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第二百三十話 謝罪と感謝


 全ての嘘を洗いざらい話したボクは、心善きセシリア達のおかげで晴れやかな気持ちになっていた。

 キティ先生も授業そっちのけでセシリア達に混じり、「ずっと聞きたかった事があるんでしゅ!!」なんて言って質問を続けている。

 一番驚いたのは口数の少なかったバリーが、饒舌に話しをしていた事だろう。

 兄であるアレックスとバートも驚いていて、「バリーはそんなに話せたんだな」なんて言っていた。


「そ、それで、カオルはいったい何人の婚約者が居るのよ!!」


 香月伯爵呼びをを止めてくれる様に頼んでから、みんなはカオルと呼んでくれるようになった。

 ファノメネル命名の楓も気に入ってはいるけれど、やっぱり本名で呼ばれる方が全然良い。


 それにしても、なんでセシリアは怒っているんだろうか?

 

 登校時に起きた一連の話しをしてから、なぜかボクの婚約者の話題にみんなが飛び付いて質問攻めにされている。

 別に貴族なんだから沢山婚約者が居ても不思議じゃないと思うんだけどなぁ....


「えっと...師匠とカルアとエリーとエルミアとフランとアイナだから....6人、かな?」


「ろ、6人も!?」


「ああ、それとアーニャって子が愛人になるって言ってた」


「あ、愛人!?」


「愛人ってことは、側室ってヤツだろ!?カァー!!カオルってば羨ましいぜ!!」


「ちょっとアレックスは黙ってて!!」


「な、なんでだよ!?」


「もう!!今は大事な話しをしてるんだから!!エイミー!!カレン!!ハンナ!!」


「「「アイサー!!」」」


「対象アレックス!!撃滅せよ!!」


「「「イェッサー!!」」」


「うぉ!?ちょっ!?待てって!!俺は、みんなの代表でだな!!」


「「「うっさい死ね!!」」」


「うぎゃぁーーー!?」


 毎度毎度エイミートリオに撃滅されるアレックスは、学習能力が無いのだろうか?

 まぁいいか。

 これでしばらく静かになるだろう。


「そ、それでね.....」


「うん?どうしたの?」


「そ、そのね.....」


 なにやら勿体振るセシリア。

 頬を上気させて赤く染めているのはなんでだろう?

 周りのエイミー達は何か知っているのか、固唾を飲んで見守っているし、もしかして....


「わ、私もカオルの愛人にして欲しいの!!」


 あまりの言葉に目が点になる。


 キティ先生達も同様で、地面に転がるアレックスまでもが硬直していた。


「な、何突然言ってるの!?ど、どうしたの!?い、意味がわからないよ!!」


「ち、違うの!!じ、実はね――」

 

 セシリアから聞かされた話は、あまりにも衝撃的だった。


 聞けば、セシリアは最近気になる人が居た様で、その事を知った父親が激怒して婚約者を探し始めたそうだ。

 そして急速に事が運び会った事も聞いた事もないような男性とお見合いと言うか、顔合わせをしなければいけなくなり...

 もちろんセシリア自身も父親に異を唱えたそうだが、父親の力強い剣幕に会話が成り立たず、今は喧嘩状態となってしまった。

 母親とメイドさんはセシリアの味方をしてくれたそうだが、父親は頑なになっていて聞く耳すら持っていない。

 このままでは、見ず知らずの人物に嫁がされてしまう危険があるため、それならば代役を立ててしまおうという腹積もりの様だ。


 でも、その役がボクでいいのかね?

 

 そもそも、セシリアの家って大商家なんでしょ?

 いずれはどこかの良家に嫁ぐんだし、お父さんが決めた事ならそれに従うのが慣例というか習慣なんじゃないの?


「わ、私は嫌よ!!どこの馬の骨ともわからない人に嫁ぐなんて!!」

 

「気持ちはわかるけど....大体、フェイクだとしてもボクの愛人なんて気軽に言うのはいけないと思うよ?」


「べ、別に気軽になんて言ってないわ!!わ、私はその.....か、カオルの事好きだし.....」


「へっ!?」


 な、何突然告白してるの!?

