第二百三十ニ話 覚醒
自分の正体を明かしたり、色々あって疲れて帰って来ると、物凄い笑顔のエリーシャ女王様とティル王女に迎えられた。
傍に居るエメ王女は、ボクの姿を見るや否や抱き着いて来て、フェイさんとブレンダさんは何か言いたげに頭を抱えている。
いったい何が始まるのか。
そういえば、ボクの住む家がどうのこうの言っていたような.....
「おかえりなさ~い♪待ってたのよぉ~♪」
「お、おかえりなさいませ!!主様!!」
「....おかえり」
「えっと、うん。ただいま帰りました」
何この空気。
笑顔が物凄く怖いんだけど。
「それじゃぁ~♪カオルちゃんのお家にぃ~♪案内してあげるわねぇ~♪」
「ご、ご案内します!!主様!!」
「え!?なんでエリーシャ女王様とティル王女が!?」
「いいのよぉ~♪気にしないでぇ~♪」
意味がわからない。
なんで一国の女王と王女がボクの住まいの案内をするんだろうか。
というか、歩き始めたけどいったいどこへ?
そっちは王城の奥じゃないか!!
「カオルよ、諦めるのじゃ」
「香月伯爵....いいえ、カオルさん。仕方が無いのです。女王陛下は一度言い出したら聞かないお方ですから....」
ブレンダさんとフェイさんが何か耳打ちしてきたけど、その意味が理解できないですよ!?
エメ王女も何か知ってそうだけど、ボクと手を繋いでニコニコしてるし、誰かボクに説明してよ!!
やがて王城を出て、裏の公園というか噴水と花々が咲き乱れている庭園へ。
さらにそこから歩いてやって来たのは、間違いなく『離宮』と呼ばれる場所だった。
塀も壁も屋根も何もかもが真っ白の、2階建ての西洋建築。
格子状の窓には室内からカーテンが引かれ、全ての窓から中の様子を窺い知る事はできない。
何よりもおかしな部分は、家の玄関だ。
見間違いじゃなければ、木製の大扉に鉄の鎖が巻かれていて、さらに拳大の魔宝石がはめ込まれている。
付与師のボクは知ってる。
あの魔宝石は、何か邪悪な者を封印する為に使うという事を!!
「ちょ、ちょっと待って下さい!!もしかしてここって――」
「そうなのぉ~♪リッチちゃんが封印されてるのぉ~♪」
「.....」
絶句した。
事もあろうにリッチって....
アンデッドの最上級種だよ!?
吸血鬼に並ぶ実力を持ち、死霊魔術《不死化》により自己を究極のアンデッドに変えた、元魔術師。
それがリッチと呼ばれる魔物。
なんでこんな王城の近くに封印されてるのさ!!
「カオルさん?実はですね――」
フェイさんがボクを哀れに思ったのか、事細かに説明してくれた。
いや、説明なんていらなかったんだけど、逃がさないようにするためだったのか。
なんでも、十数代前のカムーン国王の時代に、あらゆる魔法に精通した希代の魔術師と名乗るバターフィールドと言う魔術師が居たそうだ。
当時の王国は様々な国と戦争をしていて、彼の存在は大変重宝された。
だけど、彼は野心家でもあり、とある理由でこの離宮に滞在中に毒殺されかけた。
そこで、バターフィールドは死ぬ間際に死霊魔術の《不死化》を使い、見事に成功。
自身を殺そうとした相手を血祭りに上げて、それ以来ここに封印されている。
「なんですか?そのとある理由って」
「野心家のバターフィールドは、王権を寄越せと言ってきたそうです」
「....それはまた」
「カオルさんは確かに力を持っていますが、そんな事に興味が無いですからね。理解できないと思いますけど」
「そうですね。王権もそうですけど、世界征服なんてボクには興味がありません。一生する気も起きないです」
「そこがカオルちゃんの良いところなのよぉ~♪」
「主様は素敵です!!」
もう、なんなのこの人達は....
