第百八十一話 壊れ行くカオル
ヴァルカン達を見送ったカオルとエルミアの2人。
宮殿の1室で、通信用魔導具を使っていた。
「リングウェウ王。アグラリアン王妃。お二人に、お話があります」
カオルが今通信している相手は、エルフの里に住まうリングェウ王とアグラリアン王妃。
2人は、エルミアの両親だ。
「改まって、何の話だ?婿殿」
威厳ある声が、魔導具から聞こえてくる。
カオルは姿勢を正し、隣に佇むエルミアと手を繋いだ。
「報告が遅くなり、申し訳ございません。ボクは、先日エルミアと婚約いたしました」
カオルがエルミアと残った理由は、これであった。
エルミアの両親に、婚約の報告をするためだ。
「ま、誠か!?」
「はい。お父様、お母様。私は、先日カオル様と婚約いたしました」
嬉しそうなエルミアの声。
カオルはエルミアの顔を見上げ、微笑み合う。
「本当に....エルミア....よかったわね.....」
「はい。お母様。私はとても幸せです」
「む、婿殿!!エルミアを....エルミアを頼むぞ!!」
「はい。一生大切にします」
リングウェウとアグラリアンは泣いているようだ。
すすり泣く声が、魔導具から聞こえている。
「そ、それでは、一日も早く世継ぎを作るのだ!!行く行くは、エルフ王に!!」
「あなた。気が早すぎですよ?カオルさんはまだ12歳。エルヴィントでの成人の儀を終えて、それからです」
「う、うむ....じゃが、私がおまえと子作りしたのは14さ....アイタッ!!」
「...余計な事を言わなくていいのです。エルミア。『約束』を覚えていますね?」
「....はい」
「では、必ず。カオルさん?」
「は、はい!?」
「エルミアの事、どうかよろしくお願いします」
「もちろんです。エルミアは、ボクの愛しい人ですから♪」
「カオル様....」
「エルミア....」
見詰め合う2人。
お互いの距離がゆっくりと近づき、もうすぐ重なりそうだ。
「あらあら♪すっかり2人の世界ね♪おじゃま虫は退散しましょ♪」
「お、おい!私はまだ...」
「いいから、あなたは黙っててください!!それでは、エルミア?また夜に」
「はい。お母様」
通信を終えたカオル達。
まだ何か言いたげだったリングウェウは、今度話す事になるだろう。
「エルミア...」
「カオル様...」
「「愛してる(ます)」」
重ねられた唇。
情欲に塗れたものではなく、神聖な口付け。
将来を誓い合った2人だけで交わされるもの。
カオルはもう迷わない。
家族全員と添い遂げる。
誰か1人を選ぶのではなく、全員と結婚する。
そのために、できる事をしよう。
愛する人に等しく愛を捧げ、ずっと傍にいよう。
そう、心に誓った。
「ねぇエルミア」
「なんでしょうか?」
「アグラリアン王妃が言ってた、『約束』ってなに?」
「それは、カオル様と私の間に生まれた子を、エルフの里の王にするという話しです」
「それっていつから?」
「....カオル様と出会った時からです」
「もしかして、リングウェウ王がボクの事を『婿殿』って呼んでたのって、そういう理由?」
「...はい」
恥ずかしそうに俯くエルミア。
カオルは、そんなエルミアが愛おしく思えた。
「エルミア。とっても嬉しいよ。そんなに前からボクの事を想っていてくれたなんて....」
「カオル様....」
「エルミア....」
再び重ねられた唇。
もういい加減にしてほしい。
「それじゃ、やる事やって師匠達のところに行こうか?」
「はい♪」
2人は部屋を後にした。
自治領の開拓をするために....