 す、好きってそんな.....


 それに、ボクはずっと楓って偽って――あれ?

 名前や身分を偽っていたけど、性別は偽っていなかったよね?

 ボクは男だからいいのか?

 で、でもさ!!

 ボクはセシリアを友達だと思っている訳で....

 そ、そんな恋人とか、将来の愛人とか突然言われても....


「....か、カオルは私じゃ嫌?」


「い、嫌だなんてそんな事ないけど.....ま、まだ知り合ったばっかりだし....そ、それにボクには大事な婚約者が居るし....」


「セシリアがデレた....」


「あの鋼鉄の女が...」


「我が侭お嬢が....」


「....恋」


「さすがせしゅりあでしゅ!!わたちと同じおとめでしゅね!!」


「いや、アンは幼女だろ」


「ムキャァ!?カーラなんておばしゃんでちゅ!!」


「なんだって!?まだ言うかこの幼女は!!」


「まぁまぁ落ち着いて下さい。さ、ストレスはうちの兄で晴らして下さい」


「ば、バートてめぇ!?」


 セシリアの爆弾発言も、みんなにとっては日常の中のひとコマだったようだ。

 

 それにしてもアレックスは人気物というか、いじられキャラというか....

 まぁ体が丈夫なのは、こういった事を毎回しているからだろう。


「あ、あのですね!!せ、先生思うんでしゅけど、と、とりあえずセシリアさんの顔合わせを阻止しゅるべきだと思うんですよ!!

 そ、そのカオルさんとセシリアさんのこ、告白は後回しにしてみたらどうでしょうか?」


 クラスに残った唯一の理性とでも言うのだろうか?

 噛み噛みのキティ先生がそう提案し、ルィンヘン・エレンウィ夫婦もコクコクと頷いた。


「はぁ.....わかりました。ボクの愛人なり婚約者なりの話しは、一先ず置いておきましょう。

 それで、セシリアが顔合わせをする相手の名前や身分はわかる?」


「う、うん。えっと....バリー・オズ・ボーン騎士爵の次男で、ベイリーって名前だったはずよ」


「べ、ベイリーさんですか!?」


「キティ先生はご存知の方なのですか?」


「はい――」


 セシリアが発したベイリーという名前に、キティ先生が反応した。

 どうやら、知っている名前の様で人物像を事細かに説明してくれた。


 ベイリーは、どうやらドラ息子と呼ばれているらしい。

 父親であるバリー・オズ・ボーン騎士爵の名前を使い、自領内で自分勝手にやりたい放題に悪行を重ね、それを見かねたバリー騎士爵がとうとう匙を投げた。

 今は、王都で懇意にしている御用商人のバークレイ商会へ身柄を預けられているそうだ。

 どういう言われでセシリアのお父さんとバリー騎士爵が繋がったのかわからないが、人伝いに聞くだけでセシリアとは釣りあわない男性だと思える。


「....ダメですね」


「か、カオルさん?どういう意味でしょうか?」


「いえ、セシリアの様な優しくて素敵な女性を、そんな人物に嫁がせる訳にはいかないという意味です」


「そ、そんな....す、素敵だなんて.....」


 恥ずかしそうにモジモジするセシリア。

 

 エイミー達がボクとセシリアを交互に見て、ボソリと呟いた。


「カオルってもしかして....」


「罪作りな男」


「これは...ある意味見習わなければいけませんね....」


「....(たら)し」


「....撃滅?」


「あたしも言われたいかも....」


「あ、後でルィンも言っていいんだよ?」


「う、うん....」


「リア充め」


「デリック...負け犬の遠吠えにしか聞こえないぞ?」


「くっ....」


 どうでもいいけど、はっきり聞こえてるからね?


