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第百六十話 ただいま

エロ回。


 空に西日が射す頃。

 カオルとエルミアは、恩人?のキルシに再会を約束し、アンエ村を後にした。

 来た時と同じ、森の開けた場所から魔鳥サイズのファルフに乗って、我が家へと向かう。

 何度もエルミアが思い出した様に、温泉での淫猥な行為を謝罪していた。


「カオル様。本当に申し訳ございませんでした....」


 済まなそうに肩を落とし俯くエルミア。

 やってしまった事は最低だが、カオルは一度許しているので、いつまでも家族のこんな姿を見たくない。

 そこで、エルミアに近づき顎に手を添える。


「....カオル様?」


 エルミアが不思議に思い顔を上げたところへ、「チュッ」と口付けた。

 突然のキスに驚いて目を見開く。

 カオルは微笑んだ。

 

「もう許してるから、いつまでも落ち込まないで。ボクはまだ子供だし、と、突然だったから驚いただけで....と、とにかく。この事で謝るのはお終い!!」


 照れて、耳まで赤くするカオル。

 (ちょっとキザったらしかったかな?)と思いつつも、柔らかいエルミアの唇に満足していた。


「あ、あの!!カオル様!!もう一度.....お願いしてもいいですか?」


 エルミアは、伏せ目がちにカオルを見上げる。

 高揚した頬に潤んだ瞳。

 カオルは(断れない)と思った。


「う、うん....い、いくよ?」


「はい....」


 再び重ねられた2人の唇。

 お互いに目を閉じて、相手のぬくもりを感じるように、しっとりとした唇の感触を味わう。

 

(あ、改まってキスすると、恥ずかしいよぉ....)


 緊張を気付かせまいと、ギュッとキツク目を結ぶ。

 ちょっと震えるカオルを、(可愛いです♪)とエルミアが思っていた。


 やがて、どちらともなく離れる。

 少し名残惜しさを感じたカオルは、離れ際にもう一度短く口付けて、即座に後ろを向いた。


 俯く2人を乗せて、ファルフは飛ぶ。

 一路エルヴィント帝国へ向けて。












 エルヴィント帝国の帝都北西にある貴族街。

 そこに、新興貴族である香月伯爵の屋敷はあった。


 夕食の準備をしているメイドのフランチェスカとアイナの2人。

 助祭のカルアは居間で、聖騎士教会の総本山である聖都『アスティエール』から、カオルの決闘を見に来る要人の受け入れ書類に目を通し、ヴァルカンとエリーは訓練場で修練に励んでいる。

 そろそろ日が傾き夜になろうとしていた頃、アイナが調理の手を止めて、慌しく庭へ駆けて行った。


「ちょっとアイナ!どうしたの?」


 アイナの後を追い掛けるフランチェスカ。

 フランチェスカの声が聞こえたのか、カルアも居間から庭へとやってきた。


「帰って来る!!」


 アイナは空を見上げた。

 夕陽が西の空を茜色に染める。


「帰って来るって....カオルちゃんが?」


「うん!!」


 カルアとフランチェスカが、お互いに顔を見合わせ首を傾げると、アイナが空を指差した。

 それに釣られて指先の方角を見やる。

 そこには小さな何かが居た。

 米粒大のこげ茶色の塊は、ゆっくりと大きく近づいて来る。


「ご主人!!」


 アイナは全身を使って大きく手を振った。

 そして、カルアとフランチェスカもわかった。

 カオルが帰って来た事を。


「カオルちゃーん♪」


「ご主人様ー!!」


 2人もアイナに倣い手を振る。

 すると、声に気付いたヴァルカンとエリーが、訓練場から出てきて空を見上げた。


 ファルフは、高速で帝都上空を滑空する。

 ものすごい速さで一直線に屋敷の庭へ向い、着地の瞬間に大きく翼を開いた。

 突風が巻き起こり、砂煙が舞い上がる。

 

