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間話 師匠回想 その参

おまわりさん、こいつです。


2016.6.29に、加筆・修正いたしました。

 

 カオルが帰ってこない。

 砂糖の代替え品を探しに出て行ってから2日も帰ってこない。

 何度も探しに行った。

 【イーム村】の村長には「村には来ていない」と言われた。

 雑貨屋の主人も「見かけていない」と言っていた。

 訓練場隊長のアルも「見ていない」と言っていた。


 ヴァルカンは、フラフラになりながら村の林へ行くと、《飛翔術》を使い木のスレスレを飛び回る。

 

(はっきりと言おう。私は高所恐怖症だと!! 怖い....ホントは飛びたくない...でも、カオルがいないのはもっといやだ...)


 グダグダに泣きながらカオルを探した。

 2日。もう、2日もカオルと会ってない。


(あれかな...もう私なんか必要無いとか、そういうことなんだろうか...それとも彼女ができたとか...そのうち「結婚するので、師匠さよなら」とかそういうことになるのだろうか.....)


 ヴァルカンは弱っていた。

 この世界に来てから2年余り。

 カオルはずっとヴァルカンの傍に居た。

 もちろん、修練中や鍛錬中。

 買い物にお手伝い中は傍に居ない事もあった。

 だが、カオルと一緒に居る事が最早当然になっていたヴァルカンは、カオルがいない事に耐えられなくなってしまった。


 その原因は、おそらくカオルに中毒性があるのだろう。


 甲斐甲斐しくお世話をする美少女(びしょうねん)

 ヴァルカンがお酒を飲みすぎてしまい、小言を言う事もあるが、基本的にはとても優しい。

 見た目も超絶可愛く、時折ヴァルカンを見上げては瞳を潤ませる仕草。

 完全に心を射抜かれてしまっても仕方がないだろう。

 

(私以外と結婚など....いやだーーーーーー!! カオルは私のもんだーーー!!

 私の大事な嫁を、名もしらんやつにやるもんかーー!! うぅ....かおるぅ......)


 普段、カオル命名の『残念美人』を自認するヴァルカンではあるが、この時ばかりは焦っていた。

 泣きながら空を飛ぶ。

 周囲から見れば、さぞ滑稽だろう。

 特に、【カムーン王国】の騎士学校時代からの同僚だった、フェイあたりに見つかれば、さぞ笑いの種にされたに違いない。


「はぁ....」


 あまりの情けなさに、おもわず溜息を吐く。

 すると、ヴァルカンの不幸が伝播したのか、森の上を飛んでいるとハーピーが絡んできた。

 白刃刀(イグニス)を構え、そのまま押し切る。

 すれ違いざまに居合いで一閃!

 ハーピーは身体を2つに引き裂かれ、そのまま地面へ落下した。


(カオルはどこだー! 私の嫁はどこだよぉ....)


 戦果を確認するまでもなく森の上を飛んで行く。

 しばらく飛んでいると、魔力が底を尽きてきたのか、頭がグラリと揺れた。


(うぅ.....)


 泣きながら家へ向かい、着替えもせずにそのまま暖炉の前で(うずく)まる。


「カオル...どこに居るんだ.....寂しいぞ....」


 頬から涙が零れ落ち、次第に意識は薄れていく。

 気が付けば、そのまま眠ってしまっていた。





















 どれくらい眠っていたのだろうか。

 太陽は姿を隠し、辺りはすっかり暗くなっていた。

 暖炉の火は既に消えていたので、薪をくべようと手を伸ばす。

 その時、外に人の気配を感じた。

 慌ててドアを蹴り開けると、ボロボロの姿でへたりこんだ愛しい愛しい(カオル)がいた。


 だが――一瞬思考が停止した。

 濡れ鼠の様な姿。

 身体のアチコチに怪我をして、纏っていた外套は乾いた血でどす黒く変化している。 


 涙が溢れた。


「か、がぉるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」


 鼻声で涙も止まらず、ぐっちゃぐちゃな顔をしたまま、声にならない声で泣き叫ぶ。


「じんばいじだんだよぉぉぉ」


 もうカオルの顔も見れなかった。

 ガバっと抱きつきギューギュー抱き締める。


「カオルカオルカオルーー!! うわぁぁぁん、大好きだぞぉぉぉ!! お嫁になんていかないでくれぇぇぇ!!」


 ヴァルカンは大声で叫んだ。

 カオルが帰ってきてくれた事が嬉しくて、他に何も考えられなかった。











 しばらく抱き合っていると、フッとカオルから力が抜ける。


(え!? な、なんだ!?)


 慌てて放すと、くたっと意識を失っていた。


(あゎゎゎゎゎ!! し、死んじゃった!?)


 カオルの服に手を突っ込み胸へあてる。


(大丈夫、心臓は動いてる...っていうかなんでこんなボロボロなんだ!?)


 カオルを抱えあげ――もちろんお姫様抱っこ――寝室のベットへ向かう。

 装備を外し、服を脱がす。


(やっばい、ちょっと興奮する。あ、意外と大きい。いやいやいや! そんなことより早く治療しなければ!!)


 細かい傷は全身にあり、肩口と背中はかなり深い。

 特に背中は致命傷だ。


(よく無事だったな....というか、何と戦ったんだ? それと....その腕輪はなんだ!!

 なんだか、ものすっごく高そうな『魔宝石』付いてるんだが!! これは誰かからの贈り物な感じか!?


 浮気か!?


 浮気なのか!?


 うわぁぁぁぁん!! いやだいやだいやだーーーー!! カオルは私んだーーーー!! うぅぅぅぅぅ....)












 泣きながらカオルの治療をした。


 あ、イタズラはもちろんしたぞ?

 あれだな。

 意識無くても立つんだな。

 え? なにがって?

 しらんがな。


ご意見・ご感想をいただけると嬉しいです。

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