 特にバリーとハンナ。

 ボクは誑しじゃないし、撃滅もされないからね?

 まったく....

 今はセシリアの一大事でしょうに....


「とりあえず現状は理解しました。ボクは少し相談と報告をしなければいけないので、席を外しますね?

 それと、キティ先生」


「ひゃ、ひゃわい!?」


「ボクのせいで授業を止めてしまい、申し訳ありません。

 みんなも、騙していてごめん」


 もう一度謝罪をして、ボクは教室を後にした。











 隣の空き教室へ向かい、そこで通信用の魔導具を取り出す。

 掛ける相手は決まっている。

 それはエリーシャ女王様だ。


「あらあら~?どうしたのぉ~?」 


「エリーシャ女王様。まずは謝罪させてください。申し訳ありません。ボクの素性をばらしてしまいました」


「そうなのねぇ~♪いいのよぉ~♪わかっていた事だからぁ~♪」


「ですが....」


「カオルちゃんは~♪正直な子だものねぇ~♪それでぇ~?」


「はい。クラスのみんなは、こんなボクを受け入れてくれて許してくれました。

 ですが、違う問題が浮き上がりました」


「そうなのぉ~?」


「実は――」


 エリーシャ女王様は特に怒った様子もなく、ただ淡々とボクの話しを聞いてくれた。

 

 セシリアの話しを一部始終伝えて、一巡悩んでから「わかったわぁ~♪」とだけ答えた。

 そして、どうやらボクの事は貴族達に話しを通していたらしく、問題無いと太鼓判を押してくれた。


「それでねぇ~♪カオルちゃんのためにぃ~♪アドルファスちゃんが骨を折ってくれたのよぉ~♪」


「そ、そうなんですか!?」


「そうよぉ~♪カオルちゃんに、ごめんなさーいって言ってたわぁ~♪」


 どうやら、手合わせをした時にボコボコに伸してしまった赤火騎士団長のアドルファス・ラ・レムル伯爵が、ボクの為に尽力してくれたみたいだ。

 それだけじゃなく、あの時に居合わせた騎士団長ならびにフェイさんやグリンダさんも力を貸してくれて、既に根回し済みとの事。

 なんというか....

 本当にみんな優しくて善い人なんだから。

 まるでアゥストリみたいな出会いだったけど、もしかしたらアドルファス伯爵とは長い付き合いになるのかもしれないなぁ。


「バートンちゃんには連絡をしておくからぁ~♪ベイリーちゃんの事は、カオルちゃんの好きにしていいわよぉ~♪」


「わかりました。エリーシャ女王様?重ね重ねありがとうございます」


「いいのよぉ~♪そ・れ・と♪お家の件は楽しみにしててねぇ~♪」


「は、はい」


 なにやら思惑のある言い方だったけど、それだけ話して話しを終えた。

 ふぅ~っと深い溜息を吐いて、次に通信したのはアーシェラ様だ。


「なんじゃ?カオルは授業中ではないのかの?」


「はい。そうなのですが、至急お伝えしたい事があり連絡させていただきました」


「うむ。よい、申せ」


「実は――」


 エリーシャ女王様へ伝えた内容を繰り返す。

 アーシェラ様は全てわかっていたのか、笑いを堪えているような含み笑いが時折聞こえてきた。


「そ、そうじゃったのか....ククッ」


「...アーシェラ様は、なんで笑ってるんですか?」


「わ、わらわは別に笑ってなどおらぬぞ!?」


「本当ですか?」


「本当じゃとも!!」


「ふ~ん....」


「な、なんじゃ!?信じておらぬな!?ぐぬぬ....」


「あはは♪相変わらずアーシェラ様は可愛い人ですね♪」


「ま、まったくカオルも相変わらずじゃの!!エルヴィントの事は気にせずとも良い!!

 他国の貴族程度にどうこう言われる筋合いはないからの!!

