ? だから《聖治癒》を使えるのだから)
脳波で答えてくれるのは嬉しいけどさ。ノワールは、何で知ってるの?
(だって、私が暗黒魔法を行使できるのよ? 相反する存在のお兄様が聖魔法を行使できないはずがないでしょう?)
あ...確かに。
(可愛いんだから...私)
いやぁ...盲点中の盲点だったね。
そうだよねー。風竜と土竜の契約者だから風と雷、土系統の魔法が使えるだけであって、ボク本来の魔法系統は別にあるはずだよね。
現にノワールは暗黒魔法と一部の空間魔法、古の魔術師が誰でも使える無属性魔法しか使えないんだもん。
ん? ボクが聖魔法の適正があるという事は...《浄化》の上級魔法も使えるんじゃないかな?
死した魂。悪霊とか、死霊とか...怨念の塊が魔物に成ってしまった姿。
魔素から自然発生した者じゃなくて、輪廻転生の輪から外れてしまった者達を....本当の意味で浄化できる?
それって...将来的に人口が増える可能性も...再誕を世界樹で待つ者達が増えれば自動的に...
おお! 素敵だ! 問題はそれらが出る地下迷宮の難易度が物凄く高いってところか。
土竜の住処『フムスの地下迷宮』にも死骨戦士が大量に居たしなぁ...
あの中に怨念から魔物へと姿を変えた人も居るよね。なにせ、御遺体は沢山あったもん。
コレも要考察案件やねぇ。
「ふむ。だがこの服だと背中が丸見えだぞ? 綺麗な肌だ」
「そうねぇ...でも可愛いわよねぇ」
「カオルちゃんは元から可愛いものぉ♪」
「そうですね。カオル様はとても可愛らしい方です」
えっと....なんでボクは羽織ってた白いコートの軍服を捲られて背中を撫で回されているのでしょうか?
ホルターネックのワンピースは結構快適なんだよ? いや開放的と言うべきか。
何より可愛いし? 女装趣味にさせたのローゼが犯人だし? 責任取れー!
「ほら行くよ!」
「ああ...」
「もうちょっとだけ...」
「おねぇちゃんも!」
「私もです」
「触り過ぎ! お風呂で散々触ったでしょ!? それにこれから行くところは休憩もできないんだからね!」
「「「「はい...」」」」
まったくもう! 危機感が足りないんじゃないかとボクは思うのですよ!
そりゃ嬉しいよ? お父様とお母様から頂いた身体だし? 褒められるのは嬉しいよ。
でも、だからってこんなに触らなくても....ねぇ?
砂漠地帯の47階層。平坦な場所で砂嵐が起きてたり。異常な大きさの砂蚯蚓が襲ってきたり。
小さな蠍が居たりと地味にウザイ。
そしてみんなフードを被り黙々と歩き戦う。
【イシュタル王国】の兵士を思い出した。ターバンみたいの巻いてたよね。
それにしても眩しいなぁ...太陽的な天井が。高さも今まで以上に高いし。
さっさと抜けて溶岩地帯へ。
火山もある。マグマも吹き出てる。正直に言おう! 辛い。
マグマを泳ぐ魚みたいな魔獣――海獣?――も飛び跳ねて攻撃してくる。
あの大きさは怪魚やね。クジラかと思ったよ。
そうそう49階層にドラゴンが居た。
属性竜の上級種。火山竜。
大きかったねぇ。体躯40mくらいかな? うちの幼竜達の倍近かったけど、風竜と土竜の方が大きいからね。
ローゼ達は慌ててた。
ただ、彼に言葉を話す知能は無かった。やっぱり最上級竜種の風竜とかと根本的に存在が違うんだね。
マグマで溶けない黒い外皮と龍鱗。爬虫類と同じ黄色い瞳。口走る炎に羽ばたけば突風が巻き起こり、マグマの礫が散弾のごとく放たれる。
咆哮も強力で、超々高熱の岩をも溶かす白光線。
もっとも、カルアが防御の冠を使い《聖結界》を張ってローゼ達を守ってたから特に問題も無く。
ボクはと言うと――
「シッ!!」
自分を奮い立たせる言葉――戦闘のスイッチやね――を口に《飛翔術》で空を疾駆し、肉薄。口角を上げて咆哮の予備動作を読み取り、首筋目掛けて"極技"を発動。
刀術 <雪月花>。
冷たい雪の一撃に、弧を描く半円の月。終撃後の舞い散る血潮が花のように吹き出て、呆気なく火山竜は巨体を倒す。
神鉄金属製の桜花に、《風の魔法剣》を発動させた。
一点――一ヶ所――3連撃は、流石に硬い外皮と龍鱗も耐えられないだろう。
現に首は落ちた。もちろん全部回収。やったね! 色々作れるよ!
「...ねぇ。カオルってローゼの弟子なのよね?」
「...弟子"だった"な」
「カオルちゃん強いわぁ♪」
「流石は神なのでしょうか」
「ん~? 神力は使ってないよ? 風竜の魔法は使ったけど。あと"極技"だね」
「ああ...私も一応使えるな」
「うん。使わなくても倒せるけどね~。エリーがバンバン奥義とか技を使ってたから、なんとなく使ってみた」
「そ、そうなんだ...」
「頼りになるわぁ~♪ カオルちゃん♪」
「本当ですね。ところでカオル様?」
「なにかな?」
「風の魔弓の強化を」
「いやいや、巨竜を撃ち貫くつもり?」
「はい」
「連射出来無くなるよ? そもそも弓術士は後衛でサポートを――」
「カオル様! 是非お願いします!」
「あ、うん...考えておくよ....」
「ありがとうございます」
エルミアの強い眼力に屈服したボク。
気持ちはわかるけど...これ以上改造できるかな?