「はぁ.....どうせ聞いたからにはやれって言うんですよね?」
「さすがカオルは話しが早いの!!その通りじゃ!!」
「カオルちゃ~ん♪お願いねぇ~♪」
「ああ!!もう!!わかりました!!」
自棄になった。
みんな勝手なんだから!!
懐から通信用魔導具を取り出し、師匠に繋げる。
ボクには記憶が無いけれど、ボクは一度リッチと戦った事があるらしいからだ。
「ん?どうしたんだカオル?今日はやけに早いじゃないか」
「いえ、また夜に通信しますけど、今回は師匠に聞きたい事があったので」
「なんだ?」
「えっと、なぜかリッチと戦わなきゃいけないみたいなんです。それで、以前ボクの身体を使って風竜がリッチを倒した時の事を教えて欲しくて」
ボクと師匠の会話を、エリーシャ女王様達は黙って聞いていた。
ブレンダさんが何か言いたげだったけど、それは無視する事にしよう。
「リッチだと!?いったいどういう事だ!?カオルは今どこに居るんだ!!」
「王城の裏手にある庭園です」
「王城の裏手....離宮か!!」
「そうです」
「そうか...あそこに封印されていたのはリッチだったのか....」
「師匠は知らなかったんですか?フェイさんやブレンダさんも知っているみたいですけど」
「ああ、私は興味なかったからな」
本当にもう....
『残念美人』なんだから!!
「それでリッチの話しだな。そうだな...あの時は、風竜が曲剣で一度撃退してな。それで折れたんだが....」
「ファルシオンが壊れたのって、リッチのせいなんですか!?」
「いやまぁ...正確には風竜の力に耐えられなかったんだが....」
ボクの大切なファルシオンを壊したのは、リッチのせいだったの!?
これはなんとしてでもファルシオンの仇を取らなきゃ!!
「それでだな、一度倒すには倒したのだが、また復活してな?
あの時は確か....そうそう、『桜花』で《抜打先之先》を放って屠ったんだ。
今のカオルなら難なく倒せるだろう。ただし!!けして油断するんじゃないぞ!!
怪我なんてしたら、絶対に許さんからな!!」
「師匠....」
「まぁ...なんだ.....心配しているんだぞ?」
「はい、ありがとうございます。師匠」
「なんだか改まって言うと恥ずかしいな....」
「本当じゃの。背中が痒くなってくるわ」
ボクと師匠の会話に、ブレンダさんが入ってきた。
ブレンダさんの声を聞いた師匠は一瞬息を漏らし、次の瞬間には叫んでいた。
「ロリババァが居るのかぁああああ!!!」
「誰がロリババァじゃぁあああああ!!!」
何この2人。
犬猿の仲なの?
ボク知らないんだけど。
「やい!!ロリババァ!!私のカオルに指一本でも触れてみろ!!その首叩き斬ってくれる!!」
「なんじゃとぉ!?やれるもんならやってみるのじゃな!!」
「ぐぬぬ!!!」
「ぐぬぬぬぬ!!!!」
.....おかしい。
師匠がなんだか楽しそうに聞こえる。
むぅ....
師匠はボクのものなのに!!
「師匠!!」
「な、なんだ?」
「大好き!!」
「か、カオル.....」
師匠の注意はボクに惹き付けた。
これでもうブレンダさんに介入される心配はない。
「わ、私もカオルが大好きだぞ?」
「エヘヘ♪」
「ぐぬぬ....」
「ま、まぁその...なんだ....く、くれぐれも気を付けるんだぞ?」
「はい!!」
「で、では、また後でな?」
逃げるように通信を終えた師匠。
ボクは師匠に大好きと言われて、中々にやけた頬が収まらなかった。
「....聞いていたよりも、随分とヴァルカンは丸くなったみたいじゃの」
「そ、そうですね」
「あ、主様に大好きだなんて....羨ましいです.....」
「あらあら~♪ヴァルちゃんもやるわねぇ~♪」
みんな好き勝手言って....
