間話 師匠回想 その弐
カオルは男の子です、ご注意を。
2016.6.27に、加筆・修正いたしました。
私は村へ来ていた。
理由は農具の引渡しなのだが、今日は1人じゃない。
カオルを初めて連れてきたのだ。
ここ、【イーム村】では小麦を作っている。
近隣の村々や王都。
それに西の大国【エルヴィント帝国】に小麦を卸している。
そのため、私の作る農具が必要ということだ。
そこそこ評判も良い。
まぁ、剣聖時代の貯えもあるのだが....カオルには内緒だ。
私は今日、ある作戦を実行しようと思う。
それは『カオル女の子化計画』。
カオルは、見た目美少女のくせに、一人称は『ボク』だし、酒を呑み過ぎだとか口やかましいのだ。
私を心配して言ってくれてるいるのだろうが...カワイイヤツめ! ジュルリ
私の3歩後ろをトテトテと着いてくるカオル。
さすが私の嫁だ。夫を立てる為に3歩後ろなわけだな!
いつものように村長のところへ行く。
カオルきゅんは気付いていないようだが、既に私の作戦は発動しているのだよ!
「村長。今日もよろしく頼む」
私が話しかけると、家の前で薪を結っていた村長は振り返る。
「おや、これはヴァルカン殿。こんにちは、今日はいかが....ああ、そうでしたな。納品の日でしたな」
人間の村長。
私がやってきた理由に気付き、手をポンと叩いた。
「それでは、品物をお受け取りいたしましょう」
カオルに持たせていた農具一式を受け取り村長へと手渡す。
鍬や鋤など、ひと揃えにされた農具。
「おや、こちらの子は...?」
私の後ろに付き従うカオルを見やると、農具を受け取りつつカオルをマジマジと見詰める。
フフフ可愛いかろう!
だが、それ以上裸眼で見るとヤバイぞ....私でも5分が限界だからな!!
「この子はカオル、故あって私が面倒を見ている」
私は自身満々に答えた。
なにせカオルは、超絶美少女なのだからな!
しかも家事全般マスタークラス。
これほどの逸材を、私は今まで見た事が無い!
「そうなのですか」
村長はその場にしゃがみカオルと目線を合わせる。
良く出来た人間と言えるだろう。
相手が子供でも、けして軽く扱わない。
だからこそ、こんな辺境とはいえ、村長という役職が務まるのだから。
「ヴァルカン殿は立派な方です。善い人の所へ来ましたね」
ニカッと笑う村長。
私は知らないが、村長も若い頃はなかなかの美男子だったのかもしれないな。
「はい、優しくてとても綺麗で善い方です。ボクは幸せです」
朗らかに笑い返答するカオル。
村長は「そうでしょう」と満足そうに頷いて見せた。
ちょ、幸せとか言ってるカオルきゅん抱きしめたいっ!!
がっ、もちろん自重した。
あぶなかった....作戦が早くも破綻するところだった。
私は村長に近づき小声で話す。
「カオルはいろいろ不憫な"娘"でな。常識にも疎い。これから迷惑をかける事があるかもしれないがよろしく頼む」
これが私の作戦だ。
意図的にカオルを"娘"とインプリンティングする。
フフフ....
「おまかせください」
無事に作戦は成功したようで、村長はカオルから離れると立ち上がり、そう告げた。
農具の代金を受け取る。
私が作った農具はそれほど高くなく、全部で銀貨1枚ほど。
まぁこんなもんだ。
所詮生活用品だからな。
カオルは村長に手を振りその場を後にする。
どうやら気に入られて嬉しかったようだ。
ふっふっふ....わざと"娘"と強調し相手に印象付けたのだ。
あの村長はおしゃべりが大好きだからな。
明日には【イーム村】中がカオルの話題で持ちきりだろう....
ヴァルカンの作戦は大成功を収めた。
村長は出会う人全てにカオルの事を伝えた。
しかし、噂話というものには尾ひれが付く。
あの見た目は美人なのに、中身おっさんの元剣聖が『幼女を垂らし込んだ』とか。
カオルが『実は亡国のお姫様でヴァルカンが攫ってきた』のだとか。
みんな好きに言う言う。
『黒髪に黒目の美少女』の噂は、あっという間に村中の噂になった。
しかし、この時ヴァルカンは気付かなかった。
自分の計画の浅はかさを。
そして後に、ヴァルカン程度では収拾つかないほど大事となるのは別のお話。
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