一方その頃、カルアとフランチェスカ・アイナをカオルの屋敷で降ろしたヴァルカンとエリーは、エルヴィント城の衛兵に馬車を預けて、アーシェラの私室へと赴いていた。
「それにしても、カオルも難儀じゃのぉ....まさかグローリエルから求婚されるとは....」
いつもの愛用のカップではなく、ヴァルカン達と同じ来客用のカップを手に紅茶を啜るアーシェラ。
どことなく寂しそうだ。
「まったくです。カオルには私達婚約者がいるというのに....グローリエルめ.....」
こともあろうに、ヴァルカン達の前で貴族の権力を使ったグローリエル。
ヴァルカンの苛立ちは、まったく収まっていなかった。
「ホントよ!!カオルは私のものなのに....」
エリーもまた、怒っていた。
突然目の前で愛しのカオルが求婚されたのだ。
当然だろう。
「大体、こんなことがまかり通る訳がない!!」
憤慨するヴァルカン。
そこへ、アーシェラが口惜しそうに話し出した。
「...ヴァルカンよ。実はそうでもないのじゃ」
「どういうことですか!?」
「カムーン王国の事は知らぬが、エルヴィント帝国では古来より、姦計の類は多かったのじゃ。
特に、貴族同士の婚姻は、聞くだけで吐き気をもよおす物も多いのじゃ。
たとえば...そうじゃの。
軽いもので、とある子爵家が伯爵家の奥方に恋をしての。
謀略を巡らし、当主を殺して我が物にしたり、自らの子にその劣情を吐き出して子を作ったりした事があるの。もっとも、百年以上も前の話しじゃが」
アーシェラの言葉に、ヴァルカンは眉を顰め、エリーは口を手で押さえた。
軽いものでこれなのだ。
もっとひどい事があったのだろう。
「ですが、それは百年以上も前の話しなのでしょう?」
「そうじゃ。わらわが皇帝となってからは、そういった事は無いの。
じゃが、1度できた慣習は、一生消えぬのも事実じゃ。
特に、今回は公爵家の話じゃ。
しかも、グローリエルはカオルが当主を退いてからで良いと言っておったのじゃろう?誰も文句は言えん」
「私達が文句を言ってるんです!!将来の伴侶が!!」
「そうは言うがのぉ.....カオルもグローリエルも貴族じゃ。
貴族の務めの1つは、子を成し、国のため、ひいては国民の為に尽くすのが本分じゃ。それにの、カオルとグローリエルの子じゃ。
きっとものすごい魔術師が生まれるとは思わんか?」
どうやら、アーシェラはこの状況を楽しんでいるようだ。
アーシェラとグローリエルは昔なじみである。
おたがい公爵家に生まれ、共感する部分が多々あったのだろう。
だからこそ、冒険者として活躍していたグローリエルを、剣騎として任命したのかもしれない。
「私達の子とて、有能です!!」
「ほぉ?剣聖ヴァルカンとエリーの子が有能のぉ?」
「え、エリーは、これから冒険者として必ず大成します。そうだろう?エリー?」
いやらしく片眉を吊り上げるアーシェラ。
エリーは動じながらも、懸命に答えた。
「え、ええ!!私は第1級冒険者に成るわ!!」
「ふむ...第1級冒険者とは、ずいぶん吠えたのぉ....」
「うっ.....」
「大丈夫だ!エリー!こう見えても、エリーは強くなりました。今や中級を上回る実力をもっています」
「え!?ほ、ホント!?ねぇヴァルカン。私、そんなに強くなったの!?」
「ああ、本当だ。エリーは着実に強くなっている。このままいけば、第1級冒険者も夢ではい!!」
エリーは感動した。
あのヴァルカンが褒めてくれている。
師匠であるヴァルカンから、中級以上の実力があると言われたのだ。
(私...強くなってる....よかった....)
胸の緑色のペンダントを握り締め、エリーは感謝した。
育ててくれたカルアに。
剣を教えてくれたヴァルカンに。
温かく見守ってくれたカオルに。
「ヴァルカンがそこまで言うのならば、信じるとするかの。じゃが...うぅむ...グローリエルの件じゃが、せめて子供だけでもどうじゃ?」
「陛下。カオルが、そんな事を認めると思っているのですか?
