表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/349

第百五十七話 土竜王クエレブレ

あらすじ。

エルヴィント帝国皇帝アーシェラから、自治領を下賜されたカオル。

『奴隷の街』を造るとヴァルカン達に宣言し、さっそく金策を始めた。

向かったのは、エルミアの故郷エルフの里。

そこでエルフ王リングウェウから許可を取り、ポーションの販売の許可を得る。

だが、ひょんな縁で出会った風の精霊王シルフから、いなくなってしまった風竜の情報を得て....


 カオルが『フムスの地下迷宮(ダンジョン)』へ篭って、はや2日。

 順調に階層を重ねていたカオルではあったが、41層を越えた辺りから少々キツクなってしまった。

 別に魔物や魔獣が強いのではない。

 単純に迷子になったのだ。


 カオルは今、広大な森林エリアの存在する、48階層の巨木の上で横になっている。

 見張りを頼まれたファルフが、周囲を警戒するようにクルクル見回り、カオルは静かに寝息を立てる。

 もし、ファルフが居なければ。

 もし、あの時ウェヌスがカオルに召喚魔法を封じ込めた赤い魔宝石をくれなければ。

 カオルはあちこち移動する事も、可愛らしいファルフに出会う事も出来なかっただろう。

 時折身じろぐカオルを、心配そうに見詰めるファルフ。

 ヴァルカン達のいない今。

 ファルフだけがカオルの心の支えなのだ。


 そこへ、カタカタと身体を鳴らし、巨木の下を妖しい集団が通り過ぎる。

 二足歩行に妖しく光る赤い双眸。

 汚らしい端切れを纏い、打ち鳴らすのは自身の骨。

 魔物のスケルトンである。

 スケルトンはとても弱い。

 力も無い上に、獲物はボロボロの木切れや錆びた剣などだ。

 だが、集団となると話しは違う。

 今カオルが居る巨木の下を通過して行ったのは、およそ300体ほどの集団。

 いくらカオルが強いとは言っても、いちいち相手にしていたら体力がもたない。


 魔物に気付いたファルフだが、物音を立てずにジッと通り過ぎるのを我慢する。

 疲れているカオルを少しでも長く休ませようと、そう考えているのだろう。

 出来た鳥である。


「....んっ....ん~~っ!!おはようファルフ」 


 それからややあって眠りから覚めたカオルは、ファルフに挨拶をしながらアイテム箱から食事を取り出す。

 軽食と言っていい程の、もの悲しく簡単な食事だが、仲良しのファルフと2人で食べる食事は中々楽しい。

 丸い白パンを小さく千切り、ファルフの前にそっと差し出す。

 ファルフは嬉しそうに何度も(つい)ばむ。

 傍から見ると単なる餌付けなのだが、楽しそうに笑うカオルはやっぱり可愛い。

 

「それじゃ、行こうか」


 食事も終わり探索を開始する。

 ファルフは、いつもの定位置であるカオルの肩に止まり、再び周囲を警戒し始めた。

 子供が1人と小鳥が1羽。

 こんな高難度のダンジョンの、さらに深層には、まったく似合わない2人である。


 それから、何度目かの魔物の襲来の後、カオルは森林エリアに断崖絶壁とも言える縦穴を見つける。

 底の方から強風が吹き上がり、カオルの長い黒髪を強く靡かせた。


「ん~....どう思う?」


 言葉を話さないファルフではあるが、カオルが質問すると、目を何度もパチクリさせて何か言いたげに小首を傾げる。


「行って見ようか?」


 なんとなくファルフが「降りてみよう」と言った気がしたカオルは、ファルフを魔鳥(まちょう)サイズで再召喚して断崖絶壁をゆっくりと降りて行った。


 崖の下は風が強かった。

 カオルが『風の障壁』を展開しなければ、おそらくファルフの力でも降りる事は出来なかっただろう。

 光源乏しい暗闇の中を、『ライト』の魔法で明るく照らし、カオルは独り言の様にファルフに話しかけ続けた。

 やがて、無機質な岩肌から、大きな木の根を見つける。

 それを指針にファルフの背に乗ったカオルは、崖を順調に下って行く。


 崖底には、凄惨な光景があった。

 何年。何十年。何百年と、誰も足を踏み入れた事など無かったのだろう。

 朽ち果てた骸が無数に転がり、肉片などの有機物は一切無かった。

 