「みんなただいま!!」


 次の瞬間にはカオルが居た。

 ファルフの背に乗り、黒く長い髪を靡かせて、エルミアと一緒に帰ってきたのだ。


「ご主人!!」


 アイナはファルフの背中によじ登り、カオルに向かって飛び付く。

 カオルの胸に顔を埋め、何度も顔を擦りつけた。


「あはは。ただいまアイナ」


「ご主人!おかえり!」


 笑い合う2人。

 ヴァルカン達は、完全に出遅れてしまった。

 齢10歳のアイナ。

 カオルに可愛がられ、言葉を覚えてもカオルの前では不自由なフリをする。

 おそらく、この先ヴァルカン達の好敵手(ライバル)となる事は間違いないだろう。


「フラン。お腹空いたから、とりあえずごはんにしない?」


「は、はい!すぐにご用意しますっ!」


 マイペースなカオルにそう告げられて、フランチェスカはバタバタとキッチンへ戻る。

 アイナも満足したのか、カオルの腰から両手を離し、ファルフから降りてフランチェスカの後を追った。


「よいしょっと。エルミア、手を」


「はい♪」


 ファルフから降りたカオルが、エルミアの手を取り地面へと導く。

 アイナにしてやられたヴァルカン達は、口をあんぐり開き、ただただその様子を見詰めていた。


「ただいま。師匠、カルア、エリー。ボクがいない間に、何かあった?」


 茫然自失状態の、ヴァルカンとカルアとエリーの3人。

 カオルの後ろに佇むエルミア。

 2人の距離が、いつもよりも近い事に気が付いた。


「うわぁああん。かおるぅううううううううう!!!!」


「カオルーーー!!」


「カオルちゃ~~~ん♪」


 勢い良くカオルに抱き付く3人。

 こっそり空いた背中から、エルミアがそれに続く。 


「え!?ええ!?ちょ、ちょっと、どうしたの!?」


 突然の3人の行動に理解できないカオル。

 なんだかよくわからないが、とりあえず泣いている3人の頭を撫でた。

 カルアは嘘泣きだが。


「うぅ....カオルきゅんが、エルミアと婚約の挨拶に行ったって聞いて、私は.....私は......うわぁああああん!!!」


「私って彼女(もの)がありながら.....エルミアを選んだんだって.....そう思ったら.....うぅぅ.....」


「おねぇちゃんも悲しかった....カオルちゃんは、おねぇちゃんを選んでくれるって......ずっと思ってたのに......」


 口々に、カオルはエルミアを選んだと告げるヴァルカン達。

 エリーが彼女と言っているのはよくわからないが、カオルは何の事だかわからずに頭を掻いた。


「あの....ボク、エルフ王に会いに行っただけなんですけど....」


「うぅ....だから、エルフ王にエルミアとの婚約の挨拶をしたんだろう?」


(もしかして師匠達は、ボクがエルミアと婚約するためにエルフ王に会いに行ったと勘違いしてるのかな?)  


 カオルは微笑んだ。

 (なんて可愛い人達なんだろう)と。 

 ゆっくりと3人の顔に近づき、頬に口付ける。

 

「違いますよ。ボクがエルフ王に会いに行ったのは、金策をしに行っただけです。街を造るのに、お金が必要ですから。そうだよね?エルミア」


「.....はい」


 エルミアは残念そうに声のトーンを落とした。

 本当は、エルミアも婚約の挨拶だと思っていたのだから。


「そ、そうだったのか?」


「はい。大体、もう家族なんですから、婚約出来無いですよ?師匠」


 ニコリと笑い肯定する。

 すると、安心したのかヴァルカン達はその場に座り込んでしまった。


「なんだ....そうだったのか....」


「もう、カオルったら!!余計な心配しちゃったじゃない!!」


「おねぇちゃんはわかってました♪」


 強がりを言うカルア。

 ...強がりだよね?