師匠はボクだけのものなんだからね!!
ところで、さっきからエメ王女はなんでボクにしがみ付いているのだろうか?
チラチラ離宮を見てるし...
もしかして、ボクの心配をしてくれているの?
「エメ王女?」
「(フルフル)」
「心配してくれてるの?」
「(コクン)」
「大丈夫だよ。ボクは強いんだから」
頭を撫でてそう諭す。
エメ王女はそれでも心配だったのか、必死にボクの胸に顔を擦りつけて、やがて顔を上げた。
心配そうに目を潤ませるエメ王女。
ボクは抱き締めて耳元で「ありがとう」と感謝を伝えた。
「え、エメばっかり....」
「羨ましいわねぇ~♪」
「はぁ...それでは、みなさんは一度下がっていただけますか?」
「わ、わかりました」
「何かあれば割って入るからの?」
なんだかんだ言いつつ、ブレンダさんはボクを心配してくれている。
それは嬉しいけど、師匠は絶対に渡さないからね!!
離宮の門からかなり遠くまで下がってもらい、聖盾イージスの《守護結界》でエリーシャ女王様達を包みこんだ。
これで何があってもエリーシャ女王様達は平気だ。
心置きなく戦えるってものだね。
さて、リッチとの戦闘だけど、風竜と同じ手段をとっても仕方がない。
ボクの成長の為にリッチには礎になってもらおう。
「ルル、おいで」
聖剣デュランダルをひと撫でして、ボクはそう語りかける。
するとデュランダルが薄っすらと輝き、目の前にルルが転移してきた。
唐紅色の瞳。
可愛らしい童顔で、透き通る様な青く短い髪。
着ている制服はボクの領内にある学校の物で、ボクの顔を見るや否や恭しく跪いた。
「主様。お呼びでしょうか」
「うん。今からリッチを倒さなければいけないんだ。それで、《覚醒》を使ってみようと思うんだけど....どうかな?」
《覚醒》
それは聖剣や聖槍など、契約の施された武器の真の力を開放するもの。
元々聖剣に備わっていた力は、そのほんの一部が開放されているに過ぎず、《覚醒》をもって真価を発揮する。
「是非お願いします!!主様と1つになれる事。それは、ルルの念願が叶うという事です!!」
「うん。それじゃ....いくよ?」
「はい!!」
デュランダルを眼前に掲げ、「《覚醒》」と唱える。
ルルの身体と剣身が青く輝き、ボクの両手を伝って同色に光出した。
心地良い温もり。
ルルとボクの身体が――魂が溶け合う様なそんな感覚。
すぐ傍にルルが居る。
手を繋いだり抱き締めたりするのではなく、2人で1人の様な....そんな感じ。
やがて光が収まると、そこにルルは居なかった。
ルルは今――ボクの中に居る。
そして、薄い露草色の剣身は、ガラスの様に透き通った薄青い色へと変化した。
それだけじゃない。
ボク自身にも変化が生じている。
騎士学校の制服はそのままに、背中から翼が生えていた。
とても大きな純白の翼。
自分の意思で大きく羽ばたかせる事ができる。
ちょっとくすぐったい感じ。
これが――《覚醒》か。
「....天使」
「なんと神々しい」
「カオルちゃんは天使だったのねぇ~♪」
「あ、主様が素敵なお姿に....」
「綺麗....」
遠くからエリーシャ女王様達の声が聞こえる。
今のボクの姿は、まさに天使のそれだ。
「ルル...そこに居るんだね?」
「はい。主様の中に、ルルは居ます」
ルルの存在を、ボクは知覚している。
ボクの手や足。
全てがボクであり、ルルだ。
「なんだか...安心するね....」
「はい。ルルは今、感動しています」
何千年もの間、ボクの事を探していたルル。
ボクには想像もできないような長い年月の中を、ルルはずっと孤独に過ごして来たのだろう。
嬉しい。
ルルに出会えた事が。
だから、今のこの時を大事にしよう。