「すごく気味の悪いところだね」


 小鳥サイズに戻したファルフに、カオルは心細そうに話し掛ける。

 もしたった1人でここへ来ていたら、おそらくちびっていたのは間違いない。

 

 周囲を警戒しながら、カオルとファルフは1本道を進んだ。

 地面には砂埃が幾重にも降り積もり、カオルが歩いた足跡がはっきりと残る。

 嫌な匂いに息苦しさを感じながら、1歩1歩着実に前へ進む。

 すると、1本道の終わりに巨大な両開きの扉を見付けた。

 片方がおよそ5mほどの長さ。

 高さはおそらく倍以上あるだろう。

 堅牢な造りに、全面に細かい造形が彫られている。

 

「なんだか高そうな扉だね....」


 扉を見上げながら、カオルはファルフに同意を求める。

 周囲を警戒していたファルフは、慌てた様子でカオルの髪を嘴で引っ張った。


「ん?」


 ファルフが向いていた方向へ顔を向ける。

 そこには朽ち果てていた骸が、ボロボロの鎧を纏いこちらへ向かって歩んでいた。

 

「魔物.....だね」


 その様子をジッと見据えるカオル。

 カオルが見ている間にも、骸はどんどんその数を増やし、一本道を埋め尽くす。

 動きに合わせて明滅(めいめつ)する赤い双眸(そうぼう)

 カオルの脳裏に、吸血鬼(ヴァンパイア)従者(サーヴィター)の姿が思い出される。


「.....そうなんだ」


 カオルは、この『フムスの地下迷宮(ダンジョン)』へ篭ってから、何度も吸血鬼(ヴァンパイア)従者(サーヴィター)を思い出していた。

 一定の階層で待ち構えていたスケルトン。

 40階層のガーディアンであったワイト。

 全ての魔物に言える事は、アンデッドであり、赤い双眸をしているということ。

 道中で出会った冒険者を叱責した時も、カオルは思い出していたが....


 カオルはもう迷わないと決めた。

 たとえ人であったとしても、自身の大切な者に害を成す者は許さないと。


「輝かしき金色(こんじき)閃光(せんこう)よ」


 紡がれたのは短文呪文。

 カオルは左手を前へ突き出して、赤き光を指差す。

 そして発動させた。


「トニトルス!!!!」


 金色の雷線が指先から放たれ、迷う事無く一本道を貫く。

 響き渡る雷撃音。

 光の残像が網膜にちらつく中、カオルは警戒を解かずジッと一本道を見据える。

 撒き上がった砂埃が収まるまで、カオルはずっと見続けていた。

 骸と化した魔物達の生死を。


 砂埃が晴れた後には、何も無かった。

 骸は一片も残さずに焼き崩れ、姿を塵へと変えたのだ。


「はぁ....」 

 

 口から溜息が漏れる。

 (また殺してしまった)と。

 たとえ魔物とは言え、かつて人であった者を屠るのは、カオルにとってはかなりキツイ。

 この世界の不条理は、カオルの背中に重く圧し掛かっている。


 心配そうにカオルの耳を突くファルフ。

 カオルは「大丈夫。ありがとう」と感謝を言いながら、扉へと振り返った。

 改めて見る扉は、やはり大きい。

 取っ手や呼び鈴などがあるわけでもなく、ただ静かに鎮座する扉は、来る者を拒むかの様な威圧感がある。

 扉に近づき両手を当てる。

 カオルは、この扉の開け方を知っている。


「封じられし扉よ。閉ざされし(ゲート)よ。我を受け入れ封印を解かせ『メイス』」


 それは、風竜がかつて、自身の住処である『アネモスの地下迷宮(ダンジョン)』で使った魔法である。

 カオルはそれを知っていた。

 「もし、お金が足りなくなったら、そこへ取りに行くといい」と、風竜が手紙と一緒に書き記していた魔法だからだ。


 扉は開いた。

 「ガゴン」と大きな音を立てて、長い年月沈黙を守っていたであろう扉が、カオルの魔法により開いたのだ。


(ありがとう。風竜....)