「ほら、食堂に行きましょう?お腹空きました」


 カオルに立たせてもらい、ヴァルカン達は食堂へと向かう。

 そこで、ヴァルカンはふと気付く。

 (家族だから婚約出来無いとは、いったいどういう事か)と。


「か、カオル!家族だから婚約出来無いってどういう意味だ!?」


「え?えーっと....とりあえず、ごはんにしましょ?お腹ペコペコなんです」


 ヴァルカンの質問をはぐらかして、カオルは急ぎ足で食堂へと入って行った。

 答えが欲しかったヴァルカンは、(後で聞けばいいか)と問題を先送りにする。

 カオルはけして答えなかったが。











 ちょっと早めの夕食後。

 お風呂を終えたカオル達は、1階にある居間のソファで寛いでいた。

 メイド2人も含めた、家族全員でお風呂に入る羽目になってしまったのだが。

 なぜかエルミアも一緒だった。

 カオルと2人で温泉に入ったはずなのに。

 

(もう...みんなでお風呂に入るなんて、思わなかったよ)


 カルアに髪を拭いてもらいながら、カオルは溜息を吐いた。


「ふぅ....」


「それで、カオル。説明をしてもらおうか」


 ヴァルカンはカオルの隣を陣取り、怒ってますよと腕を組んでポーズして見せた。

 金色の髪から雫を滴らせて。


「....とりあえず、師匠は髪を拭いてください。これを使っていいですから」


 カオルは、手に持っていたタオルをヴァルカンに差し出し、髪を拭うよう告げる。

 「そのままでは風邪をひいてしまうから」と。


「それじゃぁ....話しますね」


 カオルは話した。 

 エルフの里に着いてからの事を。

 風の精霊王シルフに出会い、大蛇(ラハム)と戦った。

 その後、当初の目的であるリングウェウ王から、失われた回復薬『ポーション』の販売の許可を得た。

 そして、風竜の行方の手掛かりを、土竜王クエレブレから教えて貰った。


 ヴァルカン達は黙って聞いてた。

 眉唾とも思えるカオルの英雄譚を。

 

「....では、その胸の『音素文字(ルーン)』が増えているのは、土竜王クエレブレと契約したからなのか?」


 カオルの右胸を指差し、ヴァルカンは問い掛ける。

 カオルは頷いた。


「そうです。これは、土竜がボクと契約した証。そして....ボクはこれから『水竜王リヴァイアサン』と『火竜王バハムート』を探さなければいけません。風竜を助ける為に....」


 部屋に緊張が張り詰める。


 何も言えなかった。

 カオルを『ego(えご)黒書(こくしょ)』から救い出した風竜は、己を犠牲にした。

 ヴァルカン達とて、もし自分に同じ事が出来る状態であれば、迷わずそうしただろう。

 自分勝手で傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な風竜。

 家族として、カオルをずっと守ってきた。


「....よくわかった。カオル。私達も、風竜救出には協力する。あいつは口は悪いが良いヤツだからな。それと、何度も言うが、今後1人で行動する事は禁止だ。カオルは思慮が足りなさ過ぎる。いいか?フムスの地下迷宮(ダンジョン)は高難度のダンジョンだ。カオルがたった1人で行って無事に帰って来れたのは、運が良かっただけだぞ。こんな無謀はこれっきりにするんだ。わかったか?」