「それじゃぁ、やろうか」
「はい」
離宮の正面玄関へと魔力の帯を伸ばして行く。
数秒の後に辿り着いて、力任せに封印の魔宝石を取り除いた。
「クックックック.....」
不快な笑みが聞こえて来る。
間違いなくそこに、ヤツは居る。
「ようやく....ようやくだ....私をこんなところへ封じ込めた憎き彼奴らに、これで復讐ができるというもの!!!」
盛大な音を立てて吹き飛ばされた玄関の大扉。
門柱に当たり砕けたそれには目もくれず、ボクはただ一点を見詰めた。
そこにヤツは居た。
ボロボロのローブを身に纏い、隙間から見えるのは骸のまま。
そして目深に被ったフードから、赤い双眸がこちらを睨みつける。
「お前がバターフィールドか」
言葉を発したボクに対し、リッチは瞳の明かりを強めた。
驚いている...のかもしれない。
「確かに私は生前そう呼ばれていたが....貴様は何者だ.....なんだその姿は.....」
「ボクの名前は香月カオル。バターフィールド。お前の無念な気持ちには同情するけど、王国を支配しようとした事は許せるものではない」
「クックック....なるほど。全てを知っているという訳か.....おもしろい!!ならば止めてみよ!!
さもなくば、カムーンの名を持つ全ての者を根絶やしにしてくれようぞ!!!」
瘴気が辺りに立ち込める。
本当に風竜はこんな相手を倒すことができたのだろうか?
相対しているだけで重圧を感じる。
リッチとは、元の魔術師の強さに比例して、その力が大きく違うそうだけど....
このバターフィールドは明らかに今まで対峙した中でも上位の魔物だ!!
「フンッ!!くらうがいい!!」
両手を虚空に掲げ、幾つもの黒い塊を作り出す。
それは無詠唱の魔法だろう。
おそらく暗黒魔法の類。
だけど、今のボクはルルと《覚醒》している状態だ。
そんな魔法をいくつ放って来ようと、聖剣の前では無駄にしかならない!!
ボク目掛けて射出された黒い塊。
渦を巻いている様から小さなブラックホールを想像させた。
「....それで?」
「な、なんだと!?バカな!!」
うろたえたバターフィールド。
それもそのはず、ボクに向かって飛んで来た黒い塊は、全て翼を羽ばたかせただけで消失された。
なんて事はない。
暗黒魔法は闇魔法と同じ物。
ならば聖魔法と同じ光魔法を使えば相殺できる。
ボクが放ったのは《ライト》。
本来であれば光を発して周囲を明るく照らす代物だけど、大量の魔力を込めれば闇魔法にすら対応できる。
それをバターフィールドが知らなかっただけの話しだ。
「おのれぇ!!ならばこれはどうだ!!」
両手に瘴気を集めそれを溜め始める。
あまりにも膨大な量に周囲の空間が悲鳴を上げるかのごとく、歪んで見え始めた。
だけど、そんな猶予は与えない。
即座に地面を蹴り上げ肉薄し、瘴気もろともバターフィールドを切り刻む。
蒼線が孤を描く度にキラキラと輝き、まるで舞い振る星々の様に周囲に溢れ出た。
幻想的な光景の中、悲鳴を上げるバターフィールド。
ボロボロのローブは細かく切れ落ち、瘴気を上げて消失していく。
一方の本体であるバターフィールドは、あまりのボクの猛攻になすすべもなく肢体を晒し絶叫を繰り返す。
聖剣で斬られた身体は、脅威の回復能力を有するリッチでも修復する事もできず、バラバラに解体された。
「グガァアアア!!!おのれ!!おのれ!!おのれ!!!」
両手だけではなく、支脚までもが欠損し、それでも空中に浮いていられるのはさすがリッチだろう。
忌々しげにボクを睨み付け、そこでフッと笑った。
嫌な予感がする。
こんな絶体絶命の状態で、なぜこんなに余裕があるのか。
まさか....