 心の中で、今は居ない風竜にお礼を述べて、カオルは1歩足を踏み入れた。

 かび臭さがほのかに鼻先から臭う。

 一瞬顔を顰めたカオル。

 肩に止まったファルフは、目を廻して悶えていた。

 

「だ、だいじょうぶ?」


 慌ててファルフを掌へと移動させる。

 ファルフは羽をばたつかせて身悶え始めてしまったので、カオルは仕方なく魔宝石へと戻した。

 1人きりになってしまったカオル。

 心細さを感じながら、周囲を警戒しつつ歩みを進めた。


 そこには、何かが居た。

 いや、大きな気配を感じる。

 どこか懐かしく、温かい気配が。


「グルル.....」


 呻き声が聞こえた。

 何度も、何度も聞いた事がある、呻き声が。

 気付けば、カオルは走っていた。

 声のする方に、懸命に、長い黒髪を振り乱して。

 そして出会った。

 薄暗い室内に横たわって眠る、懐かしき存在に。

 時折開く大きな爬虫類を思わせる黄色い瞳。

 50mはあろう体躯(からだ)

 魚の鱗を思わせる皮膚に、大きな翼が羽ばたくと、辺り一面に突風が巻き起こる。


「風竜.....」

 

 涙が....溢れた。

 ずっと会いたかった相手。

 ずっと心配していた相手。

 ずっと感謝を言いたかった相手が、手を伸ばせば届く距離にいる。


「う...うう....」


 カオルは咽び泣いた。

 「やっと会えた。ずっと寂しかった。無事でよかった」と、涙声で叫びながら。






 だが、それは風竜ではなかった。


「グルル....誰だ。我の眠りを妨げる者は....」


 ドラゴンは大きな頭を擡げ、翼を羽ばたかせて威嚇した。

 そして、カオルの存在に気付くと、目力強く睨みつける。


「なんだ貴様は。どこから入ってきた」


 大粒の涙を流すカオル。

 ドラゴンは一巡悩み首を傾げた。


「小さき者よ。答えろ。どこから入ってきた」


 巨大な部屋がビリビリと震え、その存在を誇示(こじ)するかのような低い声が木霊(こだま)する。

 カオルは涙でグシャグシャの顔のまま見上げて、扉を指差した。


「グルル.....どうやってあの扉を開いたのだ」


 ドラゴンの質問は続く。

 風竜とまったく同じ声色で。


「グスッ....風竜が、魔法を教えてくれたんだ....」


 目の前のドラゴンが風竜ではないと判った今でも、カオルは涙を流し続けた。

 姿形がまったく同じで、声までそっくりなのだ。

 風竜と話している感覚に、心が着いてきていない。


「風竜だと?.......貴様、ヴイーヴルを知っておるのか?」


 風竜と聞いて、声色が強まる。

 明らかな敵意が見え隠れし、空間がビリビリと泣き叫ぶ。


「グスッ....風竜は、ボクの家族だよ。ボクがこの世界に来て、初めて出会ったのが風竜なんだ。契約もしてくれて、ずっとボクの傍に居てくれた.....君は、風竜じゃないんだね?」