結婚もせずに、子種だけグローリエルに与えるなど、カオルはけしてしません。大体、フロリア様がお認めになるはずもないでしょう?」
ついに、伝家の宝刀を抜いたヴァルカン。
アーシェラは悩んだ。
「それは...そうじゃが....じゃがのぅ....グローリエルもいい歳じゃしの。
そろそろ世継ぎも考えねばならぬ年齢なのじゃ。それはヴァルカンとて同じじゃろう?」
情に訴えるアーシェラ。
さすがは策士だろう。
「それは私も不憫に思います。ですが、相手がカオルなのが問題です!!そうだ、エドアルドが良いのではないですか?グローリエルと仲も良さそうだ」
つい先ほどグローリエルが断ったというのに、ヴァルカンはまたしてもエドアルドの名前を出した。
他に適任者が思い付かなかっただけだが。
「うむ。エドアルドは確かに適任じゃろう。冒険者時代も、お互いパートナーだったしの」
「でしたら!!」
「じゃがのぉ....以前、わらわもグローリエルにエドアルドを勧めてみた事があるんじゃが、色よい返事が無くての。たぶんムリじゃな」
ガクっと肩を落とすヴァルカン。
エリーは先ほど褒められたのがよほど嬉しかったのか、どこかの世界へ旅立ってしまっていた。
そこへ....
「コンコン」
扉を叩く音が聞こえた。
「だれじゃ?」
「陛下、アゥストリです」
「うむ、入れ」
侍女のメイドが扉を開き、アゥストリを室内へ招き入れた。
おずおずと、いつもの様にアーシェラの近くに座るアゥストリ。
メイドに差し出された紅茶を啜り、「ふぅ」と溜息を吐いた。
「それで、どうじゃった?」
「はい。香月伯爵領へは、いつでも視察に来て下さいとの事でした」
アゥストリの報告を聞いて、嬉しそうに笑みを零すアーシェラ。
ヴァルカンは黙って話し聞き入る。
「うむ。では手はず通り頼んだのじゃ」
「はい。それで、陛下。グローリエル様の事ですが....」
アゥストリも気掛かりなのだ。
突然目の前でカオルに婚約を迫るグローリエル。
おそらく、冗談で言ったものではないだろう。
「うむ。丁度その話しをしておったところじゃ」
「そうでしたか!それで、陛下はどうなさるおつもりですか?」
「それがのぉ....子種だけでもダメかと言ったんじゃが、ヴァルカンが頑なでの」
「当たり前です。カオルがそんな不義を認めるわけがないでしょう?」
「....陛下。失礼ですが、私もそう思います」
お互いに難色を示す3人。
エリーはまだどこかを旅している。
そんなに嬉しかったのか。
「陛下。私に妙案があります」
「ほほう?申してみよ」
「はい。グローリエル様は、誉れ高き剣騎です。ならば、カオル殿と決闘で決めてみてはいかがでしょうか?」
「ふむ....決闘とな」
「そうです。丁度、カオル殿はヘルマン様と決闘をされます。そこで、前哨戦として2人を戦わせてみては?」
「ふ、ふざけるな!!カオルは、ただでさえヘルマンの件で心を痛めてるんだぞ!!その上、結婚するために決闘なんて参加させられるか!!」
ヴァルカンは激怒した。
カオルを想い、そんな馬鹿げた提案には乗れないと、そう告げた。
「ボクはそれでいいですよ。ね?グローリエル?」
「ああ。あたいもそれでいいさ」
アーシェラ達は驚いた。
突然聞こえた声に。
振り向いて見ると、そこには開け放たれた窓から、カオルとグローリエルが顔を覗かせていた。
「か、カオル!?な、なんでそんなところから....」
「エヘヘ♪グローリエルが一緒だったからいいかなって♪」
悪びれた様子のないカオル。
グローリエルは、早速メイドに紅茶を頼んでいた。
「いいかなって....」
「大丈夫ですよ。衛兵さんと近衛騎士さんには、手を振っておきましたから♪」
「いやしかしだな....」
さすがにヴァルカンも呆れてしまう。
皇帝の私室に窓から入るなんて無礼な真似を、普通しようだなんて考えない。
矢でも射られても文句は言えないだろう。
カオルとグローリエルが、矢に討たれるとは思えないが。