 ヴァルカンは怒っていた。

 いや、ヴァルカンだけではない。

 カルアも、エリーも、そしてエルミアも、口には出さないが静かに怒っていた。


「で、でも。シルフは、ボク1人で土竜に会いに行けって....」


「それは、土竜に会うのは、カオル1人でなければいけないという意味だろう?ダンジョンは問題無いはずだ」


「ええ!?ボク、そんな事聞いて無いですよ....」


「はぁ....ならば明日、エルフの里へ私が行ってくる。直接聞いてくれば問題無いだろう」


 ヴァルカンは溜息混じりにそう告げる。

 けして、カオルを危険に向かわせたシルフに、一言文句を言おうなどとは思ってはいない。

 事と次第によっては、1発殴るかもしれないが。


「あ、じゃぁ、ちょっと聞いてみます」


 カオルはそう言うと、アイテム箱から銀版を取り出す。

 それは通信用魔導具である。


「カオル....それはなんだ?」


 ヴァルカンは、訝しげにその様子を見詰めて質問する。

 しかし、カオルは既に魔導具を起動させていた。


「ちょっと待って下さいね.........あ、シルフ?ちょっと聞きたいんだけど、ボクが土竜に会いに行く時、『土竜に会うなら、カオル君1人で行かないとダメだからね。じゃないと会う事も出来ないと思う』って言ったのはどういう意味?師匠が、土竜に会う時だけボク1人になればよかったんじゃないか?って言うんだけど....」


「モグモグ....ああ。あの話しかい?その通りだけど、それがどうしたんだい?」


「え....それがどうしたって....なんであの時言ってくれなかったのさ!!」


「モグモグ....だって、カオル君は今すぐにでも行こうとしてたじゃないか」


「そ、それはそうだけど....」


「それに、エルミアを連れてフムスの地下迷宮(ダンジョン)に行ってみなよ。守りながら戦うのは大変なんだよ?カオル君1人なら、いつでも逃げられるじゃないか。だから黙っていたのさ....あ、それボクも食べる!!」


「シルフ様。食事中に通信するのはいけないと、カオルさんが言っておられたでしょう?.....カオルさん。無事にエルヴィント帝国に戻られたのですね?」


「あ、アグラリアン王妃。食事中だったのですね。すみません」


「いえいえ♪ご無事でよかったです。エルミアはそこに居ますか?」


「はい、お母様」


「カオルさんの言う事をよく聞いて、務めを果たすのですよ?」


「わかっています。お母様」


「良い返事です。それではカオルさん、エルミア。食事中ですから、これで失礼しますね」


「はい。食事中にすみませんでした」


「いえいえ♪」


 シルフとアグラリアンの声が途絶え、銀版から緑色の明かりが消える。

 通信が終了したのだ。


 カオルはヴァルカンに向き直り姿勢を正す。


「師匠の言う通りでした。心配を掛けてすみません。もし、ダンジョンに行かなければならない時は、相談しますね?」


 呆気にとられるヴァルカン達。

 紅茶のカップを持ち上げていたエリーは、そのままの姿勢で固まっていた。


「か、か、か、カオル!?今の声はなんだ!?というか、なんだそれは!?」 


 魔導具を指差しうろたえるヴァルカン。

 カオルの髪を拭いていたカルアは、エリーと同じ様に固まったままだ。


「これは、通信用の魔導具です。太古に存在していた物で、現在では使われていないと思います。土竜から譲って貰ったんですよ。あ、そうだ。みんなにも渡しますね」


 アイテム箱から人数分の魔導具を取り出し、それを手渡す。

 エリーとカルアは固まったまま、空いた手にそれを持たされた。


「え!?いや....はぁ!?こ、これは、離れた相手と話す事が出来るのか!?」


「そうです。希少価値の高い物で、とても危険な物です。使用者の登録もしないといけないですし、使い方は後で教えます。っと、そうだ。カルアはこれを使う時、十分気を付けてね?奪おうと、襲ってくる人が居るかもしれないから....誰かが傍に居る時に使うといいかも」