 それと、ヴェストリ外務卿が近々カムーン王国へ親善訪問するからの。

 カオルには、その受け入れと助力を頼むの」


「わかりました。それくらいなら問題ありません」


「うむ!!では、また何かあったら言うのじゃぞ?それと、いつでもよいから顔を出すのじゃ!!」


「はい。ところで....例の白磁のカップと魔導具は、ちゃんとアラン財務卿に渡してくださいましたか?」


「な、なんの事じゃったかの....」


 白々しいこの反応はまさか....


「はぁ...わかりました。アラン財務卿には、改めて別のカップをお送りしておきます」


「う、うむ。す、すまぬの?」


「別にいいですよ。アーシェラ様が気に入ってくださったのならそれで結構です」


「じゃ、じゃあの」


 そそくさと通信を終えたアーシェラ様。

 そんなにあの魔導具が気に入っていたのか...

 作った身としては嬉しいけど、ねこばばするような真似しなくてもいいのにね。

 まぁいいか。

 アラン財務卿には改めて作っておこう。


 最後に通信したのはもちろん師匠達。

 夜にも通信する予定だけど、きっと心配しているだろうから。


「ん?どうしたんだ?何かあったのか?」


「はい。ボクの素性をクラスメイト達に明かしました」


「....そうか」


「お、驚かないんですか?」


「わかっていたからな」


「そうね。カオルが嘘を吐けないなんて、私達はとっくに知ってたしね」


「そうよ~♪カオルちゃんは正直者だもの~♪」


「カオル様?お辛くありませんか?いつでも帰って来てくださって良いのですよ?」


「エルミア。あまりカオルを甘やかすな。カオルは、自ら望んで留学したんだからな」


「わかっています。ですが....」


「エルミアが言いたい事はわかる。私も同じ気持ちだ」


「おねぇちゃんもよ~♪」


「わ、私だって同じよ!!」


「みんな...ありがとう....」


 ボクを信頼し、信用してくれているみんなの好意がとても嬉しい。

 それだけじゃなく、甘えても良いって言ってくれてる。

 ボクには帰る場所があるんだ。

 大切な家族の下。

 大事な婚約者の下。


「あ、あの、ご主人様?ちゃんとごはんは召し上がっていますか?」


「うん。今は王城で生活しているからね。だけど、やっぱりフランとアイナのごはんが恋しく感じるかな」


「そ、そんな...恋しいだなんて....」


「ご主人!!」


「どうしたの?アイナ?」


「日曜に、タルト」


「うん。一緒に作ろうね♪」


「ん!」


 一時は饒舌に話していたアイナも、また言葉足らずに戻ってしまった。

 だけど、そんなアイナがとても可愛くてボクの頬もついついにやけてしまう。

 やっぱりいいな。

 こういう家族との会話は。

 心を許せるみんなと出会えて、ボクはとても嬉しく思うよ。


「カオル。1人で大変だと思うが、何かあればいつでも言うんだぞ?」


「わかっています。離れていても、心はいつでも傍に....ですね」


「そうだ」


「そうよ~♪」


「わ、私のだんな様になるんだからね!!泣き言なんて言うんじゃないわよ!!」


「まったく...エリーはいつもそうですね」


「エリーちゃんは恥ずかしいのよ~♪」


「お、おねぇちゃん!!」


「あらあら~♪」


「ご、ご主人様!!お身体には気をつけてください!!」


「ご主人!!好き!!」


「うん。ボクもみんなが大好きだよ♪また夜にね♪」


 みんなの声が聞けて、勇気と力を分けてもらえた気がする。

 本当にみんなには感謝をしなければいけないね。

 ボクがこうしてがんばれるのも、みんなが居てくれるからだ。


 あれ?


 なんでみんな一緒に居たんだろう?

 今は学校とかの手伝いは良いのかな?

 師匠はルイーゼ達に稽古をつけているはずだし、カルアは聖堂でファノメネルから司祭の勉強を....

 休息日にでもしたのだろうか?