 泣きながらカオルは答えた。

 自分と風竜の出会いを。

 風竜がずっと自分を守ってくれていた事を。

 そして、自分のせいで風竜がいなくなってしまった事を。


 黙ってカオルの話しを聞いていたドラゴン。

 時々瞼を閉じては、思い出に耽るような素振りを見せる。


「....よくわかった。小さき者よ。よくぞ我の下へ辿り着いたな。褒美に我も契約をしてやろう。我が名は偉大なる土の竜『土竜王クエレブレ』だ」


 土竜は名乗りを上げた。

 そして、風竜がそうしたように、カオルと契約を交わす。

 巨大な顔をカオルへ近づけ、黄色い瞳から閃光を奔らせる。

 すると、カオルの左胸が熱を持ち、風竜の『音素文字(ルーン)』と対になるように黒い文字のようなものが刻まれた。


「クックック。よくぞ我慢したな。小さき者よ」


 溶ける鉄を皮膚に押し当てた様な痛みが、カオルの左胸に奔る。

 カオルは我慢したと言うよりも、風竜に会えたと誤解した感情の方が強かっただけで、叫ばなかったのだ。


「小さき者よ。名を何と言う?」


「グスッ....ボクはカオル。香月カオルだよ。土竜」


 涙を裾で拭い取り、カオルは名乗った。

 いつまでも泣いてはいられないと、笑顔を作って。


「ふむ。ではカオルよ。カオルが今一番聞きたい事を話そう。ヴイーヴルを救う方法だ」


 カオルの心臓はドキンと跳ねた。

 カオルがここへ来た理由は、風竜の救出方法を土竜に聞くためなのだから。


「お、教えて!!風竜はどこに居るの!?」


 慌てるカオルに、土竜は努めて冷静に話す。


「ヴイーヴルが居るのは狭間だ。この世界と異世界の狭間。ヴイーヴルが使った『オニロの宝珠(ほうじゅ)』とは、夢神(むしん)『モルペウス』の力が宿った神器。カオルよ。ヴイーヴルに会いたいか?」


 カオルをジッと見詰める土竜。

 大きな黄色い瞳が、ゆらりと揺れた。


「....会いたい。そのために、ボクはここへ来たんだ」

 

 カオルは意思を見せた。 

 風竜に救われた恩を、返したいと。

 黒水晶の瞳に、意思の炎をたぎらせて。


「...辛く厳しいものになるだろう。それでも良いか?」


「うん。お願い土竜。教えて」


 土竜は静かに目を閉じた。

 これから伝える事は、この幼いカオルにとって、とても厳しい事だ。

 もしかしたら無理かもしれない。

 『あの者達』が、気まぐれでもカオルに力を貸してくれるとは、到底思えないのだから。


「.....わかった。では、教えよう。『水竜王リヴァイアサン』と『火竜王バハムート』を探せ。そして、我と同じ様に契約するのだ。狭間をこじ開けるには、四竜王の力が必要だ」


 四竜王。 

 この世界の原初より存在し、『心良き神々』と共に『堕落した神々』と死闘を繰り広げた『異形の者』と呼ばれる神の御使(みつか)いである。

 カオルは既に『風竜王ヴイーヴル』と『土竜王クエレブレ』と契約を済ませた。

 土竜は言った。

 「『水竜王リヴァイアサン』と『火竜王バハムート』を探せ」と。

 おそらく、どこに居るのかはわからないのであろう。

 万が一探し出せたとしても、無事に契約出来るとも限らない。

 

 そこでふと、カオルは気付いた。

 (なぜ土竜は簡単にボクと契約してくれたのか)と。


「ねぇ土竜。質問してもいい?」


「なんだ?」


「なんでボクと契約してくれたの?」


 カオルの質問に、土竜は笑って見せた。

 何かを思い出して懐かしむような素振りで、笑いながら涙を流す。


「ヴイーヴルと我は、良きライバルでな。何度も収拾物(コレクション)を賭けて、小競り合いをしたものよ......」


 過去を思い出す様に首を擡げ、遠い目をする土竜。

 そっと瞼を閉じて興奮したのか、翼を大きく羽ばたかせていた。


「コレクション?」


「うむ。魔剣や神剣の類だ。特に口惜しいのは、異界より開現した『天羽(あめのはば)(きり)』だな。あれは良い物だ。白露に濡れた刀身が、えも言われぬ光沢を放っておった。ヴイーヴルが居ない今、かの神刀の行方が気掛かりだ」 