 カオルは心配した。

 治癒術師のカルアは、温厚な性格というのももちろんあるが、刃物を持つ事ができず戦いには向いていない。

 もし暴漢に襲われでもしたら、非力なカルアに勝ち目など無いだろう。


「....ハッ!?お、おねぇちゃんびっくりしちゃったわ....えっと、カオルちゃんが心配してくれるのはとっても嬉しいけど、おねぇちゃんは強いから大丈夫よ?」


「えー。カルアは、ポワポワしてて柔らかくて(あった)かいから強く見えないよ?」


「もう♪カオルちゃんったら♪そんな嬉しい事言うと、こうしちゃうんだからね♪」


 カオルの頭をグシャグシャに掻き回すカルア。

 しっとりとした濡れ髪が、フワフワのタオルに押し付けられる。


「うわっ!?や、止めてよカルア」


 キャピキャピとはしゃぐ2人。

 エルミアがこっそりタオルを持って参戦し、そこでようやくエリーも復活した。


「ちょ、ちょっと!!私も混ぜなさいよ!!」


 カオルから渡された魔導具を置き、3人は和気藹々と楽しんだ。

 ひさびさの家族の団欒を。

 ひさびさのカオルの肢体を。


「ひぃ!?そこ触っちゃダメだよ!?し、師匠!!見てないで助けて下さい!!」


 ヴァルカンはジッと魔導具を見ていた。

 カオルから贈られた通信用の魔導具。

 離れた相手と会話が出来るということは、軍事利用すれば脅威だ。

 もし、エルヴィント帝国がこれを手に入れれば、国力を増す事になるだろう。

 今でこそ、カムーン王国と同盟を結んでいるエルヴィント帝国。

 万が一仲違いをしたら....

 カムーン王国の元剣聖であるヴァルカンは、軍に召集される事になる。

 恩義があるエリーシャ女王の頼みとあらば、ヴァルカンに断る事は出来無い。

 カオルとエリーはエルヴィント国民であり、カルアは聖騎士教会の人間。

 エルフの王女であるエルミアは、間違い無くカオルが居るエルヴィント側に付く。


(私はどうするだろうか....)


 本音を言えばカオルに付きたい。

 しかし、エリーシャ女王の頼みを無碍(むげ)には出来無い。

 板ばさみの状態で、ヴァルカンは悩んでいた。


「ししょぅ.....助けてくれたらご褒美しますからぁ......」


 3匹の野獣に、貞操を奪われそうなカオル。

 着ていた下着代わりの白のスリップをはだけさせ、涙声で懇願した。

 想い悩むヴァルカンに向けて。


 そこからのヴァルカンの行動は早かった。

 あっという間にカルアとエリーとエルミアの3人をカオルからひっぺがし、ボロ雑巾の様に放り投げる。

 そしてカオルを抱き抱え、2階にある自室へ向かい鍵を掛けて篭った。


「ハァハァハァ....」


 鼻息荒く興奮しているヴァルカン。

 目は血走り体温は高い。

 魔導具の事などすっかり忘れている。


「...師匠?」


 ヴァルカンを見上げるカオル。

 潤んだ瞳に着崩した下着。

 美味しそうな獲物(カオル)がそこに居た。


 ヴァルカンは、カオルをベットの上へ横たわらせて覆い被さる。

 体重を掛けてカオルを逃げられない様にすると、カオルの肢体を舐め回す。


「ちょ!?ちょっと!!師匠!?」


 おへそから胸へ、ヴァルカンの舌が這い回る。

 やがて胸の突起に辿り着き、円を描くように舌で転がす。

 

「はっあぁ....ダメです.......師匠......」


 快感が全身に突き抜ける。

 頬は高揚し、口から漏れる吐息は熱を帯びる。

 刺激(しげき)が、刺戟(しげき)が、幼いカオルの身体に奔る。

 今まで感じた事の無い快楽。

 どうしていいかわからないカオル。

 左手でシーツをギュッと掴み、ヴァルカンの首へ右手を回す。

 そのままヴァルカンの顔を自分の顔へと導いて、貪るように唇を重ねる。


 もう止められなかった。


 大好きなヴァルカン。

 お互いの熱い体温を感じ、その存在を知覚する。

 舌を絡ませ「欲しい欲しい」と粘膜を交わらせる。

 

「んっ・・・・ちゅ、くちゅ、じゅる、じゅるるるっ」


 2人は獣だった。

 欲望の赴くままに唇を合わせる。

 やがて、お互いの身体が痙攣し動きを止めた。


(し....しょ.....)


 重い瞼が閉じられる。

 カオルが最後に見た光景は、満足そうに微笑むヴァルカンの寝顔であった。


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