「もう良いヴァルカン。それで、カオル、グローリエルよ。決闘の件、了承するのじゃな?」
「はい。ボクはそれでいいです」
「ズズッ....美味し...あたいも、それでいいです」
「よかろう。ならば決闘じゃ!!日時は追って決めるとしようかの。
丁度、円形闘技場の修復も間もなく終わるそうじゃし、それを待って決闘じゃ。いやぁ良かったのじゃ。
円形闘技場に全ての国民を収容できぬから、観戦券が足りなくての。前哨戦として、カオルとグローリエルが決闘するなら、わらわらとしても万々歳じゃ♪」
嬉しそうなアーシェラ。
カオルは即座に釘を刺した。
「そうですか。ですが、アーシェラ様?グローリエルとの決闘を賭け事にしたら、ボクは怒りますからね?」
カオルは知っている。
カオルとヘルマンとの決闘を、帝国が胴元となり賭け事にしている事を。
それ自体は仕方が無いと思っている。
貴族同士の決闘なのだ。
娯楽としては最高だろう。
だが、グローリエルとカオルの決闘は、結婚を、婚儀を決める為の神聖なもの。
それまでも賭け事にされては、自分の誇りが許さない。
「そ、それはもちろんじゃ!!見世物にするのも悪いとは思おておる。
じゃがの?民は娯楽に飢えておる。何十年ぶりかの決闘なのじゃ。
少しくらいは融通してほしいものじゃ...」
「ええ。それは十重承知しています。ですから、グローリエルとの神聖な決闘を賭け事にしないでくださいと言っています。いいですね?」
「わ、わかったのじゃ。じゃから、そんな冷たく見ないでくれぬか?(漏れてしまうではないか....)」
カオルは楽しくて仕方が無かった。
ドS心が疼くとでも言うのだろうか?
あのいつもしてやられるアーシェラが、うろたえているのだ。
言い得ぬ胸の高鳴りが、加虐心を煽る。
なぜこんな変態に育ってしまったのか。
将来に一抹の不安を覚える。
「グローリエル。あの時以来だね....」
「ああ。今度は負けないよ」
「ボクだって....また、勝つから....」
楽しそうに睨み合う両者。
アゥストリは怯え、エリーはまだ帰って来ない。
あれだけ騒がしかったのに....
大丈夫だろうか?
「師匠」
「....なんだ」
「怒ってくれてありがとうございました。すっごく嬉しかったです」
「カオル...」
「エヘヘ♪師匠大好き♪」
アーシェラ達の前だというのに、ヴァルカンに抱き付くカオル。
小さな変態は、もう人目を憚る事すらしないのか。
もしくはわざとか。
本人しか知らない。
「師匠。良い匂いがします」
「カオルも良い匂いだぞ?」
「エヘヘ♪嬉しいです♪」
「カオルきゅん....」
「師匠....」
見詰め合う2人。
そのまま口付けを交わしそうな、その時。
ようやくエリーが復活した。
「何してんのよ!!!」
カオルとヴァルカンにチョップを炸裂させる。
2人は頭を擦りながら、「「おかえり、エリー」」と帰還を喜んだ。
「なんじゃか...喜劇を見ておるようじゃの」
「まったくです....」
「おかわり」
呆れるアーシェラとアゥストリ。
いつも通り紅茶のおかわりをするグローリエルは、やはり大物だ。
「あ、そうだ。アーシェラ様」
「うむ?なんじゃ?」
「1人、引き抜いてもいいですか?」
「...引き抜きじゃと?」
カオルは、自治領の開拓にアーシェラの協力を断っている。
そのため、有能な人材を求めているのだ。
カオルの眼鏡に適い、将来有望そうな人材を。
「はい。迎賓館でメイド長をしている、フランチェスカのお母様です」
「オレリーをかの?なぜじゃ?」
「ボクは、生活拠点を自治領に移します。せっかくなので、フランチェスカのお母様にも、ご一緒に来てもらおうかと思ったので」
「うむぅ...」
「それに、将来ボクのお義母様になるのです。早いうちから一緒に居た方が、ボクも安心できます」
カオルはフランチェスカと結婚する。
もう決めたのだ。
家族全員と結婚する事を。