「クッ.....クハハハハハハ!!!あまい!!あまいな貴様は!!!」
「くそっ!!!」
気付いた。
なぜバターフィールドにこれほどまで余裕があるのか。
それは、上だ!!
見るのも嫌になるほどに、巨大な瘴気の渦が蠢いていて、今まさにエリーシャ女王様達に直撃しようと降下しはじめていた。
あの時両手に瘴気を集めていたのは、わざとボクの注意を引くためだったのか。
「《雷化!!》」
普通に追っては間に合わないと判断し、即座に《雷化》の魔法を使い文字通り雷と成って瘴気の渦に飛び込んだ。
後ろからバターフィールドの高笑いが聞こえたが、今はそれどころじゃない。
聖盾イージスの《守護結界》ならば平気だとは思うけど、せっかく綺麗な庭園があるのに、それを破壊なんてさせはしない。
瘴気の渦の中は、負の感情が渦巻いていた。
殺せ、殺せと誰かが耳元で囁く。
全身が理由もなく震え、見たくない幻覚が次々と脳裏を掠めていく。
まるで――『egoの黒書』の中の様だ。
ボクの身体を切り刻み、首を絞めて殺そうとしてくる家族達。
だけど....そんな事はありえない。
「ボクの愛する人達が、ボクにそんな仕打ちをするものか!!!」
大絶叫の叫び声を上げて、ありったけの魔力で回復魔法を発動させる。
緑色の光から純白の光へと変化して、暴風がボクの身体から巻き上がる。
それはもう聖魔法の領域。
光魔法を飛び越えて、《聖治癒》へと昇華していた。
「な、なな、な!!なぜだ!!なぜ生きている!!!どうなっているんだ!!!!」
瘴気の渦を晴らし、ボクが生還した事が信じられないバターフィールド。
骸の顎がガタガタと震え、ボクの存在に怯え始めた。
「終わりにしよう」
なぜだかわからない。
ただ、バターフィールドが哀れに思えた。
そして、斬る以外で彼を救う方法が理解できた。
「《浄化》」
たった一言。
バターフィールドへ向けて放ったその言葉で、彼の存在はこの世から消えていった。
最後に見た彼の顔は、虚ろな赤い瞳が笑っているように見えた。
カオルとの戦闘を、固唾を飲んで見守っていたエリーシャ達。
一進一退の攻防に、目まぐるしく変わる情景。
そして、リッチの魔の手が自分達の頭上へと伸びて、フェイとブレンダは主人を守るべく盾となってその身を晒していたのだが――
「なんて....人ですか.....」
「まさか自分から瘴気の渦の中へ入って行くとはの.....」
カオルが自ら進んで巨大な瘴気の中へ入った事が、フェイとブレンダには信じられない。
さらにそれを消滅させるなんて、常人では絶対に無理であろう。
「あ、主様....」
「カオルちゃんは....本当に....何者なのかしら.....」
剣聖の2人以上に驚きを隠せないエリーシャとティル。
エメは恐怖に震えて目を瞑り、戦闘開始直後からエリーシャのドレスの裾を力いっぱい握り絞めていた。
そこへ.....
「終わりにしましょう」
エリーシャ達の耳を叩いたその言葉。
紛れもなくカオルの声のはずなのに、その声色は清廉な人物から発せられた、まさに聖人のそれであった。
「ど、どうしてでしょう....涙が止まりません....」
「ワシもじゃ.....」
「お、お母様」
「きっと.....カオルちゃんよ.....」
「カオル....」
目を閉じていたエメ王女までもが大粒の涙を流し、エリーシャ達はカオルを見詰めた。
カオルは「《浄化》」と呟き、その瞬間にリッチの姿は掻き消える。
全てが幻であったかの様なそんな光景の中、純白の翼を生やしたカオルが、天より舞い降りるのだった。