 何度も「良い物だ」と連呼する土竜。

 カオルはアイテム箱から『天羽(あめのはば)(きり)』を取り出して、土竜の前で鞘を抜いた。


「もしかして、これ?」


 直刃二重刃紋の太刀が見事に煌く。

 風竜が居なくなる前にカオルへ贈った代物だ。


「.....」


 土竜は、驚愕とし目を見開く。

 そして次の瞬間には笑っていた。


「クックック....そうか!!ヴイーヴルはカオルに託していたのか!!クックックック.....なるほど。カオルはそれだけ信頼されておるのだな!!」


 土竜は、嬉しそうに話した。

 何度も刀身の輝きをウットリ見詰め、楽しそうに笑いながら。


「他にも色々あるよ」


 カオルは、アイテム箱から風竜に贈られた武器を取り出す。

 ゴテゴテした過剰な装飾の施された大剣や、槍・両手斧等

 一際目を惹くのは、黒い刀身に所狭しと金の細工が施された高価そうな大剣。

 白銀の盾と片手剣が一対になった、とても美しい剣盾。

 土竜は、カオルが取り出した武器をジッと眺め、取り出す度に感嘆の言葉を漏らす。


「ふむ....どれも素晴らしい。さすがはヴイーヴルだ。どれもこれも唯一無二の魔剣魔槍の類だな」


「そうなの?」


 魔剣にあまり価値を見出せないカオル。

 確かに作りは素晴らしく、心惹かれる感じはするのだが、どれもカオルにとっては重く使い勝手がよくない。

 ただ、カオルが小さいだけなのだが.... 


「この大剣はカラドボルグ。この長槍はガエボルグ。この大鎚はミョルニル。見てみろ、この片手長剣なんぞ竜殺しと言われるアスカロンだぞ?盾はイージスだな。クックック...もっとも我に竜殺しなど効かぬがな。しかし、どれもこれも神々が持っていた物や神の使徒が使った物だ。うむ。良い物を見た」


 「眼福眼福」と言わんばかりに、満足そうに頷く土竜。 

 カオルは(ものすごい物だったんだぁ)と驚きつつも、あまり興味を惹かれなかった。


「ところで、カオルよ。これはいったいどうしたのだ?」


 土竜は、突然真面目になった。

 カオルが取り出した武器をいったいどこで手に入れたのかと訝しげにカオルを見やり、問い掛ける。


「これは全部、風竜がくれたんだよ。住処にあるのも使っていいって。お金も好きに使っていいって、手紙に書いてあった」


 衝撃的な言葉に目が点になる。

 かつて自身と取り合っていた至高の品々を、こんな幼子にポンと渡すヴイーヴル。

 (我に、これは出来ない)と思いながら、何故か対抗心が生まれた。


「カオル!!我も何か授けよう!!少し待て!!」


 そう言うや否や、巨体を響かせ部屋の隅へと赴く。

 なにやらゴソゴソ探す素振りを見せて、咥えてきたのは大きな木箱だった。


「これを持って行くと良い!!何、礼などいらぬ!!」


 なんだか負けず嫌いな子供の様に見える土竜が、とても可愛らしく思えてしまう。

 カオルがクスクス笑うと、自身満々にアレコレ解説を始めた。

 

「これらは全て、人工遺物(アーティファクト)だ。これはエルメスの足輪。装備すると羽が生えたように足が速くなる優れ物だ。こっちはラウルスの冠。月光に当てると光輝くのだ。どうだすごいだろう?」


 次々に性能を誇らしげに伝える土竜に、まさか(微妙)などとはカオルには口にできない。

 しかし、全ていらないとはさすがに言えず、『とある欲しい物』を伝えてみた。


「ねぇねぇ土竜。ボク、こういう物が欲しいんだけど.....」











 土竜と契約し、風竜の手掛かりを手に入れたカオル。

 お土産まで貰ってウキウキ顔で、フムスの地下迷宮(ダンジョン)を後にするのだった。


ご意見・ご感想をいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