ヴァルカンと、カルアと、エリーと、エルミアと、フランチェスカと、アイナと。
カオルは結婚するのだ。
今は婚約者だが。
「そうは言うがの。これから各国の来賓が来る予定なのじゃ。オレリーに、今迎賓館を離れてもらう訳にはいかぬのじゃ」
「もちろんわかっています。ですから、その後、ボクの下へ来て頂こうかと思いまして」
「それならば、良いじゃろう。ただし、オレリー自身にキチンと話しをつける事が条件じゃ。まぁ、カオルじゃからの。問題ないじゃろうが」
「ありがとうございます、アーシェラ様。いえ、もしかしたら...アーシェラ母様?」
「な、何を言うておるのじゃ!?」
「エヘヘ♪それでは、ボクは失礼しますね♪師匠、エリー。先に屋敷に行ってるから、終わったら連絡してね?」
カオルはアゥストリとグローリエルにも挨拶をして、アーシェラの私室を後にした。
今度はちゃんと扉から。
「....陛下。アーシェラ母様とは、どういうことでしょうか?」
ヴァルカンは、ワナワナと震えていた。
いや、ヴァルカンだけではない。
エリーも、グローリエルもそうだ。
なぜかアゥストリだけは、したり顔で紅茶を飲んでいたが。
「な、なんじゃ!?聞いておらんのか!?カオルが、リアの想いに答えるかもしれんという話しじゃぞ!?」
「な、なんだと!?」
思わずアーシェラの前で敬語を忘れるヴァルカン。
先ほどもそうだが、化けの皮が剥がれ掛かっている。
「ねぇカオル!?....だめね、繋がらないわ.....」
即座に通信用魔導具でカオルに通信したエリー。
どうやら話し中の用で、繋がらなかった。
「アーシェラ....あたい、そんな話し聞いてないんだけど....」
友人グローリエルが、冷ややかにアーシェラを見据える。
アーシェラは背筋に悪寒を感じ、とんでもない爆弾を置いていったカオルを忌々しく思っていた。
「な、なんじゃ....べ、別に、確定した話しじゃないのじゃぞ?
ただ、カオルが内に秘めた想いがなんなのかわからぬから、今後もリアと話したいと言うておっただけじゃ...わ、わらわは何も悪くないのじゃ!!
文句があるならカオルに言え!!わらわは、何も悪くないのじゃ...」
涙を浮かべるアーシェラ。
それもそのはず、アーシェラはまったく悪くない。
家族に何も言わなかったカオルが悪いのだ。
「....昨日の朝、カオルがフロリア様の下を訪ねたのは、その話しをするためですか?」
ヴァルカンには思い当たる節がある。
先日、カオルはフロリアの下へ行ったらしい。
朝いなかったのはそのためだ。
そして、アーシェラからの通信で、急遽1日休みを与えられた。
あの時は、悲しむフロリアをカオルとアーシェラで慰めただけだと言っていたが、本当はこんな大事な事を話していたのだ。
なぜ気付かなかったのか。
浅はかな自分が恨めしいのだろう
「そ、そうじゃ!」
「....わかりました。エリー。さっさと終わらせて帰るぞ。このままでは、どんどんカオルの婚約者が増える」
「そうね...」
「あたいも手伝うよ。アゥストリ、あんたも手伝いな」
「わ、私もですか!?」
「ああ、そうさ。あんた知ってたんだろう?知ってて黙ってたんだろう?」
「いえ、あの....私は....」
チラリとアーシェラに救いを求めるアゥストリ。
アーシェラは気まずそうに視線を逸らした。
(へ、陛下!?そんなご無体な....)
「いいから手伝いな。それとも....焼かれたいのかい?」
「切り刻んでもいいんだぞ?」
「真っ二つね?」
傘にもなるステッキを持ち出すグローリエルに、愛刀に手を添えるヴァルカン。
エリーはヴァルカンのアイテム箱から黒大剣を取り出し、室内で掲げた。
「....手伝います」
哀れなハゲメン。
益々禿げ上がってしまうのは、安易に予想できる。
カオルは、策士アーシェラに一泡吹かせて、1人大満足かもしれない....
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