 まぁ....いいか。

 みんなが仲が良いのは良い事だしね。











 壁掛け時計を見ると11時。


 そうだ!!

 せっかくだからみんなに昼食をごちそうしよう。

 授業をサボル事になるけど、今日くらいは良いよね?


 《雷化》の魔法を使い、空き教室の窓から光速で飛び出す。

 そのまま向かう先は王城近くにある魔境だ。

 

 【カムーン王国】の王都近くには、2つの魔境とダンジョンが存在している。

 どちらも冒険者ギルドが定めたランクによれば、低級と言われる初心者向けの物。

 そこは毎日狩人や冒険者達が通い詰めていて、生活の糧として王都に卸される。

 帝都と同じ50万人もの人が生活しているんだ。

 食料供給には必要だよね。


 その中でも一番遠い魔境へ降り立ち、《雷化》の魔法で研ぎ澄まされた索敵を開始する。

 すぐに周囲から生体反応を感じ取り、腰に帯びた聖剣デュランダルを引き抜き対象へと向かって跳躍を開始した。


 まず出会ったのは、大型の魔獣アックスビーク。

 斧型の(くちばし)を持った昼行性の肉食鳥で、空を飛べないダチョウと言ったところだろう。


 光速で走るボクの速さに反応することもできずに、デュランダルの蒼線の下、首筋を一刀両断され絶命する。

 そのまま魔力の帯で胴体を持ち上げて、逆さに吊るして血抜きを始めた。

 すると、血の匂いに誘われたのか、オークやガートドッグなどが次々と現れた。

 それら下位の魔物や魔獣も楽々と屠り、食材にならなそうな者は即座にアイテム箱の中へ。

 どうやら、ボクかアックスビークが良い獲物と判断されたみたいで、夥しい数の魔物や魔獣が姿を現し始めた。


 本当に低級ランクの魔境なのだろうか?


 もしかして、ボクが降りたこの場所は、魔境の最奥だったりするんじゃないかね?

 鬱蒼と生い茂る幹太の樹木。

 日の光も射さないこの場所は、ボクの背後に切り立った岩山が聳えている。

 なぜこの場所を選んだのか?

 それは、警戒範囲を360度から半分の180度にするため。

 師匠からは『何かを背にするのは効率的で良い』と教えられているのだ。

 

 しばらく戦闘を続け、血抜きをしていたアックスビークも血が滴り落ちなくなってきた頃。

 時間にして2~30分くらいだろうか?

 周囲を一瞥すると、なんとも阿鼻叫喚は光景が目に映った。

 息絶えたオーク達。

 肉塊の山がそこかしこに築き上げられ、なんとも嫌な血の匂いが充満している。

 地面は赤黒く染まり、ボク自身にも夥しい量の返り血が着いている。

 

 もう、最初の頃の様な恐怖感を感じない。

 

 ボクは人殺しだから。

 だから、もう謝らない。

 これは自然の摂理だ。

 強い者が生き、弱い者が死ぬ。

 ボクは自己満足の為に、気に入った人を守り続ける。

 それが香月カオルだから。

 ボクの手で命を落とした者達に、謝罪はしないけど感謝はするよ。


「ありがとう」


 息絶えた魔物や魔獣達をアイテム箱に仕舞い、辺り一面に魔力の帯を伸ばして《浄化》の魔法を掛ける。

 それだけで血の池や自分の衣服。

 そしてデュランダルは血のりが落ちて、元の鬱蒼とした森へと姿を変えた。


 自分の手を見詰める。

 

 犠牲は――違うね。

 みんな血肉と成ってボクと共にあるんだ。

           ・・

 たとえ、魔物が人間だとしても。

 そうボクが定めて正当化しよう。

 これは虐殺ではない。

 正当な権利であり、自然の摂理だ。


 深呼吸を1つして、ボクは《雷化》の魔法でその場から飛び立った。

 向かう先は王立騎士学校。

 正体を隠していたクラスメイト達に、今日は昼食をご馳走する為に――


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