まぁハイエルフの願いを叶える風の魔弓だ。なんとかなるだろう。
設計し直さないといけないよね....頑張れ、ボク。
カルアとボクの出番もようやく来て終わり――一瞬だった。誰も怪我しないからいいんだけど――ついに目的地へ。
クレイズルの地下迷宮最深部50層。
積み上げられた石柱や壁。中央に神殿。造形も細かく壁画も描かれている。状態保存の魔法が影響してるのかな?
どうみても人工物。今までの森林地帯とか砂漠地帯とか溶岩地帯とかなんだったのさ! と、思わずツッコミを入れたい。
まぁ理由は迷宮核の影響だから仕方が無い。超高濃度の魔素が溜まり、結晶化して造り出した物が地下迷宮だ。
ボクもアスワンの根城から鹵獲して"街核"に改良したし。
全部、世界樹の御力なんだけどね。樹精霊は変態だけど。
それで、だ。
神殿の奥。祭壇に当たる部分に巣が作られ体躯10mの不死鳥が鎮座してるんだけど...
「あー....ちょっと"話して"くる」
「は? 何を言ってるんだ?」
「カオル? バカなの?」
「おねぇちゃんも意味がわからないわぁ」
「私もです。カオル様説明を」
「んっとね? ファルフと同じで、ボクは"彼女"の意思が聞こえるんだ。だから、"話して"くるよ」
理由はわからない。神だからか、ただ親和性が高いからか。
ノワールに訊ねても『不明』だそうだ。
なので、仕方が無く"彼女"と"話す"事にした...
「ふむ。自分で薪を集めて燃やしたけど復活できないと?」
「キュルル」
「それで誰かに助けて欲しかったと?」
「キュルル」
「元はこんなに大きくないのね?」
「キュルル」
「ふむ。"彼女"に力を分け与え、燃やしてくれれば出来そうだと?」
「キュルル」
「う~ん...やってみようか」
「キュルル♪」
不死鳥が言うには、『ローゼに余分な力を与え火魔法で燃やしてくれ』という事らしい。
理由は見当が付く。ローゼは火と鍛冶の女神ヴァルカンの末裔。だから、火喰い鳥の不死鳥と同調できるだろう。
というか、副産物が多いと思う。ローゼの魔力があがるんじゃないかな? なにせ、云わば加護の一種だし。聖獣だし。
てな訳で、さっそく儀式を執り行なう。
「私がやるのか!?」
「うん。"彼女"が『お願い』だって」
「キュルル♪」
「物凄く大きいんだが!?」
「でも円らな瞳で可愛いよ?」
「あ、言われてみると可愛いかも」
「そうねぇ~♪」
「素材はどうなるのですか?」
「えっと...無事に生まれ変われれば色々くれるみたい」
「キュルル♪」
「そう、か。わかった...」
若干納得できないローゼ。
それでも"彼女"の願いを叶える為にボクの指導の下言われた通りに言の葉を紡ぐ。
「我ここに盟約を交わさん。我が名はローゼ・ハトラ・マーショヴァル。聖獣"不死鳥"よ。ここに力の加護を与えたまえ。《使い魔生成》」
輝くローゼと不死鳥。
コレ...使い魔の呪文じゃないかな?
おかしくない? いいの?
そんなボクの思いを置き去りに、ローゼに宿る紅き炎力。
不死鳥の身体も炎に包まれ、やがて小さな雛が現れる。
体躯1mほどの赤い鷲? 魔鳥じゃなくて聖鳥?
ヤバイ....可愛い。
「エッ!? ローゼとボクが気に入ったから、着いて来たいの!?」
「キュルル♪」
「そんな事が....というか、物凄い魔力なんだが?」
「うん。そんな気はしてたから大丈夫」
「それってローゼがもっと強くなったって事!?」
「そうだね。グローリエル並の魔力量....いや、もっとかな?」
「....羨ましいわぁ」
「益々ローゼが遠く....」
「う~ん...素材は大量だからボクは嬉しいんだけど....」
元々の大きさであった不死鳥。
尾羽も翼部分の羽も大きい。しかも大量だ。一財産どころの騒ぎじゃない。こんなの市場に流したら経済が崩壊するよ。
とりあえず、尾羽の一部分だけ冒険者ギルドに提出だね。それでも騒ぎになるけど。
「どうする? 飼う? "彼女"は来たいって」
「キュルル♪」
「それは構わないが...」
「問題にならない?」
「ユニコーンちゃんが居るから大丈夫じゃないかしらぁ~?」
「そうですね。私に着いて来てしまいましたし」
「満場一致で、連れて帰る事になりましたー!」
パチパチパチ! 名付けとかしないとね?
ファルフも喜ぶだろう。むしろ、ローゼの使い魔じゃない? 魔宝石に召喚魔法でも刻印して渡すかね?
まぁいいか! 迷宮核を調べて帰ろう! 来た道を折り返すだけだし!
アレが作れれば楽だけど...風情を楽しもうじゃないか!
だって、エリーは冒険者だもの!




